- 更新日 : 2026年2月26日
福利厚生費とは?計上可能な経費の条件や節税メリットを分かりやすく解説
福利厚生費は、一定要件を満たせば経費計上でき、節税と従業員満足を同時に実現します。
- 法定福利費と法定外福利費に分類
- 全従業員対象かつ常識的金額が必須
- 社内規程と証拠書類の整備が重要
Q. 福利厚生費で最も否認されやすい点は?
A. 一部社員限定や高額すぎる支出で、規程不備も原因になります。
福利厚生費という言葉は、経営者や経理担当者にとって非常に関心の高い概念の一つに数えられます。会社が従業員のために支出する費用のうち、一定の条件を満たすものは福利厚生費として計上可能です。しかし、何でも経費として認められるわけではなく、税務上の明確なルールが存在します。本記事では、福利厚生費の定義から認められるための要件、一例としての事例や節税上の利点に至るまで、網羅的な視点から詳しく解説を進めてまいります。
目次
福利厚生費とはどのような経費を指すのか?
福利厚生費という勘定科目がどのような内容を指しているのか、その全体像を把握することから始めましょう。企業が支払う費用の中には、労働の直接的な対価である給与とは別に、従業員の福祉向上のために支払われるものが含まれます。
従業員の生活向上や慰労を目的に支出される非賃金報酬
福利厚生費とは、企業が従業員の労働環境を整えたり、心身の健康を維持したりする目的で支出する費用を指します。これは月々の給与やボーナスといった賃金とは異なる性質を持ち、従業員がより良い環境で働くための還元策としての側面が強いものです。会社側が福利厚生を充実させる背景には、働きやすい職場を提供することで生産性を高め、組織全体の活力を維持する狙いがあります。
法定福利費と法定外福利費の二種類に分類される費用
福利厚生費は大きく分けて、法律によって支出が義務付けられている「法定福利費」と、企業が任意で実施する「法定外福利費」の二つが存在します。法定福利費は健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの会社負担分が含まれており、法的な根拠に基づいて計算が行われます。一方で、私たちが一般的に福利厚生と呼ぶ食事補助や社員旅行などの費用は法定外福利費に該当し、企業の裁量によって内容や規模が自由に決定される仕組みです。
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福利厚生費として認められるための要件は何か?
税務調査において福利厚生費の妥当性が問われるケースは少なくありません。税務上の経費として認められるためには、恣意的な運用ではないことを証明する客観的な条件を満たしておく不可欠な理由があります。
全ての従業員を対象として平等に機会が提供されている状態
福利厚生費として認められるための大原則は、全従業員が平等にその恩恵を受けられる仕組みになっている点にあります。正社員だけでなく、条件を満たすアルバイトやパートタイマーも含めて、全員に参加や利用の機会が与えられていなければなりません。一部の限定的なグループや派閥のみを対象とした支出は、福利厚生費ではなく交際費や給与として認定される恐れがあるため、制度の全社的な公平性を保つ体制を整えることが望ましい対応です。
社会通念上ふさわしい常識的な金額の範囲内である事実
支出される金額が世間一般の常識に照らして妥当であるかどうかも、判断の分かれ目となります。例えば、一泊二日の国内旅行であれば一般的な親睦行事とみなされますが、あまりに豪華な海外旅行を頻繁に繰り返すような支出は、福利厚生の範囲を逸脱していると判断されかねません。過度な贅沢と受け取られるような支出は、実質的な役員報酬や賞与とみなされ、税務上の否認を受けるリスクを孕んでいることを念頭に置くべきです。
社内規定の整備や領収書の保管といった客観的な証拠
福利厚生費を正しく計上するためには、あらかじめ福利厚生規程などの社内ルールを明文化しておく方法が有効です。慶弔見舞金の金額や食事補助の支給基準などをルール化し、その規程に沿って運用されている事実を明確にします。また、実際の支出に際しては、日付や内容、参加人数などが記載された領収書や議事録、案内文などの証拠書類を適切に保存し、外部からの指摘に対していつでも説明できる状態を維持する備えが欠かせません。
どのような費用が福利厚生費の対象になるのか?
実際にどのような項目が福利厚生費として認められるのか、その内訳を確認しましょう。日常的な支出から季節ごとのイベントまで、幅広い項目が対象となり、経営の健全性を支える要素となります。
忘年会や社員旅行などの社内行事に伴うレクリエーション費用
社内の親睦を深めるために行われる忘年会や新年会、歓送迎会などの飲食費用は、福利厚生費として処理できる代表的な事例です。また、社員旅行についても、滞在期間や参加割合などの一定の基準をクリアしていれば、会社が負担する費用を経費として算入できます。これらは従業員のモチベーション維持やコミュニケーションの活性化に寄与する活動として認められており、組織文化の醸成を支える大切な支出項目として扱われます。
参考:従業員等に対する慰安行事の交際費等の該当性 | 国税庁
通勤手当や健康診断の受診料などの健康維持や通勤支援
従業員が会社に通勤するために要する交通費は、一定の限度額までは非課税で支給可能です。さらに、法律で義務付けられている定期健康診断の費用を会社が負担する場合も、この科目に該当します。従業員の健康を守るための人間ドックの費用についても、全従業員を対象とするなどの条件を整えることで、会社が経費として負担し、組織の健康経営を推進する手段として活用されるケースが目立ちます。
慶弔見舞金や食事補助といった日常生活を支えるための支出
従業員本人やその親族に慶事や弔事があった際、会社の規定に基づいて支給されるお祝い金や香典も福利厚生費に含まれます。また、残業時の食事代や、一定の要件を満たした昼食代の補助についても、従業員の経済的負担を軽減する施策として広く取り入れられています。これらの支出は従業員の生活を直接的にサポートする意味合いを持ち、会社が個人の人生の節目や日々の暮らしに寄り添う姿勢を示す形として大きな意義を持ちます。
福利厚生費として計上できないケースはどのようなものか?
福利厚生費のつもりで支出していても、実態によっては別の科目として処理しなければならない場面が生じます。誤った判断は、後々の追徴課税などのトラブルを招く原因となるため、細心の注意を払う必要があります。
役員や特定の社員のみを対象とした不公平な支出
福利厚生の基本である「平等性」が失われている支出は、経費として認められない可能性が高まります。例えば、役員だけが参加するゴルフコンペの費用や、一部の管理職のみに提供される過剰な接待などは、福利厚生費の枠組みからは外れるのが一般的です。これらは交際費として処理されるか、あるいは役員に対する実質的な給与として所得税の課税対象になる場合があるため、常に全員が対象であるかという視点で判断を下すことが不可欠です。
度を越した高額な遊興費や実態の伴わない個人的な支払い
金額が極端に高額な場合、福利厚生の目的を達成するために必要な範囲を超えているとみなされます。例えば、個人の趣味に類するクラブの会費や、家族だけを連れて行った旅行の費用を福利厚生費に混ぜるような行為は認められません。事業に関係のない個人的な出費を会社名義で精算する行為は、税務調査において厳しくチェックされる項目であり、企業の社会的信頼を著しく損なう要因となるため、厳格な管理体制が望まれます。
給与や交際費として処理すべき性質を持つ金銭の支給
現金で渡される手当の多くは、福利厚生費ではなく給与として扱われるのが原則です。住宅手当や家族手当といった名称であっても、金銭で直接支給されるものは従業員の所得として課税対象になります。一方で、社宅を用意して家賃の一部を会社が負担するような現物給付の形をとることで、福利厚生費としての計上が可能になる場合もあります。また、取引先との関係維持を目的とした贈答品や飲食費は、福利厚生費ではなく交際費に区分されるべき性質のものです。
節税対策として福利厚生費を活用するメリットは何か?
福利厚生を充実させることは、従業員の満足度を高めるだけでなく、会社側の財務面においてもポジティブな影響をもたらします。戦略的な活用により、強固な経営基盤の構築に寄与するものです。
法人税の課税対象となる所得を圧縮し納税額を抑える効果
福利厚生費は、正当な事業上の経費として損金に算入することが可能です。これにより、会社の利益を適正に圧縮し、最終的な法人税の負担を軽減する効果が得られます。利益が出ている時期に、将来への投資として従業員の教育研修や健康増進のための設備を整えることで、税負担をコントロールしながら社内の人的資産価値を高める選択が可能となり、経営の安定化に寄与します。
社会保険料の負担を増やさずに実質的な手取り額を増やす仕組み
給与を増額して還元しようとすると、従業員側の所得税や住民税が増えるだけでなく、会社と従業員が折半して負担する社会保険料の額も上昇します。しかし、食事補助や社宅制度などの福利厚生として還元する場合、一定の範囲内であれば非課税となり、社会保険料の算定根拠となる報酬にも含まれません。その結果、会社側の負担増を抑えつつ、従業員の可処分所得を実質的に増やすという、双方にとって合理的な仕組みが完成します。
従業員の満足度向上による人材の定着や採用力の強化
金銭的なメリットを超えた大きな効果として、会社に対する愛着や信頼感の醸成が挙げられます。福利厚生が充実している企業は、従業員を大切にする姿勢が可視化されているため、離職率の低下や人材の定着につながります。採用活動においても、福利厚生の内容は求職者が重視する指標の一つとなっており、優れた人材を確保する上での強力な武器となります。健全な職場環境は組織のブランド価値を向上させる要素となり、長期的な成長を支えます。
福利厚生費を正しく理解し適切に運用するための総括
福利厚生費は、会社と従業員の双方に多大な恩恵をもたらす制度です。法的に義務付けられたものから、企業の個性を反映した独自の施策まで多岐にわたりますが、一貫して大切になるのは平等性と社会通念上の妥当性です。ルールに基づいた適切な運用を行うことで、税務上のリスクを避けながら、節税と従業員満足度の向上を同時に達成できます。本記事で解説した条件を参考に、自社の成長を支える基盤として、透明性の高い福利厚生制度を構築していく姿勢が期待されます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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