- 更新日 : 2026年9月9日
社会保険の任意継続とは?年末調整や確定申告での対応も解説!
退職後も勤務先の健康保険を最長2年間続けられる制度です。
- 退職日の翌日から20日以内に申し出る
- 事業主負担がなくなり自己負担が2倍になる
- 支払った保険料は所得控除の対象になる
会社を辞めたあとの健康保険は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3つから選びます。なかでも任意継続は、退職前と同じ健康保険をそのまま続けられる制度です。どれを選ぶべきか迷う方に向けて、加入の条件や手続き、保険料の決まり方、年末調整や確定申告での取り扱いまでを整理します。
社会保険の任意継続とは?
社会保険の任意継続は、退職後も勤務先の健康保険に加入し続けられる制度です。日本では国民皆保険制度がとられているため、退職した人も何らかの公的医療保険に加入しなければなりません。選択肢は「任意継続」「国民健康保険への加入」「家族の扶養に入る」の3つで、保険料の決まり方と扶養家族の扱いに違いがあります。
任意継続は退職後も勤務先の健康保険を続けられる制度
社会保険の任意継続とは、会社を退職した人が、それまで加入していた会社の健康保険に退職後も継続して加入できる制度をいいます。
そもそも広い意味での社会保険には、健康保険、年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険があり、会社勤めと個人事業主とで加入できる保険の種類が異なります。
会社勤めであれば会社の加入する健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険に加入し、個人事業主は国民健康保険や国民健康保険組合に加入します。
年金も、会社員は厚生年金保険、個人事業主は国民年金と異なります。労災保険と雇用保険については、雇用されている労働者の保険という性質上、個人事業主は原則として対象外です。
【会社員と個人事業主の社会保険の違い】
| 保険の種類 | 会社員 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 医療保険 | 健康保険組合・協会けんぽ | 国民健康保険・国民健康保険組合 |
| 年金 | 厚生年金保険・国民年金 | 国民年金 |
| 労災保険・雇用保険 | 加入する | 原則として対象外 |
国民健康保険に切り替える場合との違い
国民健康保険は前年の所得をもとに保険料が決まり、扶養という考え方がない点が任意継続と異なります。
扶養家族がいる場合にはその家族も被保険者として加入し、家族の分の保険料も世帯主が納めることになります。扶養家族が多い場合や、会社勤めの所得が大きかった場合、退職直後の年は会社員時代よりも保険料が高くなりやすい傾向があります。
ただし、勤務先の倒産や解雇などの理由で退職した場合には、保険料の減額措置を受けられる場合もあります。加入手続きは退職日の翌日から14日以内が原則のため、任意継続と比べながら早めに試算しておくとよいでしょう。
家族の扶養に入る場合との違い
家族の扶養に入ると保険料の負担は原則ありませんが、収入の要件を満たす必要があります。
配偶者や両親など、生計を共にする家族の健康保険に扶養家族として加入する方法です。
協会けんぽの場合、年収130万円未満、かつ被保険者の年収の2分の1未満が原則の要件となります。年齢や状況によって基準が変わります。
- 60歳以上の方や障害厚生年金を受けられる程度の障害がある方:180万円未満
- 19歳以上23歳未満の方(配偶者を除く):150万円未満(令和7年10月以降)
任意継続では扶養家族をそのまま引き継げるため、扶養に入れる家族がいるかどうかが判断の分かれ目になります。
参照:任意継続|全国健康保険協会
参照:19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります|日本年金機構
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社会保険の任意継続はどう手続きする?
任意継続の手続きは、退職日の翌日から20日以内に、住まいの都道府県の協会けんぽ支部などへ申出書を提出します。期限を1日でも過ぎると加入できなくなるため、退職前から書類の準備を進めておくと安心です。
加入できるのは退職前に2か月以上加入していた人
任意継続に加入できるのは、退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上ある人です。
退職した事業所での期間が2か月に満たない場合でも、健康保険の被保険者期間が1日も空くことなく2か月以上あれば加入できます。このほか、次の要件を満たす必要があります。
- 健康保険の適用事業所を退職した、または適用除外に当てはまり被保険者でなくなった
- 船員保険や後期高齢者医療制度の被保険者でない
- 初めて納付すべき保険料を期日までに納付した
共済組合の組合員だった方には、共済組合の任意継続組合員制度が適用されます。また、勤めていた会社が任意適用事業所ではなくなったことで資格を失った場合は、任意で脱退したものとして扱われるため、任意継続を利用できません。
手続きは退職日の翌日から20日以内
「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を、退職日の翌日から20日以内に協会けんぽ支部へ提出します。
20日目が土日祝日にあたる場合は翌営業日が期限です。
郵送で申請するときは、期限内に必着するよう余裕をもって送りましょう。
家族を被扶養者として同時に手続きする場合は、申出書2ページ目の「被扶養者届」に記入し、生計を維持していることを確認できる書類の添付が必要になることがあります。
指定された納付期日までに初回の保険料を納めなかった場合は、任意継続被保険者にならなかったものとして扱われます。ただし、納付が遅れた妥当な理由があるときは、期日後の納付でも受理されるケースがあります。
加入中に氏名や住所が変わったときの届出
氏名や住所が変わった場合は「健康保険任意継続被保険者氏名・生年月日・性別・住所・電話番号 変更(訂正)届」を提出します。
提出先は、住まいの都道府県の協会けんぽ支部です。都道府県をまたいで転居した場合は保険料率が変わることがあるため、届出は早めに済ませておきましょう。
被扶養者に異動があったときは「健康保険被扶養者(異動)届」を提出します。被扶養者を追加する場合は添付書類が必要になることがあるため、事前に支部へ確認しておくと手戻りを防げます。
マイナ保険証と資格確認書の扱い
健康保険証は2024年12月2日に新規発行が終了しており、受診にはマイナ保険証か資格確認書を使います。
マイナンバーカードを健康保険証として利用登録している場合は、任意継続の資格を取得したあとも、そのまま医療機関の窓口で受付できます。利用登録をしていない方には、加入する保険者から資格確認書が無償で交付されます。
資格情報のお知らせが届くまでの期間も、健康保険の給付対象です。マイナ保険証が使えず窓口で医療費を全額負担したときは、「療養費支給申請書」を提出することで保険負担分の払い戻しを受けられます。なお、資格を喪失したときは、すみやかに資格確認書を返納します。
社会保険の任意継続の保険料はどう決まる?
任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額に住まいの都道府県の保険料率をかけて計算します。会社員時代にあった事業主負担がなくなるため、手取りへの影響は小さくありません。加入から原則2年間、金額は変わりません。
保険料は退職時の標準報酬月額をもとに決まる
保険料は「退職時の標準報酬月額」と「協会けんぽの全被保険者の平均額から算出した上限額」のいずれか低いほうに、保険料率をかけて算出します。
令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限は32万円です。令和7年9月30日時点における全被保険者の標準報酬月額の平均額318,100円が、標準報酬月額の第23級(32万円)に該当することから、この額が上限となります。
退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合は、32万円で計算されます。そのため、退職後に個人事業主やフリーランスとして得る収入が会社員時代を上回っても、任意継続の保険料は影響を受けません。
40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者に該当する方は、介護保険料が加わります。健康保険組合に加入していた方は組合の規約によって扱いが異なるため、加入していた組合に確認しましょう。
事業主負担がなくなり全額が自己負担になる
任意継続の期間は、会社員時代にあった事業主負担がなくなり、保険料は全額が自己負担になります。
たとえば月額2万円の保険料だった場合、会社員時代は半額の1万円を事業主が負担していましたが、任意継続では2万円を自分で納めます。
一方で上限額が設けられているため、退職時の標準報酬月額が高い方ほど、在職中の本人負担額との差は小さくなります。任意継続のほうが保険料が安いとは限らないため、国民健康保険の試算とあわせて比べるのがよいでしょう。
参照:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会
社会保険の任意継続のメリットとデメリットは?
任意継続で大きいのは、扶養家族の保険料がかからない点です。一方で、在職中に受けられた傷病手当金や出産手当金は原則として対象外になります。金額の損得だけでなく、給付の内容もあわせて比べましょう。
扶養家族の保険料がかからない
任意継続では扶養家族の扱いが在職時と変わらないため、被扶養者の分の保険料は発生しません。
国民健康保険には扶養家族という扱いがないため、扶養家族の分の保険料を支払うことになります。たとえば、会社員時代に配偶者と子が扶養家族として健康保険に加入していた場合、退職後に国民健康保険を選ぶと3人分の保険料を納める必要があります。任意継続を選べば、扶養家族の保険料の分だけ負担を抑えられます。
また、協会けんぽなどでは標準報酬月額の上限が定められているため、退職直後から収入の増加が見込まれる方ほど、任意継続の利点は大きくなるでしょう。
傷病手当金と出産手当金は原則として支給されない
任意継続の被保険者期間中に発生した病気やケガ、出産に対しては、傷病手当金と出産手当金は支給されません。
在職中から継続して受給している場合や受給可能な状態であった場合に限り、資格喪失後の給付として引き続き申請できます。医療機関の窓口負担の割合は在職中と同じで、そのほかの給付も原則として在職中と同様に受けられます。
休業中の収入を補う給付が使えない点は、退職後に体調面の不安がある方にとって見落としやすい部分です。傷病手当金を引き続き受け取れるかどうかは、退職前に加入先へ確認しておきましょう。
参照:健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について|全国健康保険協会
社会保険の任意継続の辞め方は?
任意継続の加入期間は最長2年間で、期間の満了や再就職によって資格を失います。2年を待たずに自分の意思でやめることもでき、その場合は申し出が受理された月の翌月1日から任意継続被保険者ではなくなります。
2年の満了や再就職で資格を失う
任意継続の被保険者期間は2年間で、次のいずれかに当てはまると資格を喪失します。
- 2年間の期間満了
- 保険料が納付されず、納付期限が過ぎたとき
- 再就職などにより、ほかの事業所の健康保険に加入したとき
- 75歳の誕生日
- 後期高齢者医療制度の被保険者となったとき
- 船員保険の被保険者となったとき
- 本人が死亡したとき
保険料を納め忘れると、納付期限の翌日に資格を喪失します。一度喪失すると再取得はできないため、口座振替を利用するなど納め忘れを防ぐ工夫をしておきましょう。就職や後期高齢者医療制度への移行などで喪失するときは、「資格喪失申出書」の提出が必要です。
途中でやめたいときは任意脱退を申し出る
任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出ると、申出が受理された日の属する月の翌月1日に資格を喪失します。
任意継続を選んだあとに状況が変わり、「国民健康保険に切り替えたい」「家族の扶養に入りたい」といった事情が生じた場合にも、柔軟に選び直せます。なお、資格を喪失した月以降の保険料を納めていた場合は、還付請求書を提出することで払い戻しを受けられます。
2年の期間が満了したあとは任意継続に戻れないため、国民健康保険への加入や家族の扶養など、次の保険を空白期間なく準備しておきましょう。
任意継続の保険料は年末調整や確定申告で控除できる?
任意継続期間中に支払った保険料は、年末調整や確定申告において社会保険料控除の対象となります。控除を受けることで所得税と住民税の負担を抑えられるため、納付額がわかる資料は保管しておきましょう。
任意継続から年の途中で再就職した場合
任意継続をやめて再就職した場合は、12月に勤務先が行う年末調整で、その年に納付した任意継続の保険料の合計額を申告します。
「給与所得者の保険料控除申告書」の社会保険料控除欄に、保険の種類と支払った金額を記入します。国民年金保険料等以外の社会保険料については、支払金額を証明する書類の添付は必要ありません。
ただし、金額を確認するための領収証書は再発行できないため、保険料を納めたつど保管しておく必要があります。
任意継続期間中に事業所得等がある場合
退職後に個人事業主やフリーランスとして働く場合は、確定申告で前年に納付した保険料の合計額を申告します。
確定申告の期間は、原則として2月16日から3月15日までです。確定申告書の「社会保険料控除」欄に、合計金額を記入します。
控除額が所得から差し引かれることで、最終的な所得税と住民税が低くなります。任意継続の保険料は年間で数十万円になることもあるため、申告を忘れないようにしましょう。
社会保険の任意継続は保険料と給付内容の両面で選ぼう
社会保険の任意継続は、扶養家族がいる方ほど負担を抑えやすい制度です。保険料は退職時の標準報酬月額をもとに決まり、令和8年度の上限は32万円となっています。事業主負担がなくなる分だけ自己負担は増えますが、扶養家族の保険料がかからない点は国民健康保険にはない利点です。
一方で、任意継続の期間中に生じた病気やケガ、出産に対する傷病手当金と出産手当金は支給されません。金額の比較だけでなく、給付の内容や2年後の切り替え先まで見通したうえで判断しましょう。
支払った保険料は年末調整や確定申告で社会保険料控除の対象になるため、忘れずに申告することで税の負担を抑えられます。
よくある質問
社会保険の任意継続とはなんですか?
退職後、一定の条件を満たした場合に、最長で2年間、会社員時代の健康保険に継続して加入できる制度です。家族を被扶養者としても保険料がかからない点でメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険の任意継続に必要な手続きについて教えてください
退職した日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を管轄の協会けんぽ、もしくは健康保険組合に提出します。扶養家族がいる場合には「被扶養者届」への記入も必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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