- 更新日 : 2023年12月8日
法人カードとは?カードの種類や選び方を比較表つきで徹底解説
法人カードとは、主に事業者向けのクレジットカードのことです。個人向けクレジットカードと異なり、基本的には法人口座を引き落とし口座に指定します。また、社員用の追加カードを発行でき、高額決済も行えるものが多いことなども法人カードの特徴です。
この記事では、法人カードの特徴や支払方法の種類、事業者が利用するメリット・デメリットなどを網羅的に解説します。
目次
法人カードとは事業者向けクレジットカードのこと
法人カードとは、法人代表者や個人事業主向けに発行されるクレジットカードのことです。法人カードで利用した金額は法人口座から引き落とされることが一般的ですが、個人事業主の場合は個人口座からの引き落としも可能です。また、カードによっては屋号名義で開設した事業用口座を引き落とし先に指定できることもあります。
法人カードは、役員や従業員が使えるカードも追加発行できます。表面に会社名を印字できるカードもありますが、名義人は個人となり、名義人以外は社員であっても使用できません。例えば、上司が自分名義の法人カードを部下に渡し、インターネットショッピングをするように命じることは法人カードの規約違反となります。
法人カードと個人カードの違い
法人カードと個人向けクレジットカード(個人カード)は、事業者向けか消費者向けかという点で、特徴や付帯サービスが異なります。具体的な違いとして挙げられるのは、「引き落とし口座」「審査の対象」「追加カードの対象」の3点です。
たとえ事業用に個人向けクレジットカード(個人カード)を利用する場合でも、個人カードは引き落とし口座として個人口座を指定することが一般的です。
カード申し込み時の与信審査の対象も、個人カードは申込者本人(個人)であることに対し、法人カードの場合は「法人や法人の代表者(もしくは個人事業主本人)」となります。
また、個人カードは家族カードを発行できますが、法人カードではできません。しかし、法人カードは役員や従業員のカードを発行できるという特徴があります。
法人カード | 個人カード | |
---|---|---|
契約者 | 法人・法人の代表者 または個人事業主 | 個人 |
引き落とし口座 | 原則法人口座 | 個人口座 |
審査の対象 | 法人、法人の代表者、 個人事業主本人 | 個人 |
年会費 | 0円~11万円程度 | 0円~1万円程度 ※無料が多い |
ポイント還元率 | 0.3~5%程度 | 0.3~5%程度 |
限度額 | 10~500万円程度 ※高額決済が可能など、 事業に活用できるものも多い | 10~100万円程度 |
追加カードの対象 | 社員 | 家族 |
キャッシング機能 | 原則なし | あり |
付帯サービス | ビジネス向け | 個人向け |
法人カードと個人カードの違いについて、詳しくは下記記事でもご紹介しています。
法人向けカードの種類と特徴比較表
法人向けのカード決済は、支払い方法に応じて「クレジットカード」「プリペイドカード」「デビットカード」の3種類に分けられます。法人カードは「法人向けクレジットカード」を指すことが一般的ですが、他の決済方法を指すケースもあります。
それぞれ、支払い方法や支払回数などの特徴をおさえておきましょう。
法人向け クレジットカード | 法人向け プリペイドカード | 法人向け デビットカード | |
---|---|---|---|
支払い方法 | 後日まとめて | 事前入金 | 即時 |
支払い回数 | 一括や分割、 リボ払いなども可能 | 一括のみ | 一括のみ |
審査 | あり | 基本的になし | 基本的になし ※事前に法人口座の開設が必要 |
利用限度額 | 10〜500万円程度 | 原則として 事前入金額が上限 | 法人用口座の預金残高が上限 |
法人向けカードを選ぶ際は、求める機能や利用シーンを想定して選ぶといいでしょう。決済をスムーズに行いたい場合や、資金繰りを良くしたい場合は、法人向けクレジットカード。与信審査に不安がある場合で、広告費・仕入れなどにより高額な決済が必要な場合は、プリペイドカードやデビットカードをおすすめします。
法人向けのプリペイドカードとデビットカードの特徴やメリットについては、別の記事で詳しく解説しています。
ビジネスカードとコーポレートカードの機能的な違いはない
法人カードには「ビジネスカード」や「コーポレートカード」と呼ばれるものもありますが、機能面での違いはありません。
コーポレートカードと呼ばれる法人カードは、社員数20人以上の企業向けのカードを指すことが一般的です。一方、ビジネスカードと呼ばれる法人カードは、社員数が20人未満の法人や個人事業主向けのカードを指すことが多いです。
また、法人向けカード決済サービスに「〇〇ビジネスカード」と名付けているケースもあります。
代表的な法人向けカード10選
代表的な法人カード10枚とそれぞれの特徴を、下記の比較表にまとめました。年会費無料のものから、付帯サービスが充実しているものまで幅広く紹介しているので、ぜひ法人カード選びの参考にしてください。
カード名 | 種類 | 年会費 | ポイント 還元率 | 与信審査 | 発行 スピード | 利用上限 |
---|---|---|---|---|---|---|
プリペイド(あと払い機能あり) | 無料 | 1〜3% | なし | 最短1週間程度 | なし | |
ライフカードビジネスライトプラス(ゴールド) | クレジット | カード1枚あたり2,200円(発行初年度無料) | 実質0.5% | あり | 最短3営業日 | 10万円~500万円 |
クレジット | 初年度無料、通常22,000円(税込)/年 | 最大1.125%還元(JALのマイル還元の場合) | 個人の与信審査あり | 最短3営業日 | 明記なし | |
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード | クレジット | 36,000円(税込)/年 | 1%(加盟店以外の場合0.5%) | あり | 明記なし | 明記なし |
楽天ビジネスカード | クレジット | 2,200円(税込) | 1%~5% | あり | 明記なし | 最大300万円 |
クレジット | 無料 | 0.5%~2% | 個人の与信審査あり | 最短3営業日 | 最大500万円 | |
クレジット | 1,375円(税込) ※オンライン申し込みで初年度無料 | 実質0.3%程度、優待店では2~3倍還元 | あり | 明記無し | 100万円 | |
三井住友カード ビジネスオーナーズ(ゴールドカード) | クレジット | 5,500円(税込) ※年100万円以上利用で次年度以降無料 | 0.5% 対象となるご利用のポイントを最大1.5%還元 | あり | 最短3営業日 | 最大500万円 |
ライフカードビジネスライトプラス(スタンダード) | クレジット | 無料 | 実質0.5% | あり | 最短3営業 | 10万円~500万円 |
ラグジュアリーカード Mastercard Black Card | クレジット | 110,000円(税込)/年 | 1.25% | あり | 最短5営業日 | 最大9,990万円 |
法人カードを選ぶ際に比較したいポイント
法人カードを選ぶ際は自社に合ったサービスを選ぶことが重要です。上記の法人カードを比較する上で、特に注目すべきポイントは下記3点です。
- 与信審査
- 年会費
- ポイント還元率
また、役員や従業員などにも追加カードを発行する場合は、追加カードを発行できるか、そして発行にあたって追加費用が発生するかなどもチェックすると良いでしょう。
法人カードを利用するメリット
法人カードを利用するメリットには、以下のようなものがあります。
- 会計ソフトや経費精算システムとの連係がしやすい
- ガバナンス強化につながる
- ポイントやマイルの還元がある
- 付帯サービスや付帯保険が使える
- キャッシュフローにゆとりができる
法人カードを利用する大きなメリットは経費精算の手間を削減できることです。個人事業主と法人、それぞれの場合でどのようなメリットがあるのか、簡単に見てみましょう。
個人事業主が法人カードを利用するメリット
個人事業主が法人カードを利用すると、個人的な支出と事業支出を明確に分けられるメリットがあります。経費の支出を全て法人カードで行えば、経理や確定申告にかかる時間や手間を軽減できるでしょう。また、法人カードにより事業関連の支出と個人支出が混ざらないように管理することで、経営の透明化も図れます。
クレジットカードでは利用のタイミングと実際に引き落とされるタイミングに1~2カ月ほどの差があります。その時間差を活用すれば、キャッシュフローに余裕が出やすくなるでしょう。
各クレジットカード会社が提供しているポイント制度やビジネス向けのサービスを利用できることも、法人カードのメリットです。ビジネスに役立つサービスも多いので、サービス内容を比較してから法人カードを選びましょう。
法人が法人カードを利用するメリット
法人が法人カードを利用する場合、役員や社員名義の法人カードを発行すれば、役員・社員ごとの支出を一元管理できます。また、役員・社員は一時的に費用を立て替える必要がなくなるので、経費申請の手間やお金のやり取りが省けるメリットもあります。
なお、法人カードを利用するメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
法人カードを選ぶ際に注意したいこと
法人カードを利用する上で注意したい点は、下記の3つです。
- 年会費がかかるものが多い
- 審査に通らない場合もある
- 法人カードの管理方法を考える必要がある
法人カードを契約する際は、年会費がかかるものが多いことを意識しておきましょう。年会費無料で契約できる法人カードも多く存在しますが、ポイント・マイル還元率が低かったり、付帯特典が充実していなかったりする傾向にあります。年会費がかかったとしても内容が充実している法人カードを選んだ方が結果的に得をする場合がほとんどです。
昨年の利用シーンや利用実績をもとに、年会費を払ってでも法人カードを契約すべきか検討すると良いでしょう。なお法人カードの年会費は経費に計上できます。
個人事業主が法人カードを利用するデメリット
法人カードの中には、分割払いやリボ払いなどに対応していないものもあります。キャッシュフローに余裕がないときは、使いづらいと感じるかもしれません。法人カードに申し込む前に、支払い方もチェックしておきましょう。
また、個人カードと比べると年会費無料のものが少ない点もデメリットと言えます。年会費無料と宣伝されている法人カードでも、無料にするために満たすべき条件が多いものがあるので注意が必要です。カードで利用する金額が少ない個人事業主は、年会費を無料にするための条件を満たせず、年会費が発生する場合もあるからです。
例えば、年間の利用実績が100万円以上になると翌年から年会費無料になるといったケースがあります。
法人が法人カードを利用するデメリット
法人カードのメリットの一つとして、社員名義のカードを発行できる点を挙げました。しかし、追加カードの枚数制限があるときは、必要な枚数を発行できず不便に感じることもあるかもしれません。どの程度の枚数が必要か考えた上で、申し込む法人カードを決めるようにしましょう。
また、社員に法人カードを発行するときは、不正使用を防ぐためにも社内で運用ルールを定める必要があります。場合によっては運用が煩雑になる可能性もあるでしょう。
法人カードの不正使用についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
また、法人カードを利用するデメリットについては、こちらで詳しく解説しています。
解決したい課題から自社に合ったカードを選ぼう
ここからは解決したい課題をもとに、カードの選び方について解説していきます。日々の課題を思い浮かべながらどういったカードを契約すべきか考えることで、自社の課題解決につながるヒントが得られるでしょう。
新設法人だがカード決済を利用したい
与信審査に不安がある新設法人は、法人向けプリペイドカードやデビットカードを選ぶといいでしょう。カードの性質上、事前入金または法人口座からの即時引き落としが必要となりますが、原則として与信審査が不要なため、新設法人でも日々の支払い決済に法人向けカード決済を使用できます。
なお法人カード(法人向けクレジットカード)の中でもゴールドカードやプラチナカードといったステータスの高いは、審査申し込み時に会社の業績や財務状況の提出が必要となる場合がほとんどです。原則として審査が厳しいため、新設法人は通りづらい認識しておいた方がいいでしょう。
法人カードの審査基準については、こちらの記事で詳しく解説しています。
立替精算をなくしたい
現金での立替精算をなくしたい場合は、追加カード(従業員カード)が発行できる法人カードを選ぶといいでしょう。追加カードを発行することにより、経費の支払いが一元管理できるようになるからです。また追加カードで決済を行った場合でも、ポイントやマイルによる還元が受けられます。
追加カードについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
高額の支払いをカードで行いたい
高額の支払いをカードで行いたい場合は、ゴールドカードやプラチナカードなどのランクが高いカードを選ぶといいでしょう。カード会社によっては年会費がかかるものもありますが、一般的な法人カードよりも利用限度額が高めに設定されているからです。
一般的な法人カードでは利用限度額が10〜300万円ほどですが、法人ゴールドカードであれば最高500万円、法人プラチナカードであれば1,000万円以上の限度額が審査により決定される場合があります。ただし審査が厳しいカードもあるため、審査基準をある程度把握した上で申し込むといいでしょう。
また、高額な決済が必要な新設法人などは、法人向けプリペイドカードを利用する方法もあります。プリペイドカードの性質上、利用額の事前入金が必要となりますが、事前入金額が利用限度額となるため、与信審査なしで高額な決済が行えるからです。与信審査の結果、利用限度額が低かったような場合でも、法人向けプリペイドカードであれば対応できます。
ランクが高い法人カードについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
経費の支払いを少しでもお得にしたい
法人カードを利用することで、経費の支払いを少しでもお得にしたいと考えている場合は、ポイント・マイルの還元率に注目してカードを選ぶといいでしょう。多くの法人カードではポイント・マイルの還元率は0.5%未満に設定されていますが、還元率が1%以上に設定されているものもあるからです。
ポイント・マイル還元率が高い法人カードを契約することにより、日々の決済を行っているだけでポイント・マイルがたまっていきます。
還元率が0.5%高くなるだけで1年間にたまるポイント・マイル数が大きく異なるため、経費の支払いを少しでもお得にしたいと考えている場合は、できるだけ還元率が高い法人カードを契約するといいでしょう。例えば年間の利用額が1,000万円の場合、還元率が0.5%高いと、5万円の経費削減と同様の効果があります。
法人カードでポイントやマイルを効率よくためる方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
出張が多いので法人カードの特典を利用したい
出張の機会が多い場合は、付帯特典に注目してカードを選ぶといいでしょう。付帯特典の内容はカード会社によって異なりますが、空港ラウンジが利用できるものを選ぶことで、空港での待ち時間を有意義に過ごせます。
ほとんどの空港ラウンジでは軽食やフリードリンクが楽しめるほか、Wi-Fiやコンセントを利用して仕事を進めることができます。またシャワールームやマッサージチェアが利用できる場所もあるため、出張での疲れを癒やすことも可能です。
法人カードの付帯特典については、こちらの記事で詳しく解説しています。
法人カードユーザーに聞いた法人カードの選び方
マネーフォワードが行った調査によると、50名以下の中小企業経営者・役員、経理事務担当のうち、「法人カードを持っている」と答えた方に聞いた法人カードの選び方は、以下のとおりです。
【法人カードの契約目的ベスト5】
- 支払い業務の効率化
- 経費精算簡略化(従業員の配布)
- キャッシュレスの促進
- ポイント還元による経費削減
- 付帯サービスの利用
【法人カードの契約の決め手ベスト5】
- 初期費用・年会費が安い
- ブランドイメージが良い
- ポイント還元率が高い
- 利用限度額が高い
- 複数枚発行できる
調査では、法人カードを実際に利用している人の多くが支払い業務の効率化のために法人カードを導入していることがわかりました。法人カードを導入すれば経費を立て替える必要がなくなったり、経費の一括管理ができるようになったりするため、業務の効率化につながります。
追加カードを発行して従業員も法人カードを使えるようにすると、より経理業務は効率化できるでしょう。なお、法人カードを利用している人の多くが、法人カードを選ぶ際に初期費用や年会費の安さを重視していることもわかっています。法人カードにかかる費用を抑えることで、サービス導入の負担やランニングコストを軽減できます。
参考:法人カードの利用に関する調査|マネーフォワード Pay for Business
法人カードの審査は厳しい?
個人カードとは異なり、法人カードの審査は代表者個人を対象とした審査に加え、企業を対象とした審査も実施されます。そのため、審査通過が厳しくなることもあるでしょう。
とはいえ、各カードが定める基準を満たしていれば、審査通過は可能です。創業1年目や個人与信でも作れるカードがあるので、起業したばかりの中小企業や個人事業主も申し込めます。
法人カードの審査基準については、下記記事で解説しています。
目的に合った法人カードを選びましょう
法人カードによって、サービス内容や上限発行枚数、年会費などが異なります。また、利用の条件や審査で確認するポイントも異なります。いくつかの法人カードを比較し、使い方やサービスなどがご自身に合うか確認してから申し込みましょう。
よくある質問
法人カードとは何ですか?
法人代表者や個人事業主が申し込めるカードのことです。事業関連の費用を支払うときなどに利用できます。詳しくはこちらをご覧ください。
法人カードを持つメリットはありますか?
経費管理を簡略化できること、また取引先への支払いに利用すれば振込手数料などの節約にもつながります。他にも、キャッシュフローに余裕が出ること、クレジットカードのポイントが貯まることなどもメリットです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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