• 更新日 : 2026年4月9日

扶養家族の収入はいくらまで?年収の壁の範囲や130万円を超えた場合を解説

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扶養家族の収入上限は、税制上と社会保険上で基準が異なります。令和8年税制改正大綱により、税制上の扶養ライン(所得税)は「123万円」から「136万円(令和8・9年分)」に引き上げられます。一方、社会保険の扶養基準「130万円」は今回の改正では変更されていません。

ただし、どちらも「収入に何を含めるか」のルールが異なります。交通費・失業給付の扱いや一時的な増収への対応を誤ると、従業員に不利益が生じる場合があります。

この記事では、「収入の上限額」と「含まれる範囲の違い」に加え、近年導入された「年収の壁・支援強化パッケージ」や「別居家族への仕送り要件」まで、実務に必要な知識をわかりやすく解説します。

※本記事の内容は2025年12月公表の税制改正大綱をもとにしています。税制改正大綱は自民党が毎年12月頃に発表する改正のドラフトであり、国会での審議を経て翌年春頃に法律として制定されます。最終的に制定された法律の内容と異なる場合があります。

目次

扶養家族の収入はいくらまで?

扶養家族の収入上限は、税制上は「年収136万円(令和8・9年分)」、社会保険上は「年収130万円(または106万円)」に分かれます。

Point「税制上」と「社会保険上」とは?
  • 税制上(所得税・住民税所得税法・地方税法のルール。扶養に入れるかどうかで、扶養する側(主に会社員の夫や妻)が受けられる「扶養控除」「配偶者控除」の金額が変わる。判定は1月〜12月の年間実績で行う。
  • 社会保険上(健康保険・年金)
    健康保険法などのルール。扶養に入れると、扶養される側は保険料を払わずに健康保険の給付を受けられたり、年金が保障される。判定は「今後1年間の見込み収入」で行う。

これらは単に金額が違うだけでなく、「いつからの期間で見るか」「交通費を含むか」といった計算ルールも異なります。まずはこの2つの違いを理解しましょう。

区分 基準額 令和8年(2026年)改正
税制上(所得税)の扶養ライン 年収 136万円
(令和8・9年分)
123万円 → 136万円に引き上げ
本人に所得税がかからないライン 年収 178万円
(令和8・9年分)
160万円 → 178万円に引き上げ
社会保険上の扶養ライン
(従業員51人以上など特定条件)
年収約 106万円 変更なし
社会保険上の扶養ライン(原則) 年収 130万円 変更なし

税金(所得税)がかからないのは給与年収178万円まで

給与年収で「178万円」以下であれば、本人に所得税が発生しません(令和8・9年分の特例適用の場合)。

これは、誰にでも適用される「基礎控除(最大104万円)」と、給与所得者向けの「給与所得控除(最低74万円)」を足した合計額が178万円であるためです。この金額を超えなければ、課税所得がゼロとなり所得税は発生しません。

ただし、合計所得金額によって基礎控除の額は段階的に変わるため、一律に104万円が適用されるわけではありません。合計所得が489万円を超える場合は特例加算額が少なくなります。

いわゆる「178万円の壁」と呼ばれ、このラインを超えると本人に所得税がかかります。

また、給与収入で136万円以下であれば、扶養控除が適用されるため、こちらは「136万円の壁」と呼ばれています。なお、判定期間は「その年の1月1日から12月31日までの実績」です。

この178万円や136万円は、令和8年税制改正大綱に基づく数字で、所得税は令和8年分以後、住民税は令和9年度分以後が適用対象です。令和7年税制改正後は160万円・123万円に引き上げられており、それ以前はどちらも103万円でした。

実務上の注意月次源泉徴収への反映タイミング
  • 令和8年度の引き上げ分は、令和8年分(2026年)の月次源泉徴収には反映されず、年末調整で精算されます。改訂された源泉徴収税額表を使った月次源泉徴収への反映は令和9年(2027年)1月以降となります。給与計算システムの設定変更タイミングにご注意ください。

社会保険(健康保険・年金)の扶養は年収130万円未満まで

原則として年収「130万円」未満であることが条件です。ただし、勤務先によっては「106万円」が壁になるケースがあります。

健康保険法などの規定により、被扶養者として認定されるには「年間収入130万円未満、かつ被保険者の年収の2分の1未満」を満たす必要があるからです。

ここでの重要なポイントは、過去の実績ではなく「向こう1年間の見込み年収」で判断する点です。

  • 130万円の壁: すべての人が対象です。月額換算で108,334円以上の収入が継続すると見込まれる場合、扶養から外れます。
  • 106万円の壁: 従業員数51人以上の企業で働くなど特定条件を満たすパートタイマーは、年収約106万円(月額8.8万円)以上で勤務先の社会保険への加入義務が生じます。

 

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扶養家族の収入に失業保険や年金は含まれる?

「給与以外の収入」として代表的なのが、失業保険や公的年金、休職手当です。これらは税金がかからない(非課税)ケースが多いものの、社会保険の扶養判定では「収入」としてカウントされます。

「税金がかからないから扶養も大丈夫」という思い込みは危険ですので、それぞれの扱いを詳しく見ていきましょう。

失業給付(基本手当)受給中は、原則として社会保険の扶養に入れない

失業給付受給中は、原則として社会保険の扶養に入れません。一方で、税法上の扶養には影響しません。

失業給付は非課税所得であるため、税法上の「合計所得金額」にはカウントされませんが、社会保険上は生活費を補填する「公的な収入」とみなされるためです。

注意すべきは、年収総額ではなく「日額」で判断される点です。

雇用保険の基本手当(失業給付)の日額が3,612円(60歳以上は5,000円)以上の場合、年収換算すると130万円を超える(3,612円×360日≒130万円)計算となり、実際に受給している期間中は扶養から外れる手続きが必要です。

給付終了後や、給付制限期間中、待機期間中などの無収入期間は、再度扶養に入ることができます。

遺族年金・障害年金は、社会保険上の収入に含まれる

遺族年金・障害年金は社会保険上の収入に含まれるため、受給額によっては扶養に入れない場合があります。

失業給付と同様、遺族年金や障害年金は非課税(税金がかからない)ですが、社会保険の扶養認定においては収入として合算する必要があるからです。

特に60歳以上の親御さんを扶養に入れる場合、社会保険上の年収基準額は「180万円未満」に緩和されますが、課税対象の老齢年金だけでなく、非課税の遺族年金も含めた合計額が180万円を超えていないかを確認する必要があります。

傷病手当金・出産手当金も、社会保険上の収入に含まれる

休職中の手当金(傷病・出産)は、社会保険上の収入に含まれます。

傷病手当金や出産手当金は、給与の代わりとして支給される生活保障の性質を持つため、社会保険上は収入とみなされます。

よくある誤解として「育休中で会社から給料が出ていないから、夫の扶養に入ろう」と考えるケースがありますが、出産手当金等の日額が3,612円を超えている期間については、社会保険の被扶養者になることはできません。

扶養家族の収入に交通費は含まれる?

結論から言うと、税金の計算では交通費は一定額まで非課税ですが、社会保険の判定では交通費も給与の一部として合算しなければなりません。

この違いを正しく理解していないと、知らないうちに扶養基準を超過してしまうリスクがあります。

交通費は、税制上は除外・社会保険上は含む

通勤手当は、税金計算では「含みません」が、社会保険計算では「含む」のが鉄則です。

税法上、通勤手当は一定額まで非課税ですが、社会保険では「労働の対価として支払われるすべて」を報酬とみなすためです。

  • 税法(136万円の壁など): 交通費を除いた「給与収入」のみで計算する。
  • 社会保険(130万円の壁など): 交通費を含んだ「総支給額」で計算する。

交通費を含めると130万円を超えるケースがある

基本給が扶養の範囲内であっても、交通費を足すと130万円の壁を超えてしまうケースがあります。

社会保険の認定は、手取り額ではなく、交通費などの手当を含めた「総支給額」で行われるからです。

例えば「月給10万円、交通費1万円」のケースで見てみましょう。

  • 月収:10万円 + 1万円 = 11万円
  • 年収換算:11万円 × 12ヶ月 = 132万円

このように、給与自体は月10万円でも、交通費を含めると年収130万円の基準を超えてしまうため、社会保険の扶養から外れることになります。

扶養家族の収入に株の利益や不動産収入は含まれる?

資産運用によって得た利益も、条件によっては「扶養家族の収入」としてカウントされ、扶養から外れる原因となります。

特に株式投資は「確定申告をするかしないか」によって、扶養判定への影響が変わるため注意が必要です。一方、不動産収入は金額の大小にかかわらず「継続的な収入」として厳格に審査される傾向にあります。

それぞれの判定基準を確認しましょう。

株は「特定口座(源泉徴収あり)」なら、原則として扶養に影響しない

「特定口座(源泉徴収あり)」を選択していれば、原則として扶養には影響しません。

源泉徴収ありの特定口座内で課税関係が終了しており、確定申告をしなければ「合計所得金額」に含まれないためです。

注意が必要なのは、損益通算などを目的としてあえて確定申告をした場合です。申告を行うと、その利益が「所得」として表面化するため、税法上の扶養から外れたり、国民健康保険料が上がったりする「申告によるデメリット」が生じる可能性があります。

不動産収入は、継続的な収入として扶養判定の対象になる

継続的な収入としてカウントされ、扶養判定の対象になります。

不動産収入は一時的なものではなく、生活を維持するための恒常的な収入とみなされるからです。

個人事業主と同様、社会保険の判定においては減価償却費を経費として引けないことが多いため、手元に残る現金(キャッシュフロー)ベースに近い金額で130万円の壁を判定することになります。

扶養家族の収入が副業・自営業にある場合、売上と所得どちらで判定する?

近年増えているフリーランスや副業を持つ配偶者についても、「扶養家族の収入」の認定基準は複雑です。

最大の注意点は、税金と社会保険で「経費」の認められ方が異なることです。税法上は経費として引けるものが、社会保険では認められず「収入」とみなされるケースがあります。

「確定申告で所得が低いから大丈夫」と安心していると、後から扶養を取り消されるリスクがあるため、それぞれの基準を明確に区別する必要があります。

フリーランス・個人事業主の収入基準

税金は「所得」で判断しますが、社会保険は「売上から直接的経費のみを引いた額」で判断される傾向にあります。

健康保険では、税法上認められている「減価償却費」を、社会保険上の経費として差し引くことを認めていないためです。

税金の計算では「売上-経費=所得」が低く抑えられていても、社会保険の審査では「その事業になくてはならない経費(仕入れ等)」しか引けないケースが大半です。

結果として、「確定申告上の所得は130万円以下だが、社会保険上の認定収入は130万円オーバー」となり、扶養を否認されるケースがあります。必ず加入先の健康保険の規定を確認してください。

確定申告の内容が扶養に与える影響

確定申告書に記載された「合計所得金額」が、そのまま税法上の扶養判定に使われます。

配偶者控除や扶養控除を受けられるかは、その年の1月〜12月の「合計所得金額(62万円以下など)」で決まるからです。

副業をしている場合、給与所得と事業所得(または雑所得)を合算した金額で判定します。

経費を正しく計上し、領収書を保管しておくことが、正しい扶養判定につながります。

扶養家族の収入が一時的に130万円を超えてしまった場合はどうする?

通常、見込み年収が130万円以上になると扶養から外れる必要がありますが、人手不足対策の一環として「一時的な収入増」であれば扶養にとどまれる特例措置があります。

これは「年収の壁・支援強化パッケージ」と呼ばれるもので、意図せず扶養家族の収入が増えてしまった場合のセーフティーネットとして機能します。ただし、適用には厳格な条件と手続きが必要です。

参照:年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省

事業主の証明があれば、連続2年間は扶養にとどまれる

「年収の壁・支援強化パッケージ」とは、事業主が証明すれば、連続2年までは130万円以上となっても扶養にとどまれる制度です。

これは2023年10月から開始された国の施策で、人手不足による残業などで一時的に収入が増えた人が、働き控え(就業調整)をしなくて済むように作られました。

ただしあくまで「一時的な増収」が対象である点に注意してください。基本給のアップや、恒常的な契約時間の変更によって恒常的に130万円以上となった場合は対象外となります。

手続きは勤務先から証明書を発行してもらい、扶養者の会社へ提出する

パート先などの勤務先から「事業主の証明書」を発行してもらい、扶養者の会社へ提出します。

  1. 被扶養者(妻など):自分の勤務先に「一時的な収入変動に係る事業主の証明書」を作成してもらう。
  2. 扶養者(夫など):その証明書を、被扶養者の収入確認や新たな扶養認定の際に提出する。

これにより、社会保険の扶養資格を失わずに済みます。

別居している家族を扶養するための仕送り条件は?

扶養家族の収入が基準(130万円未満)をクリアしていても、別居している場合はそれだけでは扶養認定されません。

同居と異なり、別居の場合は「経済的援助を行うことで、相手の生活が成り立っている(生計維持関係)」ことを客観的に証明する必要があるからです。

被扶養者の年収を超える額の仕送りが必要

年収要件に加え、原則として「被扶養者の収入を超える額」を仕送りする必要があります。

別居家族の生活費の半分以上を援助していなければ、「主として扶養者が生計を維持している」とはみなされないのが通例だからです。

具体的には「仕送り額 > 別居家族の年収」という図式が成り立つ必要があります。

例えば、別居している親に年金収入が年80万円ある場合、それを上回る年80万円超(月額約6.7万円)の仕送りが求められます。

※加入する健康保険によっては「下限額(例:月5万円以上など)」を別途定めている場合もあるため、必ず規定を確認しましょう。

仕送りは銀行振込など記録が残る方法に限られる

仕送りは必ず「銀行振込」や「現金書留」など、第三者の記録が残る方法で行う必要があります。

手渡しでは、「いつ、誰が、いくら渡したか」の客観的な証拠がなく、扶養の事実(実績)として認められないケースが多いためです。

定期的な調査(検認)の際には、過去に遡って「振込明細書」や「通帳の写し」の提出を求められます。

「帰省した時に手渡しした」という月は仕送り実績としてカウントされないリスクが高いため、面倒でも必ず記録に残る方法で送金を行うことが重要です。

扶養家族の収入に含まれる範囲を理解し、正確な実務対応をしよう

「扶養家族の収入」を正しく判定するために重要なのは、「税金(136万円の壁・令和8年分以後)」と「社会保険(130万円の壁)」では、収入とみなす範囲が全く異なるという事実を常に意識することです。

まず、実務で最も間違いが多いのが「交通費」です。税金の計算では交通費を除外できますが、社会保険上では交通費を含んだ「総支給額」で判定します。

次に注意すべきは、「失業給付・遺族年金」などの非課税収入です。これらは税金がかからないため税法上の判定には含まれませんが、社会保険では「生活費」として収入にカウントされます。特に失業給付は「日額」で判定されるため、受給中は扶養を外れるケースが大半です。

一方で、「株の譲渡益」は、確定申告をしない限り(源泉徴収あり特定口座)、どちらの判定にも含まれません。また、「一時的な増収」については、社会保険側のみ「事業主の証明」があれば2年間扶養にとどまれる救済措置が用意されています。

従業員から「扶養に入れますか?」と相談された際は、まず「それは税金の話ですか?保険証の話ですか?」と聞き返し、それぞれの基準に照らし合わせて適切な案内ができるようにしましょう。

参照:令和8年度税制改正の大綱|財務省

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