• 作成日 : 2026年1月14日

個人事業主と法人の違いは?メリット・デメリットやどっちが得か、法人化のタイミングまで解説

事業を開始する際、個人事業主としてスタートするか、初めから法人を設立するかという選択に直面します。個人事業主と法人の違いは、単なる呼び方の違いだけでなく、設立の手間や費用、税金や経費、社会保険の加入義務、そして万が一の際の責任の範囲まで、事業運営に関わる大きな相違点を含んでいます。

この記事では、個人事業主と法人の違いについてわかりやすく解説します。

そもそも個人事業主・法人とは?

まずは、個人事業主と法人の定義をおさらいしましょう。

個人事業主とは?

個人事業主とは、法律上、個人がそのまま事業を行う形態を指します。フリーランスや自営業と呼ばれる場合、多くはこの形態です。事業の主体はあくまで個人であるため、事業で得た利益も、事業で負った負債も、すべてその個人に直接帰属します。

法人とは?

法人とは、法律によって人と同じように権利義務の主体となることを認められた組織です。代表的な形態が株式会社であり、その他にも合同会社(LLC)などがあります。法人を設立すると、社長個人とは別人格である会社が事業主体となります。事業の権利・義務は会社に帰属し、社長個人は会社から役員報酬を受け取る形で生計を立てます。

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個人事業主と法人の違いは?

個人事業主と法人の根本的な違いは、法的人格の有無です。個人事業主は個人=事業主であるのに対し 、法人は法律によって個人とは別人格の組織として扱われます。

この法的人格の違いが、事業運営のあらゆる側面に大きな影響を与えます。

比較項目個人事業主法人(株式会社・合同会社)
1. 事業開始の手続き税務署に開業届を提出定款作成・認証・登記
2. 事業開始の費用0円合同会社 約10万円〜
株式会社 約20万円〜
3. 税金所得税(累進課税)法人税(ほぼ一定税率)
4. 社会保険任意(従業員5人未満)強制加入
5. 維持費用 (税金以外)比較的低い高い
(税理士顧問料、社会保険料の会社負担分)
6. 経費の範囲狭い広い
7. 社会的信用度法人より低い高い
8. 資金調達融資・補助金が中心融資枠が広がりやすい、
出資(株式発行)も可能
9. 事業の廃止廃業届を提出解散登記・清算手続き
10. 事業承継相続株式譲渡
11. 赤字の繰越3年間(青色申告10年間(青色申告)
12. 責任範囲無限責任有限責任
13. 会計・経理比較的シンプル複雑

1. 事業開始までの手続き

事業開始までの手続きは、個人事業主の方が簡単です。

個人事業主

原則として所轄の税務署に開業届を提出するだけで完了します。事業開始から1ヶ月以内(または事実発生から速やかに)という目安はありますが、手続きそのものに法的な複雑さはなく、ペナルティも特にありません。

参考:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

法人

法人を設立する場合は、法務局での法人登記が必要となり、手続きが複雑です。

株式会社を例にすると、まず会社の基本ルールである定款を作成し、それを公証役場で認証してもらう必要があります。その後、資本金を払い込み、法務局へ約10種類にも及ぶ登記申請書類を提出します。司法書士などの専門家に依頼するのが一般的で、申請から登記完了(=会社設立)まで10日前後の期間を要します。

2. 事業開始までにかかる費用

個人事業主は0円、法人は最低でも数万〜数十万円の法定費用がかかります。

個人事業主

開業届の提出自体に費用はかかりません。もちろん、事業に必要な備品や仕入れ代は別途かかりますが、手続き上のコストはゼロです。

法人

法人設立時には、法律で定められた法定費用が発生します。この費用は会社形態によって異なり、最低でも株式会社は約22万円(登録免許税15万円+定款認証代約5万円+その他)、合同会社は約10万円(登録免許税6万円)が必要です。

さらに、法律上は1円から設立可能となった資本金も実務上は必要です。資本金は会社の体力や信用度の指標となるため、少なくとも3ヶ月程度は売上がなくても事業を継続できる運転資金を目安に用意することが推奨されます。

3. 税金

利益が少ないうちは個人事業主、利益が一定額を超えると法人が税制上有利になる傾向があります。

個人事業主

主に所得税、住民税、個人事業税、消費税がかかります。中心となる所得税は累進課税が適用され、所得(売上から経費を引いた額)が増えれば増えるほど税率も高くなります。例えば、課税所得が900万円からは所得税率は33%になり、最高税率(住民税と合わせ)は55%に達します。

法人

主に法人税、法人住民税、法人事業税、消費税がかかります。

中心となる法人税は「比例課税(ほぼ一定税率)」が特徴です。資本金1億円以下の中小法人の場合、所得800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%と、税率の上昇が緩やかです。 このため、個人の所得税率が法人税率を上回るライン(一般的に利益800万〜1,000万円)を超えると、法人化した方が税負担は軽くなります。

ただし、法人は赤字経営であっても法人住民税の均等割(最低でも年間7万円程度)を納付する義務があります。

4. 社会保険負担の有無(従業員分含む)

法人は、社長1人であっても社会保険の加入が強制です。

個人事業主

事業主本人は国民健康保険と国民年金に加入します。従業員を雇用する場合でも、常時5人未満であれば社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務は発生しません(任意加入は可)。

法人

法人は、役員報酬が0円の場合を除き、一人社長の会社であっても社会保険への加入が法律で義務付けられています。 保険料は会社と個人が約半分ずつ(労使折半)負担します。会社負担分は経費になりますが、同時に人件費という固定コストが大幅に増加することを意味します。これは資金繰りに大きな影響を与えるため、法人化の際は最も注意すべき点の一つです。

5. 事業維持にかかる費用(税金以外)

法人は、個人事業主よりも事業維持コスト(固定費)が高くなります。

個人事業主

会計処理を自分で行えば、税理士顧問料も必須ではありません。事業を維持するための固定費は、オフィス家賃や光熱費など、比較的コントロールしやすいものが中心です。

法人

法人は、事業を維持するだけで様々なコストが発生します。

  1. 社会保険料の会社負担分
    従業員(役員含む)の給与の約15%が会社の負担として発生します。
  2. 税理士顧問料
    法人の会計・税務申告は複雑なため、税理士との顧問契約(月額1万円〜)がほぼ必須となります。
  3. オフィス賃料
    信用度の観点から、個人事業主よりも高い水準のオフィスが求められる場合もあります。

6. 経費の範囲

法人の方が、経費として認められる範囲が広くなります。

個人事業主

事業所の家賃や光熱費、交際費などはもちろん経費にできます。しかし、事業主自身への給与は経費にできません。売上から経費を引いた利益(所得)がそのまま事業主個人の取り分となります。

法人

社長自身への給与を役員報酬として会社の経費に計上できます。役員報酬は個人の給与所得となるため、給与所得控除という節税メリットも受けられます。 他にも、自宅を法人契約して社宅扱いにすることで家賃の一部を経費にしたり、生命保険を活用して役員の退職金を準備したりと、個人事業主にはない多様な節税対策が可能になります。

7. 社会的信用度

法人の方が、社会的信用度は一般的に高くなります。

個人事業主

手軽に始められる反面、個人との取引とみなされるため、法人に比べると信用度が低いと見なされる場合があります。企業によっては個人事業主とは取引しないという内規(コンプライアンス上の理由)がある場合も少なくありません。

法人

法人は、会社法に基づき設立され、法務局に登記されています。資本金や役員構成などが公示されており、財務諸表の作成も義務付けられるため、運営の透明性が高く、社会的信用が高いと評価されます。 この信用力は、銀行でのプロパー融資の審査や、優秀な人材を採用する際の安心感にも直結します。

8. 資金調達

法人の方が、資金調達の選択肢が広がり、規模も大きくなる傾向があります。

個人事業主

資金調達は、日本政策金融公庫などからの融資や、国・自治体の補助金・助成金が中心となります。調達できる金額は、法人の場合に比べて少額になる傾向があります。

参考:融資制度を探す|日本政策金融公庫

法人

法人も融資や補助金を利用できますが、信用力が高いため融資枠が広がりやすいのが特徴です。決定的な違いは、株式会社であれば株式の発行による第三者からの出資(ベンチャーキャピタルや個人投資家から)という形で、返済不要の資金を調達できる点です。また、社債の発行も可能であり、調達手段が多様化します。

9. 事業の廃止

事業の廃止は、個人事業主の方が簡単です。

個人事業主

事業をやめる際は、税務署に廃業届を提出するだけで、手続きは簡便です。費用もかかりません。

法人

法人の解散は、設立時と同様に複雑で費用もかかります。株主総会での解散決議後、法務局で解散登記清算人選任登記を行い、官報で解散の事実を公告(約4万円)します。その後、債権の回収や債務の弁済を行い、最終的に清算結了登記(約4万円)をしてようやく完了します。 税務署や年金事務所、ハローワークなどへの届出も個別に必要となり、専門家(司法書士や税理士)のサポートが不可欠です。

10. 事業承継のスムーズさ

事業の引継ぎ(事業承継)は、法人の方がスムーズに行えます。

個人事業主

事業主が亡くなった場合、事業用の資産や負債はすべて相続財産となり、遺言がなければ相続人全員の協議対象となります。もし相続人間で合意が得られなければ、事業継続が困難になるリスクがあります。また、事業用口座も凍結されるため、支払いが滞る危険性もあります。

法人

経営者が亡くなっても会社は存続します。事業の権利は株式に集約されているため、後継者に株式を譲渡(売買・贈与・相続)することで、事業をスムーズに引き継ぐことができます。

11. 赤字の繰越

赤字を繰り越せる期間は、法人の方が長く設定されています。

個人事業主

青色申告者の事業で赤字(欠損金)が出た場合、その赤字を翌年以降の黒字と相殺できる期間は最大3年間です。

法人

赤字を繰り越せる期間は最大10年間です(※2018年4月1日より前に開始した事業年度の赤字は9年)。

例えば、創業期に設備投資で数年赤字が続いた場合、個人事業主では3年を過ぎた赤字は切り捨てられてしまいますが、法人であれば10年先の黒字と相殺できる可能性があります。これは、将来の税負担において極めて大きな差となります。

12. 責任範囲

個人事業主は無限責任、法人は原則有限責任という決定的な違いがあります。

個人事業主(無限責任)

事業と個人が一体のため、事業で負った借入金や損害賠償などを返済できなくなった場合、個人の預貯金や自宅などの私財をすべて使ってでも返済する義務(無限責任)を負います。

法人(有限責任)

法人と社長個人は別人格です。法人が負った負債は、原則として法人の資産で返済します。出資者(社長)は、自分が出資した金額(資本金)の範囲内でのみ責任を負い(有限責任)、個人の私財まで差し出す義務は原則ありません。

ただし、中小企業が融資を受ける際、社長個人が連帯保証人になるケースが多く、その場合は実質的に無限責任に近くなります。

13. 会計・経理

会計・経理処理の負担は、個人事業主の方が軽いです。

個人事業主

会計処理の目的は、毎年2月16日〜3月15日に行う確定申告のため、つまり所得税額の計算です。会計ソフトを使えば、複式簿記(青色申告65万円控除)も個人で十分対応可能です。

法人

法人決算は、税額の計算に加えて、株主や債権者といった利害関係者への財政状態及び経営成績の開示という目的があります。 そのため、会計処理は複雑で、作成すべき書類の数も膨大です。専門知識が必須であり、ミスが許されないため、税理士へ依頼するケースが多くなります。

個人事業主と法人はどっちが得?

個人事業主と法人のどちらが得かは、その人の状況や事業のフェーズによって異なります。

個人事業主の場合

個人事業主のメリット・デメリットや向いているケースは以下の通りです。

メリット
  • 手軽:費用ゼロ、手続き簡単ですぐに事業を始められる。
  • 簡便:会計処理や税務申告が法人よりシンプル。廃業も簡単。
  • 低コスト:利益が少ないうちは税率が低く、社会保険料の負担も少ない(または任意)。
デメリット
  • 無限責任:事業の失敗が、個人の全財産の損失に直結する。
  • 税金:利益が増えると税率が急激に上がる。
  • 信用:法人より社会的信用が低く、取引や融資で不利な場合がある。
向いているケース
  • まずはスモールスタートしたい。
  • まだ利益が安定していない、または利益が伸びていない。
  • 手続きや経理の手間を最小限にしたい。
  • 今後、大きな事業拡大を予定していない。

法人の場合

法人のメリット・デメリットや向いているケースは以下の通りです。

メリット
  • 信用:社会的信用が高く、大企業との取引、融資、採用に有利。
  • 有限責任:原則として、出資額以上の責任を負わない。
  • 節税:利益が多くなると個人より税率が有利。役員報酬や福利厚生費など経費の幅が広く、節税対策がしやすい。
デメリット
  • 高コスト:設立費用、税理士顧問料、社会保険料の会社負担、赤字でも発生する税金など、維持コストがかかる。
  • 複雑:設立・運営・廃業のすべての手続きが複雑。会計処理も難しい。
  • 資金:会社の利益は社長個人のものではなく、自由に引き出せない(役員報酬として受け取る)。
向いているケース
  • 年間利益(課税所得)が安定して800万円を超えそうな時。
  • 課税売上高が1,000万円を超え、消費税の納税義務が発生する時(法人化で最大2年間免除の可能性)。
  • 法人向けの事業を行っており、社会的信用が必要な時。
  • 金融機関からの融資や出資など、資金調達の幅を広げたい時。
  • 従業員を雇って事業を拡大し、社会保険を完備したい時。

個人事業主から法人成りするための手順は?

個人事業主から法人(株式会社)へ移行する法人成りは、単に法人を設立するだけでなく、個人事業からの引継ぎも必要です。

  1. 法人設立の準備(会社概要の決定)
    会社名(商号)、事業目的、本店所在地、資本金額、役員構成、事業年度(決算月)など、法人の基本事項を決定します。
  2. 法人の実印作成・定款の作成と認証
    法務局に登録する会社の実印を作成します。並行して、会社のルールブックである定款を作成し、公証役場で認証を受けます(合同会社は認証不要)。
  3. 資本金の払い込み
    発起人(社長)個人の銀行口座に、資本金を振り込みます。この時点ではまだ法人口座はありません。
  4. 法人設立登記
    法務局に設立登記申請書と必要書類(定款、資本金の払込証明書など)を提出します。登記申請日が、会社の設立日となります。
  5. 設立後の諸届出
    登記完了後、税務署、都道府県税事務所、市町村役場に法人設立届出書などを提出します。また、社会保険加入のため、年金事務所にも新規適用届などを提出します。
  6. 個人事業の廃業手続き
    法人に事業を移行するタイミングで、税務署に廃業届を提出します。
  7. 資産・負債・許認可の引継ぎ
    個人事業で使用していた資産(在庫、PC、車など)や負債(借入金など)を、法人へ売却または現物出資する形で引き継ぎます。また、事業に必要な許認可(建設業、飲食業など)は、原則として法人名義で取り直す必要があります。

ご自身の事業フェーズに最適な形態を

法人か個人かという問いに、正解はありません。どっちが得かは、あなたの事業規模、利益、そして将来の展望によって変わります。

リスクの低い一般的な流れは、まず手軽な個人事業主としてスタートし、事業が軌道に乗って利益や売上が法人化のタイミングに達したら、節税や信用力アップのために法人成りを検討することです。

最終的な判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談し、ご自身の状況で税額や社会保険料がどう変わるか、具体的なシミュレーションを行った上で比較検討することが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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