- 作成日 : 2026年5月7日
二以上事業所勤務届の記入例は?提出対象・書き方・退職時の手続きを解説
二以上事業所勤務届は、二つ以上の適用事業所で社会保険に加入する人が主たる事業所を定める届出です。
- 両社で加入要件を満たす人が対象
- 加入対象になった日から10日以内に提出
- 選択先と非選択先の報酬月額を記入
提出しないと保険料按分や資格管理が乱れ、後で差額精算が生じることがあります。
二以上事業所勤務届の記入例を調べていると、「そもそもどんなときに提出するのか」「誰が出すのか」「どこを主たる事業所にするのか」まで分かりにくいと感じやすいものです。複数の会社で社会保険の加入要件を満たす場合は、通常の入社手続きとは異なる整理が必要になり、記入漏れや提出遅れがあると保険料控除や資格管理に影響することもあります。
この記事では、二以上事業所勤務届とは何かという基本から、提出対象、提出先、記入項目ごとの記入例などを解説します。
目次
二以上事業所勤務届とは?
二以上事業所勤務届は、複数の会社で同時に社会保険の加入要件を満たした人が提出する届出です。どの勤務先を主たる事業所として扱うかを決め、健康保険の給付元や保険料の計算方法、各社での控除の整理につなげる役割があります。
主たる事業所を決めるための届出
二以上事業所勤務届は、同時に二つ以上の適用事業所で社会保険に加入することになった被保険者が、主たる事業所を選択するために提出する届出です。複数の勤務先で加入要件を満たしていても、そのままではどこを中心に資格管理するかが定まりません。そのため、この届出によって主たる事業所を明確にし、以後の社会保険の手続きを整理します。
健康保険は選択した事業所側で資格情報が管理される
主たる事業所を選ぶと、健康保険の資格情報はその事業所を管掌する保険者側で管理されます。医療給付も、選択した事業所側の保険者から受ける扱いになります。あわせて、健康保険料率も原則としてその選択先を基準に決まるため、どの事業所を主たる事業所にするかは影響が大きいです。
標準報酬月額は合算され、保険料は各社で按分される
二以上事業所勤務では、各事業所で受ける報酬月額を合算して標準報酬月額を決定します。そのうえで、標準報酬月額に基づく保険料を、各事業所の報酬額の比率に応じて按分し、各社ごとの負担額や給与からの控除額を決めます。こうして決まった内容が各事業所に通知され、毎月の天引き額に反映されます。
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二以上事業所勤務届の提出対象は?
二以上事業所勤務届の提出対象かどうかは、複数の勤務先があるかではなく、同時に二つ以上の適用事業所で社会保険の加入要件を満たしているかで判断します。勤務先を合算して見るのではなく、まず事業所ごとに加入要件に当てはまるかを確認し、その結果として二カ所以上で被保険者になるかを見ます。
二つ以上の事業所で社会保険に加入する人が対象
二以上事業所勤務届の対象になるのは、A社とB社のそれぞれで社会保険の加入要件を満たし、両方で被保険者になる人です。たとえば、役員として複数社を兼務している場合や、短時間労働者として二社で要件を満たす場合が該当します。前提になるのは、どちらの勤務先も適用事業所であることです。
片方だけが加入要件に当たる場合は対象外
複数の会社で働いていても、社会保険の加入要件を満たすのが一社だけであれば、二以上事業所勤務届の提出対象にはなりません。この場合は、その一社で通常の社会保険手続きを行います。二以上事業所勤務届が必要になるのは、あくまで両方の勤務先で加入要件を満たしているケースです。
共済組合が関わる場合は選択先に制約が出ることがある
勤務先の一方が共済組合で、もう一方が協会けんぽや健康保険組合という組み合わせでは、主たる事業所の選び方に制約がかかることがあります。通常の二以上勤務より手続きが複雑になるため、本人判断で進めず、早めに各勤務先の担当部署へ共有して確認する流れが適切です。
参考:2-4:被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったとき|日本年金機構
二以上事業所勤務届は誰が・いつ・どこに提出する?
二以上事業所勤務届は、原則として被保険者本人が提出する届出です。提出時期は、二つ以上の事業所で社会保険の加入対象になった事実が発生してから10日以内で、提出先は選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所です。
【届出人】原則として被保険者本人
二以上事業所勤務届は、被保険者本人が提出する前提で扱われる書類です。もっとも、実務では勤務先の人事労務担当者が必要情報を集めたり、記入を補助したりする場面も少なくありません。本人が内容を確認したうえで提出する形のほか、会社側が提出を代行するように進めることもあります。
【提出期限】事実発生から10日以内
提出のタイミングは、二つ以上の適用事業所で社会保険の加入対象になった日から10日以内です。副業や兼業を始めた時点ではなく、各事業所で加入要件を満たし、二以上勤務として届出が必要になった時点を基準に考えます。提出が遅れると、その後の資格管理や保険料の整理がずれやすくなります。
【提出先】選択した事業所の管轄
提出先は、主たる事業所として選択した事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センターです。どの勤務先でもよいわけではなく、選択事業所を基準に提出先が決まります。複数の勤務先が関わる手続きであるため、提出前に各社の所在地や事業所情報をそろえておくと流れがスムーズです。
提出方法・添付書類もあわせて確認すると安心
提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参のいずれかです。個人番号を記載して提出する場合は、番号確認書類や本人確認書類の提示や添付が必要になることがあります。資格確認書や各種認定証がすでに交付されている場合は、あわせて返却や添付を求められることもあるため、提出前に手元の書類を確認しておくと手戻りを防ぎやすくなります。
二以上事業所勤務届の記入項目・記入例は?
二以上事業所勤務届の記入項目は、被保険者本人の情報に加え、主たる事業所として選ぶ勤務先と、その他の勤務先の情報を分けて整理するのが基本です。氏名や個人番号、各事業所の名称、所在地、資格取得年月日、報酬月額などを記入し、複数事業所での加入状況が分かる形にまとめます。
参考:健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届(記入例)(PDF 380KB)|日本年金機構
| 記入ブロック | 記入項目 | 記入例 |
|---|---|---|
| 被保険者 | 氏名/生年月日 | 山田 一郎/平成2年4月15日 |
| 個人番号(または基礎年金番号) | 123456789012(個人番号を記載する想定) | |
| 選択事業所 | 事業所整理記号/被保険者整理番号 | 港いろは/12 |
| 事業所名称/所在地 | 株式会社サンプルA/東京都港区芝4-5-6 | |
| 資格取得年月日 | 令和8年4月1日 | |
| 報酬月額(通貨/現物/合計) | 260,000円/0円/260,000円 | |
| 非選択事業所 | 事業所整理記号/被保険者整理番号 | 江東あいう/45 |
| 事業所名称/所在地 | サンプルB合同会社/東京都江東区豊洲7-8-9 | |
| 資格取得年月日 | 令和8年4月10日 | |
| 報酬月額(通貨/現物/合計) | 90,000円/5,000円/95,000円 | |
| 提出日 | 令和 年 月 日提出 | 令和8年4月15日提出 |
二以上事業所勤務届を提出しないリスクは?
二以上事業所勤務届を出さないままにすると、主たる事業所が確定せず、社会保険の処理全体が不安定になります。二以上勤務では、選択した事業所を基準に管轄先が決まり、各事業所の報酬を合算して標準報酬月額と保険料の按分額が決まるため、この入口が未処理のままだと給与控除や資格管理にずれが生じやすくなります。
手続きの前提が未確定になり、各社の控除が不安定になる
二以上事業所勤務届を提出しないと、どの事業所を主たる事業所として扱うかが定まらず、管轄する年金事務所等も確定しません。二以上勤務では、選択した事業所の所在地を管轄する側が、合算後の標準報酬月額や按分後の保険料額を各事業所へ通知する仕組みです。そのため、届出がない状態では、各社がいくら控除すべきかをそろえて処理しにくくなり、給与計算のずれや社内確認の手戻りが起こりやすくなります。
後から判明すると、合算と按分を前提に差額精算が生じる
二以上勤務の保険料は、各事業所の報酬月額を合算して標準報酬月額を決め、その保険料額を各事業所の報酬額に応じて按分する形で決まります。届出漏れが後日判明した場合は、この本来の計算方法に合わせて記録や保険料の整理をやり直す流れになり、追加徴収や還付が発生する可能性があります。なお、健康保険では保険料等の徴収権や還付を受ける権利に2年の時効があります。したがって、どこまで遡って調整されるかは、発覚時期と個別事情に左右されます。
健康保険の資格情報の管理にも影響が及ぶ
二以上事業所勤務届は、保険料計算のためだけの書類ではありません。主たる事業所を選択すると、その事業所を管掌する保険者等が資格情報の管理主体になります。提出が遅れると、どこで資格情報を管理するかが把握しにくくなり、資格確認書など交付済み書類の扱いも含めて確認や修正が増えやすくなります。
二以上事業所勤務届を提出している者が退職した場合の企業側の手続きは?
二以上事業所勤務者の退職手続きは、通常の資格喪失届の提出だけでは整理しきれない場合があります。どの勤務先を辞めるかによって、その後の社会保険の扱いが変わるためです。企業側は、まず退職した事業所が選択事業所か非選択事業所かを確認し、二以上勤務が続くのか終了するのかを見極めたうえで、資格喪失届やその後の切替手続きを進めます。
【選択事業所を退職した場合】主たる事業所の見直しを前提に進める
選択事業所を退職した場合は、現在の主たる事業所がなくなるため、そのままでは二以上勤務の管理を続けられません。まず退職する会社が被保険者資格喪失届を5日以内に提出し、そのうえで、他方の勤務先で引き続き加入要件を満たすのかを確認します。
なお、ほかの事業所でも勤務が続き、引き続き二以上勤務に当たるなら、新たな主たる事業所の整理が必要になります。二以上勤務の制度は、被保険者本人が主たる事業所を選択し、その所在地を管轄する側で標準報酬月額や保険料按分の通知が行われる仕組みなので、選択事業所の退職はその前提を組み替えることになります。
【非選択事業所を退職した場合】二以上勤務が終了するかを確認する
非選択事業所を退職した場合は、選択事業所が残るため、直ちに主たる事業所の選び直しになるとは限りません。このとき企業側が確認するべきなのは、その退職によって二以上勤務の状態が終わるのか、それとも他にも対象事業所があって二以上勤務が続くのかという点です。二以上勤務が解消されるなら、以後は残る選択事業所で通常の被保険者管理に移ります。反対に、なお複数事業所で加入状態が続くなら、二以上勤務としての管理を継続する前提で、資格喪失届の内容や社内連携を整える必要があります。
どちらの退職パターンでも、資格喪失届と回収書類の確認が必要
選択事業所か非選択事業所かを問わず、退職した会社は健康保険・厚生年金保険の被保険者資格喪失届を提出します。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、電子申請、郵送、窓口持参に対応しています。また、資格確認書など返却対象の書類が交付されている場合は、あわせて回収状況を確認します。
二以上勤務者の退職では、本人、残る勤務先、退職する勤務先の間で情報がずれると、その後の資格管理や保険料の整理が乱れやすいため、退職日と在籍状況を早い段階で共有しておくのが要点です。
二以上事業所勤務届の流れと注意点を押さえて漏れなく対応しよう
二以上事業所勤務届は、複数の勤務先で社会保険に加入することになったときに、主たる事業所を決め、健康保険の資格管理や保険料の按分方法を整理するための手続きです。まずは提出対象に当たるかを確認し、該当する場合は期限内に必要事項を記入して提出しましょう。記入時は、被保険者情報、選択事業所と非選択事業所の情報、各事業所の報酬月額を正確にそろえることが欠かせません。
退職時も、選択事業所を辞めるのか、非選択事業所を辞めるのかでその後の対応が変わるため、企業側は資格喪失届の提出とあわせて状況を整理しながら進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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