• 作成日 : 2026年4月17日

【2026年4月改正】在職老齢年金とは?基準額引き上げや計算方法を解説

Point在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働く方の給与と年金の合計額が基準を超えた際、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止される仕組みです。

  • 2026年4月改正:支給停止の基準額が51万円から65万円へ大幅に引き上げ。
  • 対象範囲:減額されるのは「老齢厚生年金」のみで、老齢基礎年金は全額受給可能。
  • 計算式:(基本月額 + 総報酬月額相当額 - 65万円)÷ 2 = 支給停止額。

年金が減っても働いた方が総収入は増えるケースがほとんどです。 年金のカット額は基準を超えた分の「半分」であり、給与増による収入アップが上回ります。また、働き続けることで将来の年金額が増える「在職定時改定」のメリットもあります。

在職老齢年金とは、厚生年金保険に加入しながら働く高齢者の老齢厚生年金が、賃金と年金の合計額に応じて一部または全額支給停止される制度です。2025年6月に成立した年金制度改正法により、支給停止調整額が2026年4月から大幅に引き上げられ、「働くと年金が減らされる」という就労抑制の問題が緩和されます。

本記事では、制度の仕組みから計算方法、2026年改正の内容、損しない働き方まで体系的に解説します。

在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、老齢厚生年金の受給資格を持つ人が厚生年金保険の被保険者として働き続ける場合に、賃金と年金の合計額が一定の基準額を超えると老齢厚生年金の一部または全額が支給停止される制度です。

調整の対象はあくまで「老齢厚生年金」に限定されます。国民年金から支給される「老齢基礎年金」は、就労収入の多寡にかかわらず全額支給されます。

参照:厚生労働省|在職老齢年金制度の見直しについて

制度が設けられた背景と目的

在職老齢年金は「一定以上の収入を得ている高齢者には、社会保険制度を支える側に回ってもらう」という考え方のもとで設けられた調整制度です。

しかし、近年は高齢者の就労が一般化し、内閣府の世論調査(令和5年度)では60代の約5割が「66歳以上でも働きたい」と回答する一方、60代後半の3割以上が「年金が減らないよう就労時間を調整している」と回答しています。

この働き控えによる社会的損失が問題視されたことから、2026年の制度改正につながりました。

老齢厚生年金・老齢基礎年金との関係

年金の種類 在職老齢年金の調整対象
老齢厚生年金(報酬比例部分) 対象(収入次第で支給停止あり)
老齢基礎年金(国民年金) 対象外(収入にかかわらず全額支給)
加給年金・振替加算 原則対象外
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誰が対象になるの?

在職老齢年金の対象者は、老齢厚生年金の受給権を持ちながら、厚生年金保険の被保険者として勤務している人です。 年齢・雇用形態・勤務先に関係なく、厚生年金に加入している限り適用されます。

65歳以上の場合

65歳以上で老齢厚生年金を受給しながら、会社員・公務員として厚生年金に加入して働く場合が主な対象です。賃金と老齢厚生年金の月額の合計が基準額を超えると支給停止が発生します。

60〜64歳の特別支給の老齢厚生年金との関係

生年月日等の条件を満たす60〜64歳の人は「特別支給の老齢厚生年金」を受給できる場合があります。この年齢層に対しても在職老齢年金制度は適用されますが、65歳以上と同様に2026年4月の改正で基準額が引き上げられます。

関連記事|老齢基礎年金・老齢厚生年金とは?受給要件・支給開始年齢・受給額などを解説

在職老齢年金の計算方法は?

在職老齢年金の支給停止額は(基本月額+総報酬月額相当額)−基準額=超過額を算出し、その超過額の2分の1が支給停止される仕組みです。

合計額が基準額以下であれば支給停止はゼロとなり、年金は全額受け取れます。

計算に使う2つの数値

用語 内容
基本月額 老齢厚生年金の月額(加給年金額等を除いた報酬比例部分)
総報酬月額相当額 標準報酬月額+(直近1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12)

標準報酬月額とは、毎月の給与をもとに決定される、社会保険料の計算基準となる金額です。

計算式

支給停止額 =(基本月額 + 総報酬月額相当額)−基準額

               ↓ 超過した場合のみ

支給停止額 = 超過額 × 1/2(端数は切り捨て)

実際に受け取れる年金額 = 基本月額 − 支給停止額

合計額が基準額以下の場合、支給停止は発生しません。

2026年4月改正前後の比較(基準額:改正前51万円→改正後65万円)

例)基本月額10万円、総報酬月額相当額46万円の場合

項目 改正前(基準額51万円) 改正後(基準額65万円)
合計額 56万円 56万円
基準額との差 +5万円(超過) −9万円(超過なし)
支給停止額 2万5千円 0円
実際の受取年金 7万5千円 10万円(全額)

例)基本月額15万円、総報酬月額相当額50万円の場合

項目 改正前(51万円) 改正後(65万円)
合計額 65万円 65万円
超過額 14万円 0円(基準額と同額)
支給停止額 7万円 0円
実際の受取年金 8万円 15万円(全額)

関連記事|厚生年金の試算・計算方法について – 将来もらえる年金額を予測

2026年4月の改正で何が変わるの?

2026年4月1日から、在職老齢年金の支給停止基準額が月65万円に引き上げられます。 2025年度の基準額51万円から14万円の大幅な引き上げとなり、年金が支給停止される対象者が大幅に減少します

参照:政府広報オンライン|「在職老齢年金制度の基準額が2026年4月から引き上げに」

改正の経緯

2025年5月に「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が第217回通常国会に提出され、衆議院での修正を経て2025年6月13日に成立しました(令和7年法律第74号)。

法律成立時点では基準額62万円として試算されていましたが、その後の賃金変動を反映し、2026年4月施行時点では65万円が適用されます。

改正前後の基準額の推移

年度 支給停止基準額(月額)
2024年度(令和6年度) 50万円
2025年度(令和7年度) 51万円
2026年度(令和8年度)〜 65万円

※基準額は毎年度、賃金・物価の変動に応じて改定されます。

改正の影響:支給停止対象者の変化

厚生労働省の試算では、改正前は約50万人が在職老齢年金の支給停止対象であったところ、改正後は約30万人に減少し、支給停止総額も約2,900億円に縮小する見込みです。

参照:厚生労働省|年金制度改正の全体像

働き損は本当?年金が減っても働いた方が得なの?

「年金が減額されるなら働かない方が得」というのは多くの場合、誤解です。年金の支給停止は超過額の半分に限られるため、働いて得た収入の方が支給停止額を上回る場合がほとんどです。

年金が減っても総収入は増えるケース

項目 金額例
月給(追加で得る収入) 5万円増加
年金の支給停止増加額 2万5千円増加(超過額の半分)
実質的な手取り増加 約2万5千円のプラス

このように、収入が増えると年金が減りますが、収入増加分の半分が支給停止になるだけであり、「稼いだ分がすべて相殺される」わけではありません。

在職定時改定によって将来の年金額は増える

在職定時改定とは、厚生年金に加入しながら働き続けることで、毎年10月に年金額が自動的に増額改定される仕組みです(2022年4月導入)。 働き続けるほど将来受け取れる年金額自体も増えるため、長期的に見れば就労継続は有利です。

関連記事|高年齢雇用継続給付とは?制度の変更点と計算方法を紹介

自分の支給停止額はどう確認するのか?

自分の在職老齢年金の受給額や支給停止額を確認するには、日本年金機構(ねんきんネット)・年金事務所・ねんきん定期便を活用するのが確実です。

STEP 1:基本月額を確認する

「ねんきん定期便」または「ねんきんネット」(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)で、老齢厚生年金の見込み額を確認します。

STEP 2:総報酬月額相当額を計算する

毎月の標準報酬月額と直近1年間の賞与額から総報酬月額相当額を計算します。標準報酬月額は給与明細や被保険者標準報酬決定通知書(毎年9月頃に事業主経由で通知)で確認できます。

総報酬月額相当額 = 標準報酬月額 +(直近1年間の標準賞与額合計 ÷ 12)

STEP 3:支給停止額を計算する

STEP 1・2の数値と基準額(2026年度:65万円)を使って、前述の計算式で支給停止額を算出します。

STEP 4:年金事務所で相談・確認する

自己計算が難しい場合や正確な数値を確認したい場合は、最寄りの年金事務所に問い合わせます。予約制で個別相談が可能です。また、2026年4月以降は「ねんきんネット」で新基準65万円での試算も対応予定です。

在職老齢年金と繰り下げ受給はどちらが有利か?

老齢厚生年金の繰り下げ受給(は、在職老齢年金による支給停止が生じる期間の受給開始をずらすことで、将来の年金額を増やす有効な選択肢です。 ただし、一概にどちらが有利とはいえず、健康状態・収入水準・何歳まで働くかによって個別の判断が必要です。

繰り下げ受給の仕組みと注意点

受給開始年齢 増額率
65歳(通常) 0%(基準)
66歳 +8.4%
68歳 +25.2%
70歳 +42.0%
75歳(上限) +84.0%

繰り下げ中も在職老齢年金の支給停止計算は行われ、停止対象となっていた部分については繰り下げ増額の対象外になります。この点に注意が必要です。

参照:厚生労働省|繰下げ増額率早見表

企業・人事担当者は2026年4月改正にどう対応すればよい?

在職老齢年金制度の改正は、給与計算システムへの直接の変更を要しませんが、シニア従業員への正確な情報提供と、人事・処遇制度の見直しが企業に求められます。

企業対応チェックリスト

対応項目 内容
対象者の把握 65歳以上で厚生年金受給中の従業員を人事データから抽出する
情報提供・周知 「2026年4月から年金が減りにくくなる」旨を当該従業員に説明する
賃金・処遇設計の見直し 就労調整を前提とした低い再雇用賃金の設定を見直す検討をする
勤務形態の柔軟化 フルタイム勤務・高単価コンサルタント等のシニア就労形態を整備する
相談体制の整備 個別の年金試算は社会保険労務士と連携して対応する

採用・定着戦略としての活用

基準額が65万円に引き上げられたことで、月給50万円以上の条件でも年金受給との両立が格段にしやすくなります。技術・経験・人脈を持つシニア人材を「フルタイム」や「高単価の専門職」として採用・継続雇用する際の障壁が低くなり、人材確保のチャンスが広がります。

よくある誤解と正しい理解は?

誤解1:年金が全額なくなる

実際には、超過額の半分のみが支給停止されます。 年金が全額支給停止になるのは、基本月額がゼロになるほど超過額が大きい場合に限られます。老齢基礎年金は一切減額されません。

誤解2:独身者・高所得者だけが損をする

在職老齢年金の適用は収入水準に応じたものであり、婚姻状況とは無関係です。また、支給停止になる場合でも就労収入の増加分で相殺されるため損をするわけではありません。

誤解3:改正後は誰も支給停止にならない

2026年4月以降も、基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超える場合は支給停止が発生します。高収入のシニアは引き続き就労設計を検討する必要があります。

制度改正を活かした自分らしい働き方の設計を

在職老齢年金は2026年4月の改正により、支給停止調整額が月65万円に大幅引き上げとなり、「働くと年金が減る」という就労抑制の問題が大きく緩和されます。

老齢厚生年金への調整制度であり老齢基礎年金は対象外という基本を押さえた上で、ねんきんネット・年金事務所を活用して自分の試算を確認し、在職定時改定や繰り下げ受給も視野に入れながら、収入と年金の最適なバランスを個々のライフプランに合わせて設計していくことが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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