• 作成日 : 2026年7月6日

1週間単位の変形労働時間制とは?対象業種・導入手順・残業代の計算方法を解説

Point1週間単位の変形労働時間制とは?

1週間単位の変形労働時間制は、30人未満の小売業・旅館・飲食店などに限定された制度で、週40時間の枠内で1日最大10時間までシフトを柔軟に組める特例です。

  • 対象は飲食店・旅館など30人未満のみ
  • 週開始前日までに書面でシフト通知が必要
  • 残業は1日・1週間の2段階で判定する

Q. 導入に必要な手続きは?

A. 労使協定の締結・就業規則への記載・労働基準監督署への届出の3ステップが必要です。

1週間単位の変形労働時間制は、30人未満の小売業・旅館・飲食店などに限定された労働時間の特例制度で、週40時間の枠内で1日最大10時間までシフトを柔軟に組めます。本記事では対象業種や規模要件、労使協定の締結から届出までの手順、残業代の判定基準、1か月単位・1年単位の変形労働時間制との違いまでを整理して解説します。

1週間単位の変形労働時間制とは?

1週間単位の変形労働時間制は、日ごとの業務量の差が大きい小規模事業所向けに設けられた労働時間の特例制度です。労働基準法第32条の5に規定されており、「非定型的変形労働時間制」とも呼ばれます。

通常の労働時間制度では1日8時間・週40時間が法定上限ですが、この制度を導入すると週40時間の枠内で1日最大10時間まで労働時間を設定できます。たとえば週末に来客が集中する飲食店であれば、金曜・土曜を10時間勤務にして平日を短くするといった柔軟なシフト編成が可能になります。

参考:労働基準法(第32条の5)|e-Gov法令検索

対象となる業種・規模要件を確認する

この制度を利用できる事業所には、業種と規模の両方に条件があります。次の4点をすべて満たす必要があります。

要件 内容
対象業種 小売業・旅館・料理店・飲食店
規模要件 常時使用する労働者が30人未満
1日の労働時間の上限 10時間
1週間の労働時間の上限 40時間

「常時使用する労働者」にはパート・アルバイトも含まれます。繁忙期だけ一時的に30人を超える場合は、常態として30人未満であれば対象外にはなりません。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。

他の変形労働時間制(1か月単位・1年単位)には業種制限がないのに対し、1週間単位は対象が限定されている点が特徴です。業種が該当しない場合や従業員が30人以上の場合は、1か月単位や1年単位の変形労働時間制の検討が必要になります。

参考:1週間単位の非定型的変形労働時間制|厚生労働省兵庫労働局

「非定型的」と呼ばれる理由を理解する

1か月・1年単位の変形労働時間制は期間の初日までにシフトを確定させる必要がありますが、1週間単位では毎週の開始前日までに翌週のシフトを通知すれば運用できます。

天候やイベントなどの影響で日々の客足が読みにくい業種に向いた仕組みであり、旅館であれば予約状況、飲食店であれば近隣のイベント開催情報を見ながら週ごとに勤務時間を組み替えられる点が「非定型的」と呼ばれる理由です。

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1週間単位の変形労働時間制を導入するメリットは?

1週間単位の変形労働時間制の主なメリットは、繁閑差に合わせたシフト配分による時間外労働の抑制と人件費の最適化です。厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」では、変形労働時間制を採用している企業の割合は全体の60.2%とされており、業種を問わず一定の浸透が見られます。

参考:令和7年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

繁忙日に労働時間を集中配分できる

固定シフトの場合、忙しい日は残業が発生し、暇な日はスタッフが手持ち無沙汰になるといった非効率が起きやすくなります。1週間単位の変形労働時間制を活用すれば、繁忙日に10時間、閑散日に6時間といった配分を週40時間の枠内で組めます。

例えば、週末にランチとディナーが集中する飲食店で、土曜・日曜を各10時間、月曜から水曜を各6時間、木曜を休日に設定すると合計38時間です。法定の週40時間を超えないため割増賃金は発生せず、固定の8時間シフトで土日に残業代が必要だったケースより人件費を抑えた運用ができます。

時間外労働を減らし人件費を抑えられる

仮に時給1,200円のスタッフが毎週2時間の残業をしていた場合、割増賃金(25%増)を加えた残業1回分のコストは「1,200円×2時間×1.25=3,000円」です。1人あたり月間ではおよそ12,000円、スタッフ5人なら月6万円規模の差額になります。

変形労働時間制の導入で残業をシフト配分の工夫により吸収できれば、この人件費を抑えられる可能性があります。削減できた分を従業員の待遇改善や設備投資に回すことで、経営全体の改善にもつながるでしょう。

一方で、毎週シフトを組み替える分、勤怠管理の手間が増える点はデメリットとして把握しておく必要があります。

変形労働時間制の1週間単位の導入手順は?

1週間単位の変形労働時間制の導入は、労使協定の締結・届出・書面通知を中心に進めます。各段階で法定要件を満たさないと制度が無効になるため、ひとつずつ確認しながら進める必要があります。

STEP1 労使協定を締結する

使用者と労働者の過半数代表者(または労働組合)との間で、1週間単位の変形労働時間制を採用する旨の協定を書面で結びます。協定には「1週間の労働時間が40時間以下となること」「1日の労働時間の限度を10時間とすること」を明記します。

STEP2 就業規則に規定する

常時10人以上の労働者を使用する事業所では、就業規則にも制度の内容を明記する必要があります。協定を結ぶだけでは制度の適用が義務化されないため、就業規則への記載も併せて行います。

STEP3 労働基準監督署へ届出する

締結した労使協定の写しを、所定の様式(労働基準法施行規則様式第5号)により管轄の労働基準監督署へ提出します。届出様式は厚生労働省のサイトからダウンロードできます。

参考:主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省

STEP4 届出後に運用を開始し継続的に管理する

届出が受理された時点から制度の運用を始められます。運用開始後も、常時使用する労働者数が30人を超えていないかの定期確認を継続することが実務上重要です。

毎週の開始前に書面で勤務時間を通知する

制度導入後は、各週の開始前日までに、その週の各日の労働時間を書面で従業員に通知する必要があります。労働基準法施行規則第12条の5第3項で定められた要件です。

例えば日曜始まりの事業所であれば、毎週土曜日までに翌週分のシフト表を各スタッフに渡す必要があります。口頭での伝達だけでは法定要件を満たさないため、紙のシフト表やメール添付など書面として残る方法での通知が求められます。

緊急のやむを得ない事由がある場合は、週の途中でも労働時間を変更できますが、変更しようとする日の前日までに書面で通知する必要があります。台風による営業時間変更など、予測困難な事情が想定されるケースです。

勤怠管理ツールで運用負担を軽減する

毎週シフトを作成し書面で通知する作業を手作業で続けると、管理者に大きな負担がかかります。クラウド勤怠管理システムを活用すると、シフト作成から通知・労働時間の自動集計までを一元管理できる場合があります。

まずはExcel(エクセル)のテンプレートで運用を始め、従業員数が増えてきたタイミングでクラウドシステムへ移行する方法も現実的な選択肢です。

1週間単位の変形労働時間制で残業代はどう計算する?

1週間単位の変形労働時間制では、時間外労働を「1日単位」と「1週間単位」の2段階で判定し、いずれかに該当すれば25%以上の割増賃金が発生します。

1日単位の時間外労働を判定する

1日の時間外労働は、所定労働時間の設定によって判定基準が変わります。

所定労働時間の設定 時間外労働となる範囲
8時間超に設定されている日 所定労働時間を超えた分
8時間以下に設定されている日 8時間を超えた分

例えば、所定労働時間を9時間に設定した日に10時間働いた場合、時間外労働は1時間です。一方、所定6時間の日に9時間働いた場合は8時間を超えた1時間が時間外労働となり、所定の6時間から8時間までの2時間は法内残業(割増なし)として扱われます。

週40時間超の判定と割増賃金を計算する

1日単位で時間外労働と判定されなかった時間でも、週の合計が40時間を超えた分は時間外労働になります。ただし、1日単位で時間外としてすでに計上した時間は除外して計算します(二重カウントの防止)。

割増賃金は「1時間あたりの基礎賃金×時間外労働時間×1.25」で算出します。例えば時給1,200円のスタッフが週合計42時間働き、1日単位の時間外が1時間だった場合、週単位の時間外は「42時間-40時間-1時間(1日単位で計上済み)=1時間」となり、割増賃金は「1,200円×2時間(1日単位1時間+週単位1時間)×1.25=3,000円」です。

月60時間を超える時間外労働には50%以上の割増率が適用されるため、長時間残業が常態化している場合はさらに人件費が膨らむ点も意識しておく必要があります。

変形労働時間制の1週間・1か月・1年単位の違いは?

変形労働時間制には1週間単位のほか、1か月単位と1年単位があります。業種制限があるのは1週間単位だけで、1か月・1年単位は業種を問わず導入できる点が大きな違いです。

項目 1週間単位 1か月単位 1年単位
対象業種 小売業・旅館・料理店・飲食店 制限なし 制限なし
規模要件 30人未満 なし なし
1日の上限 10時間 制限なし(実務上は要配慮) 原則10時間
期間の上限 1週間 1か月 1年
シフト確定時期 毎週の開始前日まで 期間開始前 期間開始前
必要手続き 労使協定+届出 就業規則または労使協定(届出要) 労使協定+届出

参考:変形労働時間制の概要|厚生労働省

1か月単位・1年単位の届出書類の書き方や記入例を具体的に確認したい場合は、以下のページも参考になります。

繁閑サイクルで使い分ける

日単位で忙しさが変わる事業には1週間単位が適しています。月初・月末に業務が集中するパターンなら1か月単位、夏季や年末に繁忙期がある業種なら1年単位が向いているケースが多いといえます。

1週間単位と他の変形労働時間制を同一の労働者に重複して適用することはできないため、自社の繁閑サイクルに合わせていずれか一方を選ぶ必要があります。1週間単位は対象業種が限られる一方でシフトの柔軟性が高く、天候や予約状況に売上が左右されやすい飲食・宿泊業にとって運用面のメリットが大きい制度です。

1週間単位の変形労働時間制の注意点は?

制度を正しく運用しないと、労働基準監督署の是正勧告や未払い残業代の請求リスクが生じます。特に見落としやすい注意点として、規模要件の変動と適用制限対象者の2点を押さえておく必要があります。

30人以上になると制度が適用外になる

事業拡大やスタッフ増員で常時使用する労働者が30人以上になった場合、1週間単位の変形労働時間制は適用できなくなります。パート・アルバイトを含めた人数管理を怠ると、知らないうちに30人を超えているケースも考えられます。

適用外になった状態で制度を運用し続けると、本来支払うべき割増賃金が未払いとなり、過去に遡って精算を求められるおそれがあります。従業員数が増加傾向にある場合は、早めに1か月単位への移行準備を進めておくと安心です。

年少者・妊産婦には適用制限がある

労働基準法第60条により、18歳未満の年少者には変形労働時間制を原則として適用できません。また、妊産婦が請求した場合は1日8時間・週40時間を超えて労働させてはならないと同法第66条に定められています。

高校生のアルバイトスタッフが多い飲食店や小売店では、変形労働時間制の対象者と対象外の者が混在しやすくなります。シフト表に適用可否の区分を設けるなど、管理上の工夫で法令違反を防ぐ対応が求められます。

参考:労働基準法(第60条・第66条)|e-Gov法令検索

制度の廃止が必要になるケースに備える

業種転換や事業拡大によって制度の適用要件を満たさなくなった場合は、速やかに通常の労働時間制や他の変形労働時間制へ切り替える必要があります。廃止の際は労使協定の有効期間満了をもって終了するか、労使合意のうえで協定を解約し、就業規則を変更して従業員へ周知します。

切り替え時に勤怠データの引き継ぎが不十分だと、残業代の計算に齟齬が生じるリスクがあります。制度変更の前後1か月分は勤怠記録を照合し、未払い・過払いがないか確認することが望まれます。

よくある質問

1週間単位の変形労働時間制でよくある質問をまとめました。

パート・アルバイトは対象人数に含まれますか?

含まれます。「常時使用する労働者」には正社員に限らずパート・アルバイトも含まれるため、人数管理の際はすべての雇用形態を合算して確認する必要があります。

フレックスタイム制とはどう違いますか?

フレックスタイム制は労働者自身が始業・終業時刻を決定できる制度で、使用者があらかじめ時間を定める1週間単位の変形労働時間制とは仕組みが異なります。対象業種の制限もフレックスタイム制にはありません。

届出書類はどこで入手できますか?

厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーから、労使協定の届出に使う様式第5号をダウンロードできます。電子申請(e-Gov)を利用した提出も可能です。

残業が発生した場合、別途36協定は必要ですか?

必要です。1週間単位の変形労働時間制の範囲内(週40時間・1日10時間)を超えて労働させる場合は、別途36協定の締結と届出を行う必要があります。

36協定の基本的な仕組みや上限規制を詳しく確認したい場合は、以下のページも参考になります。

1週間単位の変形労働時間制を着実に運用するために

1週間単位の変形労働時間制は、30人未満の飲食店・旅館など対象業種に限られた特例制度です。労使協定の締結・届出、週開始前日までの書面通知という法定手順を守ることで、週40時間の枠内で繁閑に応じたシフト配分が実現します。勤怠管理ツールの活用も含め、まず労使協定の締結から着手することが運用の第一歩となります。

なお、本記事は公開されている法令・行政資料をもとに編集時点の情報を整理したものです。個別の制度適用や届出の判断にあたっては、最新の法令・通達を確認のうえ、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署への相談をおすすめします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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