• 更新日 : 2026年6月26日

アルバイトにおける扶養控除とは?年収の壁や手続き方法、申告でよくある失敗についても解説

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Pointアルバイトの扶養控除とは、年収を一定額以下に抑えることで税金・社会保険の負担を避ける働き方のルールです。

令和8年分以後は年収136万円以下であれば、親は特定扶養控除を受けられます。

  • 税制上の壁:令和8年分以後は136万円以下で親の扶養控除が維持される
  • 社会保険の壁:130万円未満(大企業は106万円)を超えると保険料が自己負担に
  • 交通費の扱いが異なる:税計算では除外、社会保険では含む

税制改正で178万円までは所得税が発生しませんが、136万円を超えた時点で親の控除は失われるため注意が必要です。

アルバイトスタッフを雇用する際、必ず直面するのが「扶養控除」に関する質問や手続きです。「扶養内で働きたい」という要望に対し、正確な基準を答えられずに困る担当者もいるのではないでしょうか。

一般的に「扶養内で働く」とは、年収を136万円や130万円以下に抑え、税金や社会保険の負担を避ける働き方を指します。しかし、この計算ルールは複雑で、特に交通費の扱いや判定期間のズレが原因でトラブルになりがちです。

本記事では、人事労務の初心者が知っておくべきアルバイトにおける扶養控除基礎の知識から、年収の壁の違い、勤労学生控除の注意点までを体系的に解説します。

※本記事の内容は2025年12月公表の税制改正大綱をもとにしています。税制改正大綱は自民党が毎年12月頃に発表する改正のドラフトであり、国会での審議を経て翌年春頃に法律として制定されます。最終的に制定された法律の内容と異なる場合があります。

参照:令和8年度税制改正の大綱|財務省

目次

アルバイトにおける扶養控除とは?

アルバイトの現場で使われる「扶養控除」という言葉には、「制度本来の意味」と「通称としての意味」の2つが混在しています。会話の前提が食い違わないよう、まずはこの2つの視点を整理することが重要です。

本来の意味:家族を養う人の税金を安くする制度

制度としての「扶養控除」とは、納税者(親や配偶者など)に養うべき家族がいる場合に、その納税者の税負担を軽くする仕組みのことです。

例えば、父親が学生の子供(アルバイト)を養っている場合、父親は「扶養控除」を申告することで、自身の所得税や住民税を安くすることができます。つまり、本来の主語は「養う側(親・配偶者)」にあります。

参考:No.1180 扶養控除|国税庁

現場での意味:年収を抑えて「扶養の範囲内」で働くこと

アルバイトの現場や求人において「扶養控除」と言う場合は、「スタッフ本人が、親や配偶者の扶養家族の対象でいられる範囲(年収制限)内で働くこと」を指すケースがほとんどです。

「扶養控除内で働きたい」というスタッフの要望は、「私の年収が増えすぎて、親の税金が高くなったり、自分で保険料を払うことになったりしないようにシフトを調整したい」という意味です。本記事では、この「扶養の範囲内」で働くためのルールについて詳しく解説します。

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アルバイトの扶養にはどのような種類がある?

アルバイトの扶養には「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」という全く異なる2つの制度が存在し、それぞれ年収の基準や判定ルールが異なります。

多くのトラブルは、この2つを混同することから生まれます。「税金の扶養」は所得税や住民税に関わるものであり、「社会保険の扶養」は健康保険や厚生年金に関わるものです。人事労務担当者は、まずこの違いを明確に理解し、スタッフに適切に案内する必要があります。

税制上の扶養(所得税・住民税)

税制上の扶養とは、前述の通り、親や配偶者の税負担を軽くする仕組みに関連するものです。

アルバイト本人の年収が「136万円以下」(合計所得金額62万円以下)であれば、親や配偶者は「扶養控除(または配偶者控除)」を受けることができ、税金が安くなります。

また、アルバイト本人の所得税については、基礎控除の特例と給与所得控除の最低保障額の引き上げにより、年収178万円まで非課税となる見込みです。判定期間は「1月1日から12月31日までの1年間」の実績で判断されます。

参考:No.1180 扶養控除|国税庁

社会保険上の扶養(健康保険・年金)

社会保険上の扶養とは、親や配偶者の健康保険や年金の被扶養者となることで、アルバイト本人が保険料を支払わずに保険証を持ったり年金制度に加入できたりする仕組みです。

こちらの基準は一般的に「年収130万円未満」ですが、従業員数が多い企業では「106万円」が基準になることもあります。令和8年度は社会保険の扶養基準は変更されていません。判定期間は暦年(1月〜12月)ではなく、「向こう1年間の見込み年収」で判断される点が税金とは大きく異なります。ただし、2026年4月からは従来の判定方法に加えて、残業代などを含まない労働契約時の年収でも判定が可能となっています。

参考:「年収の壁」への対応|厚生労働省

▼税金と社会保険の扶養の違い

項目 税制上の扶養 社会保険上の扶養
主な対象 所得税、住民税 健康保険、厚生年金
年収基準 136万円以下(令和8年分以後) 130万円未満(一部106万円)
※年齢が19歳以上23歳未満の場合は150万円未満
判定期間 その年の1月〜12月の実績 将来に向かっての見込み年収
※2026年4月からは労働契約時の年収見込みでも判断可能
交通費 通常は含まない 通常は含む
管轄 税務署 日本年金機構・全国健康保険協会(健保組合)

※ 所得税は令和8年分以後、個人住民税は令和9年度分以後の適用となります。令和7年分までは123万円以下が基準です。

扶養控除に影響するアルバイトの年収の壁とは?

年収の壁とは、税金が発生したり、扶養から外れて社会保険料の負担が発生したりする年収のボーダーラインです。令和8年度より、主な壁は「110万円・106万円・130万円・136万円・178万円の壁」となっており、配偶者がいる場合は配偶者特別控除の壁も関係します。

これらを超えると手取り額が減る可能性があるため、アルバイトスタッフはシフト調整に敏感になります。それぞれの壁が何を意味するのかを以下に整理します。

110万円の壁(住民税・本人課税)

年収が一定額を超えると、住んでいる地域によってはアルバイト本人に「住民税」の支払い義務が発生します。

住民税には所得割と均等割があり、多くの自治体では給与収入が110万円を超えると課税対象となります(自治体により幅があります)。

令和8年度は、住民税の給与所得控除の最低保障額が69万円に引き上げられ、さらに令和9年度分・令和10年度分は5万円上乗せされ74万円となる特例が設けられています。この引き上げにより、住民税の課税最低限も順次引き上げられる予定です。

ただし、令和8年度分の住民税の給与所得控除は従来の65万円が維持されるため、令和9年度分から変更となる点に注意が必要です。

なお、この壁は所得税と異なり住民税固有のルールで、親や配偶者の税制上の扶養からは外れません。

106万円の壁(社会保険・特定適用事業所)

従業員数が51人以上の企業などで働く場合、年収約106万円(月額賃金8.8万円)以上などの条件を満たすと、会社の社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務が発生します。

これにより、親や配偶者の扶養から外れ、給与から保険料が天引きされるようになります。なお、賃金要件に関しては2026年10月に撤廃予定であり、企業規模要件も段階的に廃止される予定です。

▼加入条件(すべて満たす場合)
  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 月額賃金が8.8万円以上
  3. 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  4. 学生ではない(休学中や夜間学生などは対象)
  5. 従業員数51人以上の企業(特定適用事業所)
▼学生の場合の注意点

加入条件に「学生ではない」が含まれているため、通常の学生は106万円を超えても、この壁による社会保険加入義務は発生しません。ただし、休学中の学生や定時制・夜間学生は「学生」の除外対象とならず、加入義務が生じる場合があります。

130万円の壁(社会保険・すべての人)

勤務先の規模に関わらず、年収が130万円以上になると、親や配偶者の社会保険の扶養から外れ、自分で国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。

この壁を超えると、年間で数十万円の保険料負担が発生するため、いわゆる「働き損」が起きやすいラインです。交通費を含んだ総支給額で判断される点に注意が必要です。

なお、一時的に収入が増加した場合、雇用主が「一時的な収入変動である」旨を証明することで、引き続き被扶養者として認定される仕組みが設けられています。2026年4月からは、残業代などを含まない労働契約時の年収でも認定の判断が可能となっています。

また、19歳以上23歳未満の子について、社会保険の年収の壁とは別に、税制上では後述の「特定親族特別控除」が親側に適用される場合があります。なお、19歳以上23歳未満の場合には、年収の判断基準が130万円ではなく、150万円となります。

▼学生の場合の注意点

学生であっても、この130万円の壁は適用されます。親の健康保険の被扶養者でいられる基準(年収130万円未満)は学生・非学生を問いません。106万円の壁は学生を除外する規定がありますが、130万円の壁にはそのような除外規定がないため、混同しないよう注意が必要です。

136万円の壁(所得税・親の扶養控除)

アルバイト本人の年収が136万円(合計所得金額62万円)を超えると、親や配偶者が申告する「扶養控除(または配偶者控除)」の対象から外れ、親や配偶者の税負担が増えます。

従来は123万円(令和7年分)・103万円(令和6年分以前)が基準でしたが、今回の改正で136万円に引き上げられました。学生アルバイトが稼ぎすぎると親の税金が増えるため、世帯全体の手取りに直結する最も意識すべき壁のひとつです。

178万円の壁(所得税・本人の非課税ライン)

令和8年度の基礎控除の特例(最大104万円)と給与所得控除の最低保障額の特例(74万円)の引き上げにより、アルバイト本人の所得税は年収178万円まで非課税となる見込みです。

ただし、この特例分は令和8年分については月次の源泉徴収には反映されず、年末調整で精算される点に注意が必要です。月次源泉徴収への反映は令和9年1月以降となります。また、基礎控除の額は合計所得金額によって段階的に変わるため、一律に178万円が適用されるわけではありません。

160万円の壁(所得税・配偶者特別控除)

配偶者がいるパートタイマーの場合、本人の年収が160万円以下であれば、配偶者(夫または妻)が「配偶者特別控除」を満額(38万円)受けられます。160万円を超えると控除額が段階的に減少し、一定額を超えると適用されなくなります。ただし、令和8年度税制改正によって、満額の適用を受けられる基準が160万円から169万円に変更されています。

136万円の壁(扶養控除の対象外となるライン)を超えた場合でも、配偶者特別控除の枠内であれば配偶者側の税負担軽減が一定程度維持される点も把握しておきましょう。

学生アルバイトが使える勤労学生控除とは?

勤労学生控除とは、働きながら学校に通う学生に対して、年収が163万円以下(令和8年分以後)であれば、控除が受けられる制度です。

これにより、学生本人は年収163万円まで所得税がかからなくなります。令和7年税制改正によって130万円から150万円に引き上げられ、さらに令和8年税制改正によって163万円に引き上げられます。

親の税負担(扶養控除・特定親族特別控除)への影響

勤労学生控除を使えば学生本人の所得税負担を軽減できますが、年収が136万円を超えた時点で、親は「扶養控除(38万円、学生が19歳以上23歳未満であれば63万円の控除)」を使えなくなります。

その結果、親の税金(所得税・住民税)が数万〜十数万円増えることになります。「自分は税金がかからないから大丈夫」と学生が勘違いして働きすぎると、世帯全体の手取りが減ってしまうケースになります。

なお、令和7年度税制改正により「特定親族特別控除」という制度が創設されています。対象は19歳以上23歳未満の特定親族で、年収136万円超197万円以下が対象となり、最大63万円の控除が受けられます。

扶養控除の対象から外れた場合でも、この特定親族特別控除が親側に適用される可能性がある点を学生スタッフには周知しておくことが重要です。

勤労学生控除の対象条件

以下の3つの条件すべてに当てはまる場合に適用されます。

  1. 給与所得などの勤労による所得があること
  2. 合計所得金額が89万円以下(給与収入のみなら163万円以下)であり、かつ勤労以外の所得が10万円以下であること
  3. 特定の学校(高校、大学、専修学校など)の学生・生徒であること

参考:No.1175 勤労学生控除|国税庁

【人事労務担当者】アルバイトの扶養控除の手続きは?

人事労務担当者は、アルバイト採用時および年末調整の時期に、正確な情報を収集し、適切な税額計算を行う義務があります。

スタッフが自身の扶養状況を正しく申告できるよう、以下のステップで管理・案内を行います。

ステップ1:アルバイトからの「扶養控除等申告書」の回収

採用時および毎年の年末調整時に、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を必ず提出してもらいます。

この書類(通称:マル扶)が提出されている場合、毎月の給与計算において「甲欄(税額が低い)」の税率が適用されます。提出がない場合は「乙欄(税率が高い)」で計算する必要があり、スタッフの手取りが大きく減るため注意が必要です。

参考:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁

ステップ2:扶養控除に関わるWワーク(副業)の確認

スタッフが他社でも働いている(掛け持ち)場合、扶養控除等申告書は「主たる給与」を受ける1社にしか提出できません。

自社がサブ(従たる給与)である場合、乙欄で課税する必要があります。また、社会保険の加入要件においても、副業先との労働時間の通算などが必要になるケースがあるため、兼業状況のヒアリングは必須です。

ステップ3:アルバイトの労働時間と年収見込みのモニタリング

特に社会保険の加入要件(106万円・130万円の壁)に関しては、契約更新時やシフト作成時にチェックが必要です。

「扶養内で働きたい」という希望があるスタッフに対しては、繁忙期に残業が増えすぎて壁を超えてしまわないよう、労務管理システム等で累積賃金を可視化しておくとトラブルを防げます。

アルバイトの扶養控除申告でよくある失敗とは?

税制上の扶養控除はルールが細かく、正しく理解していないと「計算上は超えていないはずなのに、扶養から外れてしまった」というミスが起こります。

人事担当者は、以下のポイントで計算ミスが起きていないか、スタッフに注意を促しましょう。

12月の給与を「働いた月」でカウントしてしまうミス

扶養控除の判定は、その年の1月1日から12月31日までに受け取った給与で決まります。

よくある間違いが、「12月に働いた分」を年収に含めて計算してしまうケースです。

  • 間違い: 12月に働いた分(翌1月払い)を今年の年収に入れる。
  • 正解: 12月に働いても、支払日が翌年1月なら、それは「来年の年収」になります。

逆に、去年の12月に働いて「今年の1月」に受け取った給与は、今年の年収に含まれるため、計算漏れに注意が必要です。

非課税の交通費まで「年収」に足してしまうミス

扶養控除(税金)の計算では、原則として交通費(通勤手当)は年収に含めません(月15万円まで非課税の場合)。

スタッフが真面目に計算しようとして、通帳の振込額(交通費込み)を単純に合計してしまい、「136万円を超えてしまったのでシフトを減らします」と不要な調整をしてしまうケースがあります。 税金の計算をする際は、必ず「交通費を除いた金額(課税支給額)」で判定するよう伝えましょう。

子供が「勤労学生控除」を使って親の税金が増えるトラブル

学生スタッフが「勤労学生控除を使えば163万円まで税金がかからない」ことを知り、親に相談せずに136万円を超えて働いてしまうケースです。

本人の税金が0円になっても、年収136万円を超えた時点で親は「特定扶養控除(最大63万円の控除)」を使えなくなります。

結果として世帯全体の手取りが減り、親からクレームが入ることもあるため、「136万円を超える場合は必ず親の了承を得ること」を徹底させる必要があります。

なお、特定親族特別控除により、一定の年収範囲であれば親側に控除が適用される場合があるため、状況に応じて案内しましょう。

アルバイトにおける扶養控除の仕組みを理解してトラブルを防ごう

令和8年度より、アルバイトの「扶養控除」に関わる年収基準は大きく見直されました。税金(136万円の壁)と社会保険(130万円の壁)という性質の異なる2つの基準が存在し、人事労務担当者がまず押さえておくべきは、この2つで交通費の扱いや判定期間が異なるという点です。

税金計算では交通費は除外されますが、社会保険では含まれるため、混同すると予期せぬ加入義務が発生してしまいます。また、勤労学生控除を使っても親の税負担は軽減されない点や、特定適用事業所における106万円の壁など、個別の事情にも配慮が必要です。

適切な労務管理を行うためには、入社時に「扶養控除等申告書」を確実に回収し、Wワークの状況を含めた年収見込みを定期的にモニタリングすることが不可欠です。正しい知識に基づいた運用で、スタッフが安心して働ける環境を作りましょう。

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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