入退社に関する実態調査
作成日:2026年6月3日
1. 調査概要
本レポートは、企業で従業員の入退社に伴う書類手続きの実務や管理・承認を担う人事・労務担当者を対象とした調査結果をまとめたものです。手続きトラブルの発生頻度、入社時・退職時にトラブルが起きやすい項目、トラブルの原因や業務への影響、導入・検討している対策などを明らかにしており、自社の制度設計・運用改善やコンテンツ設計にお役立ていただけます。
- 調査時期:2026年2月実施
- 調査対象:入退社に伴う書類手続きの実務または管理・承認に携わった経験がある方
- 有効回答数:全回答者881名(うち手続き経験者層がメイン対象、関与経験者は全体の約72%)
- 回答者属性:入退社手続きに現在携わっている(46.7%)、過去に携わったことがある(25.3%)
回答者の入退社手続きへの関与状況
- 現在携わっている:46.7%
- 携わったことがない:26.7%
- 過去に携わったことがある:25.3%
- わからない/答えられない:1.3%
2. 調査結果サマリー
4つのポイント
- 入退社手続きで書類の不備や回収遅延などのトラブルが「頻繁にある(18.8%)」「時々ある(41.2%)」を合わせると60.0%に上り、約6割が定期的にトラブルに直面している。
- 入社時は「社会保険や住民税の手続き(39.0%)」「前職の源泉徴収票の回収(31.2%)」「マイナンバー等の回収(29.5%)」、退職時は「離職票の発行手続き(31.7%)」「健康保険証の回収(29.1%)」が上位で、回収・手続き業務と退職者とのやり取りがネックとなっている。
- トラブルの最大の原因は「本人(入退社する従業員)の対応の遅れ・不備(35.3%)」で、次いで「人事担当者の知識不足・確認ミス(30.8%)」となり、従業員と担当者の双方がボトルネックになっている。
- トラブルの最大の影響は「担当者の残業時間の大幅な増加(37.5%)」だが、導入・検討している対策は「チェックリストの徹底(31.8%)」「手続きマニュアルの整備(31.3%)」が「システムの導入(29.6%)」をやや上回り、影響と対策にギャップがある。
3. 調査結果の詳細
3-1. 入退社手続きの実務・管理への関与状況
全回答者に対し、現在または過去の職場において、従業員の入社や退職に伴う書類手続き(雇用契約書、社会保険手続き、離職票の発行など)の実務、またはその管理・承認に携わった経験があるかを尋ねました。
- 現在携わっている:46.7%
- 携わったことがない:26.7%
- 過去に携わったことがある:25.3%
- わからない/答えられない:1.3%
「現在携わっている」が約半数を占め、「過去に携わったことがある」を合わせると7割以上が業務に関与した経験を持っています。属性別では、男性30代(60.8%)・男性40代(54.9%)で「現在携わっている」割合が高く、現場の最前線で手続きを担っている層であることがわかります。女性20代でも「現在携わっている」が55.6%と過半数を超えており、若手層が実務を任されるケースも多いようです。
3-2. トラブルの発生頻度
手続き業務に携わった経験がある628名を対象に、書類の不備や回収の遅延、システム上の入力ミスなどの「トラブル」が発生する頻度を尋ねました。
- 時々ある(数ヶ月に1回程度):41.2%
- 頻繁にある(月に数回以上):18.8%
- ほとんどない:17.7%
- たまにある(年に1~2回程度):17.4%
- 全くない:4.9%
「時々ある」が最多となり、「頻繁にある」と合わせると6割が定期的なトラブルに直面していることがわかりました。属性別では、「時々ある」と「頻繁にある」を合計した割合が女性20代で88.4%、女性30代で85.7%に達しており、実務を担う若手女性層においてトラブルの発生頻度が極めて高い実態があります。
3-3. 入社手続きにおいてトラブルが発生しやすい項目(複数回答)
入社手続きにおいて特にトラブルや苦労が発生しやすい項目を尋ねました。
- 社会保険(健康保険・厚生年金)や住民税の手続き:39.0%
- 前職の源泉徴収票の回収:31.2%
- 年金手帳・マイナンバー等の必要書類の回収:29.5%
- 雇用契約書・労働条件通知書の締結:28.3%
- 入社時研修や備品貸与の管理:27.8%
- その他:1.5%
- 特になし:9.5%
「社会保険や住民税の手続き」がトップとなり、次いで「前職の源泉徴収票」や「マイナンバー等」の回収業務が上位に挙がりました。手続き業務とあわせて、従業員からの書類回収が大きな負担となっています。属性別では、男性30代で「入社時研修や備品貸与の管理」をトラブル項目として挙げた割合が47.8%と全年代で最も高く、書類以外のアナログな管理業務に苦労している様子がうかがえます。
3-4. 退職手続きにおいてトラブルが発生しやすい項目(複数回答)
退職手続きにおいて特にトラブルや苦労が発生しやすい項目を尋ねました。
- 離職票の発行手続き(賃金台帳の集計等):31.7%
- 健康保険証の回収:29.1%
- 退職届の受理と退職日の合意:26.8%
- 貸与品(PC、社員証、制服等)の返却:26.8%
- 有給休暇の消化調整:26.1%
- 競業避止義務や秘密保持に関する合意:22.4%
- その他:0.8%
- 特になし:9.0%
離職票の発行や保険証の回収が上位となり、退職者とのやり取りに関する業務がネックになっています。属性別では、男性30代で「健康保険証の回収」に苦労している割合が46.4%と突出して高く、退職後に連絡がつきにくくなる従業員からの回収の手間に悩まされています。
3-5. トラブルが発生する主な原因(複数回答)
トラブルの主な原因として感じていることを尋ねました。
- 本人(入退社する従業員)の対応の遅れ・不備:35.3%
- 人事担当者の知識不足・確認ミス:30.8%
- 行政機関の対応待ちや制度の複雑化:25.5%
- 社内フローの複雑さ・アナログな運用:24.0%
- システム(SaaS等)の不具合・使いにくさ:21.8%
- わからない:6.5%
- その他:0.5%
「本人の対応の遅れ・不備」がトップとなり、次いで「人事担当者の知識不足・確認ミス」が挙げられ、従業員と担当者の双方がボトルネックになっています。属性別では、女性50代で「本人の対応の遅れ・不備」を原因に挙げる割合が42.6%と高く、提出期限を守らない従業員に対して不満を抱えていることが推測されます。
3-6. トラブル削減のために導入・検討している対策(複数回答)
トラブルを減らすための対策を尋ねました。
- チェックリストの徹底:31.8%
- 手続きマニュアルの作成・整備:31.3%
- 電子契約・労務管理システムの導入:29.6%
- 従業員への事前説明の強化:26.6%
- アウトソーシング(社労士等)への委託拡大:22.8%
- 対策は特に行っていない:15.9%
- その他:0.8%
チェックリストやマニュアルといった属人的な対応の強化が、システム導入をわずかに上回る結果となりました。トラブルの影響として残業増加が最多であるにもかかわらず、対策がアナログな努力に寄っている点が特徴的です。属性別では、男性30代で「電子契約・労務管理システムの導入」の割合が40.6%と全年代で最も高く、実務のコア層はテクノロジーを用いた抜本的な解決を志向しています。
3-7. トラブルによって生じた業務への影響(複数回答)
トラブルによって実際に出た影響を尋ねました。
- 担当者の残業時間が大幅に増加した:37.5%
- 従業員との信頼関係が悪化した:28.1%
- 特に大きな問題には至らなかった:27.8%
- 従業員の給与支払いや保険適用に遅延が出た:27.5%
- その他:0.5%
「担当者の残業時間が大幅に増加した」が最多となり、現場の疲弊感が数値として現れました。従業員との信頼関係の悪化や、給与支払い・保険適用の遅延といった致命的な影響も一定数発生しています。属性別では、女性20代で「担当者の残業時間が大幅に増加した」と回答した割合が51.2%と半数を超えており、若手担当者にミスの尻拭いや確認作業のしわ寄せが集中している実態が浮かび上がっています。
4. 調査結果から見える課題と対策
本調査の結果から、入退社手続きの運用において、3つの課題と、その対策の方向性が浮かび上がりました。
課題①:従業員からの書類回収・催促の負担
トラブルの最大の原因は「本人の対応の遅れ・不備(35.3%)」であり、入社時のマイナンバーや源泉徴収票、退職時の保険証回収など、従業員からの書類回収が大きなネックとなっています。何度催促しても提出されない状況が担当者のストレスとなっています。
対策の方向性:未提出者への自動リマインドやスマホからの画像アップロードなど、回収業務そのものを効率化する仕組みを導入し、催促の手間を削減することが有効です。
課題②:手続き遅延による残業と信頼関係への影響
トラブルの影響として「担当者の残業時間の大幅な増加(37.5%)」が最多で、「従業員との信頼関係の悪化(28.1%)」「給与・保険適用の遅延(27.5%)」も発生しています。書類回収の遅れが保険証の発行遅れや給与遅延といった実害に直結しています。
対策の方向性:手続きの進捗を可視化し遅延を早期に検知できる仕組みを整えることで、残業の発生や従業員との信頼関係の悪化、給与・保険適用の遅延といった実害を防ぐことが望まれます。
課題③:アナログな対策に偏った属人的運用の限界
対策はチェックリストの徹底(31.8%)やマニュアル整備(31.3%)といったアナログな努力に偏っており、システム導入をやや上回っています。しかし人事担当者の知識不足・確認ミス(30.8%)も原因に挙がっており、属人的な対応強化だけでは残業削減につながりにくい構造があります。
対策の方向性:チェックリストやマニュアルで実務を支えつつ、回収・手続き業務自体を労務管理システムで自動化することで、属人化を脱し根本的にトラブルを減らすことが効果的です。
5. まとめ
本調査からは、約6割の担当者が入退社手続きで定期的にトラブルに直面しており、その最大の原因が従業員の対応の遅れと書類回収の難しさにあること、そしてトラブルが担当者の残業増加や従業員との信頼関係の悪化に直結している実態が明らかになりました。対策はチェックリストやマニュアルといったアナログな努力に偏り、影響の大きさと対策のあり方にギャップが見られます。
- 書類回収・催促の負担:従業員の対応遅れが最大のトラブル原因 → 催促の手間と担当者のストレス増大
- 手続き遅延による実害:残業増加に加え給与・保険適用の遅延が発生 → 従業員との信頼関係の悪化リスク
- 属人的な対策の限界:チェックリスト・マニュアル中心で確認ミスも残る → アナログ運用では残業が減らないリスク
これらの課題に対しては、自動リマインドやスマホアップロードによる回収業務の効率化、手続き進捗の可視化による遅延の防止、チェックリスト・マニュアルと労務管理システムを組み合わせた属人化からの脱却を進めることが、担当者の負担を軽減し入退社手続きを円滑に運用する鍵となります。
本調査データの引用・転載について
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出典
マネーフォワード クラウド、入退社に関する調査データ(回答者:881名のうち入退社手続きの経験者層、集計期間:2026年2月)
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