- 更新日 : 2026年7月7日
福利厚生利用率の分析はなぜ必要?利用率が低い原因と見直し方を解説
福利厚生の利用率改善には、制度ごとに認知度・利用率・満足度を分けてデータで分析することが重要です。
- 低利用率の主因は周知不足・手続きの煩雑さ・ニーズのズレ
- 利用率は「利用者数÷対象者数×100」で制度ごとに算出
- 分析結果に応じて維持・周知強化・廃止を判断する
Q. 利用率が低い福利厚生はすぐ廃止すべき?
A. 廃止は早計です。認知度や申請手続き、ニーズとのズレを原因別に分析してから対応策を判断しましょう。
福利厚生を導入していても、従業員に十分利用されていなければ、コストに見合う効果が得られなくなります。
しかし、利用率が低いからといって、すぐに制度を廃止すべきとは限りません。認知不足、申請手続きの複雑さ、従業員ニーズとのズレなど、原因を分析したうえで見直すことが重要です。
本記事では、福利厚生利用率の実態や低い原因、制度ごとの利用状況を分析する方法、分析結果をもとに利用率を上げる具体策まで、企業担当者向けに解説します。
福利厚生の利用率の実態
福利厚生の利用率は、制度の価値を判断するための重要な指標です。どれだけ充実した制度を整備しても、従業員に使ってもらえなければ、満足度の向上にも定着率の改善にもつながりません。
労働政策研究・研修機構(JILPT)が実施した調査によると、「社員食堂」の利用率は58.9%、「食事手当」は53.4%でした。毎日の生活に直結する制度ほど、従業員に使われやすい傾向があります。一方で、「人間ドック受診補助」は37.6%、「リフレッシュ休暇」は32.9%にとどまっています。
ただし、利用率が低い制度を、すぐに廃止するのは早計です。育児支援や介護支援のように、対象者がそもそも限られる制度もあります。利用率だけで判断せず、認知度・満足度・未利用の理由を分けて把握することが、正しい分析の第一歩です。
出典:企業における福利厚生施策の実態に関する調査―企業/従業員アンケート調査結果―(調査シリーズ No.203)|労働政策研究・研修機構(JILPT)
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福利厚生を充実させるメリット
福利厚生を充実させることで、従業員と企業の双方にメリットが生まれます。
従業員の健康維持
従業員が心身ともに健康な状態で働き続けるために、福利厚生は大きな役割を果たします。たとえば、以下の制度は、日常的な健康管理のきっかけになるでしょう。
- 健康診断の費用補助
- 人間ドックの補助
- 食事補助
- 運動支援
人間ドックの費用の一部を会社が補助することで、従業員は自己負担を抑えながら定期的な検査を受けられます。病気の早期発見につながれば、長期休職を未然に防ぐことも可能です。
ただし、制度を整えるだけでは、利用率は増えません。対象者・補助額・申請期限を社内ポータルやメールで定期的に案内し、従業員が「いつでも使える」と感じられる環境づくりが必要です。
満足度・定着率の向上
福利厚生は、従業員満足度と定着率を高めるうえで、重要な制度です。給与だけでは補えない生活支援や、働きやすい環境の整備によって、従業員のエンゲージメントを高められます。
たとえば、以下のような制度は、従業員の日常的な生活負担を軽減し、業務に集中できる環境づくりに役立つでしょう。
- 住宅手当
- 食事補助
- 育児支援
- 介護支援
「会社が自分の生活を支えてくれている」という感覚が、離職意向の低下につながります。
一方で、一部の属性の従業員しか使えない制度に偏ると、使えない側に不公平感が生まれかねません。年代・職種・勤務形態ごとの利用状況を定期的に確認し、制度の偏りを見直す姿勢が重要です。
採用の強化
充実した福利厚生は、採用活動において、有利になるポイントです。求職者は給与水準だけでなく、入社後の働きやすさや生活支援の内容も重視して、企業を比較します。
たとえば、健康支援やリモートワーク支援、育児・介護との両立支援は、入社後の具体的な生活を保証してもらえる制度です。採用ページで制度名だけを並べるより、利用条件や実際の活用例を示すほうが、求職者の理解と共感を得やすくなります。
ただし、実際には使われていない制度を、過度にアピールするのは逆効果です。入社後に「実態と違う」というギャップが生じた場合、早期離職の原因になりかねません。利用実績の多い制度を中心に紹介しましょう。
企業イメージの向上
充実した福利厚生は、企業のイメージアップにも効果的です。従業員の健康・生活・成長を支える制度があれば、社内外から「働きやすい職場」と認識されやすくなるでしょう。
健康経営の推進、子育て・介護支援、学習支援といった制度は、その企業が大切にしている価値観を体現するものです。このような取り組みは、取引先や求職者からの信頼感・好感度にも直結します。
ただし、制度の数だけを増やしても、効果は限定的です。自社の課題や従業員のニーズに合った制度を選び、利用率や満足度をモニタリングしながら、継続的に改善していく運用が求められます。
福利厚生の利用率が低くなる原因
利用率が低い原因は、制度の内容にあるとは限りません。周知不足や手続きの煩雑さ、ニーズとのミスマッチなど、運用面の課題が影響している場合もあります。
制度が従業員に知られていない
利用率が伸びない原因のひとつは、制度の存在が従業員に知られていないことです。内容のよい制度であっても、知らなければ使いようがありません。
とくに、入社時のオリエンテーションでしか案内していない制度は、忘れられがちです。日々の業務に追われる中で、必要なタイミングで思い出せなければ、申請の機会を逃してしまいます。
制度を周知する際は、「誰が」「いつ」「何を申請すればよいか」まで、具体的に伝えましょう。入社時・年度初め・育児や介護などのライフイベント発生時など、複数のタイミングで繰り返し案内するのが効果的です。
申請・利用手続きが複雑である
手続きの複雑さも、利用率を下げる要因です。以下のように、多くの工程が重なると、従業員は「面倒だから後回しにしよう」と感じてしまいます。
- 申請書の記入
- 上長の承認
- 紙による提出
- 添付書類の準備
補助額が大きくない制度にもかかわらず、申請時間を要する場合、「手間に見合わない」と判断されることは少なくありません。結果として、制度は存在しているのに誰も使わない状態に陥ります。
手続きの簡易化には、以下のような方法が有効です。
- 申請フォームのWeb化
- 入力項目の削減
- 承認ルートの短縮
利用者目線で、一度申請プロセスを見直すことをおすすめします。
従業員のニーズと制度内容が合っていない
企業側が「よい制度だ」と考えていても、従業員の実際の生活や働き方に合っていなければ利用されません。現代人のニーズは多様化しているため、画一的な制度で全員を満足させるのは、現実的に困難です。
たとえば、若手社員には食事補助や住宅支援が求められやすく、子育て世代には育児支援や柔軟な働き方が重視されます。また、介護を担っている従業員には、相談窓口や特別休暇の整備が必要です。
年齢・ライフステージ・家族構成によって、ニーズは異なります。従業員のニーズを正確に把握するため、年に1回以上のアンケートを実施しましょう。
制度が時代や働き方に合っていない
かつては人気だった制度でも、働き方や価値観の変化によって、利用されなくなることがあります。制度を導入したまま放置していると、実態と乖離するケースは珍しくありません。
たとえば、リモートワークが普及した企業では、オフィス勤務を前提にした制度が使いにくくなります。社員旅行や社内イベントも、参加を希望しない従業員が少なくありません。
制度は固定化せず、働き方の変化に合わせて、定期的に見直すのが大切です。利用率が落ちた制度については、オンライン対応への切り替えや対象範囲の拡大など、改善を検討してみましょう。
福利厚生の利用率を分析する方法
利用率の改善には、感覚ではなくデータに基づいた判断が不可欠です。以下の4つの観点から分析を進めると、課題が明確になります。
制度ごとの利用実績を集計する
まず、制度ごとの利用実績を整理します。全体の利用件数だけを見ても、利用された制度と、利用されない制度は判断できません。
利用率は、「利用者数 ÷ 対象者数 × 100」で算出します。たとえば、対象者500人のうち、100人が利用した制度の利用率は20%です。また、育児支援など対象者が限られる制度は、全従業員ではなく対象者ベースで算出しましょう。
集計時は、制度名や対象者数、利用者数を一覧化しましょう。データの項目を統一すると、制度間の比較が容易になります。
従業員属性別に利用率を比較する
次のステップとして、年代・性別・部署・雇用形態・勤務地・勤務形態など、属性別に利用率を比較してみましょう。全社平均だけを見ていると、利用されていない理由を誤解しかねません。
本社勤務者の利用率が高い一方、地方拠点やリモートワーク中心の従業員は利用が少ないケースは珍しくありません。属性別の分析によって、特定のグループに制度が届いていない事実を発見できます。
ただし、集計単位が小さすぎると、個人が特定されかねません。個人情報保護の観点から、一定人数以上の単位で分析するよう、心がけましょう。
認知度・利用率・満足度を分けて見る
認知度・利用率・満足度の3つを分けて把握することで、改善すべき課題が明確になります。
たとえば、「認知度が低く利用率も低い」制度は、周知不足の問題です。また、「認知度は高いのに利用率が低い」制度は、ニーズや手続きに問題がある可能性があります。「利用率は高いが満足度が低い」制度は、内容の改善が必要です。
制度の問題を正しく把握するには、アンケートで「制度を知っているか」「実際に利用したか」「利用して満足したか」を別々に質問しましょう。3つの数値を並べて比較することで、具体的な改善の方向性が見えてきます。
未利用の理由を確認する
利用率を改善するには、制度を使わない理由の把握が必須です。データだけでは見えてこない理由を、アンケートで直接聞きましょう。
未利用理由は、選択式にすると集計しやすくなります。たとえば、以下のような選択肢を用意するとよいでしょう。
- 制度を知らなかった
- 申請が手間に感じた
- 自分は対象外だと思っていた
- 必要性を感じなかった
- 使う時間がなかった
上記の項目に、自由記述欄を組み合わせることで、具体的な不満や改善案を引き出せます。回答者が安心して意見を書けるよう、制度・手続きの改善を目的とした調査であることを明記するのも大切です。
分析結果から制度を見直す方法
分析で得たデータは、制度の維持・改善・廃止を判断する根拠になります。以下の4つの視点から、次のアクションを検討しましょう。
利用率・満足度の高い制度は維持する
利用率と満足度の両方が高い制度は、維持しましょう。従業員から実際に必要とされており、企業としての投資効果も見込めます。
食事補助や健康診断補助のように、多くの従業員が日常的に使える制度は、満足度につながりやすいでしょう。また、利用率の高い制度は、採用広報でアピールに使える材料です。
ただし、費用が増え続けている制度については、上限額や対象範囲の見直しが必要な場合もあります。利用実績と従業員満足度のデータを根拠として、必要な予算規模を判断しましょう。
認知度が低い制度は周知を強化する
認知度が低い制度については、まず周知の強化から着手しましょう。メール・社内チャット・入社時研修・管理職からの周知など、複数の経路で繰り返し伝える必要があります。
案内文には対象者・利用できる場面・申請期限・問い合わせ先を明記し、「どんなときに役立つ制度か」がひと目でわかるようにしましょう。
制度名を並べるだけでは、制度利用につながりません。「子どもが生まれたときに使える」「転居後に申請できる」といった、具体的な活用シーンで伝えると、従業員の記憶に残りやすくなります。
手続きが原因の制度は運用を改善する
「知っているけれど面倒だから使わない」という理由で利用されない制度は、申請の負担を減らすだけで、利用者を増やせる可能性があります。手続きを簡略化することで、申請の負担と心理的ハードルの両方を下げられます 。
また、よくある質問をまとめたFAQを用意しておくと、人事・総務への問い合わせを減らせます。
ただし、確認手続きを極端に減らすのは不適切です。不正利用の防止や、経費処理の正確性を担保するために、必要最低限のチェックを残す必要があります。
ニーズが低い制度は廃止・統合を検討する
認知度も高く手続きも簡単なのに利用されない制度は、ニーズが低いと判断しましょう。このような制度は、廃止や他の制度との統合を検討するタイミングです。
たとえば、参加者の少ないイベント型の制度は、他のリフレッシュ支援と統合できるケースがあります。また、利用者が限られる補助制度は、対象範囲を広げることで利用率アップが期待できます。
ただし、制度の急な廃止は、従業員の不満につながりかねません。廃止を決める前にアンケートで意向を確認し、代替制度の案内や十分な移行期間を設けましょう。
福利厚生の利用率を上げる具体策
分析と見直しの方向性が定まったら、具体的な改善施策に落とし込みます。以下の施策を実行して、利用率アップを図りましょう。
社内への周知を徹底する
利用率向上のカギは、従業員が必要なタイミングで、制度を思い出せることです。入社時に限らず、継続的な周知の仕組みを作る必要があります。
たとえば、年度初め・健康診断前・育児や介護に関わるライフイベントの発生時・異動後など、利用につながりやすいタイミングの周知は重要です。
申請手続きを簡素化する
手続きの簡素化は、利用率向上に寄与するアプローチのひとつです。従業員が気軽に申請できる環境を整えることで、申請のハードルを下げられます。
まず現在の申請手順をすべて書き出し、以下の項目を確認しましょう。
- 申請書
- 承認者
- 添付書類
- 提出方法
- 処理日数
そのうえで、不要な入力項目や重複する承認ステップを削減対象として洗い出します。
WebフォームやHRシステム(人事管理システム)を活用した、申請状況の管理も可能です。スマートフォンからでも入力しやすい設計にしておくと、より多くの従業員が気軽に申請できます。
従業員ニーズに合わせて制度を見直す
福利厚生は、従業員ニーズに合わせた見直しをするのが大切です。働き方やライフステージが変われば、必要な支援も変わります。
見直しの際は、アンケートの結果と実際の利用実績を組み合わせて判断しましょう。「アンケートで希望は多いが実際の利用は少ない」制度もあれば、「声は少ないが着実に使われ続けている」制度もあります。
両方の視点から見ることで、従業員が求める制度を見極められるでしょう。
定期的に効果測定を行う
定期的な効果測定を繰り返すことで、制度の利用率向上が期待できます。四半期・半年に1回を目安に、利用率や満足度、問い合わせ件数を確認しましょう。制度ごとの推移を追うことで、周知強化や手続き改善がどの程度効果を上げたか判断できます。
評価の際は、利用率以外の成果指標も取り入れましょう。また、対象者が限られる制度は、「必要な人に届いているか」という視点で評価すべきです。数値と従業員の声を組み合わせて、次の改善サイクルにつなげていきます。
住宅関連の福利厚生を使いやすくしたい場合は、「マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸」の活用も有効です。社宅制度や住宅補助の運用を整えることで、従業員の生活支援と管理業務の効率化を両立しやすくなります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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