- 更新日 : 2026年6月16日
社会保険料を削減する方法とは?避けたほうがいい手法も解説
報酬の決まり方を踏まえて工夫すれば、健康保険・厚生年金などの負担を軽くできます。
従業員の手取りや給付に影響するため、事前の説明と同意を得てから進めるのが安心です。
企業のキャッシュフロー改善や従業員の手取り額向上を目的に、社会保険料の削減を目指す経営者は少なくありません。
一方で「社会保険料を削減するには具体的に何をすればいいのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
本記事では、社会保険料の基本から社会保険料を削減する方法、社会保険料を削減するメリット・デメリットなどを解説します。
社会保険料の仕組み
社会保険とは、健康保険や年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険といった、公的な保険を指します。
企業は一定の条件を満たす従業員を雇用する場合、これらの保険への加入が義務付けられており、その保険料を会社と従業員で分担して支払います。
社会保険料は毎年4月、5月、6月の3カ月間に支払われた給与の平均額「標準報酬月額」を基準に設定される仕組みです。
この給与には、基本給だけでなく残業手当や役職手当などの諸手当もすべて含まれます。
ここで決まった保険料は、原則としてその年の9月から翌年8月までの1年間適用され続けます。
ただし、昇給や降給などによって一定以上の報酬変動があった場合は、「随時改定(月額変更届)」により途中で変更されることがあるため注意しましょう。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
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社会保険料を削減する方法
社会保険料が設定される仕組みを踏まえて、以下のような工夫をすることで、保険料を削減できます。
4〜6月までの残業を抑える
毎年4月から6月の3カ月間の残業を削減することで、その年度の社会保険料を低く抑えられます。
社会保険料は、原則として4月、5月、6月の3カ月間に支払われた給与の平均額「標準報酬月額」を基準に決定されます。
この期間に残業代を抑制して平均給与を下げることで、結果として1年間の保険料の負担が軽減できるのです。
この3カ月間の残業時間を管理し、必要最小限に留めるよう業務の見直しを行いましょう。
また、残業の代わりに、有給休暇の取得やフレックスタイム制を活用して総稼働時間を調整するのもおすすめです。
昇給・昇進の時期を7月以降にする
通常4月に行われることが多い昇給や昇進のタイミングを、算定基礎期間(4月〜6月)を外れた7月以降に変更するのも有効です。
4月に昇給すると、その高い給与額が標準報酬月額に反映され、9月からの1年間の保険料が上がってしまいます。
昇給月を7月以降にずらせば、その年度の標準報酬月額に昇給分が含まれないため、社会保険料の支払額の上昇を遅らせることが可能です。
就業規則を改訂し、定期昇給の月を4月から7月以降に変更します。
ただし、昇給時期が遅れることは従業員にとって手取り額に影響するため、十分な説明を行い、同意を得ておきましょう。労使トラブルを防ぐうえでも大切です。
給与額は「等級」を意識して設定する
社会保険料が決定される基準となる「標準報酬月額の等級表」を確認し、等級の境界ギリギリに、給与額を設定する手法です。
社会保険料は、実際の標準報酬月額に直接比例するのではなく、「○○円以上○○円未満」という一定の幅(等級)ごとに固定の金額が定められています。
報酬がわずか1円違うだけで等級が1つ上がり、保険料が月額数千円単位で跳ね上がることもあります。
等級の境界線を意識して「○○円未満」の範囲内に報酬を収まるよう設定すれば、1つ低い等級の保険料を適用させることが可能です。
一方、社会保険料の等級を下げると、従業員が将来受け取る老齢厚生年金の受給額の減少や、病気や怪我の際の傷病手当金の給付額の減少にもつながります。
給与を調整する場合は、事前に従業員へ説明をし、同意を得ておきましょう。
非課税手当や福利厚生を活用する
給与の一部を、社会保険料の算定対象外となる非課税手当や福利厚生費に置き換えることでも社会保険料を抑えられます。
社会保険料は、基本給や諸手当を含む報酬の平均額に基づいて決まりますが、特定の福利厚生費や実費精算的な手当は報酬に含まれず、非課税とみなされるためです。
これらを活用して額面給与を抑えることで、標準報酬月額の等級が下がり、社会保険料の負担を軽減できます。
具体的には、以下のような非課税手当や福利厚生を提供するといいでしょう。
- 出張手当
- 社宅制度
- 人間ドック
- 慶弔見舞金 など
住宅手当や食事補助など、一部福利厚生は非課税として認められないケースもあるため、どれが福利厚生費として計上できるのか理解しておきましょう。
なお、以下の記事では福利厚生について詳しく解説しています。カテゴリ別の福利厚生例や福利厚生を充実させるメリットなどを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
企業型確定拠出年金を導入する
従業員の将来の資産形成を支援する年金制度「企業型確定拠出年金」を導入するのも社会保険料を抑える手法としておすすめです。
確定拠出年金の掛金は、従業員への報酬には該当しません。そのため、従業員が給与の一部を掛金として積み立てる場合、その分だけ標準報酬月額が下がり、社会保険料を抑えられます。
なお、企業型確定拠出年金の導入には、厚生労働局への申請や規程の作成が必要です。
専門知識がなく、何をすればいいのかわからないという場合は、実績豊富な金融機関やファイナンシャルプランナー、社労士に相談して導入を進めていきましょう。
従業員の退職日を「月末の前日」にする
従業員の退職手続きを行う際、退職日を月末の最終日ではなく、その1日前に設定することでも社会保険料を抑えられます。
社会保険料は「月末時点で在籍している場合」に、その月1カ月分の保険料が発生します。
健康保険等の資格喪失日は「退職日の翌日」であるため、月末の前日に退職すると、月末時点で在籍していたとはみなされず、その月分の保険料負担がなくなるのです。
月末が31日ならば、退職日を30日となるよう退職予定者と相談して調整を進めましょう。
一方、会社側と従業員側双方で社会保険料の負担が抑えられる代わりに、従業員は退職月分の国民年金や国民健康保険を請求されます。
この説明を怠ると、退職後に本人へ高額な請求が届き、会社への不信感やトラブルを招く恐れがあるため、事前に説明のうえ同意を得ておきましょう。
従業員の入社日を「その月の最初の営業日」にする
新規採用者の入社日を、月の途中や月末ではなく、その月の最初の営業日に設定することでも社会保険料を抑えられます。
社会保険料は、「月末時点で在籍しているか」を基準に1カ月単位で発生します。
3月31日に入社すると、たとえ1日だけの在籍であっても、会社と従業員の双方が3月分の保険料を支払わなければいけません。
月末近くの入社を翌月初に調整し、月末時点での在籍を避けることで、その月分の社会保険料負担を回避できます。採用内定者との調整段階で、入社日を月の初日に設定するよう合意を得ておきましょう。
また、入社を待ってもらう期間は給与が発生しないことも説明するなど、従業員側と十分なコミュニケーションを取っておくのも、信頼を構築するうえでも大切です。
社会保険の適用要件を踏まえた雇用形態を検討する
正社員よりも労働時間や日数が少ないパート・アルバイトや、雇用関係のない業務委託を活用する手法もおすすめです。
社会保険には、労働時間や日数などのいくつかの加入条件があります。
基準に達していない短時間労働者や社会保険の提供義務のない業務委託者と契約することで、企業側の社会保険料負担を抑えられます。
パートやアルバイトの社会保険料を抑える際には、正社員の労働時間・日数の4分の3未満になるよう管理しましょう。
ただし、4分の3ルールに満たないパートやアルバイトであっても、一定の条件下では社会保険の加入義務が課せられるため注意が必要です。
なお、4分の3ルールについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
協会けんぽではなく健康保険組合を選択する
国が運営する「協会けんぽ」から、特定の業界団体などが運営する「健康保険組合(組合健保)」へと切り替えるのも有効です。
社会保険の加入先には、大きく分けて協会けんぽと健康保険組合の2種類があり、それぞれの特徴を踏まえて、企業側はどちらに加入するのかを選択できます。
一方、健康保険組合は、それぞれの組合が独自に保険料率を設定することが可能です。
特定の業界の組合は、加入者の平均年齢が若いなどの理由で、協会けんぽよりも保険料率が低く設定される傾向にあります。
そのため、健康保険組合に加入するだけで、企業側と従業員側双方の保険料負担を軽減できます。
自社の業種・業界に健康保険組合が存在するのかを確認し、現在の協会けんぽの料率と比較してみましょう。
避けたほうがいい社会保険料の削減方法
以下のような社会保険料を削減する方法は、日本年金機構から否認されやすいため、避けたほうがいいでしょう。
毎月の役員報酬を低く抑えて、賞与を高額にする
役員報酬の月額を10万円以下などの極端に低い金額に設定し、本来の年収の大部分を年1〜2回の高額な賞与として支払う手法です。
たとえば、年収1200万円の場合、月給10万円(年間120万円)とし、残りの1080万円を一度に賞与として支給する体制を指します。
賞与に対する社会保険料には、以下のような上限が設けられています。
- 健康保険:賞与の年間累計額 573万円
- 厚生年金:1回あたりの賞与額 150万円
この上限を超える部分には、保険料がかからないため、報酬を賞与に偏らせることで、総年収を変えずに保険料だけを大幅に削減できるのです。
しかし、近年この手法は「保険料逃れの手法である」と問題視されており、規制される見込みがあります。
役員報酬と賞与のバランスを再検討し、制度が改正される前に適切な体制を整えておきましょう。
業務委託と雇用を併用する
一人の人物に対し、給与と業務委託料を分けて支払うことで、社会保険料の対象範囲を縮小させる手法です。
社会保険料は給与に対してのみ発生するため、業務委託料として切り出した分だけ保険料負担を抑えられます。
ただし、同一人物が同一の会社に対して、雇用としての業務と委託としての業務を明確に分離することが困難になる点には注意が必要です。
また、支払元が同じで業務内容に実質的な区別がない場合、単に社会保険料を削減するための偽装雇用や契約操作とみなされる恐れもあります。
社会保険料を抑えたい場合は、すでに雇用している従業員と業務委託契約を結ぶのではなく、新しくフリーランスと契約を結ぶようにしましょう。
社会保険料を削減するメリット
社会保険料を削減することで、企業側と従業員側双方に以下のようなメリットがあります。
キャッシュフローに余裕を持てる
社会保険料は企業にとって大きな固定費であり、その負担を軽減することで、手元に残る現金を増やせます。
社会保険料の削減によって生まれた余剰資金を、設備投資や社員教育プログラム、新規事業などの事業成長に深くかかわる分野に投資できるようになるでしょう。
また、資金繰りに余裕がでることで、市場の変化に対しても即座に対応できるようになるのも利点です。
積極的な事業拡大を計画している企業や設備投資・人材育成に多くの資金を投入したいと考えている企業に、社会保険料の削減は大きな効果があると言えます。
財務状況が改善する
社会保険料の削減は、企業全体で必要経費削減にもつながり、貸借対照表や損益計算書上の財務状況も改善します。
財務状況が改善することで、金融機関や投資家からの信頼も向上します。
これにより、より有利な条件で融資が受けられるようになるなど、資金調達の面で大きな恩恵が得られるでしょう。
財務状況に余裕が生まれることで、他国の経済摩擦や紛争といった不測の事態に対しても対応できるようになり、事業の継続性も高まります。
従業員の手取り額を増やせる
社会保険料は原則として、会社と従業員で半分ずつ負担するため、保険料を削減することで従業員の手取り額向上につながります。
自由に使えるお金が増えることで、家計のゆとりを生むだけでなく、従業員のモチベーション向上や自社へのエンゲージメント強化に寄与するでしょう。
また、確定拠出年金の導入や組合健保への切り替えなどは、将来の資産形成や福利厚生の充実を伴いながら手取りを増やす効果があります。
そのため、特定の社会保険料を削減する手法では、単なるコストカットに留まらず、従業員への還元も実現できます。
社会保険料を削減するデメリット
社会保険料を削減するにあたって、以下のようなデメリットがあることを把握しておきましょう。
従業員の年金や各種手当が減少する
社会保険料は標準報酬月額に基づいて算出されるため、これらを下げて保険料を抑制すると、将来従業員が受け取る年金や各種手当も連動して減少する恐れがあります。
たとえば、厚生年金の受給額は現役時代の平均給与額に基づいて計算されるため、標準報酬月額が低い期間が長いほど、将来受け取る年金額が少なくなります。
ほかにも、病気や怪我で休業した際の「傷病手当金」や、産休中の「出産手当金」も、標準報酬月額を基に算出されているため、給付額減少のリスクがあるのです。
この点に不安を覚える従業員がいると、社会保険料を削減する取り組みは定着率に悪影響がでるかもしれません。
従業員と労使間トラブルにつながる恐れがある
会社側の都合だけで社会保険料を削減しようとすると、従業員との信頼関係が損なわれたり、労働条件の不利益変更に伴う法的な紛争を招いたりする恐れがあります。
社会保険料を削減する手法の中には、従業員の給与額を減らしたり、労働条件を悪化させたりする必要があるものも少なくありません。
こうした手法を従業員の個別同意や就業規則の改定を伴わずに実施すると、労使トラブルや行政指導の原因になるでしょう。
そのため、社会保険料削減の手法を実践する際には、必ず従業員に説明を行い、同意を得たうえで進めていくことが不可欠です。
社会保険料を削減する手法として、社宅系福利厚生の整備がおすすめです。社宅制度の導入・運用でお悩みの方は、マネーフォワードのクラウド福利厚生をぜひご検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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