- 更新日 : 2026年7月3日
【令和8年】処遇改善加算とは?旧制度からの変更点と要件を解説
介護職員等の賃金改善を目的とした制度が見直され、対象となるサービスや職種が広がります。
- 訪問看護や居宅介護支援など対象サービスが拡大される
- 加算Ⅰ〜Ⅳの区分ごとにキャリアパス要件や職場環境等要件を満たす
- 計画書と実績報告の不整合は加算分の返還につながる
提出期限や様式は指定権者ごとに異なるため、最新の通知を確認しておきましょう。
処遇改善加算は、介護職員等の賃金改善や、職場環境の整備を目的とした制度です。人手不足が続く介護サービス職員の採用や、待遇向上を図るために開始されました。
令和8年度に改定が実施され、従来よりも対象となるサービスが拡大し、要件や緩和措置が設けられました。
本記事では、処遇改善加算の概要から、令和8年度の変更点、対象となる事業所・職種を解説します。また、経営者や人事労務担当者向けに、細かい算定要件や計算方法、申請・実績報告の注意点についても解説します。
目次
処遇改善加算とは?
処遇改善加算とは、介護や福祉の現場で働く職員の賃金を改善するため、介護報酬や障害福祉サービス等報酬に上乗せされる加算制度です。事業所は加算で得た収入を、職員の給与や手当に充てる必要があります。
制度の目的
処遇改善加算の目的は、介護・福祉分野の人材確保と、定着を進めることです。介護や福祉の現場では、人手不足や賃金水準の低さが課題となっています。
そこで、事業所への介護報酬を上乗せし、介護職員の処遇を改善するため、加算制度がつくられました。具体的には、以下の3点を目指しています。
- 職員の給与や手当を改善する
- 経験や技能に応じたキャリア形成を支える
- 働きやすい職場環境を整える
加算収入は、職員の賃金改善に使うものです。制度の趣旨に沿って最大限活用できるよう、支給方法や管理体制を事前に決めておきましょう。
旧制度との違い
令和6年度の報酬改定より以前、処遇改善加算制度は、次の3制度に分かれていました。この時の改定により、旧3制度が一本化された形になります。
- 介護職員処遇改善加算
- 介護職員等特定処遇改善加算
- 介護職員等ベースアップ等支援加算
一本化のねらいは、制度をわかりやすくし、事業所の事務負担を軽くすることです。
また、一本化後も、各制度の要件自体はなくなっていません。キャリアパス要件や職場環境等要件を満たし、計画書・実績報告書を提出する必要があります。
処遇改善手当について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
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令和8年度の変更点
令和8年度からは、処遇改善加算の対象範囲や、評価方法が見直されます。対象職種の拡大、訪問看護などへの新設、特例要件の扱いは押さえておくべきポイントです。
令和8年度改定の概要
令和8年度の見直しでは、介護・福祉に従事する職員全体の処遇改善を、さらに強める方向性が示されています。
以前の制度は、介護職員を対象に設計されていました。しかし、令和8年度の見直し以後は、介護サービスを支える従事者全体へ対象を広げています。
改定に際して、確認すべき項目は以下のとおりです。
- 自社のサービスが対象に含まれるか
- 取得できる加算区分に変更があるか
- 職員への配分ルールを見直す必要があるか
- 計画書や体制届の様式が変わるか
- 提出期限や提出先に変更があるか
改定のタイミングで、自治体ごとに書類の様式や提出方法が更新されるケースは珍しくありません。厚生労働省の通知だけでなく、指定権者のWebサイトも確認しましょう。
対象サービスの拡大
令和8年度は、これまで対象外だった一部サービスにも、加算が設けられる見込みです。具体的には、以下のサービスが対象となります。
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅介護支援
- 介護予防支援
上記のサービスは、施設系サービスと人員配置や職種構成が異なります。従来の配分をそのまま当てはめず、算定要件と対象職種を分けた整理が必要です。
たとえば、訪問看護ステーションでは、看護師やリハビリ職が主な従事者となります。対象サービスに該当する事業所は、自治体の体制届やサービスコード、加算率を確認したうえで、制度への対応準備を進めましょう。
特例要件・緩和措置
令和8年度への対応では、特例要件や緩和措置の有無を、早めに把握するのが大切です。
報酬改定の前後には、事業所が新しい制度へ移行しやすいよう、一定期間の経過措置が設けられる可能性があります。要件の一部は、期限までに対応する前提で、先に届出できる扱いになっているケースも少なくありません。以下の項目を確認し、計画的に準備を進めましょう。
- キャリアパス要件の適用タイミング
- 職場環境等要件への対応期限
- 計画書様式の変更点
- 加算区分の移行ルール
- 提出期限と提出先
緩和措置があっても、要件対応そのものを省略できるわけではありません。就業規則、賃金規程、研修計画などを期限までに整える前提で運用される点に注意が必要です。要件ごとに対応日と証拠書類を管理しておきましょう。
処遇改善加算の対象となる事業所・職種
処遇改善加算の対象は、サービス種別と職員の業務内容で判断しましょう。とくに令和8年度は、対象サービスの見直しがあるため、最新の制度に則った判断が必要です。
対象のサービス
対象となるのは、介護保険サービスや障害福祉サービスのうち、制度上認められた以下のサービスです。
- 訪問介護
- 通所介護
- 短期入所生活介護
- 介護老人福祉施設
- 認知症対応型共同生活介護
- 生活介護
- 就労継続支援
- 放課後等デイサービス
令和8年度改定で、訪問看護や訪問リハビリテーション、居宅介護支援なども制度の対象となりました。具体的に自社が対象となるかについて判断に迷う場合は各自治体窓口での相談をおすすめします。
対象となる職員
対象となる職員の範囲は、加算の種類やサービスによって変わります。基本は、介護職員や福祉・介護職員が中心です。しかし、今回の制度改定により、事業所で働くほかの職種への配分範囲も整理されてきています。
対象になり得る職種の例は、以下のとおりです。
- 介護職員
- 生活支援員
- 児童指導員
- 保育士
- サービス提供責任者
- 看護職員やリハビリ職従事者
- 事務職や調理員など
パート・非常勤職員の扱い
パートや非常勤職員も、対象業務に従事していれば、配分対象になる場合があります。判断の基準は、正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態によりません。実際に担当している業務内容によって、対象か判断します。
たとえば、週3日勤務の介護職員が対象サービスで直接支援を行った場合、処遇改善の対象に含められる可能性があります。一方、対象外業務だけを担当する職員へ根拠なく配分すると、対象から外されかねません。
パートや非常勤職員に限らず、加算した分は毎月の給与に上乗せ、手当、賞与などの方法で補填しましょう。就業規則や賃金規程と整合するか、確認も必要です。
処遇改善加算の加算区分と算定要件
処遇改善加算は、区分ごとに加算率と要件が異なります。上位区分ほど高い加算率を見込める一方で、キャリアパスや職場環境のような、厳しい要件の達成が必須です。
加算区分の違い
処遇改善加算は、加算Ⅰから加算Ⅳまでの区分に分けられます。上位区分ほど加算率が高く、求められる要件も多くなる仕組みです。下位区分は上位区分と比較すると取得しやすい反面、賃金改善に使える原資は少なくなります。
現在の区分から、上位の区分に移りたい場合は、以下の手順で対策しましょう。
- 現在取得している区分を確認する
- 上位区分に必要な、不足している要件を洗い出す
- 不足している要件の整備にかかる期間を見積もる
- 令和8年度の移行ルールを確認する
加算率だけで判断すると、書類整備や実績報告の負担が増える場合があります。自社の人員体制と事務対応力を踏まえて、取得区分を決めましょう。
キャリアパス要件
キャリアパス要件とは、職員が経験や技能に応じて成長し、結果に伴って処遇を向上させる要件です。適用の基準は、以下のとおりです。
- 職位や職責に応じた任用要件があるか
- 賃金体系が就業規則などに明記されているか
- 研修の機会や資格取得の支援があるか
- 経験や技能のある職員を評価する制度があるか
形式的に書類をそろえるだけでは、制度として機能しません。実際の昇給や配置とつなげて運用することが大切です。
職場環境等要件
職場環境等要件は、賃金以外の面から働きやすさを改善する要件です。主に、以下の取り組みが対象となります。
- 入職を促す取り組み
- 資質向上やキャリアアップの支援
- 仕事と家庭の両立支援や多様な働き方の推進
- 腰痛対策や健康管理
- 生産性向上のための業務改善
- 職場内のコミュニケーション改善
具体的な実務例には、記録業務のICT化、申し送り方法の見直し、研修動画の活用などが挙げられます。実施した取り組みは、日付・対象者・内容を記録し、実績報告時の資料として活用しましょう。
処遇改善加算の計算方法
処遇改善加算は、サービスごとの総単位数に、加算率を掛けて算出します。計算式はシンプルですが、加算率や端数処理、利用者負担への影響まで考慮が必要です。
基本の計算式
処遇改善加算の基本的な計算は、次の流れで行います。
- 1か月分の介護報酬の総単位数を集計する
- サービス別の加算率を確認する
- 総単位数に加算率を掛ける
- 地域区分の単価を反映させる
- 算出した加算額を賃金改善の原資にする
計算式は次のとおりです。
処遇改善加算の単位数=総単位数×加算率
たとえば、総単位数が100,000単位、加算率が10%の場合、加算単位数は10,000単位になります。
加算率の確認方法
加算率は、サービス種別と加算区分の組み合わせで、結果が変わる仕組みです。自社のサービスに対応した加算率一覧を確認し、計算に使う値を探しましょう。
確認に使えるソースの一例は、次のとおりです。
- 厚生労働省の通知や告示
- 自治体の処遇改善加算ページ
- サービスコード表
- 介護報酬改定に関する関連資料
- 請求ソフトのマスタ情報
計算の際は、古い年度の加算率を使わないようにしましょう。令和8年度の見直しによって、区分や対象サービスが変わった場合、令和7年度以前の表をそのまま使うと計算誤りにつながります。
端数処理・利用者負担
処遇改善加算は介護報酬に上乗せされるため、サービスの利用者負担が増える場合もあります。利用者負担を増やす場合は、以下の項目を実行しましょう。
- 単位数計算の端数処理を確認する
- 請求ソフトの設定を最新の状態にしておく
- 重要事項説明書や料金表を見直す
- 利用者への説明文を準備しておく
端数処理を手計算だけで管理すると、請求額と説明額に差が生じかねません。また、加算後の料金表は、サービス別と負担割合別に整理しておくと、窓口での説明がスムーズに済みます。
処遇改善加算を取得・継続するための手続き
処遇改善加算を取得・継続するには、計画書の提出と実績報告が必要です。年度ごとの提出期限、様式、提出先を確認し、社内で逆算したスケジュールを立てます。給与担当、管理者、人事担当が連携できる体制も整えておきましょう。
申請の流れ
申請は、必要書類を整えて指定権者へ提出する流れで進めます。
一般的な手順は次のとおりです。
- 取得する加算区分を決める
- 算定要件を満たしているか確認する
- 賃金改善の配分方法を設計する
- 処遇改善計画書を作成する
- 体制届や添付書類を提出する
- 算定開始後、職員へ実際に支給する
- 年度終了後に実績報告書を提出する
年度途中で新規取得する場合や、区分変更を行う場合は、別途の提出期限が設けられるケースもあります。自治体によって電子申請・メール・郵送など提出方法も変わるため、指定権者の案内を確認してから、申請を始めましょう。
計画書の作成ポイント
計画書では、加算見込額と、賃金改善見込額の整合性を説明することになります。加算で得た収入の目的は、職員の賃金改善に充てることです。そのため、誰に・どのような方法で・どの程度支給するかを、計画書上で明記する必要があります。
作成時の確認項目は、次の通りです。
- 対象となる職員の範囲
- 給与への上乗せ、手当、賞与などの支給方法
- 賃金改善の見込額
- キャリアパス要件の整備状況
- 職場環境等要件への取り組み内容
- 就業規則や賃金規程との整合性
加算見込額だけを入力し、配分方針を社内で共有しないまま提出するのは避けましょう。計画書の作成後は、管理者・人事担当・給与担当で内容を精査したうえで、提出するのが確実です。
実績報告の注意点
実績報告は、加算収入を賃金改善に使った結果をまとめて、報告する工程です。報告内容に不整合があると、追加説明や、加算分の返還を求められる場合があります。とくに、加算総額と賃金改善額の差額は慎重に確認してください。
注意点は次のとおりです。
- 加算収入の総額を把握しておく
- 職員への支給額を集計する
- 法定福利費の扱いを整理しておく
- 年度をまたぐ支給があるかどうかを確認する
- 給与台帳や明細と突き合わせる
賞与でまとめて支給する場合も、計画書との整合が欠かせません。報告直前の集計はミスにつながりやすいため、月次で支給額を管理しましょう。
企業担当者が注意すべき実務リスク
処遇改善加算は、取得後の運用管理まで含めた対応が必要です。不正受給や説明不足によるトラブルを防ぐには、根拠資料の保存と社内ルールの整備が欠かせません。
不正受給・返還リスク
不正受給や返還リスクは、要件未達や計算誤り、賃金改善不足から発生します。たとえば、研修体制が整っていないのに、「要件を満たした」として届け出るのは危険です。また、加算収入を職員の賃金改善に十分充てない場合も、問題になるリスクがあります。
主なリスクを、以下にまとめました。
- 対象外の職員へ根拠なく配分してしまう
- 計画書と実績報告書の数字が合わない
- 就業規則や賃金規程を整備していない
- 職場環境等要件の実施記録が残っていない
- 古い加算率のまま請求してしまう
不正受給や返還対策には、証拠を残すのが有効です。給与台帳や研修記録、会議資料、周知文などを、年度ごとに分けて保存しましょう。
職員・利用者への説明不足
職員や利用者への説明不足は、問い合わせの増加や、経営層への不信感につながります。職員に対しては、処遇改善加算がどの基準で支給されるか、正確な説明が欠かせません。
たとえば、支給額が人によって異なる場合は、雇用形態や職種・勤務時間などの基準を明確にし、納得を得る必要があります。従業員から理解を得るため、説明時は次の3点を押さえましょう。
- 制度の目的
- 利用者負担に影響する仕組み
- 変更後の料金と適用開始日
支給前や請求変更前に説明を済ませると、制度内容が変更されてから、旧制度の内容と取り違えるリスクを減らせます。社内外で同じ内容を伝えられるよう、案内文を統一して準備してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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