- 更新日 : 2026年8月12日
労働保険代理人選任・解任届とは?書き方・提出先・GビズID電子申請との関係を解説
労働保険代理人選任・解任届は、一元・二元適用の区別によって提出先と手順が異なる届出です。
- 一元適用は労基署、二元適用は労基署とハローワークへ個別提出
- GビズIDメンバー申請前に選任届提出が必須
- 支店長交代時は社会保険の変更届も5日以内に提出
Q. GビズIDで電子申請する場合、届出は省略できる?
A. 省略できません。メンバーアカウントで申請する際は、事前に選任届を労基署へ提出しないと申請がエラーになります。
支店長や工場長が交代するたびに、労働保険代理人選任・解任届の手続きで迷う人事・総務担当者は少なくありません。この届出は一元適用事業か二元適用事業かで提出先が変わり、GビズIDで電子申請する場合も届出が事前提出の前提となります。本記事では、労働保険代理人選任届(解任届を含む)の基本から書き方、提出先、GビズIDとの関係、社会保険側の届出まで、実務の流れに沿って整理します。
労働保険代理人選任・解任届とは?
労働保険代理人選任・解任届とは、事業主に代わって労働保険の手続きを行う代理人を届け出るための書類です。厚生労働省の様式(様式第23号)に基づき、選任・解任・変更・改印といった場面で提出が求められます。
届出の対象となる代理人の範囲
労働保険代理人とは、事業主に代わって労働保険料の申告や各種届出を行う権限を委任された、支店長・工場長・総務部長等の役職者を指します。労働保険の手続きは原則として事業主本人が行うものですが、支店や工場など複数の拠点を持つ企業では、すべての手続きを事業主一人で行うのは現実的ではありません。
そのため、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(以下、徴収則)第73条の定めに基づき、事業所ごとに一定の権限を持つ役職者を代理人として選任し、労働保険料の申告や届出を代行させる仕組みが設けられています。代理人になれるのは、その事業所の業務に関して実質的な権限を持つ者に限られます。
届出が必要な場面
届出が必要な場面には、選任・解任・変更といった複数のケースがあります。代表的な場面を整理すると次のとおりです。
- 選任:新たに代理人を置くとき
- 解任:代理人の役割を解くとき
- 変更:代理人の氏名・職名・代理事項など届出内容が変わったとき
様式は5枚複写の用紙で、1回の記入で選任・解任・変更・改印のいずれにも対応できます。該当しない届出名には横線を引いて抹消する形式になっています。
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労働保険代理人届の提出が必要になる場面は?
代理人届が必要になる主な場面は、支店長・工場長の交代、代理事項の変更、届出印の変更の3つに大別できます。中でも実務上もっとも多いのは、人事異動に伴う支店長・工場長の交代です。
新任の支店長・工場長に権限を委任するケース
支店長や工場長の交代では、前任者の解任届と後任者の選任届をセットで提出するのが基本の流れです。例えば定期人事異動でA支店長からB支店長へ交代する場合、前任Aを解任代理人欄、後任Bを選任代理人欄に記入します。
代理事項や届出印の変更が発生するケース
代理人自体は変わらなくても、届出内容の変更が必要になる場合があります。代表的なパターンは次のとおりです。
- 代理人の氏名が婚姻等で変わったとき → 変更届
- 代理人の職名が昇格等で変わったとき → 変更届
- 代理範囲を「全部」から「一部」に縮小するとき → 変更届
改印届では、旧印と新印の両方を用紙に押印する必要があります。旧印を紛失している場合は、その旨を余白に記載して提出すると受理がスムーズになるでしょう。
労働保険代理人選任・解任届の書き方と提出先は?
代理人届の書き方は、自社が一元適用事業か二元適用事業かによって提出ルートが異なります。様式自体は共通ですが、用紙の色や提出先の順番が変わるため、事前に自社の事業形態を確認することが欠かせません。
一元適用事業と二元適用事業の違い
一元適用事業は労働基準監督署(以下、労基署)へ提出後にハローワーク(公共職業安定所)分が回付される一方、二元適用事業は労災分と雇用分をそれぞれ個別に提出する必要があります。両者の違いを整理すると次のとおりです。
| 区分 | 一元適用事業 | 二元適用事業 |
|---|---|---|
| 対象 | 一般的な企業(多くの業種) | 建設業・農林水産業・港湾運送業など |
| 用紙の色 | 緑色 | 茶色 |
| 提出先(1番目) | 労基署 | 労基署(労災分)/ハローワーク(雇用分) |
| 提出先(2番目) | ハローワーク(労基署経由で回付) | それぞれの窓口へ個別提出 |
一元適用事業の場合、労基署に5枚複写を提出すると、監督署が処理後にハローワーク分を回付してくれます。二元適用事業の場合は、労災保険分を労基署に、雇用保険分をハローワークに、それぞれ個別に提出する点が異なります。
記入時の注意点
5枚複写用紙への記入では、不要な届出名の抹消漏れや労働保険番号の記入ミスが起きやすい傾向があります。実務で特に注意したいポイントは次のとおりです。
- 不要な届出名を横線で抹消する:用紙上部に並ぶ選任届・解任届・変更届・改印届のうち、該当しないものを消す
- 労働保険番号を正確に記入する:一元適用は1つ、二元適用は労災・雇用でそれぞれ異なる14桁の番号になる
代理事項欄に「全部」と記入すれば労働保険に関するすべての届出を代理できます。「一部」とする場合の記載例は、後述のFAQで紹介します。
提出先への持参・郵送の流れ
一元適用事業の提出フローは、所轄労基署への提出から事業主控えの受領までの3ステップで完了します。具体的な流れは次のとおりです。
- 所轄の労基署へ5枚複写を持参または郵送する
- 労基署が受付処理を行い、ハローワーク分を回付する
- 事業主控えを受け取り、社内で保管する
郵送で提出する際は、返信用封筒(切手貼付)を同封すれば控えが返送されます。提出期限は徴収則上「代理人の選任・解任があった都度速やかに」とされており、人事異動の辞令と同時に準備を進めるのが望ましいでしょう。なお届出書類は徴収則第72条に基づき一定期間の保存義務があるとされているため、控えは廃棄せず保管しておくと安心です。
労働保険代理人選任届とGビズID電子申請の関係は?
労働保険代理人選任届は、GビズIDのメンバーアカウントで電子申請を行う前提条件として位置づけられています。この届出を省略すると、e-Gov(電子政府の総合窓口)で電子申請しても代理権限が確認できず、手続きが受理されません。
メンバーアカウントでの申請に届出が必須となる理由
GビズIDには法人代表者・個人事業主本人が保有する「プライム」と、従業員に発行する従属アカウントの「メンバー」の2種類があります。メンバーアカウントで労働保険の電子申請を行う場合、行政側から見ると事業主以外の者が手続きを代行している状態になるため、あらかじめ代理人選任届を提出し、代理権限を証明しておく必要があります。プライムアカウントのみで事業主本人が申請する場合は、この事前届出は不要です。
書面提出からe-Gov連携までの手順
GビズIDメンバーアカウントで電子申請を始めるまでの流れは、アカウント発行から申請までの4ステップで整理できます。
- GビズIDプライムアカウントで管理画面にログインし、メンバーアカウントを発行する(所要目安:原則即日)
- 労働保険代理人選任届(紙)を作成し、所轄労基署へ提出する(注意:一元・二元の別で提出先が異なる)
- 届出が受理されたら、e-Govのマイページでメンバーアカウントの申請者情報を登録する
- e-Gov上で労働保険関係の手続きを検索し、メンバーアカウントで電子申請を行う
ステップ2の書面提出を省略すると、ステップ4で代理権限がないと判断され、申請がエラーになります。GビズIDの発行だけで安心してしまい、書面の届出を失念するケースは少なくありません。電子申請への移行を進める際は、GビズIDの設定と届出をセットで管理するのがポイントです。
なお、社会保険労務士(社労士)に手続きを委託している場合は、社労士自身が提出代行者となるため、本届出が不要となるケースが多い点も押さえておきましょう。
代理人選任届と合わせて社会保険の届出も必要?
支店長交代の際は、労働保険の代理人届に加えて社会保険(健康保険・厚生年金保険)側の届出も必要になります。年金事務所への届出を怠ると、社会保険の手続きが滞る原因になるため、両方を同時に進めるのが効率的です。
「健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届」の提出が必要
社会保険の事務を担う代表者(支店長等)が交代した場合、「健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届」の提出が必要です。届出先は管轄の年金事務所(または健康保険組合)で、変更事項には事業主代理人の氏名・職名などが該当します。届出期限は変更があった日から5日以内とされており、健康保険法施行規則第30条・第31条等、厚生年金保険法施行規則第23条・第29条等がその根拠です。労働保険の代理人届よりもタイトなスケジュールになる点に注意しましょう。
参考:事業主の変更や事業所に関する事項の変更(訂正)があったとき|日本年金機構
労働保険と社会保険の手続きを同時並行で進める
支店長交代が決まったら、労働保険と社会保険の届出を同時にリストアップして進めると提出漏れを防げます。主な届出をまとめると次のとおりです。
| 区分 | 届出名 | 届出先 |
|---|---|---|
| 労働保険 | 労働保険代理人選任届 | 労働基準監督署 |
| 社会保険 | 事業所関係変更(訂正)届 | 年金事務所 |
辞令の発令前に書類を準備しておき、異動日に合わせて一括提出するのが効率的です。特に社会保険の届出は5日以内という期限があるため、後回しにしないことが大切です。労働保険と社会保険は管轄が異なるため、片方だけ済ませて手続き完了と思い込んでしまう見落としが起きやすい点にも注意しましょう。チェックリストで両方の手続き状況を可視化しておくことで、こうした見落としの防止につながります。
代理人届のよくある質問
労働保険代理人選任・解任届の実務で迷いやすいポイントをQ&A形式で整理します。
代理事項「一部」の場合はどう書く?
代理事項欄に「一部」と記入する場合は、委任する範囲を具体的に記載します。よく使われる記載パターンは次のとおりです。
- 「雇用保険被保険者関係届出事務」:資格取得届・喪失届のみを代理させたいとき
- 「労働保険料の申告(年度更新)に関する事務」:年度更新の申告書作成・提出のみを代理させたいとき
- 「労災保険給付に関する届出事務」:労災発生時の届出のみを代理させたいとき
「全部」と記入すれば労働保険に関わるすべての届出を代理できますが、権限を限定したい場合は事業所の規模や代理人の業務内容に応じて範囲を絞るとよいでしょう。
届出の提出期限はいつまで?
提出期限は徴収則上「代理人の選任・解任があった都度速やかに」と定められています。日数の明確な規定はありませんが、人事異動の辞令日から1〜2週間以内に提出するのが実務上の目安です。
届出が遅れた場合について明確な罰則規定は設けられていないとされていますが、代理人の届出が済んでいない状態で代理人名義の手続きを行うと受理されない場合があります。特にGビズIDメンバーによる電子申請では代理人届が未提出だとエラーになるため、異動前の早めの対応が望ましいでしょう。
届出用紙はどこで入手できる?
届出用紙は、所轄の労働基準監督署またはハローワークの窓口で入手できます。厚生労働省のウェブサイトからPDF様式をダウンロードして印刷することも可能ですが、複写式ではないため複数枚を個別に記入する必要がある点に注意しましょう。
窓口で複写式用紙をもらう場合は在庫がないケースもあるため、事前に電話で確認しておくとスムーズです。年度更新の時期(毎年6月1日〜7月10日)は窓口が混み合うため、可能であればそれ以外の時期に取りに行くとよいでしょう。
労働保険代理人選任・解任届の提出で押さえておくべきこと
労働保険代理人選任・解任届は、一元・二元適用の区別をふまえた提出先と記載方法を正しく理解することが、手続きをスムーズに進める出発点です。GビズIDメンバーアカウントで電子申請を行う場合は、選任届を事前に提出しておかなければ申請が受理されないため、社会保険側の事業所関係変更届と合わせて両方の対応を進めましょう。
まずは自社の適用区分を確認し、必要な届出用紙を所轄の労働基準監督署で入手するところから始めるとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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