- 更新日 : 2026年7月7日
中小企業向け賃上げ促進税制とは?適用要件や活用するメリット、注意点を解説
中小企業向け賃上げ促進税制とは、従業員の給与を前年度より増加させた場合に、増加額の最大35%を法人税・所得税から控除できる制度です。
- 対象は資本金1億円以下または従業員1,000人以下
- 給与1.5%増で15%、2.5%増で30%を控除
- 赤字年度の控除は最大5年間繰り越し可能
Q. 税額控除率を最大にするには?
A. 給与を2.5%以上増加させ、くるみん認定またはえるぼし認定を取得することで、最大35%の税額控除が受けられます。
物価上昇や人材不足への対応が求められるなか、多くの企業で賃上げの重要性が高まっています。
こうした企業の賃上げを支援する制度として、中小企業向け賃上げ促進税制が有効です。
本記事では、中小企業向け賃上げ促進税制の概要や適用要件、改正のポイントや手続きの流れなどを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
中小企業向け賃上げ促進税制とは?
中小企業向け賃上げ促進税制とは、中小企業などが従業員の給与を前年度より増加させた場合に、その増加額の一定割合を法人税や所得税から差し引くことができる制度です。
この制度自体は以前より存在していましたが、2024年度(令和6年度)の税制改正で大幅に変更されています。
変更点には、たとえば適用期間の延長や最大控除率の引き上げなどが挙げられます。
なお、賃上げ促進税制は、中小企業だけでなく中堅企業にも適用できますが、適用要件や控除率が異なる点に注意しましょう。
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中小企業向け賃上げ促進税制の対象となる企業の条件
中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告を提出している中小企業や個人事業主などが対象です。
たとえば、以下のような法人や個人事業主が対象になります。
- 法人:資本金または出資金の額が1億円以下であり、常時使用する従業員の人数が1,000人以下である
- 個人事業主:常時使用する従業員の人数が1,000人以下である
なお、中小企業等協同組合や出資組合である商工組合、協同組合なども、賃上げ促進税制の対象です。
一方で、資本金が1億円以下の法人であっても「みなし大企業」に該当する場合は、中小企業向けの優遇措置を受けることができません。
たとえば、以下のいずれかに該当する法人は、対象外となります。
- 同一の大規模法人(資本金1億円超など)が、出資総額の2分の1超を占めている
- 複数の大規模法人からの出資総額が、全体の3分の2以上を占めている
中小企業向け賃上げ促進税制の適用要件
中小企業向け賃上げ促進税制の適用要件は、必ず満たさなければいけない「通常要件」と、さらに税額控除率を引き上げるための「上乗せ要件」の2段階になっています。
具体的には以下のとおりです。
必須要件:前年度と比べて従業員に支払う給与が増加していること
賃上げ促進税制の適用を受けるには、従業員への給与等の支給額が前年度と比較して一定割合以上増加している必要があります。
増額の割合やそれに伴う税額控除率は、企業規模によって異なります。
もともとは中堅企業や中小企業に該当しない大企業も対象となっていましたが、税制改正に伴い、2026年3月31日をもって廃止されました。
中堅企業向け賃上げ促進税制
中堅企業は常時使用する従業員数が2,000人以下の法人を指します。
給与等の増額割合とそれに伴う控除率は、以下のとおりです。
| 4%以上 | 10% |
|---|---|
| 5%以上 | 15% |
| 6%以上 | 25% |
(※控除率は増額分に対してかけられる)
ただし、中堅企業向けの賃上げ促進税制は、2027年(令和9年)3月31日をもって廃止が検討されています。
中小企業向け賃上げ促進税制
中小企業は、資本金1億円以下の法人、または常時使用する従業員数1,000人以下を指します。
給与等の増額割合とそれに伴う控除率は、以下のとおりです。
| 1.5%以上増加 | 15% |
|---|---|
| 2.5%以上増加 | 30% |
(※控除率は増額分に対してかけられる)
上乗せ要件:子育てとの両立・女性活躍支援に関する認定を取得している
対象となっている企業が、くるみん認定やえるぼし認定など、特定の認定を取得している場合、税額控除率にさらに5%の上乗せ加算ができます。
必須要件の賃上げ促進税制による税額控除率とあわせて、最大35%の税額控除も可能です。
くるみん認定やえるぼし認定は、企業の取り組みに応じていくつかの区分が設けられており、上乗せ要件においては企業規模別に対象となる認定区分が異なります。
企業規模別の満たすべき要件は、以下のとおりです。
- 中小企業:くるみん認定以上、えるぼし認定(2段階目)以上
- 中堅企業:プラチナくるみん認定以上、えるぼし認定(3段階目)以上
なお、それぞれの認定取得時期にも、以下のような要件が設けられています。
【適用事業年度中に取得する認定】
- くるみん認定
- くるみんプラス認定
- えるぼし認定 (2段階目以上)
【適用事業年度終了までに取得する認定】
- プラチナくるみん認定
- プラチナくるみんプラス認定
- プラチナえるぼし認定
「くるみん認定」と「えるぼし認定」について
くるみん認定は、仕事と育児の両立支援に取り組む企業を認定する制度です。
取り組みの達成度合いに応じて「くるみん認定」「プラチナくるみん認定」などの区分が設けられています。
一方、えるぼし認定は、女性の活躍推進に関する取り組みが優れている企業を認定する制度です。
採用や継続就業など、5つの評価項目の達成数に応じて「えるぼし認定」や「プラチナえるぼし認定」が認定されます。
中小企業向け賃上げ促進税制の改正ポイント
中小企業向け賃上げ促進税制は、改正により内容が随時更新されています。
ここでは、制度の主な改正ポイントを紹介します。
「繰越税額控除制度」の新設
中小企業向け賃上げ促進税制を活用する際に押さえておきたい改正ポイントとして「繰越税額控除制度」の新設が挙げられます。
賃上げを実施した年度が赤字だった場合、控除できなかった分を翌年度以降に持ち越せる制度です。
従来の制度では、どれだけ大幅な賃上げを行ってもその年度が赤字で法人税が発生しなければ、税額控除の恩恵を受けられませんでした。
しかし「繰越税額控除制度」によって、将来黒字になった際の税金から差し引かれ、控除しきれなかった分をストックすることが可能です。
これにより、一時的に業績が悪化している企業でも、将来的な黒字化を見越した賃上げを行えます。なお、この繰越は最大で5年間まで認められます。
「教育費向上による上乗せ要件」は廃止
改正前までは、従業員の教育訓練費が前年度より一定額以上増加した場合に、控除額を上乗せできましたが、改正後は廃止されています。
これまでは、人材育成を目的とした取り組みでも税制上のメリットを受けられましたが、現在ではその仕組みが廃止されています。
これは、会計検査院の調査によって、教育訓練費以上に税額控除されていた実態が明らかになったためです。
賃上げ促進税制の手続きの流れと必要書類
賃上げ促進税制は事前の届け出が不要ですが、確定申告時に必要書類を添付する必要があるため、それに伴うデータの集計や判定などが必要になります。
そのため、賃上げ促進税制を申請する際は、手続きの流れと必要書類を把握しておくことが大切です。
手続きの流れ
賃上げ促進税制の手続きは、データ集計から申告書の提出まで、次の4ステップで実施されます。
| 1.データ集計 | 前年度と当年度の「給与等支給額」および「教育訓練費」を算出 |
|---|---|
| 2.要件判定 | 集計したデータに基づき、通常要件や上乗せ要件を満たしているかを確認 |
| 3.控除額の計算 | 給与増加額に所定の控除率を乗じて算出(※赤字等で控除しきれない場合は、繰越額も計算する) |
| 4.申告書類の作成・提出 | 確定申告書に必要事項を記載し、明細書を添付して税務署へ提出 |
賃金台帳や教育訓練費の領収書など、各種根拠資料は提出する必要はないですが、税務調査に備えて適切に保管しておくことが義務付けられています。
必要な書類
賃上げ促進税制を申請する際は、以下の書類を確定申告書に添付しましょう。
- 税額控除の対象となる控除対象雇用者給与等支給増加額
- 控除額およびその計算内容の明細を記載した書類
- 適用額明細書(法人の場合)
【繰越控除措置を利用する場合】
- 繰越税額控除限度超過額に関する明細書
- 繰越控除を受ける金額の計算内容を記載した明細書
中小企業向け賃上げ促進税制を活用する企業側のメリット
中小企業向け賃上げ促進税制を活用することによる企業側のメリットは、以下のとおりです。
法人税・所得税が軽減できる
中小企業向け賃上げ促進税制を活用することで、従業員の賃上げを行った際、増加額の一定割合を法人税や所得税から直接差し引き、支払う税金額を抑えられます。
算出された税金から直接差し引かれることで、高い節税効果が期待できます。
なお、本制度は課税対象となる所得金額から差し引く「所得控除」ではなく、算出された税額から直接差し引く「税額控除」です。
人材の定着と採用力の強化が期待できる
中小企業向け賃上げ促進税制を活用して給与水準を引き上げることで、人材の定着と採用力の強化が期待できます。
上乗せ要件のひとつでもある、くるみん認定(子育て支援)やえるぼし認定(女性活躍)の認定取得を進めることで、多様な人材が働きやすい環境を目指せます。
一方で、人材の定着や採用力の向上を実現させるためには、福利厚生を充実させるのもひとつです。
以下の記事では、就活で重視されやすい福利厚生を紹介しています。あわせてぜひ参考にしてみてください。
中小企業向け賃上げ促進税制を活用する従業員側のメリット
中小企業向け賃上げ促進税制を活用することによる従業員側のメリットは以下のとおりです。
給与が向上する
企業が中小企業向け賃上げ促進税制を活用することで、従業員の基本給や賞与の向上につながります。
この制度を活用するには、前年度よりも従業員の給与総額を増やす必要があるためです。
物価上昇が続く状況において、給与が向上することは従業員の家計負担を軽減し、生活にゆとりを持たせることができるでしょう。
就業環境が改善する
中小企業向け賃上げ促進税制の上乗せ要件を満たすことで、従業員の就業環境の改善も目指せます。
上乗せ要件では、くるみん認定やえるぼし認定を取得する必要があり、企業は子育て支援や女性活躍推進に力を入れることで、従業員が働きやすい環境を構築できるためです。
具体的には、男性の育児休業取得率の向上や残業時間の削減などの一定基準をクリアしなければなりません。
中小企業向け賃上げ促進税制を活用する際の注意点
中小企業向け賃上げ促進税制を活用する際には、いくつかの注意点があります。具体的には以下のとおりです。
中長期的なコスト負担は増加する
税額控除というメリットがある反面、賃上げそのものによる人件費の増加は避けられず、中長期的な固定費の負担は自社で賄う必要があります。
たとえば、減税効果に過度な期待をして無理な賃上げを行うと、キャッシュフローが悪くなり、経営や事業運営を圧迫する恐れがあります。
賃上げを行う際には、単年度の減税額だけでなく、数年先を見越した人件費の負担増とキャッシュフローを慎重に試算しましょう。
「国内雇用者」のなかには「一時的な海外赴任者」も含まれる
中小企業向け賃上げ促進税制の対象となる「国内雇用者」のなかには、一時的に海外へ出張、赴任している従業者も含まれます。
「国内雇用者」とは、法人の使用人のうち、その法人の国内にある事業所に勤務し、かつ国内の事業所につき作成された賃金台帳に記載された者です。
一時的に海外の支店や現場で働いている従業員であっても、日本の事業所の賃金台帳に名前があり、そこから給与が支払われている場合は「国内雇用者」に該当します。
適用年度と前事業年度の月数が異なる場合は調整が必要となる
決算期の変更や設立初年度などの理由で、比較対象となる二つの事業年度の月数が異なる場合、支給額をそのまま比較することはできず、月数を揃えるための調整計算が必要です。
前年度が12ヶ月分ではない場合、前年度の給与支給額をそのまま使うと増加率が正確に計算できません。
比較雇用者給与等支給額を当年度の月数に合わせた金額に引き直して判定を行う必要があります。
従業員の実質的な手取り額を向上させながら、働きやすい環境を目指したいなら、福利厚生を充実させることもひとつです。
たとえば、マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸」なら、従業員一人当たりの手取りを年間で約20万円向上させることが可能です。
福利厚生の導入にあたって、何から手を付ければいいのかわからないという方は、ぜひ検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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