• 作成日 : 2026年7月7日

HR戦略(人事戦略)に役立つフレームワーク7選!戦略の立て方も詳しく紹介

PointHR戦略に使えるフレームワークとは?

HR戦略には、SWOT・TOWS・ロジックツリーなど目的別の7つのフレームワークを活用することが効果的です。

  • 代表的なフレームワークは全7種類
  • 戦略立案は5ステップで進める
  • 分析の目的化・現場無視に注意

Q. HR戦略のフレームワークはどれから使えばよい?
A. まずPEST分析で外部環境を把握し、SWOT分析で自社の現状を整理するのが基本的な順序です。

企業の成長には、HR戦略(人事戦略)が欠かせません。

しかし、いざHR戦略を策定するとなると「何からはじめればよいかわからない」「社内で意見がまとまらない」と悩む担当者も多いでしょう。そこで役立つのがフレームワークの活用です。

本記事では、HR戦略に役立つ7つのフレームワークの種類や特徴をわかりやすく解説します。さらに、フレームワークを活用した具体的な戦略の立て方もまとめています。

HR戦略(人事戦略)とは?

HR戦略(人事戦略)とは、企業の経営目標を達成するために、組織の仕組みや制度(採用・配置・教育など)をどう構築して運用するかを組み立てる戦略のことです。

人事戦略と混同されやすい言葉として「人材戦略」や「戦略人事」がありますが、定義が少し異なります。

  • 人材戦略:仕組みではなく、個人のもつスキルや能力の最大化にスポットを当てた戦略のこと
  • 戦略人事:経営目標と直結する形で人事機能そのものを最適化しようとする姿勢や役割のこと

人材戦略について詳しく知りたい人は、以下の関連記事もご覧ください。

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HR戦略(人事戦略)にフレームワークが必要な理由

ここでは、HR戦略(人事戦略)にフレームワークが必要な理由について紹介します。

客観的に現状の課題を把握・分析するため

フレームワークを使えば、自社の強みや弱みをデータにもとづいて客観的に分析可能です。一部の経営層や担当者の主観的な意見に左右されず、本質的な人事課題を可視化できます。

また、「現状できていること」と「不足していること」を、論理的に仕分けることも可能です。情報の整理が進めば、多岐にわたる課題の重要度や優先順位を明確にできます。

さらに、客観的なデータがあれば、なぜ新しい研修制度や評価基準を導入するのかという背景を具体的に説明しやすくなるので、従業員側も納得しやすくなるでしょう。

社内で認識のズレが生じるのを防ぐため

フレームワークを導入することで、経営陣・現場の管理職・人事や総務担当者の間で、自社の人材における理想像や取り組むべき課題を共通言語として把握できます。

たとえば、抽象的になりがちな「求める人物像」や「組織カルチャーの改革」なども明確に言語化できるため、言葉の解釈がばらけてしまうのを防止可能です。

また、フレームワークで社内の目線を揃えておけば、他部署のメンバーに協力を仰いだり新しい方針を全社に浸透させたりしやすくなります。

何を最優先すべきかという組織全体の方向性を揃えられるため、認識のズレを防いでスムーズに施策を実行・運用できるでしょう。

次回以降のHR戦略を効率化するため

フレームワークを使って戦略策定の手順を敷いておくと、次に人事戦略を立てる際に一から検討する時間と労力を削減でき、業務を効率化させられます。

蓄積された過去の戦略データと比較すれば、自社の成長や課題などの推移を定点観測することも可能です。

また、人事部門に新しいメンバーが加わった際にも、フレームワークは役立ちます。これまでの人事課題の背景や過去の取り組みを、スムーズに引き継ぎできます。

フレームワークを使ってノウハウやデータを蓄積していけば、担当者個人のスキルに依存しない財産となるでしょう。

HR戦略(人事戦略)に役立つ主なフレームワーク7選

HR戦略(人事戦略)に役立つフレームワーク7選を紹介します。それぞれの特徴については、以下の表をご参照ください。

フレームワーク 分析の視点 活用目的
1. SWOT分析 内部環境×外部環境 自社の現在地の把握
2. TOWS分析 SWOTの要素の掛け合わせ 実践的な施策の構築
3. ロジックツリー 樹形図による分解 根本原因の特定とタスク化
4. CATWOE分析 6つの視点での整理 利害調整と不満の回避
5. PPM分析 事業成長率×市場シェア 人材ポートフォリオの最適化
6. VRIO分析 価値、希少性、模倣困難性、組織 独自性の高い強みの特定
7. PEST分析 政治、経済、社会、技術(マクロ環境) 長期的な外部環境の予測

1. SWOT分析

SWOT分析とは、自社の現在地を客観的に把握するためのフレームワークです。会社内部の「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」、外部の「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」を整理できるのが特徴です。

内部と外部の両方の要因を俯瞰することで、現状を多角的に把握できるようになります。たとえば、現在の採用市場における自社の認知度や他社と比較した労働条件の優位性などです。

SWOT分析で整理することで、次にどのような人事施策に力を入れるべきか、大まかな方向性を決めやすくなります。経営陣に対しても、現在の自社の状況をわかりやすく提示できるでしょう。

SWOT分析について詳しくは、以下の関連記事もご参照ください。

2. TOWS分析(クロスSWOT分析)

TOWS分析とは、SWOT分析で整理した情報をもとに具体的な打ち手を導き出すためのフレームワークです。「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4要素をそれぞれ掛け合わせることで、実務的なアクションを見出します。

たとえば、自社の教育体制(強み)とIT業界のリスキリング需要(機会)を掛け合わせれば、未経験のポテンシャル層を対象とした採用戦略というアプローチが見えてきます。

このようにTOWS分析を活用すれば、ただの現状分析にとどまることなく、実現性の高い人事施策へと落とし込めるでしょう。

3. ロジックツリー分析

ロジックツリー分析とは複雑に絡み合った課題を細分化し、物事をシンプルに整理して本質に迫るためのフレームワークです。

ロジックツリー分析を活用すれば、解決すべき人事課題を樹形図のように要素分解でき、論理的な解決ルートを探れます。

たとえば、「若手社員の離職率が高い」という課題を、「給与への不満」「人間関係の摩擦」「将来のキャリア不安」など、細かい課題へと切り分けていきます。

このプロセスを経ることで、感覚的になりがちな人事施策に対して、社内で認識のズレなく具体的な解決策を導き出すことが可能です。

4. CATWOE分析

CATWOE分析とは、大規模な人事制度改革や組織の再編など、多くの人の利害が絡む場面でとくに有効なフレームワークです。

具体的には、以下の6つの異なる視点から、クリアすべき前提条件を整理します。

  • C(Customers:顧客・受益者):新制度によって直接的な影響や利益を受ける従業員
  • A(Actors:実行者):制度改革の実務を推進する人事・総務の担当メンバー
  • T(Transformation:変換):実行しようとしている「評価制度の刷新」により生じる変化・改善とそこまでのプロセス
  • W(Weltanschauung:世界観・目的):なぜこの変革を行うのか、企業としての根本的な大義名分
  • O(Owners:所有者):変革の中止や決裁権をもつ経営陣(オーナー)
  • E(Environmental constraints:環境制約):予算の限界、就業規則変更に伴う法的な制約、システム的な制約

上記のように異なる視点や制約を網羅することで、新しい制度に対する反発やリスクを事前に予測できるようになります。関係者の納得感を得ながら、スムーズに人事制度の改革や組織変革を進められるでしょう。

5. PPM分析

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析は、経営学でよく使われるフレームワークです。事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4つの性質に分類し、投資価値を分析します。

このフレームワークを人事領域に応用することで、どの事業にどのような人材を配置すべきかを可視化することが可能です。

たとえば、成長期にある重要な新規事業(花形)に対して、社内のエース級人材や採用予算を重点的に投資します。反対に、安定している維持事業(金のなる木)には、システム化を進めて適正な人員を配分するといった判断を行います。

このように整理することで、限られた人材という資本を、会社の成長フェーズに合わせて最適に配置・投資しやすくなるでしょう。

PPM分析について詳しくは、以下の関連記事もご参照ください。

6. VRIO分析

VRIO分析は、自社がもつ人材や組織体制の本当の強みの源泉を客観的に評価するためのフレームワークです。経営資源を「経済価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Inimitability)」「組織(Organization)」の4指標で測ります。

たとえば、長年培ってきた独自の育成ノウハウや風通しのよい企業文化が、採用市場においてどれほどの強みとなるかを評価します。これらの強みが単なる思い込みではなく、市場においてどのくらいの差別化要因になっているかを分析することが可能です。

この分析結果があれば、自社の人材や組織の本当の強みを活かした、独自性のあるHR戦略を構築できます。

VRIO分析について詳しくは、以下の関連記事もご参照ください。

7. PEST分析

PEST分析は、自社のビジネスや採用活動を取り巻く外部のマクロ環境を中長期的に見通すためのフレームワークです。「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つの環境要因を分析できます。

たとえば、労働法の改正(政治)による働き方の変化やAI技術の発展(技術)が、求める人材スキルにどう影響するかなどです。また、少子高齢化(社会)による採用難やインフレ(経済)に伴う賃金水準の動向なども予測できます。

この分析を行うことで、数年先を見据えたブレない人事戦略の土台を構築できます。急な法改正や市場の地殻変動が起きても、先手を打つための実務計画が可能となるでしょう。

【5つのステップ】フレームワークを活かしたHR戦略(人事戦略)の立て方

ここでは、フレームワークを活かしてHR戦略(人事戦略)を立てる手順を5つのステップで紹介します。

人事戦略の立案について詳しく知りたい人は、以下の関連記事もご覧ください。

①企業理念や経営戦略を確認する

HR戦略(人事戦略)の策定は、まず自社が掲げるミッション・ビジョン・バリューや現在の経営目標を確認することからはじめます。

経営戦略と人材戦略がズレてしまうと、立派な施策を計画しても、現場の状況にあわない施策となりやすいためです。

このファーストステップでは、「PEST分析」を用いて経営戦略の背景にあるマクロな外部環境や社会の動きを理解するとよいでしょう。組織として目指すべき方向性と人材に対して何を要求するべきかを整理しやすくなります。

②人事目標を設定する

ステップ①で確認した経営戦略を達成するために、どのようなスキルをもった人材が何人、いつまでに必要かという具体的な人事目標を設定します。

この目標が抽象的なままだと、その後の採用や育成の施策がブレてしまい、最終的な効果測定もできなくなってしまうため注意が必要です。

このステップでは、「PPM分析」を用いることが推奨されます。会社の成長フェーズに合わせて、どの事業分野にどれくらいの人材やリソースを配置し、育成していくべきかという数値目標や計画が立てやすくなります。

③現状を把握してギャップを特定する

設定した理想の人事目標と現在の人材・組織の状況を比較し、そこにどのようなギャップや課題があるかを洗い出します。

自社の現状をデータにもとづいて客観的に評価することで、人事担当者の思い込みによる的外れな課題設定を防げます。

このステップでは、「SWOT分析」や「VRIO分析」を用いるのがおすすめです。採用市場における自社の客観的な立ち位置や組織内に潜む強み・弱みを正確に把握し、埋めるべきギャップの正体を明らかにできます。

④施策を設計・実行する

特定したギャップを埋めるために、採用、育成、評価、配置といった具体的な人事施策(アクションプラン)に落とし込んで実行に移します。

現場の業務状況や感情を無視してトップダウンで急に進めると、社員の強い反発を招き、せっかくの施策が形骸化してしまうリスクがあります。

このステップでは、「TOWS分析」で施策の方向性を決めて「ロジックツリー分析」で具体的な行動を明確化し、「CATWOE分析」で関係者に生じる影響・利害の程度を把握するのがよいでしょう。いくつかのフレームワークを組み合わせて活用すれば、実行フェーズがスムーズに進みます。

⑤効果を測定しPDCAサイクルを回す

実行した施策については、当初の人事目標の達成につながっているかを定期的に振り返り、状況に合わせて改善を繰り返していくことが不可欠です。

HR戦略は一度完璧な計画を立てて終わりではありません。社会の変化や会社の経営状況に応じて、柔軟に軌道修正していくことが重要です。

このステップでは、改めて「PEST分析」で外部環境の変化をチェックしつつ、施策の効果を検証することが推奨されます。次回の戦略立案(ステップ①)へとフィードバックして、PDCAサイクルを回し続けましょう。

HR戦略(人事戦略)でフレームワークを活用する際の落とし穴

最後に、HR戦略(人事戦略)でフレームワークを活用する際の落とし穴や気をつけるためのポイントを紹介します。

フレームワークを埋めること自体が目的化してしまう

よくある失敗として、フレームワークの空欄を綺麗に埋めること自体に満足してしまい、本来の目的である課題解決や戦略立案を見失ってしまうケースが挙げられます。

フレームワークはあくまで思考を整理するための手段にすぎません。

分析をまとめるだけで終わらせず、会議の最後には「明日から具体的に誰が何をするのか?」というネクストアクションを必ずセットで決めるルールを設けましょう。

現場の声を無視してしまう

経営陣の意向やデータ分析の結果ばかりを優先して戦略を組み立ててしまい、実際に働く現場の社員の感情やリアルな実態と乖離してしまうケースです。

現場から、「人事は現場の苦労をわかっていない」という反発を招いてしまい、いくら立派な評価制度や施策を作っても浸透せずに失敗に終わってしまう可能性があります。

CATWOE分析を用いて現場の利害を事前に把握するとともに、1on1やアンケートなどを通じて社員の生の声を拾い上げ、戦略に反映させるプロセスを組み込むことが大切です。

施策の見直しや分析を忘れてしまう

フレームワークを使って戦略を立てて施策を実行したところで満足してしまい、その後の効果検証や見直しを怠ってしまうケースです。

採用市場のトレンドや自社の経営状況は常に変化しているため、古い戦略のまま放置すると、気づいたときには時代遅れの施策を何年も続けているという事態も起こり得ます。

HR戦略は一度立てただけで終わりではないという意識をもち、半年や1年などの定期的なスパンで再度フレームワークを用いて現状を再評価しましょう。可能であれば、戦略をブラッシュアップし続けられる仕組みも作るのが望ましいです。


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