- 更新日 : 2026年9月11日
働いている年金受給者は年末調整が必要?確定申告はどうなる?
働きながら年金を受給している方は、原則として年末調整に加えて確定申告が必要です。(一定の要件を満たせば不要になる場合もあります)
- 年金収入は雑所得のため年末調整対象外
- 年金以外所得が20万円以下なら申告不要
- 確定申告で税金が還付されるケースもある
Q. 給与と年金の両方がある場合、確定申告は必要?
A. 原則必要です。年金収入は雑所得のため年末調整では精算できず、年末調整後に自身で確定申告を行う必要があります。
会社勤めの方は会社で年末調整を行うため、他に特別な事情がなければ確定申告は不要です。ただし、年金を受給するようになると、年金収入は年末調整で扱えないため、確定申告が必要となるケースがあります。今回は、年末調整と年金受給者の関係、確定申告が必要になるケースと不要になるケースについて解説します。
働いている年金受給者は年末調整が必要?
年末調整では年金収入を取り扱うことができないため、給与所得と年金収入がある従業員は原則として確定申告が必要です。年金収入は「雑所得」に区分され、給与所得と一緒に年末調整を行うことができません。
そのため、年末調整を行ったとしても年金収入は考慮されず、1年間の収入に対する所得税額を正しく計算することができません。給与収入がある従業員は原則として年末調整を行う必要がありますが、年末調整を行った後に、従業員自身で確定申告をして所得税を精算する必要があります。
給与所得者でも確定申告が必要な人
給与所得者であっても、一定の条件に該当する場合は確定申告が必要です。年金に関する所得が20万円を超えていれば、確定申告が必要になります。
| 該当するケース | 内容 |
|---|---|
| 1 | 年間の給与収入が2,000万円を超える |
| 2 | 1ヵ所の会社から給与をもらっている人で、給与所得・退職所得以外の所得額が合計20万円を超える |
| 3 | 2ヵ所以上の会社から給与をもらっている人で、給与のすべてが源泉徴収の対象となる場合に、年末調整されなかった給与の金額と給与所得・退職所得以外の所得金額が合計20万円を超える |
増加する「年金受給者という立場の労働者」
定年年齢の引き上げにより、働き続けながら年金を受給する労働者が増えています。原則として老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は65歳から受給が始まりますが、経過措置により性別・生年月日に応じて65歳未満でも受給できる方や、繰り上げ請求により60歳から受給できる方もいます。
老齢年金は老後の生活を保障するものであり、定年退職後の大切な収入源です。しかし平均寿命が延び、定年退職後も元気に働く方は多く、年金収入だけでは将来の生活に不安を感じて再雇用や再就職を望む方も多いのが現状です。そのため、働きながら年金を受給する従業員が増加しています。
厚生年金保険は70歳まで加入義務がある上、高年齢者雇用安定法の改正による「70歳までの定年引上げ」「定年廃止」「70歳までの就業機会の確保」などの努力義務もあり、今後も働きながら年金を受給する従業員はさらに増加していくと見込まれます。こうした「年金受給者という立場の労働者」の年末調整や確定申告について、詳しく見ていきましょう。
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年金収入は「雑所得」で年末調整できない?
年金収入は給与所得ではなく雑所得に該当するため、会社の年末調整では精算できません。確定申告が必要な場合には、年末調整後に交付された給与所得の源泉徴収票と公的年金等の源泉徴収票などを用いて、本人が確定申告を行います。
年末調整とは、年調年税額(納めるべき所得税額)を算出し、すでに毎月の給与や賞与などから天引きされている税額の合計との過不足を確認して精算する手続きです。収入の内訳が給与・賞与のみ、つまり給与所得に限られる場合は、年末調整を行えばその年に納めるべき所得税額が確定するため、原則として確定申告は不要です。
しかし年金を受け取りながら働く従業員は、給与以外に年金収入(雑所得)があるため、年末調整だけでなく確定申告も必要になります。確定申告の際には、受け取っている年金収入を「公的年金等」と「公的年金等以外」に分けて計算します。
公的年金等に該当するもの
- 老齢基礎年金・老齢厚生年金・退職共済年金など
- 恩給
- 確定給付企業年金・確定拠出年金(個人型・企業型)、国民年金基金・適格退職年金、一定の外国年金など
なお、障害年金・遺族年金は非課税となるため公的年金等に含める必要はありません。
公的年金等以外の雑所得に該当するもの
- 生命保険契約・生命共済により受給する個人年金(財形年金貯蓄は非課税のため除く)
- 営利を目的とした継続的な副業・副収入による所得(原稿料、講演料、デザインの報酬、シルバー人材センターの報酬など、事業所得や山林所得に該当しないもの)
「雑所得」の計算方法は?
雑所得の金額の計算方法は、公的年金等とそれ以外で異なります。それぞれの計算方法を確認しましょう。
公的年金等の場合
公的年金等の場合、65歳に満たない方は年金収入額が60万円以下であれば全額控除の対象となり、雑所得の金額は0円となります。ただし、公的年金等控除額は合計所得金額によって異なります。
65歳以上の場合、公的年金等の収入金額が110万円以下であれば、公的年金等に係る雑所得の金額は0円となります。ただし、これは公的年金等に係る雑所得が0円になるという意味であり、所得税全体が必ず0円になることを意味するものではありません。
具体的な計算式は以下の通りです。
公的年金等に係る雑所得の金額=公的年金等の収入金額の合計額 × 割合 – 控除額
令和2年分以後の公的年金等の収入金額に対する雑所得の金額は、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合、以下の速算表で計算できます。
| 年齢 | 公的年金等の収入金額 | 割合 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 65歳未満 | 130万円未満 | ー | 一律60万円控除 |
| 65歳未満 | 130万円以上410万円未満 | 0.75 | 27.5万円 |
| 65歳未満 | 410万円以上770万円未満 | 0.85 | 68.5万円 |
| 65歳以上 | 330万円未満 | ー | 一律110万円控除 |
| 65歳以上 | 330万円以上410万円未満 | 0.75 | 27.5万円 |
| 65歳以上 | 410万円以上770万円未満 | 0.85 | 68.5万円 |
例えば、公的年金の収入金額が200万円の場合(65歳未満)は以下のように計算します。
公的年金等の収入金額200万円 × 割合0.75 – 控除額27.5万円=122.5万円
つまり122.5万円に対して、給与所得と合計した総所得額をもとに所得税を計算することになります。
公的年金等以外の場合
公的年金等以外の場合は、個人年金と業務に係る雑所得とで、それぞれ異なる数式を用いて求めます。
【個人年金】
個人年金の雑所得の金額=年金による収入額 – 年金による収入額 × 支払った保険料の総額 ÷ 年金の支払総(見込)額
(例) 個人年金の収入額:45万円 支払った保険料の総額:950万円 10年保証期間付終身年金(現在55歳女性で余命年数27年とする)
この場合は、以下の計算式で計算します。
支払った保険料の総額950万円÷(年金の支払総額(見込)45万円×27年)=0.781(小数点第3位以下を切り上げると0.79) 45万円-45万円×0.79=9.45万円(雑所得の金額)
【業務に係る雑所得】
業務に係る雑所得の金額=総収入金額-必要経費
この場合は年金ではないため、総収入額から必要経費を控除して雑所得の金額を計算します。公的年金、個人年金、業務に係る雑所得の計算式でそれぞれ求めた金額の合算が雑所得の金額です。雑所得は年末調整では計算できないため、確定申告で精算を行い金額を確定させる必要があります。
年金受給者が年末調整ではなく確定申告が必要なケースとは?
確定申告の義務がない年金受給者でも、一定のケースでは確定申告を行うことで源泉徴収された所得税や復興特別所得税が還付される場合があります。
| No | ケース | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 公的年金等から所得税が源泉徴収されている場合 | 公的年金等について源泉徴収された所得税額が、確定申告によって計算した年税額を上回る場合には、確定申告(還付申告)により税金の還付を受けられることがあります。 |
| 2 | 公的年金等の雑所得以外の所得(給与所得、個人年金や業務にかかる雑所得、配当所得、一時所得など)の金額が20万円を超えた場合 | 一定の金額を超える生命保険契約による年金は所得税等が源泉徴収されることがあり、確定申告により還付されることがあります |
| 3 | 一定の金額以上の医療費を支払った場合 | 医療費控除の適用により還付されることがあります |
| 4 | 住宅ローンを利用して住居を購入、あるいはリフォームをした場合 | 住宅借入金等特別控除の適用により還付されることがあります |
| 5 | 生命保険料控除や地震保険料控除、社会保険料控除などを受けた場合 | 年末調整で適用されていない場合、還付されることがあります |
| 6 | ふるさと納税などの寄付金控除を受けた場合 | 寄付金控除の適用により還付されることがあります |
| 7 | 年の途中で退職し、再就職していない場合 | 一時的にその年の年収が低くなるため、確定申告により還付されることがあります |
| 8 | 災害や盗難にあった場合 | 雑損控除の適用により還付されることがあります |
計算方法などがよくわからない場合には、税務署などに確認しましょう。
年金受給者でも確定申告が不要になる制度がある?
年金受給者である労働者でも、確定申告が不要になる場合があります。これを「確定申告不要制度」といい、一定の要件を満たせば確定申告を行う必要がなく、年金受給者の負担を軽減するための制度です。
確定申告不要制度の対象になるのは、以下の1、2のいずれの要件にも該当する方です。
- 公的年金等の収入額の合計が400万円以下であり、かつ、その全部が源泉徴収の対象である
- 公的年金等以外の所得金額が20万円以下である
ただし、確定申告不要制度を利用することを選択した場合でも、住民税の申告は必要になるため、居住する市町村に確認してください。
また、公的年金等により所得税が源泉徴収されていても、住宅ローンを利用して住居を購入した場合や、一定額以上の医療費を支払った場合には、所得税や復興特別所得税の還付を受けられることがあります。このようなケースでは、確定申告不要制度を利用できる場合でも還付を受けられるため、確定申告を行うことをおすすめします。
年金受給者の確定申告のやり方と必要書類は?
確定申告とは1年間の所得額を算出し、所得金額に応じた所得税額を申告・納税するための手続きです。年金収入がある場合の確定申告のやり方や必要書類を解説します。
確定申告のやり方
所得税の確定申告の受付期間は、原則として毎年2月16日から3月15日です。ただし、期限日が土日祝日にあたる場合は翌平日まで延長されます。申告の方法には以下の3つがあります。
- 税務署窓口に持参して直接提出
- 税務署へ郵送
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)で提出
窓口で提出する場合や郵送する場合には、紙の申告書を作成する必要があります。e-Taxで提出する場合は、スマートフォンやパソコンなどを利用して、インターネット上で申告書を作成できるので便利です。
参考:令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き|国税庁
確定申告に必要な書類
確定申告に必要な主な書類と証明書には以下のものがあります。
- 確定申告書(窓口で書面をもらうことも、国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成することもできます)
- マイナンバーカード(マイナンバーカードを発行していない場合は、個人番号の通知カードと運転免許証など身元が確認できる書類が必要)
- 控除証明書(公的年金等の源泉徴収票や給与所得の源泉徴収票、社会保険料控除証明書など)
年金と給与所得がある場合の確定申告書の書き方
年金収入(雑所得)と給与所得がある場合には、「給与所得者(年末調整済)の記載例」を参考にするのがよいでしょう。記載が必要な用紙には「第一表」と「第二表」の2種類があります。
第一表では「収入金額」「所得金額」「所得から差し引かれる金額」「税金の計算」「その他」などの欄をそれぞれ記載します。第二表では「所得の内訳」「社会保険料控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」「配偶者や親族に関する事項」の欄をそれぞれ記載します。詳細な記載方法は、国税庁ホームページの確定申告の手引きに説明されているため、参考にするとよいでしょう。
参考:申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)|国税庁
年金の控除額はいくらぐらい?
年金収入は雑所得になるため、年末調整の対象にはなりません。公的年金等控除は、公的年金等の収入金額から公的年金等に係る雑所得の金額を計算する際に適用されます。給与所得と公的年金等に係る雑所得の双方がある場合には、一定の要件を満たすと所得金額調整控除が適用されることがあります。年金収入の控除額は、前述の速算表にある通り「公的年金等に係る雑所得の金額=公的年金等の収入金額の合計額 × 割合 – 控除額」で計算します。
年齢や年金収入の金額によって控除額は異なります。また、年金収入以外にも給与所得がある場合には「所得金額調整控除」を適用でき、最大10万円を給与所得から控除することができます。
年金受給者の所得税について再度確認しておきましょう
今回は、会社勤めをしながら年金を受給している方が所得税額を確定させる際に、年末調整だけでよいのか、確定申告も必要なのかを解説しました。あわせて、確定申告が必要となる場合の雑所得の考え方や、確定申告不要制度についても紹介しています。自分がどのケースに該当するのかを確認し、正しい所得税を納付できるよう、事前に年末調整や確定申告の内容を整理しておきましょう。
よくある質問
年金受給者の場合、年末調整で「雑所得」はどういった扱いになりますか?
雑所得は年末調整で扱う対象になっていませんので、年金受給者の雑所得については、その額が確定申告を行う条件を満たしていれば確定申告する必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。
年金受給者で、年末調整ではなく確定申告が必要になるケースについて教えてください
公的年金等で受けた収入の金額が400万円を超える場合や、400万円以下であっても公的年金以外の所得が20万円を超える場合には確定申告が必要になるケースがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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