- 更新日 : 2025年4月23日
電子帳簿保存法の猶予措置における相当の理由とは?注意点も解説
電子帳簿保存法に則った電子取引データの保存が難しい場合、ケースによっては猶予措置が適用される可能性があります。
本記事では、猶予措置の対象となる「相当の理由」について、注意点やよくある質問とともに詳しく解説します。最後まで読むことで、自社に合った対応策を理解できるでしょう。
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電子帳簿保存法の猶予措置における相当の理由とは?
電子帳簿保存法では、電子取引データを保存する際に改ざん防止や検索機能など一定の要件を満たさなくてはいけません。
しかし、所轄の税務署長が「相当の理由」があると認める場合は、猶予措置が適用され、保存要件に沿った対応が免除されます。単純にデータを保存しておけば問題ありません。
「相当の理由」とは、具体的に以下のようなケースが挙げられます。
- システムや社内のワークフローなどの整備が間に合わない場合
- 要件に従って保存できる環境が整っているが、資⾦繰りや人⼿不⾜などの理由で要件に従った保存ができない場合
ただし「売上高〇〇万円以下」「従業員〇人以下」といった明確な基準はありません。そのため、実際に「相当の理由」として認められるかは所轄の税務署長の判断に委ねられます。
すでに要件を満たせる環境が整っているにもかかわらず、適切な保存を行っていない場合は、猶予措置は適用されません。
猶予措置を受けられるか判断に迷う場合は、所轄の税務署へ相談しましょう。
電子帳簿保存法の猶予措置を受ける際の注意点
電子帳簿保存法の猶予措置を受ける際は、税務調査で求められた場合に備え、電子取引データを速やかに提示・提出できる状態にしておく必要があります。
令和5年12⽉31日までの宥恕(ゆうじょ)措置では、ダウンロード形式での提出は必要ありませんでした。しかし、現在の猶予措置では、プリントアウトした書面の提示・提出の求めだけでなく、「ダウンロードの求め」があった際に対応しなければなりません。
「ダウンロードの求め」にも速やかに対応できるよう保存形式やアクセス権限の設定など、事前に準備を整えておきましょう。
電子帳簿保存法の猶予措置に関するよくある質問
ここからは、猶予措置に関するよくある質問と回答を紹介します。疑問を解消して、電子帳簿保存法にスムーズに対応しましょう。
猶予措置を受けるために事前の申請は必要ですか?
電子帳簿保存法の猶予措置を受けるために、税務署への事前申請は必要ありません。
ただし、税務調査の際に「相当の理由」をきちんと説明できるように、資金繰りや人手不足などの状況を適切に記録・保管しておくことが重要です。説明責任を果たせない場合、猶予措置が認められない可能性があります。
判断に迷う場合は、事前に税務署や税理士へ相談することをおすすめします。
猶予措置はいつまでですか?
猶予措置の適用期限は明確に定められていません。しかし、将来的に法改正によって猶予措置が廃止される可能性も考えられます。
システム整備や資金繰りなどの問題が解消し、電子帳簿保存法の要件を満たせるようになった時点で、猶予措置の適用対象外となります。猶予措置に頼り続けるのではなく、常に状況を見直し要件を満たすための準備を進めましょう。
相当の理由がなく電帳法に対応できない場合はどうなりますか?
「相当の理由」がないにもかかわらず、電子帳簿保存法に則って電子取引データを保存できない場合、青色申告の承認が取り消されるリスクがあります。
電子帳簿保存法への対応にお困りの場合は、税務署や税理士に相談し、適切な対応策を検討しましょう。
電子帳簿保存法に関係する罰則やリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はこちらもご覧ください。
電子帳簿保存法に導入対応しないとどうなる?罰則・リスクや違反事例を解説
猶予措置を理解してスムーズに電子帳簿保存法に対応しよう
電子帳簿保存法は、企業の会計処理を電子化し、業務効率化や透明性の向上を目的とした制度です。電子取引データを保存する際には、改ざん防止や検索機能など一定の要件を満たさなければいけません。
しかし、システムの整備や資金繰り、人手不足などの問題で対応が難しい企業のために、猶予措置が用意されています。所轄の税務署長が「相当の理由」があると認めれば、要件を満たした保存が免除されます。
猶予措置を受けるには、税務署への事前申請は不要です。税務調査の際に「相当の理由」を説明できるよう必要な情報を整理・保管しておくことをおすすめします。
電子帳簿保存法への対応は、企業の規模や状況によって最適な方法が異なります。自社にとって最適な方法で電子帳簿保存法に対応しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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