- 更新日 : 2026年6月16日
福利厚生費は給与の約15〜20%が目安!計算方法や予算の決め方を解説
義務分と任意分を分けて積み上げれば、自社に合う予算を見積もれます
- 給与総額の15〜20%が一つの基準になる
- 法定福利費は保険料率から会社負担を算出する
- 法定外の制度は自社の課題に合わせ配分する
料率や制度内容で実額は変わるため、最新の数値をもとに見直しましょう。
福利厚生費が給与総額に占める割合は、法定福利費だけでも約15%が目安です。法定外福利費を加えると、合計で20%近くにのぼる企業もあります。
コスト感覚を持たないまま制度を拡充すると、予算超過や給与計算の確認漏れにつながりかねません。
本記事では、福利厚生費の種類・計算方法・予算の決め方を、具体的な計算例とあわせて解説します。
目次
福利厚生費の目安は給与総額の約15〜20%
福利厚生費の予算を立てる際は、法定福利費と法定外福利費を合わせて、給与総額の15〜20%前後が一つの目安です。
厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査」によると、正社員など継続して雇用されている従業員(常用労働者)1人あたりの平均的な費用は以下のとおりです。
- 平均現金給与額:334,845円
- 法定福利費:50,283円(給与の約15.0%)
- 法定外福利費:4,882円
- 合計の割合:約16.5%
日本経済団体連合会の「第64回 福利厚生費調査結果報告」では、福利厚生費の対現金給与総額比率は19.8%です。ただし、調査の対象は会員企業であり、回答企業の1社あたり平均常用従業員数は4,525人です。小規模企業が同じ比率で見積もれるとは限りません。
たとえば、従業員3名で1人あたりの月給が30万円の場合、月の給与総額は90万円です。15〜20%で計算すると、福利厚生費の目安は月額13.5万〜18万円になります。
実際の負担額は、社会保険の加入状況や労働保険料、住宅手当・食事補助などの制度内容によって変わります。まずは法定福利費を確認し、そのうえで自社が用意する法定外福利費を積み上げると、予算を見積もりやすくなるでしょう。
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福利厚生費の種類
福利厚生費は、法律で義務付けられた費用と企業が任意で支給する費用に大別されます。性質の異なる費用を混同すると、不適切なコスト計算や労務管理上のミスにつながりかねないため、自社の支出区分を事前に確認しましょう
法定福利費
法定福利費とは、従業員を雇用する際に法律に基づいて企業が負担する社会保険料や労働保険料などを指します。
たとえば月給30万円の従業員を雇う場合、企業は額面の給与額に加えて、各種保険料の負担分も上乗せして予算を確保しなければなりません。
主な法定福利費は、以下の6種類です。
健康保険料と厚生年金保険料は、原則として会社と従業員が折半します。介護保険料は40歳以上65歳未満の健康保険加入者が対象です。雇用保険料は会社と従業員がそれぞれの割合で負担し、労災保険料と子ども・子育て拠出金は会社が全額負担します。
健康保険料は協会けんぽでも事業主と被保険者が折半で負担すると説明されており、厚生年金保険料も日本年金機構で事業主と被保険者が半分ずつ負担するとされています。
法定福利厚生の種類や費用については、関連記事をご覧ください。
法定外福利費
法定外福利費とは、法律上の負担義務はないものの、従業員の生活支援や健康支援、職場内交流などを目的に、企業が任意で設ける福利厚生費を指します。
代表的な法定外福利費は、以下のとおりです。
- 住宅手当
- 社宅補助
- 食事補助
- 慶弔見舞金
- 健康診断の上乗せ補助
- 社員旅行
- レクリエーション費用
- 資格取得支援
法定福利費とは異なり、導入する制度の種類や支給水準は各企業が自由に設定可能です。ただし、支給対象や金額、申請方法を明確にしておかないと、不公平感や税務処理の誤りにつながるおそれがあります。
たとえば、若手社員の生活費負担を抑えたい企業では、借り上げ社宅制度による家賃補助が考えられるでしょう。従業員の健康管理を支援したい場合は、人間ドックや婦人科検診など、法定健診を超える検査費用を会社が負担するケースもあります。
福利厚生費が給与の何パーセントかを計算する方法
福利厚生費が給与に占める割合は、人件費管理や予算計画を考えるうえで重要な指標です。現状の数値を誤ると、正確な人件費コストを把握しにくくなるため、計算手順を事前に確認しましょう。
1. 給与総額(算定基礎)を確認する
福利厚生費の割合を計算する際は、まず分母となる給与総額を明確にします。基本給に加えて、時間外手当や役職手当、通勤手当など、従業員へ支給するすべての賃金を合算してください。
たとえば、基本給25万円、時間外手当3万円、各種手当2万円を支給する場合、合算した30万円が給与総額です。30万円を分母にすると、福利厚生費が給与に対してどの程度かを計算しやすくなります。
通勤手当は、社会保険の標準報酬月額や労働保険料の算定基礎に含まれるため、給与総額を確認する際に見落とさないようにします。賞与や臨時に支給する手当は扱いが異なる場合があるため、月ごとの目安を出す段階では、まず毎月の控除前支給額をもとに整理しましょう。
2. 法定福利費を保険料率から算出する
法定福利費の目安は、厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料などの会社負担分を合算して見積もります。
対象となる保険は以下の6種類です。
- 厚生年金保険料(会社と従業員で折半)
- 健康保険料(会社と従業員で折半)
- 介護保険料(会社と従業員で折半、40歳から64歳までの健康保険加入者が対象)
- 雇用保険料(会社と従業員が、事業の種類ごとに定められた割合で負担)
- 労災保険料(会社が全額負担)
- 子ども・子育て拠出金(会社が全額負担)
各料率は、制度改正や事業の種類によって変わります。たとえば厚生年金保険料率は18.3%で、会社と従業員が原則として半分ずつ負担します。会社負担分の目安は9.15%です。
予算の大枠を把握する段階では、会社負担分を給与総額の15%前後として見積もると整理しやすくなります。たとえば、月の総支給額が30万円の従業員の場合、概算では以下のように計算しましょう。
ただし、実際の社会保険料は、総支給額に直接料率を掛けるのではなく、標準報酬月額をもとに計算します。正確な金額を出す際は、加入している健康保険の料率、雇用保険料率、労災保険率、子ども・子育て拠出金率を確認しましょう。
3. 法定外福利費の年間実績を集計する
法定福利費の目安を算出した後は、企業が独自に設けている法定外福利費の年間実績を割り出します。住宅手当や食事補助、健康診断の上乗せ補助など、任意で支出した費用を洗い出しましょう。
集計の際は、会計ソフトなどの福利厚生費の勘定科目から、月ごとの支出額を12ヶ月分合計して全体の金額を把握します。
たとえば、従業員3名の企業で年間給与総額が1,200万円の場合、年間に以下の支出があったと仮定しましょう。
- 住宅補助:60万円
- 食事補助:30万円
- 健康診断の上乗せ補助:20万円
- 慶弔見舞金:10万円
上記の場合、法定外福利費の年間実績は合計120万円です。これを年間給与総額で割ると、給与に対する法定外福利費の割合を計算できます。
120万円 ÷ 1,200万円 × 100 = 10%
上記の例では、法定外福利費が給与総額の10%を占めていると確認できます。実際に集計する際は、対象年度の会計期間に合わせて、福利厚生関連の支出を確認しましょう。
4. 合計を給与総額で割って%を出す
法定福利費と法定外福利費の金額が揃ったら、給与総額に対する割合を計算します。
手順は2つの福利厚生費を合算し、給与総額で割るだけです。これまでの項目で算出した数字を使うと、以下のように整理できます。
- 年間給与総額:1,200万円
- 法定福利費:180万円
- 法定外福利費:60万円
福利厚生費の合計額は、以下のとおりです。
180万円 + 60万円 = 240万円
次に、福利厚生費の合計額を年間給与総額で割ります。
240万円 ÷ 1,200万円 × 100 = 20%
年間給与総額1,200万円、福利厚生費合計240万円の場合、福利厚生費の割合は20%です。
算出した割合を厚生労働省や経団連の調査数値と比べると、自社の福利厚生費の水準を確認する参考材料になります。ただし、福利厚生費の水準は従業員数や加入保険、制度内容によって変わるため、数値だけで適正・不適正を判断しないようにしましょう。
福利厚生費の計算例
福利厚生費の計算方法を理解しても、自社の規模に応じた実際のコスト総額はイメージしにくいものです。企業の規模や給与水準によって会社負担額は変動するため、具体的なシミュレーションを事前に確認しましょう。
従業員10人・平均給与30万円の場合
これまでの目安をもとに、従業員10人の企業を例として福利厚生費を概算します。ここでは、法定福利費を給与総額の15%、法定外福利費を5%として計算します。
【前提条件】
- 従業員数:10人
- 従業員1人あたりの平均給与:月額30万円
- 月間給与総額:300万円
- 年間給与総額:3,600万円
従業員10人、平均の月額総支給額30万円の場合、福利厚生費の概算は以下のとおりです。
①法定福利費(目安:給与総額の15%)
月間:45万円(300万円 × 15%)
年間:540万円(3,600万円 × 15%)
②法定外福利費(目安:給与総額の5%)
月間:15万円(300万円 × 5%)
年間:180万円(3,600万円 × 5%)
③福利厚生費の合計額(①+②)
月間:60万円
年間:720万円
給与総額に目安となる割合を掛けると、福利厚生費のおおよその予算規模をつかめます。
ただし、15%や5%は、予算を立てる段階で使う概算値です。なお、実額は保険料率や制度内容によって変わります。最終的な予算は、最新の料率と自社の支給条件をもとに確認しましょう。
従業員50人・平均給与35万円の場合
従業員50人の企業を例に、福利厚生費を概算します。ここでは、法定福利費を給与総額の15.5%、法定外福利費を2%として計算します。法定外福利費は制度内容によって差が出やすいため、2%は控えめなシミュレーション用の数値です。
【前提条件】
従業員数:50人
従業員1人あたりの平均給与:月額35万円
月間給与総額:1,750万円
年間給与総額:2億1,000万円
上記の条件で算出する福利厚生費の概算は以下のとおりです。
①法定福利費(目安:給与総額の15.5%)
月間:271万2,500円(1,750万円 × 15.5%)
年間:3,255万円(2億1,000万円 × 15.5%)
②法定外福利費(目安:給与総額の2%)
月間:35万円(1,750万円 × 2%)
年間:420万円(2億1,000万円 × 2%)
③福利厚生費の合計額(①+②)
月間:306万2,500円
年間:3,675万円
ただし、15.5%や2%は、予算を立てる段階で使う概算値です。実際の負担額を確認する際は、最新の保険料率と自社で導入する福利厚生制度の内容を確認しましょう。
福利厚生費を給与の何パーセントにするか決める手順
福利厚生費の比率を戦略なく決めると、企業の財務を圧迫したり、利用されにくい制度に予算を割いたりするおそれがあります。限られた予算を活かすには、採用・定着・健康管理など、自社の課題に合う制度へ優先的に配分することが大切です。
1. 法定福利費を固定費として見込む
福利厚生費の全体予算を決める際は、まず会社負担が義務付けられている法定福利費から見積もるのが基本です。健康保険料や雇用保険料などは、給与総額に応じて会社負担分が発生するため、先に概算額を確認しておく必要があります。
概算の段階では、給与総額の約15%を目安にすると、法定福利費のおおよその予算を見積もれます。
【計算イメージ:従業員3名・月間給与総額90万円の場合】
90万円 × 15% = 13万5,000円
ただし、実際の法定福利費は、加入している健康保険の料率、介護保険料の対象者、雇用保険料率、労災保険率などによって変わります。まず法定福利費を見積もり、その後に法定外福利費の予算を決めると整理しやすくなります。
2. 法定外福利費の目的を採用・定着・健康管理に分ける
会社負担が義務付けられている法定福利費を見積もった後は、法定外福利費の予算を検討します。法定外福利費は、制度数を増やすだけでは十分とはいえません。採用や定着、健康管理など、自社の課題に合う制度を優先することが大切です。
たとえば、若手採用を強化したい場合は、住宅手当や借り上げ社宅制度などの家賃補助、資格取得支援に予算を配分することが考えられます。既存社員の定着を重視する場合は、育児・介護支援や食事補助などを検討しましょう。
3. 1人あたりの上限を決める
目的に合わせて導入する制度を整理したら、制度ごとに従業員1人あたりの支給上限額を決めます。上限を設けないまま運用すると、利用人数の増加により予算が膨らみやすくなる点に注意が必要です。
たとえば、食事補助や通勤手当は、非課税限度額や支給条件を確認したうえで金額を決める必要があります。1人あたりの上限額を決めて対象人数を掛け合わせると、法定外福利費の予算を見積もりやすくなるでしょう。
4. 給与明細・社内規程・経費精算の運用をそろえる
福利厚生費のパーセンテージを算出した後は、設定した予算内で正確に管理できるよう、給与明細や社内規程、経費精算の運用ルールを統一します。
たとえば、住宅手当のような現金支給は給与明細へ記載し、社内行事の費用は経費精算で処理するなど、科目ごとのルールを明確にすることが重要です。
社内でルールをそろえると、見積もった割合と実際の支出額の差を確認しやすくなります。
福利厚生費の予算を決める前に確認したい3つのポイント
会社が新たな福利厚生を導入しても、公平性や税務上の扱いを考慮しなければ、従業員の不満や経理担当者の業務負担増につながるおそれがあります。企業が予算を適正に配分し、制度を円滑に運用するためには、事前の確認作業が重要です。
1. 全従業員に公平な制度になっているか
予算を本格的に組む段階では、提供する制度が一部の人に偏っていないかを確認しましょう。対象者や金額、目的、実態によっては、福利厚生費ではなく給与や交際費などに区分される可能性があります。
たとえば、従業員を対象とした社内行事でも、参加対象や内容、金額が通常の範囲に収まっているかを確認しましょう。役員のみの会食や旅行は、福利厚生費ではなく、内容に応じて役員給与、交際費、会議費などに区分される可能性があります。
予算を決める際は、従業員全体に利用機会があるか、支給条件を社内規程で説明できるかを確認しましょう。
2. 給与扱いになる支給方法を選んでいないか
予算を組む際は、提供する制度が現金支給になっていないか見直しましょう。
現物支給であっても、私服として使える背広のように業務専用といえないものは、給与として扱われる場合があります。
福利厚生費として整理したい場合は、現物支給や会社による直接決済にできるかを検討します。給与課税や給与計算の処理漏れを防ぐため、各制度の支給方法と税務上の扱いを確認しましょう。
3. 給与計算や年末調整に影響する項目はないか
予算を決める前に、導入予定の制度が給与計算や年末調整の処理に影響しないかを確認しましょう。
福利厚生として支給したものが給与所得に該当する場合は、毎月の給与計算で源泉徴収を行い、年末調整にも反映しなければなりません。
住宅手当のように現金で支給する制度も、原則として給与として扱われます。住宅関連の福利厚生を見直す場合は、現金支給だけでなく、借り上げ社宅制度として設計する選択肢もあります。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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