- 更新日 : 2026年7月7日
産業雇用安定助成金とは?現行3コースの対象・助成額・申請方法を解説
産業雇用安定助成金は、在籍型出向や新規雇用で雇用維持・人材確保に取り組む事業主の賃金負担を国が助成する制度です。
- 現行コースは目的別に3種類
- 中小企業は最大4/5の助成率
- 計画届は出向開始前日までに必須
Q. グループ会社間の出向も助成対象になる?
A. 独立性のない企業間の出向は原則対象外です。親子会社間や代表取締役が同一の企業間は該当しません。
従業員の雇用維持や人材確保のために、在籍型出向や新規雇用を検討している人事担当者の中には、コスト面での懸念から踏み切れないケースがあるでしょう。
コスト面の負担を抑える選択肢のひとつに、賃金の一部を国から助成される「産業雇用安定助成金」の活用が挙げられます。
一方で「産業雇用安定助成金」は、コースの再編が進んでおり、現行と廃止済みのコースを取り違えると、使えるはずの助成を取りこぼしかねません。
そこで本記事では、「産業雇用安定助成金」の現行コースの対象や助成額、申請の流れや注意点を解説します。自社での活用を検討する際の参考にしてみてください。
産業雇用安定助成金とは?
「産業雇用安定助成金」とは、在籍型出向などを通じて労働者の雇用維持や人材確保に取り組む事業主を支援するための助成金です。
在籍型出向は、出向元との雇用契約を維持したまま出向先でも働き、出向期間の終了後は出向元へ復帰する形態を指します。
産業雇用安定助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主の雇用維持を目的に、2021年2月に創設され、その後コースの再編を経て現在の構成になっています。
参考:「産業雇用安定助成金」の創設について|産業雇用安定センター
産業雇用安定助成金の目的
「産業雇用安定助成金」は、事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、雇用を維持できるように支援することが目的の制度です。
景気の変動や産業構造の変化で人手が一時的に余る局面でも、解雇に頼らずに対応する取組を後押しします。
産業雇用安定助成金が支援されるのは、在籍型出向と新たな人材の受け入れの2つです。
出向元の企業は、余った人手を出向先へ送り出すことで雇用を維持できます。出向先の企業は、不足している人材を受け入れることで事業を回せます。
産業雇用安定助成金が出向元・出向先の双方の賃金負担を支えることで、企業は人件費を抑えながら雇用を守り、労働者は職を失わずに働き続けられるでしょう。
産業雇用安定助成金と雇用調整助成金の違い
「産業雇用安定助成金」と「雇用調整助成金」の主な違いは、雇用を守る手段にあります。
雇用調整助成金は、事業活動の縮小時に従業員を休業させて雇用を維持する事業主に、休業手当などの一部を助成する制度です。
自社内で従業員を抱えたまま雇用を守る点に特徴があります。
一方で、産業雇用安定助成金は、在籍型出向などによって社外で就業の機会を確保しながら雇用を維持する制度です。
従業員を社外に出向させる点が、雇用調整助成金と異なります。
雇用維持の目的が共通するため混同されやすいですが、たとえば「自社で休業させたいのか」「出向で社外の仕事を確保したいのか」といった手段に違いがあります。
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産業雇用安定助成金の主なコースと内容
「産業雇用安定助成金」には、目的の異なる3つの現行コースがあります。
自社に適したコースを選択するためにも、それぞれのコースの概要を押さえておきましょう。
| コース | 主な対象 | 助成率・助成額 | 上限 |
|---|---|---|---|
| 産業連携人材確保等支援コース | ものづくり補助金の採択事業主が人材を新規雇用 | 中小1人250万円・大企業1人180万円 | 1事業主5人まで |
| スキルアップ支援コース | 在籍型出向で従業員のスキルアップを行う出向元 | 中小2/3・大企業1/2 | 出向元・出向先の合計で1人1日8,870円・1事業所年度1,000万円 |
| 災害特例人材確保支援コース | 能登地域で被災し在籍型出向で雇用を維持する事業主 | 中小4/5・大企業2/3 | 出向元・出向先の合計で1人1日8,870円 |
なお、1人1日の上限額(出向元・出向先の合計)は、年度ごとに改定される点に注意が必要です。
産業連携人材確保等支援コース
「産業連携人材確保等支援コース」は、ものづくり補助金や事業再構築補助金の採択事業主が、必要な人材を新たに受け入れる際に支援されるコースです。
在籍型出向ではなく、新たな人材の雇い入れを支援する点が、他の2コースと異なります。
対象者の要件は、企画立案や指導、係長相当職以上の業務に従事し、年間350万円以上の賃金が支払われる労働者であることです。
助成額は、中小企業が1人250万円、大企業が1人180万円です。6か月ごとの2期に分け、1事業主5人までを対象に、対象期間1年で支給されます。
参考:産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)|厚生労働省
スキルアップ支援コース
「スキルアップ支援コース」は、在籍型出向で労働者のスキルアップを行い、出向復帰後の賃金を引き上げた場合に出向元と出向先の双方を支援するコースです。
支給の要件は、出向復帰後6か月間の各月の賃金を、出向前と比べていずれも5%以上上昇させることです。
助成率は中小企業が3分の2、大企業が2分の1で、出向中の賃金のうち各事業主が負担した額が対象になります。
ただし、企業グループ内の出向は支給対象外となるため、注意が必要です。
上限は出向元・出向先の合計で1人1日8,870円、1事業所あたり年度1,000万円です。なお、上限額は年度ごとに改定されます。
参考:産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)|厚生労働省
災害特例人材確保支援コース
「災害特例人材確保支援コース」は、令和6年能登半島地震で被災した能登地域の9市町に所在する事業主を支援するコースです。
在籍型出向で雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方が支援を受けられます。
対象となる出向元は能登地域の9市町に限られますが、出向先は全国の事業主が対象です。
助成率は中小企業が5分の4、大企業が3分の2で、上限額は出向元・出向先の合計で1人1日8,870円です。なお、上限額は年度ごとに改定されます。
出向期間は1か月以上2年以内で、助成対象期間は令和6年12月17日から令和8年12月31日までです。
「災害特例人材確保支援コース」は期間に限りがあるため、活用する場合は早めに検討しましょう。
参考:産業雇用安定助成金(災害特例人材確保支援コース)|厚生労働省
産業雇用安定助成金の申請の流れ
産業雇用安定助成金の申請は、計画の策定から助成金の支給まで、いくつかの段階を踏みます。
申請の基本的な流れは、以下のとおりです。
1.出向計画・雇用計画を策定する
産業雇用安定助成金を申請する際は、出向計画または雇用計画の策定から実行します。
在籍型出向のコースでは、どの労働者をどの出向先へ送るかなどを定めた出向計画が必要です。
一方、新規雇用が対象の産業連携人材確保等支援コースでは、新たに受け入れる人材の雇用計画を策定します。
出向先が見つからない場合は、出向のマッチングを無料で支援する産業雇用安定センターに相談するのもひとつです。
計画の策定後に行う準備は、コースで異なります。在籍型出向のコースでは、出向元と出向先で出向契約を結び、出向する労働者本人の同意を得ます。
産業連携人材確保等支援コースでは、出向契約や本人同意は不要です。
2.計画届を労働局・ハローワークへ提出する
産業雇用安定助成金の計画届は、出向や雇用の実施前に、管轄の都道府県労働局またはハローワークへ提出します。
計画届の提出が出向開始日の前日を過ぎると、助成を受けられません。
確実に間に合わせるためには、出向開始の2週間前までの提出が目安です。
なお、計画届には、出向契約書や協定書などの添付が必要です。様式は、厚生労働省の各コース公式ページからダウンロードできます。
3.出向・雇用を実施する
産業雇用安定助成金の対象となる出向や雇用は、計画届の内容にもとづいて実施します。
実施内容が計画と異なると、助成の対象外となる可能性があるため、注意が必要です。
実施期間中は、出向元と出向先のそれぞれが、対象労働者の出勤状況や賃金の支払い実績を記録します。たとえば、出勤簿や賃金台帳の整備が必要です。
後の支給申請で対象期間中の労働実態や賃金支払いを証明するための根拠資料となるため、日々の記録を残しておくと、申請手続きが円滑に進められるでしょう。
4.支給申請を行う
産業雇用安定助成金の支給申請は、出向や雇用の実施後、支給対象となる期間ごとに行います。
支給申請の期限は、支給対象となる期間の末日の翌日から2か月以内です。
期限を1日でも過ぎると申請は受理されないため、社内で期限管理の体制を整えておきましょう。
申請の際は、支給申請書や賃金台帳などの必要書類をそろえ、管轄の労働局またはハローワークへ提出します。
なお、最新の様式は、厚生労働省の各コース公式ページで確認できます。
5.審査を経て助成金が支給される
支給申請後は、提出した書類をもとに労働局で審査が行われます。
出向契約の内容や賃金の支払い実績など、支給要件を満たしているかを確認され、審査に通過すると申請時に指定した口座へ助成金が支給されます。
書類に不備があると、追加の確認や再提出を求められて支給がさらに遅れるため、各段階の期限と必要書類を事前に把握しておくことが大切です。
産業雇用安定助成金を活用する際の注意点
産業雇用安定助成金には、対象外となるケースや支給要件に関する注意点があります。
見落とすと申請が認められないため、事前に押さえておきましょう。
対象外となる出向のケースを確認する
産業雇用安定助成金は、対象外となる出向のケースを見落とすと、申請しても助成を受けられません。
対象外となるのは、制度の目的である雇用維持やスキルアップに沿わない出向です。
たとえば、通常の人事異動と変わらない出向は、助成の対象になりません。
出向元と出向先が親子会社や資本関係などで密接につながり、独立性が認められない場合も助成の対象外です。
たとえば、親会社・子会社間の出向や、代表取締役が同一人物である企業間の出向が該当します。
自社の出向が対象に該当するか判断に迷う場合は、計画段階で管轄の労働局に対象可否を事前に確認しましょう。
支給要件を満たし不正受給を防ぐ
産業雇用安定助成金は、支給要件を満たさない申請や事実と異なる申請を行うと、不正受給と判断される場合があります。
意図的な不正でなくても、要件の理解不足による申請ミスが不正受給と扱われることもあるため、注意が必要です。
また、不正受給と認定されると、助成金の返還に加え、一定期間の受給停止や事業主名の公表などの措置が取られます。
不正受給による事業主名の公表は社会的信用にも影響するため、適切な申請が不可欠です。
こうした事態を避けるためにも、出向の実態や賃金の支払い状況を記録し、要件を満たしていると確認できる書類を整えておきましょう。
産業雇用安定助成金に関するよくある質問
産業雇用安定助成金の申請を検討する中で、判断に迷いやすいポイントがあります。
申請前に疑問になりやすい質問への回答は、以下のとおりです。
出向先が見つからない場合はどうすればよい?
出向先が見つからない場合は、産業雇用安定センターに相談する方法があります。
産業雇用安定センターは、出向や再就職による失業なき労働移動を無料で支援する公益財団法人です。
出向元と出向先のマッチングに応じているため、自社だけで探すより候補が見つかりやすくなります。
有期雇用やパートの労働者も出向の対象にできる?
有期雇用やパートタイムの労働者も、在籍型出向の対象にできます。
ただし、出向期間中も出向元との雇用契約が継続していることが前提です。
契約期間が出向期間より短い場合は、出向中に契約が満了しないよう、契約内容を計画段階で確認しておけると安心でしょう。
グループ会社間の出向も助成の対象になる?
独立性のない事業主間の出向は雇用維持の効果が認められにくいため、グループ会社間の出向は原則として助成の対象外です。
具体的には、親会社と子会社の関係や、代表取締役が同一人物である企業間の出向が該当します。
自社の出向がグループ会社間に該当するか判断に迷う場合は、計画段階で労働局に確認しておきましょう。
計画届を出す前に出向を始めても助成は受けられる?
計画届は出向開始日の前日(目安は2週間前)までの提出が必須のため、計画届を提出する前に出向を開始すると、その出向は助成の対象外です。
計画届が提出されていなければ、たとえ他の要件を満たした出向であっても、助成を受けられません。
助成を確実に受けるには、出向の開始前に計画届の提出を済ませておく必要があります。
提出後に労働局やハローワークでの受理を確認したうえで、出向を開始する流れが安全です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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