• 作成日 : 2026年4月17日

2026年度診療報酬改定とは?改定率や施行日、対応方法を解説

Point2026年度診療報酬改定とは

2026年度診療報酬改定は、本体改定率がプラス3.09%と約30年ぶりの高水準となり、医療従事者の賃上げや医療DX推進を柱とした大規模な見直しです。

  • 施行時期:薬価は4月、本体は6月1日に施行。
  • 重点項目:賃上げ対応、医療DX、在宅医療の充実。
  • 改定率:本体+3.09%、ネット改定率は+2.22%。

賃上げ原資となる「ベースアップ評価料」の算定と、医療DX推進体制整備加算の取得検討です。 3.09%の引き上げ分の多くが賃上げや物価高騰対策に割り当てられているため、新設・拡充される施設基準の届出を早期に行うことが経営改善の鍵となります。

診療報酬改定は、病院・クリニック・薬局が保険診療で受け取る報酬の点数や算定ルールを見直す制度で、原則2年ごとに実施されます。

2026年度の医療報酬改定は本体改定率がプラス3.09%と約30年ぶりの高水準となり、賃上げ対応・医療DX推進・在宅医療充実という複数の政策目標を一体的に推進する大型改定です。本記事では、制度の基礎から改定内容・施行スケジュール・医療機関の対応まで体系的に解説します。

診療報酬改定とは?

診療報酬改定とは、公的医療保険から医療機関に支払われる診療報酬の点数・算定要件を定期的に見直す制度で、原則2年に1回・偶数年に実施されます。

医療機関の収入の柱となる保険診療報酬は、国が「点数表」として一律に定めており、1点=10円の換算で医療費が計算されます。自由に価格を設定できない公定価格制度であるがゆえに、物価・人件費の変動や医療技術の進歩に合わせて定期的な見直しが不可欠です。改定の内容によっては、医療機関の経営・人員配置・業務フロー全体に波及します。

参照:令和8年度診療報酬改定について|厚生労働省

診療報酬の構成:本体と薬価

診療報酬改定は「本体」と「薬価等」の2つに分けて改定率が設定されます。

区分 内容 決定主体
本体 医師の技術料・看護師等の人件費・施設基準等の診療行為そのものへの対価 厚生労働大臣(中医協の答申を受けて)
薬価 医薬品の保険上の公定価格(薬価基準) 厚生労働大臣(中医協の答申を受けて)
特定保険医療材料価格 医療材料・医療機器の保険上の公定価格 厚生労働大臣(中医協の答申を受けて)

ネット改定率は本体と薬価等を合算した全体の改定率を指し、医療機関経営への影響を読む上で重要な指標です。

誰が審議・決定するの?

診療報酬の改定内容は、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会が中心となって審議します。

中医協は、保険者代表・医療者代表・公益代表の3者で構成されており、利害関係者間の調整を経て答申がまとめられます。改定の基本方針は社会保障審議会(社保審)の医療部会・医療保険部会が策定し、政府の予算編成方針とも連動します。

参照:中央社会保険医療協議会(中医協)|厚生労働省

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診療報酬改定はなぜ必要なの?

診療報酬改定が必要な最大の理由は、公定価格制度のもとでは医療機関が自らサービス価格を上げることができず、物価・人件費の変動を診療報酬の改定によって吸収する必要があるためです。

近年は物価高騰・人件費上昇・医療機器のコスト増という三重苦が医療機関経営を直撃しています。厚生労働省の調査では、2024年度決算で報告のあった病院の約50%が赤字経営となっており、大学病院全体では2024年度に508億円の経常赤字を計上しました。こうした深刻な経営環境の改善と、社会変化への制度的対応が、改定の主な必要性です。

改定が行われる主な理由

  1. 物価・人件費の変動への対応
    光熱費・医療材料費・医療従事者の人件費の変動を反映する
  2. 医療技術の進歩への対応
    新しい治療法・医療機器・薬剤の評価を適正化する
  3. 社会構造の変化への対応
    高齢化・人口減少・地域医療の変化に合わせた医療体制を整備する
  4. 医療政策の推進
    政府の医療DX推進・働き方改革・在宅医療充実などの政策目標を報酬体系に反映する

2026年度診療報酬改定の改定率はいくら?

2026年度の診療報酬改定では、本体改定率がプラス3.09%(2026・2027年度の2年平均)となり、1996年度以来約30年ぶりの高水準です。 薬価等はマイナス0.87%で、ネット改定率はプラス2.22%と、2012年度以降では32年ぶりに2%を超えるプラス改定となります。

2026年度本体改定率の内訳

今回の本体改定率3.09%は「2026年度プラス2.41%・2027年度プラス3.77%」という2段階の段階的適用という初めての仕組みが導入されています。

内訳区分 改定率 主な内容
賃上げ対応分 +1.70% 看護師等医療従事者のベースアップ原資(全額充当義務あり)
物価対応分 +0.76% 光熱費・医療材料費等の物価高騰への対応
食費・光熱費分 +0.09% 低所得者の入院時食費負担軽減を補填する部分
経営環境悪化への緊急対応分 +0.44% 2024年度改定後の経営悪化への緊急措置
処方調剤・訪問看護等の適正化 ▲0.15% 不適切な請求・過剰投薬等の是正
実質的な本体改定分 +0.25% 医療サービスの質向上・機能分化推進

緊急対応分の内訳は施設類型別にメリハリがあり、経営が最も厳しい病院はプラス0.40%、医科診療所はプラス0.02%、歯科診療所・保険薬局はそれぞれプラス0.01%と配分されています。

過去の診療報酬改定率との比較

改定年度 本体改定率 薬価等 ネット改定率
2018年度 +0.55% ▲1.74% ▲1.19%
2020年度 +0.55% ▲1.01% ▲0.46%
2022年度 +0.43% ▲1.37% ▲0.94%
2024年度 +0.88% ▲1.00% ▲0.12%
2026年度 +3.09% ▲0.87% +2.22%

参照:診療報酬改定の基本方針|厚生労働省

2026年度の施行日はいつ?

2026年度診療報酬改定の本体・材料価格の施行日は2026年6月1日、薬価改定は2026年4月1日となります。

2024年度改定から「診療報酬改定DX」の一環として施行日が従来の4月1日から6月1日へ後ろ倒しになりました。これは、電子カルテ・医事コンピュータ等のシステム対応に必要な準備期間を確保するための措置です。

2026年度改定のスケジュール

時期 内容
2025年6月〜秋 中医協で個別項目(各論)の議論開始
2025年12月9日 社保審医療部会で基本方針を取りまとめ
2026年1月下旬 点数なしの改定項目案(「短冊」)公表
2026年2月中旬 具体的な点数が示された中医協答申
2026年3月下旬 告示・通知の発出
2026年4月1日 薬価改定・材料価格改定の施行
2026年6月1日 診療報酬本体の改定施行

2026年度改定の5大テーマとは?

2026年度診療報酬改定の基本方針は「物価・人手不足対応」「2040年を見据えた医療体制構築」「質の高い医療の実現」「制度の持続可能性確保」の4つを柱としており、実質的には賃上げ・医療DX・在宅医療・医師偏在対策・地域医療構想が5大テーマとなっています。

テーマ1:医療従事者の処遇改善

医療分野における賃上げは今改定の最優先課題です。本体改定率3.09%のうち1.70%が賃上げ財源に充てられており、2024年度改定で新設された「ベースアップ評価料」(外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰ・Ⅱ)が拡充されます。

加算点数の引き上げと届出手続きの簡素化が図られ、看護師・リハビリ職・薬剤師・看護補助者・医療事務職員など幅広い職種の基本給引き上げにつなげる仕組みが強化されます。なお、看護師等はプラス3.2%の賃上げ、看護補助者・事務職員はプラス5.7%の賃上げが目標とされています。

関連記事|ベースアップとは?昇給との違いや計算方法を解説!

テーマ2:医療DXの推進

医療DXの推進は2024年度改定から継続する重点テーマです。 2024年度に新設された「医療DX推進体制整備加算」(マイナ保険証・電子処方箋の利活用状況に応じた加算)が2026年度改定でさらに拡充される見込みです。電子処方箋の普及促進、診療情報の連携共有、AIを活用した診断支援へのインセンティブ強化が検討されています。また、「共通算定モジュール」の活用により、診療報酬改定後のシステム対応コストの削減も図れます。

関連記事|医療DXを推進するには?電子カルテからオンライン診療

テーマ3:在宅医療・地域包括ケアの充実

高齢者が住み慣れた地域で医療・介護を受けられる仕組みの強化も重点課題です。厚生労働省の試算では、85歳以上の在宅医療需要は2020年から2040年にかけて62%増加する見通しです。訪問診療・訪問看護・地域包括ケア病棟の評価が手厚くなり、「急性期から回復期・在宅へ」という医療機能の流れを促す点数設計が行われます。

参照:新たな地域医療構想に関するとりまとめの概要|厚生労働省

テーマ4:医師の働き方改革とタスクシフト

2024年4月から医師の時間外労働に上限規制が適用されたことを背景に、医師の業務を他職種に委譲する「タスクシフト/タスクシェア」がさらに推進されます。医師事務作業補助者・看護師・薬剤師・リハビリ職などへの業務移行を評価する加算の拡充が見込まれます。

テーマ5:地域医療構想・医師偏在対策との連動

2024年末に取りまとめられた「新たな地域医療構想」(2040年を見据えた医療提供体制再編の指針)に基づき、病床機能の分化・集約化を促す報酬体系の整備が進みます。また、都市部への医師集中という医師偏在問題への対応として、地域枠・定着支援・へき地医療への評価充実が議論されています。

2026年度改定で患者の窓口負担はどう変わるのか?

診療報酬改定による点数の引き上げは、患者が医療機関で支払う自己負担額(窓口負担)の増加につながる可能性がありますが、影響は診療行為の種類・保険区分・医療機関規模によって異なります。

初診料・再診料の数点程度の引き上げが実施された場合、自己負担割合3割の患者では数十円単位の増額となることが多いです。一方、薬価がマイナス改定されることで薬剤費の自己負担は軽減される場合があります。

窓口負担への影響:自己負担割合別の見方

自己負担割合 主な対象 診療報酬本体引き上げの影響
1割 後期高齢者(一定所得以下) 影響小(1点=0.1円の負担増)
2割 後期高齢者(一定所得以上) 影響中程度
3割 現役世代(70歳未満) 影響相対的に大きい

医療機関はどう対応すればよい?

診療報酬改定への対応は、「情報収集→自院の影響分析→施設基準の見直し→システム更新→スタッフ教育」の5ステップで進めるのが効果的です。

STEP 1:改定内容の情報収集

厚生労働省の告示・通知、中医協の議事録、所属する医師会・病院団体からの情報を活用し、改定の全体像を把握します。特に自院が該当する診療科・病床機能・施設基準に関する変更点を重点的に確認します。

STEP 2:自院の収益シミュレーション

前年度のレセプトデータをもとに、点数変更が収入に与える影響を試算します。増収になる加算・届出項目と、逓減・廃止される項目を仕分けして、純増減を把握します。

STEP 3:施設基準・届出の見直し

新設・変更された施設基準のうち、自院が取得できるものを洗い出します。ベースアップ評価料・医療DX推進体制整備加算など、届出によって収益が改善する加算は早期に取得を検討します。

STEP 4:医事システムの更新

電子カルテ・レセコン等のシステムを改定点数に対応させます。2026年度改定では6月1日の本体施行に向け、4〜5月に集中してシステム対応が必要になります。ベンダーとの連携を早期に確認しておくことが重要です。

関連記事|紙カルテを電子化するには?アプリの導入ポイント

STEP 5:スタッフへの教育・周知

改定内容を窓口・看護・医師・医事の各部門が正確に理解できるよう、院内研修・マニュアル整備を実施します。特に患者への説明対応(窓口負担の変化・新しい加算の説明など)は現場の混乱防止に直結します。

関連記事|病院における人事管理・勤怠管理の課題 – システム導入で解決できることとは

薬価改定と診療報酬改定はどう違う?

薬価改定と診療報酬改定は同じ年に実施されますが、対象・施行日・審議プロセスが異なる別の制度です。 両者を混同すると、医療機関の収支分析が不正確になるため、区別して把握することが重要です。

比較項目 診療報酬本体改定 薬価改定
対象 診療行為・技術・施設基準等の点数 医薬品の公定価格
2026年度改定率 +3.09% ▲0.87%
施行日 2026年6月1日 2026年4月1日
実施頻度 2年に1回(偶数年) 毎年(実勢価格調査に基づく)
審議機関 中医協(主に総会) 中医協(薬価専門部会)

2040年を見据えた中長期的な診療報酬の方向性は?

2026年度改定は、2040年の日本の医療を見据えた「中長期的な医療提供体制の再編」に向けた重要な転換点として位置づけられています。

85歳以上の後期高齢者が急増し、生産年齢人口が急減する2040年に向けて、「病院完結型医療から地域完結型医療へ」という政策の方向性が明確化されています。

急性期・回復期・慢性期・在宅それぞれの役割分担の明確化と、機能に応じた診療報酬の配分が継続的に進められます。また、医療とデジタル技術の融合によって、限られた医療資源でより多くの患者に質の高い医療を提供できる体制を構築することが、中長期的な改定の一貫したテーマです。

2026年度診療報酬改定を正しく理解して経営改善につなげる

診療報酬改定は2年に1度、医療機関の経営と医療提供体制の双方に大きな影響を与える制度改正です。2026年度は本体プラス3.09%という約30年ぶりの高水準の医療報酬引き上げとなり、賃上げ・医療DX・在宅医療・働き方改革という複合的な政策目標が盛り込まれています。

中央社会保険医療協議会の審議動向を継続的に把握し、自院の施設基準見直し・届出取得・システム対応を計画的に進めることが、改定を経営改善のチャンスとして活かす鍵となります。


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