• 更新日 : 2026年8月12日

外科後処置の申請方法は?必要書類・手続きの流れ・注意点を解説

Point外科後処置の申請方法は?

外科後処置は、症状固定後も労災保険でリハビリや手術を受けられる制度で、様式第1号・第2号を労基署へ提出して承認を得る手続きです。

  • 申請には障害(補償)等給付の決定が前提
  • 様式第2号(診査表)は医師作成で自己負担
  • 承認後は指定医療機関のみで処置を受けられる

Q. 外科後処置と療養補償給付の違いは?

A. 療養補償給付は症状固定前、外科後処置は症状固定後に適用される別制度で、法的根拠も異なります。

労災で症状固定と判断された後も、リハビリや手術を続けたいという従業員は少なくありません。このようなケースで活用できるのが外科後処置の申請手続きです。本記事では、外科後処置とは何かという基本から、申請に必要な書類、労基署を経由した提出手順、承認後の注意点までを解説します。

外科後処置とは?

外科後処置は、労災で「治ゆ(症状固定)」と判断された後でも、リハビリや手術を労災保険の枠組みで受けられる制度です。療養(補償)給付とは法的根拠が異なる別制度である点をまず押さえておきましょう。

労災保険では、ケガや病気の症状がこれ以上改善しないと医師が判断した時点を治ゆ(症状固定)と呼びます。治ゆ後は療養(補償)給付が打ち切られるため、「リハビリを継続したいのに給付が終わってしまった」という相談は珍しくありません。外科後処置は、こうした症状固定後の治療ニーズに応える仕組みとして設けられています。

制度の位置づけと療養補償給付との比較

外科後処置は労働者災害補償保険法第29条に基づく社会復帰促進等事業として運用されており、労災保険法第13条の保険給付である療養補償給付とは根拠条文が異なります。両者の違いは次のとおりです。

項目 療養補償給付 外科後処置
適用時期 治ゆ(症状固定)前 治ゆ(症状固定)後
法的根拠 労災保険法第13条 労災保険法第29条(社会復帰促進等事業)
対象となる治療 傷病の治療全般 リハビリ・整形外科的処置・外科的処置など

人事労務担当者は、従業員から症状固定後もリハビリを受けたいと相談を受けた際、療養補償給付の延長ではなく外科後処置という別制度で対応する点を案内すると誤解を防げます。

参考:外科後処置の実施について(基発第69号)|厚生労働省

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外科後処置の申請対象となる要件は?

外科後処置の対象となるには、障害(補償)等給付の支給決定を受けていること、そして処置によって労働能力の回復や醜状(しゅうじょう=傷跡など外見上の障害)の軽減が見込めることが必要です。

障害(補償)等給付の決定を受けていること

外科後処置の対象になるのは、症状固定後に障害等級の認定を受け、障害(補償)等給付の支給決定が出ている人です。症状固定の診断を受けただけでは対象にならず、障害等級の認定手続きを先に済ませておく必要があります。

例えば、業務中の骨折で後遺障害が残り、障害等級の認定を受けたケースでは、関節の可動域改善を目的としたリハビリが外科後処置の対象になり得ます。一方、障害等級の申請自体を行っていない段階では、外科後処置の申請手続きに進めません。

認められる処置の範囲を確認する

外科後処置で受けられる治療は、主に次のような区分に整理されます。

  1. 整形外科的診療:関節形成術、骨移植術、筋・腱の移植術など
  2. 外科的診療:瘢痕(はんこん=傷跡)の形成術、神経縫合術など
  3. 理学療法:マッサージ、温熱療法、電気刺激療法、運動療法(リハビリ)など

参考:外科後処置の実施について(基発第69号)|厚生労働省

「再発」として扱われるケースと区別する

症状固定後に障害部位の状態が悪化して再び治療が必要になった場合は、外科後処置ではなく「再発」として療養補償給付の対象になるケースがあります。外科後処置はあくまで現在の障害を改善・軽減するための処置であり、新たな症状の治療ではありません。どちらに該当するか迷ったときは、管轄の労働基準監督署(労基署)に相談するとよいでしょう。

外科後処置の申請に必要な書類と手続きのポイントは?

外科後処置の申請手続きで準備する書類は、主に外科後処置申請書(様式第1号)と診査表(様式第2号)の2点です。様式は厚生労働省のWebサイト「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」から入手できます。

申請書(様式第1号)の記入ポイント

様式第1号は、被災労働者本人が記入・署名する書類です。主な記載項目と、つまずきやすい箇所を整理しました。

記載項目 記入のコツ
労働保険番号 会社の労働保険関係成立届に記載された番号を転記する
傷病名・傷病の部位、障害等級 それぞれを診断書や支給決定通知書などの記載内容を参考に書く
受けたい外科後処置のあらまし 「右膝関節のリハビリテーション」など具体的に記載する
外科後処置を受けたい医療機関名、所在地 希望する医療機関と所在地を記入する

労働保険番号は被災した従業員本人が把握していないことも多いため、人事労務担当者が労働保険関係成立届の控えを確認して共有すると、手続きが手間なく進みます。

参考:主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省

診査表(様式第2号)は医師に作成を依頼する

様式第2号は、主治医(または専門医)が被災労働者の障害の状態と外科後処置の適否を記入する書類です。本人が記入するものではなく、医師に作成を依頼する点が様式第1号との大きな違いです。

診査表には、障害の現状・処置の見込み・処置内容の所見などが記載されます。医師が「この処置によって機能回復や醜状軽減が見込める」と判断した場合に、その旨が記載されて初めて申請手続きが成立します。

ここで注意したいのは、診査表の作成費用が被災労働者本人の自己負担になる点です。労災保険からは補填されないため、費用の目安を事前に従業員へ伝えておくとトラブルを防げます。会社として費用を負担するかどうかは、社内規定にあわせて判断しましょう。

書類準備で会社がサポートできる範囲を把握する

書類上の申請者は被災労働者本人ですが、実務では会社の人事労務担当者がサポートするケースが大半です。担当者が対応できる主な項目は次のとおりです。

  • 労働保険番号の確認と本人への共有
  • 様式第1号・第2号のダウンロードと印刷
  • 労働保険番号の通知と外科後処置の案内

従業員が症状固定の診断を受けた段階で早めに外科後処置の制度を案内しておくと、障害給付の支給決定後に円滑に申請手続きへ移行できます。

外科後処置の申請手続きの流れと承認後の対応は?

外科後処置の申請手続きは、管轄の労基署を経由して都道府県労働局長に書類を提出し、承認を受ける流れで進みます。承認後は指定医療機関での通院・入院が始まり、通院旅費の申請も別途行えます。

労基署経由で労働局長へ提出する

申請から承認までの流れは次のとおりです。

  1. 様式第1号(申請書)と様式第2号(診査表)を揃える
  2. 事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に書類を提出する
  3. 労基署が書類を確認し、都道府県労働局長へ送付する
  4. 労働局長が要件を満たしているかを審査し、承認・不承認の決定を行う
  5. 承認決定通知書または不承認決定通知書により本人へ結果が通知される

提出先は被災労働者の勤務先を管轄する労基署です。書類に不備があると差し戻しとなり手続きが長引くため、提出前に記載漏れがないかを確認することがポイントです。

参考:外科後処置の実施について(基発第69号)|厚生労働省

承認後は指定医療機関で処置を受ける

承認が下りると、労災病院・労災リハビリテーションセンター・都道府県労働局長が指定した医療機関のいずれかで処置を受けられます。処置にかかる費用は社会復帰促進等事業費から支出されるため、被災労働者の窓口負担はありません。

ただし、どの病院でも受診できるわけではなく、指定医療機関に限られる点は重要です。自宅から遠い医療機関しか指定されていない場合もあるため、承認通知を受け取ったら早めに通院先を確認しましょう。

通院旅費は様式第5号で別途申請できる

指定医療機関への通院や入院にかかる交通費は、旅費支給申請書(様式第5号)で申請すると支給を受けられます。入院した期間については、日当として1日につき850円が支給されます。

旅費申請のタイミングは処置を受けた後です。入院が1か月以上にわたる場合は、随時分割して申請することも認められています。また、経済的な事情により事前の立て替えが難しい者については、旅行前に概算払いを受けられる場合もあります。

参考:外科後処置の実施についての一部改正について(基発第624002号)|厚生労働省

外科後処置の申請前に知っておきたいアフターケアとは?

症状固定後に利用できる労災関連の制度は、外科後処置のほかに「アフターケア制度」と「義肢等補装具費支給制度」があります。それぞれ目的と給付内容が異なるため、外科後処置の申請を検討する前に、従業員の状態に合った制度を見極めることが大切です。

3つの制度を1つの表で比較する

外科後処置・アフターケア制度・義肢等補装具費支給制度の違いを整理すると次のとおりです。

項目 外科後処置 アフターケア制度 義肢等補装具費支給制度
目的 障害の改善・軽減 症状の悪化予防・管理 日常生活・就労の補助
主な内容 手術・リハビリ 診察・保健指導・検査 義肢・車いす・補聴器等の購入費用の支給
対象者 障害等級の認定者 対象傷病ごとに要件あり(20傷病) 障害等級の認定者等
申請先 労基署→労働局長 労基署→労働局長 労基署→労働局長

アフターケア制度は、症状の再燃や悪化を防ぐための定期的な診察・保健指導・検査が中心です。対象傷病は限定されており、脊髄損傷、頭頸部外傷症候群(むち打ち症を含む)、慢性肝炎など20の傷病が指定されています。義肢等補装具費支給制度は、義手・義足・車いす・補聴器といった補装具の購入・修理費用を支給する制度で、外科後処置のような手術やリハビリではなく物品の購入に要する費用の支給が目的になる点が異なります。

例えば、業務災害で片足を切断した従業員のケースでは、義足の支給は義肢等補装具費支給制度、残存する関節機能の改善リハビリは外科後処置、定期的な断端部の検診はアフターケア制度というように、複数の制度を併用することも考えられます。従業員がどの制度に該当するか判断に迷った場合は、管轄の労基署に相談すると的確な案内を受けられるでしょう。

参考:アフターケア制度の概要|厚生労働省(宮城労働局)

外科後処置の申請で注意すべき点は?

外科後処置の申請手続きで見落としやすいポイントとして、費用負担と医療機関の制約が挙げられます。事前に把握しておけば、申請後のトラブルを避けられます。

診査表の作成費用は本人が負担する

様式第2号(診査表)の作成を医師に依頼する際の文書作成料は、被災労働者本人の自己負担です。この費用は労災保険の給付対象外のため、「労災なのに自己負担が発生するのはおかしい」と従業員から質問を受けることがあります。

担当者としては、申請前の段階で診査表の作成には自己負担が発生する旨を書面またはメールで伝えておくと、後から問い合わせを受ける手間を減らせます。

処置を受けられる医療機関は限られる

外科後処置を受けられるのは、労災病院・労災リハビリテーションセンター・労働局長が指定した医療機関に限られます。普段通っているかかりつけ医では受けられないケースも多いため、承認後に通院先を改めて確認する必要があります。

指定医療機関の一覧は、管轄の都道府県労働局に問い合わせると確認できます。従業員の自宅や職場からの通院しやすさも考慮し、複数の選択肢があれば比較して選ぶとよいでしょう。

「再発」との区別を事前に確認する

外科後処置はあくまで現在の障害を改善する処置であり、症状固定後に障害部位が再び悪化して新たな治療が必要になった場合は、再発として療養補償給付の対象になり得ます。

外科後処置と再発のどちらに該当するかによって申請書類や手続きが変わるため、判断が難しい場合は労基署の窓口で事前に相談しておくと二度手間を防げるでしょう。

外科後処置の申請に関するよくある質問

外科後処置の申請に関するよくある質問をまとめました。

Q. 外科後処置の申請から承認までどのくらいの期間がかかりますか?

案件により異なりますが、労基署から労働局長への進達や審査を経るため、一定の日数を要します。書類に不備があると差し戻しでさらに時間がかかるため、提出前のチェックが重要です。

Q. 診査表の作成費用はどれくらいかかりますか?

医療機関によって金額は異なり、労災保険からの補填はありません。正確な金額は依頼先の医療機関に事前に確認することをおすすめします。

Q. アフターケア制度との違いがよく分かりません。

外科後処置は手術やリハビリによって障害そのものを改善・軽減する制度であるのに対し、アフターケアは症状の悪化を防ぐための定期的な診察・保健指導が中心です。目的が異なるため、従業員の状態に応じてどちらの制度が適切か労基署に確認するとよいでしょう。

Q. 症状固定後に悪化した場合はどう申請すればよいですか?

障害部位が再び悪化して新たな治療が必要になった場合は、外科後処置ではなく再発として療養補償給付の対象になることがあります。判断に迷う場合は管轄の労基署に相談してください。

外科後処置の申請手続きを円滑に進めるために

外科後処置は、症状固定後も労災の枠組みでリハビリや手術を受けられる制度です。申請には障害(補償)等給付の決定が前提となり、様式第1号と診査表(様式第2号)を管轄の労基署に提出する手続きが必要になります。書類の記載漏れが差し戻しの主な原因となるため、提出前の確認が申請手続き全体の時間短縮につながります。まずは障害等級の認定状況を確認し、管轄の労基署に相談することから始めるとよいでしょう。


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