• 更新日 : 2026年8月12日

特別給与届(様式第38号)とは?書き方・対象賃金・省略方法を解説

Point特別給与届とは?

特別給与届(様式第38号)は、労災保険の特別支給金を算定するために賞与支給実績を届け出る書類です。

  • 対象は3か月超の間隔で支給される賞与等
  • 本紙の該当欄に記入すれば単体提出を省略可
  • 算定基礎年額は負傷日前1年間の合計額

Q. 賞与を支給していない場合も提出が必要?

A. 休業特別支給金など、賞与とは無関係に支給される場合であっても特別給与の総額を記載した届書の提出が必要です。

特別給与届(様式第38号)は、労災保険の特別支給金を算定するため、賞与の支給実績を届け出る書類です。本紙への一括記入を使えば単体での作成・提出を省略でき、対象となる賃金の判定にも一定のルールがあります。本記事では書き方・対象賃金の見分け方・省略手順・実務でのよくある疑問を整理します。

特別給与届とは?

特別給与届(正式名称:特別給与に関する届、様式第38号)とは、労災保険の特別支給金を算定するために、被災労働者の賞与支給実績を届け出る書類です。

労災で休業や障害が生じた場合、被災労働者には休業(補償)給付や障害(補償)給付などの保険給付に加え、賞与額をベースにした特別支給金が上乗せされる仕組みがあります。この特別支給金の算定根拠として、会社側が過去の賞与支給実績を届け出る役割を担うのが特別給与届です。

賞与実績が算定基礎日額を通じて特別支給金額を左右する

特別支給金の算定基礎となるのが「算定基礎日額」で、賞与などの特別給与総額をもとに計算されます。

【計算式】算定基礎日額 = 算定基礎年額(被災日以前1年間の特別給与の合計額)÷365

労働者災害補償保険特別支給金支給規則第2条では、算定基礎年額に上限が設けられています。特別給与の総額が給付基礎日額を365倍した額の20%を超える場合は、給付基礎日額の20%相当額が算定基礎年額の基礎となり、さらに算定基礎年額そのものにも150万円という上限があり、いずれか低い方の額が上限となります。つまり、賞与が高額であっても際限なく特別支給金が増えるわけではありません。

参考:休業(補償)等給付の計算方法|厚生労働省

算定基礎日額と算定基礎年額の違いを区別する

算定基礎日額は「1日あたり」の金額、算定基礎年額は「対象期間の合計」の金額という違いがあります。両者を混同すると、特別給与届の記入欄を誤って理解してしまうため、様式の記入時にはこの区別を意識しておくとよいでしょう。

届出の対象となる特別支給金の種類と算定方法

届出の対象となる特別支給金は、休業・障害・遺族に関するものが中心で、種類ごとに算定方法が異なります。

特別支給金の種類 支給場面 算定方法(概要)
休業特別支給金 労災による休業4日目以降 給付基礎日額の20%×休業日数(賞与とは無関係の定率部分)
障害特別支給金 治癒後に障害等級が認定されたとき 障害等級に応じた定額
障害特別年金・障害特別一時金 同上 算定基礎日額×等級ごとの日数
遺族特別支給金 労災により死亡したとき 遺族の人数にかかわらず一律300万円(複数の場合は人数で除した額)
遺族特別年金・遺族特別一時金 同上 算定基礎日額×遺族数に応じた日数

注意したいのは、休業特別支給金は賞与実績とは無関係に一律で決まる点です。休業特別支給金は給付基礎日額の20%×休業日数で計算され、算定基礎日額(賞与実績)は使用しません。一方、障害・遺族に関する特別年金は算定基礎日額を用いる点に違いがあります。

参考:遺族(補償)等給付・葬祭料等葬祭給付の請求手続|厚生労働省

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特別給与届の対象となる賃金は?

特別給与届の対象となる「特別給与」とは、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を指します(労働基準法第12条第4項)。毎月の給与とは区別して扱われ、算定基礎日額の計算にのみ用いられます。

特別給与に該当するもの・しないもの

実務で迷いやすいのが、どの賃金が特別給与に当たるかという判定です。

区分 具体例 届出対象
特別給与に該当 夏季賞与・冬季賞与・決算賞与・半期ごとのインセンティブ
特別給与に非該当 毎月の基本給・通勤手当・時間外手当 ×
特別給与に非該当 結婚祝金・傷病見舞金・退職金 ×

判断のポイントは「支給間隔が3か月を超えるかどうか」です。年2回の賞与は支給間隔が6か月なので対象になりますが、四半期(3か月ごと)に支給する業績手当は対象外となります。

支給間隔の判定で迷いやすいケース

同じ名称の手当でも、支給頻度によって特別給与に当たるかどうかが変わります。

たとえば、毎月の給与に「業績連動手当」を上乗せしている場合は支給間隔が1か月のため特別給与には含まれません。一方、同じ業績連動手当でも「年1回、期末にまとめて支給」する形式であれば特別給与に該当します。なお、退職金や結婚祝金などの臨時的な支給は、たとえ高額であっても原則として賃金に当たらないため特別給与には含まれません。

特別給与届(様式第38号)の書き方は?

特別給与届の記入項目は、被災労働者の基本情報と過去の賞与支給実績の2つに大別できます。厚生労働省が公開している様式第38号に沿って正確に記載する必要があります。

STEP1 記入項目を把握する

様式第38号で記入が必要な主な項目は次のとおりです。

  1. 労働者の氏名・生年月日
  2. 雇入年月日(入社日)
  3. 負傷または発病の年月日
  4. 各特別給与の支払年月日・金額

負傷または発病の日以前2年間(雇入後2年に満たない者については雇入後の期間)に支払われた特別給与を記載します。

STEP2 起算日の数え方を正しく理解する

起算日は「負傷または発病の日」です。通勤災害・業務災害いずれの場合も同じ考え方となります。

例えば、2026年6月15日に負傷した労働者であれば、2025年6月15日から2026年6月14日までに支払われた賞与が算定基礎年額の対象範囲です。雇入後1年未満の労働者については、次の計算式で算定基礎年額を求めます。

【計算式】雇入後1年未満の場合の算定基礎年額 = 雇入後に支払われた特別給与の合計額 ÷ 雇入日から負傷日前日までの日数 × 365

STEP3 事業主の証明を受ける

特別給与届に記載した特別給与については、事業主の証明が必要です。証明欄に年月日や事業所の所在地、事業主の名称などを記載のうえで提出します。会社が証明に非協力的である場合には、交渉を行ったり、専門家へ相談したりしましょう。

提出は管轄の労働基準監督署に対して行いますが、提出を社会保険労務士に代行してもらうことも可能です。

特別給与届は省略できる?

特別給与届(様式第38号)は、本紙(様式第8号等)への一括記入やe-Gov(イーガブ)電子申請を活用すれば、単体での作成・提出を省略できます。

本紙(様式第8号等)の一括記入で省略する

休業(補償)給付支給請求書(様式第8号)や障害(補償)給付支給請求書(様式第10号)などの本紙には、「特別給与に関する事項」という記入欄が設けられています。この欄に賞与の支給実績を直接記入すれば、様式第38号を別途作成・添付する必要がなくなります

一括記入する際の流れは次のとおりです。

  1. 本紙(様式第8号や第10号など)の「特別給与に関する事項」欄を確認する
  2. 過去の賞与名称・支払日・金額を該当欄に記入する
  3. 算定基礎年額を計算して記載する
  4. 本紙と一緒に労働基準監督署へ提出する

なお、省略できるのはあくまで「様式第38号という書類の作成」であり、賞与実績の記入自体は省略できません。また、申請内容の確認のため、賃金台帳や出勤簿などの提出を求められる場合もあります。

e-Gov電子申請で添付を不要にする

e-Gov電子申請を利用する場合、申請フォーム上の「特別給与に関する事項」入力欄にデータを入力すれば、様式第38号のPDFファイルを別途添付する必要がなくなります。

e-Govでの電子申請手順は次のとおりです。

  1. e-Govポータルにログインし、該当する労災給付の申請手続を選択する
  2. 申請フォーム内の「特別給与に関する事項」欄に賞与情報を入力する
  3. 内容を確認し、電子署名のうえ送信する

一部のクラウド型人事労務ソフトでは、労災申請の電子申請機能から賞与データを直接入力できるケースもあります。ソフト側で賞与データが連携されていれば、入力の手間をさらに削減できるでしょう。

紙提出と電子申請の違いを整理すると、次のようになります。

項目 紙提出 e-Gov電子申請
様式第38号の作成 本紙一括記入なら省略可 フォーム入力で省略可
提出先への持参・郵送 必要 不要(オンライン完結)

特別給与届のよくある質問

特別給与届のよくある質問をまとめました。

賞与を支給していない場合はどうなる?

休業特別支給金の支給を受けようとする場合、当該休業特別支給金の支給申請の際に、所轄労働基準監督署長に対し、特別給与の総額を記載した届書を提出しなければならないとされています(特別支給金規則第12条)。

そのため、賞与の支払いがない場合でも、届け出ることが必要となります。

届出を出し忘れた場合はどうすればよい?

時効期間内であれば、届出を出し忘れていても後から追加申請が可能です。労働者災害補償保険法第42条第1項では、休業補償給付など短期の給付を受ける権利は行使できるときから2年、障害補償給付・遺族補償給付など長期の給付を受ける権利は行使できるときから5年で時効消滅すると定められています。

例えば、休業(補償)給付の請求時に特別給与届を添付し忘れたまま給付を受けていた場合でも、労務不能の日ごとにその翌日から2年以内であれば、特別給与届を提出して休業特別支給金を追加で請求できます。

追加申請の手順は次のとおりです。

  1. 管轄の労働基準監督署に連絡し、追加申請の意思を伝える
  2. 特別給与届(様式第38号)または本紙の該当欄に賞与実績を記入する
  3. 特別支給金の支給請求書と合わせて提出する

参考:労働者災害補償保険法|e-Gov法令検索

過去2年間の途中で賞与額が変わった場合は?

賞与額の変動があった場合でも、記載方法自体は変わりません。各回の賞与について支払年月日と金額を個別に記載し、算定基礎年額は負傷日以前1年間に支払われた分の合計で計算します。

例えば、2025年12月の冬季賞与が30万円、2026年6月の夏季賞与が50万円だった場合、被災日が2026年7月であれば算定基礎年額は80万円(30万円+50万円)です。それ以前の賞与データも様式上は記載欄がありますが、算定基礎年額に含めるのは直近1年間分に限られます。

パートタイマーや契約社員も届出が必要?

雇用形態にかかわらず、労災保険の適用を受ける労働者であれば届出の対象になります。パートタイマーや契約社員であっても、賞与の支給実績があれば特別給与届が必要です。支給額が少額な寸志程度の賞与であっても、支給間隔が3か月を超えていれば特別給与に該当し、届出の対象になります。

一方、業務委託契約のフリーランスや個人事業主は労災保険の対象外(特別加入を除く)のため、特別給与届の提出義務はありません。特別加入者は給付基礎日額を申請時にあらかじめ定めているため、届出による仕組みとは異なります。

提出先と提出期限はどこで確認する?

特別給与届の提出先は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です。提出期限について法令上の明示的な期限はありませんが、特別支給金の請求書と同時に提出するのが原則です。

管轄の労働基準監督署は、厚生労働省の「全国労働基準監督署の所在案内」ページから都道府県別に検索できます。届出にあたって不明点がある場合は、監督署の労災課に電話で問い合わせると、記入方法や添付書類について案内を受けられるでしょう。

参考:全国労働基準監督署の所在案内|厚生労働省

特別給与届をスムーズに提出するために

特別給与届は、労災保険の特別支給金を申請する際に必要な書類で、過去1年間の賞与支給実績をもとに算定基礎日額を算出する根拠となります。様式第38号を別途作成しなくても、本紙の「特別給与に関する事項」欄に賞与実績を記入するだけで対応できます。

まずは賃金台帳で過去1年間の賞与支給実績を確認し、本紙の該当欄への記入で対応できるかを検討してみてください。不明点があれば、管轄の労働基準監督署に問い合わせるとスムーズです。


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