- 更新日 : 2025年12月19日
転職時の健康保険被扶養者(異動)届の書き方は?提出方法と注意点
転職にともない健康保険の加入先が変わると、本人だけでなく家族の「扶養資格」も切り替わります。その際に必要となるのが「健康保険被扶養者(異動)届」です。この届出は、転職(入社)にともない、配偶者や子どもなどの家族を健康保険の扶養に入れるために必要な書類です。提出を忘れると、扶養認定が遅れて家族が病院に行けないなど、従業員とのトラブルにつながるおそれがあります。
2023年6月以降はマイナンバーの記載が義務化され、提出後はマイナンバーカードを保険証として利用できるほか、希望しない場合は「資格確認書」が発行されます。
この記事では、転職時に押さえておきたい「健康保険被扶養者(異動)届」の書き方や、入社・退職時の記入例、理由欄の選び方をわかりやすく解説します。
目次
転職時に健康保険被扶養者(異動)届はなぜ必要?
転職先の会社から健康保険被扶養者(異動)届の提出を求められるのは、従業員が家族を新しい会社の健康保険の扶養に入れる(または外す)手続きに、必須の書類だからです。
日本の公的医療保険は、すべての国民が何らかの保険に加入する「国民皆保険制度」です。転職して新しい会社に入社すると、転職先の会社で健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に加入(資格取得)する必要があります。
前職の扶養資格は引き継がれない
転職により勤務先が変わると、前職で加入していた健康保険の資格は退職日の翌日に喪失します。それにともない、扶養されていた家族も同時に扶養資格を失います。
前職で扶養に入れていたとしても、その資格は転職先の健康保険には自動的に引き継がれません。新しい勤務先(転職先)で健康保険に加入する際、改めて「健康保険被扶養者(異動)届」を提出し、家族が扶養の条件(年収130万円未満など)を満たしているかどうかの審査を受け、再度認定してもらう必要があります。
この届出が、被扶養者となる家族がマイナンバーカードで保険診療を受けたり、保険証の代わりとなる「資格確認書」を発行してもらったりするための申請書となります。なお、2024年12月2日から従来の健康保険証の新規発行は終了しています。マイナンバーカードに健康保険証を利用登録したマイナ保険証への移行が進み、マイナ保険証で医療機関を受診することが推奨されています。ただし、従来の健康保険証は2025年12月2日から使用できなくなる予定でしたが、2026年3月末まで暫定措置として使えることになりました。
もし提出を怠ると、後から「扶養認定外」と判断され、医療費の返還や保険料の追納を求められるケースもあります。そのため、転職時の手続きでは本人の資格取得届とあわせて、この「異動届」の提出が必要です。
転職時以外にも届出が必要なケース
転職(入社)時だけでなく、家族の状況に変化があった場合にも健康保険被扶養者(異動)届の提出が必要です。
- 扶養追加(増える):結婚や出産などで新たに扶養する家族ができたとき
- 扶養削除(減る):家族が就職したときや収入が増加して扶養の要件を満たさなくなったとき、または離婚したときや死亡したとき
- 内容変更:被扶養者の氏名変更などがあったとき
いずれの場合も、事由が発生してから原則として「5日以内」に提出します。
転職時の健康保険被扶養者(異動)届の書き方
転職時の健康保険被扶養者(異動)届の書き方は、加入する健康保険組合(協会けんぽや各健康保険組合)によって様式が異なることがありますが、記入する基本的な項目は共通しています。
主に「事業主記入欄」、「被保険者欄」(従業員本人)、「被扶養者欄」(家族)で構成されています。 協会けんぽの場合、この届出は「国民年金第3号被保険者関係届」と一体化しています。
▼ 届出用紙のダウンロード先(日本年金機構)
被扶養者となっている家族に異動があったとき(家族を被扶養者にするとき、被扶養者となっている家族に異動があったとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき)|日本年金機構
▼ 記入例(日本年金機構)
【記入例】健康保険被扶養者(異動)届(記入例)|日本年金機構
1. 事業主記入欄(会社が記入)
事業主記入欄(事業所整理記号、所在地、名称など)は、転職先の会社(人事・総務担当者)が記入します。会社名、所在地、事業主名、事業所整理記号などを記入します。
事業主が、扶養認定を受ける従業員の家族が所得税法上の控除対象配偶者や扶養親族であることを確認した場合、「1.確認」に〇を付けることで「課税(非課税)証明書」などの収入金額確認書類を省略することができます(非課税対象の収入確認書類は除く)。
事業主が届書を受け取った日も記入します。
2. 被保険者欄(転職した本人の情報)
転職した従業員本人の情報を記入します。
被保険者整理番号:
入社時点ではまだ番号が不明な場合が多いため、空欄のままでよいか、会社の担当者に確認しましょう。被保険者資格取得届と同時に提出する場合は記入不要です。
氏名・生年月日・性別:被保険者の情報を記入します。
個人番号(マイナンバー):
令和5年6月1日以降、被保険者本人のマイナンバー記載も義務付けられています。マイナンバーを記入した場合、基礎年金番号の記入は不要です。
収入(年収): 被保険者本人の年収見込み額を記入します。
3. 被扶養者欄(家族の情報)
扶養に入れる家族の情報を書く欄です。配偶者の欄と子どもや親などの欄は分かれています。
届出日: 配偶者を被扶養者にする場合、被保険者が届書を事業主へ提出した日を記入します。
氏名・生年月日・続柄:
扶養に入れる家族の情報を記入します。続柄は「夫」「妻」「実子・養子」「父母・養父母」「義父母」「弟妹」「兄姉」など該当欄に〇をします。
個人番号(マイナンバー):
家族(被扶養者)のマイナンバーを記載します。記載がないと手続きが遅れたり、書類が返戻されたりする場合がありますので注意しましょう。
(被保険者と被扶養者のマイナンバーを記入し、備考欄の「続柄確認済み」のボックスにチェックすることで、続柄確認のための住民票や戸籍謄本などの書類を原則として省略できます。)
被扶養者になった日:
転職(入社)と同時に扶養に入れる場合、「入社日(資格取得日)」と同じ日付を記入します。
事由(理由):
「被扶養者になった」理由を選びます。
転職(入社)と同時に提出する場合、「5.その他(被保険者資格取得)」 を選択するか、または「被保険者資格取得届」と同時提出の場合は記入不要とされている場合もあります。転職先の会社の指示に従いましょう。
職業・収入(年収):
扶養に入れる家族の現在の職業(無職、パート、小・中学生以下、高・学生など)に〇をし、今後の年収見込み額を記入します。収入にはパート・アルバイト代のほか、年金、失業給付なども含まれます。
住所: 同居の場合は「同居」を丸で囲みます。別居の場合は「別居」を丸で囲み、仕送り額などを「備考」欄に記入することがあります。
子どもなど、別居している家族を扶養に入れる場合は、1回あたりの仕送り額を備考に記入し、「扶養に関する申立書」欄に仕送り回数及び被保険者氏名を記入します。仕送り実績が確認できる通帳のコピーや振込明細書など、証明書類の添付が必要になります(16歳未満の家族、または16歳以上の学生は不要)。
記入上の注意点
- 年収見込み額は「給与収入+その他の所得」を合計した見込みで記入します。
- 年金受給や失業給付を受けている場合は、その金額も含めて計算します。
- 記入ミスを防ぐため、健康保険組合や会社が用意した記入例を確認しておくと安心です。
「国民年金第3号被保険者関係届」とは?
配偶者(20歳以上60歳未満)を扶養に入れる場合、その配偶者は同時に「国民年金第3号被保険者」となります。
「健康保険被扶養者(異動)届」と「国民年金第3号被保険者関係届」と一体化しているフォーマットになっていますので、別途、国民年金の手続きをする必要は原則ありません。
転職にともなう添付書類のポイント
転職にともない家族を扶養に入れる場合、「被扶養者(異動)届」に加えて、その家族が扶養の要件(主に収入要件)を満たしていることを証明する書類が必要です。
続柄や同居の確認書類
被保険者と被扶養者のマイナンバーを届書に記載して備考欄の「続柄確認済み」のボックスにチェックした場合:
原則として添付不要です。
マイナンバーを記載しない場合:
戸籍謄本や戸籍抄本、被保険者世帯全員の住民票の写し(被保険者が世帯主であり、被扶養者と同居している場合)などが必要になることがあります 。
収入要件を確認する書類
「扶養に入る時点(=転職先の入社日時点)」で、その家族の収入が基準額(通常130万円)未満であることを証明する必要があります。
ただし、事業主が、扶養認定を受ける従業員の家族が所得税法上の控除対象配偶者や扶養親族である旨の証明(「1.確認」に〇を付ける)することで「課税(非課税)証明書」などの収入確認書類を省略することが可能です(非課税対象の収入確認書類は除く)。
扶養認定日が令和7年10月1日以降は、扶養認定を受ける人19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く)である場合は、年間収入130万円未満が年間収入150万円未満に変更されてることに注意しましょう。また、必要な書類は、転職先の健康保険組合や家族の状況によって異なります。必ず転職先の会社の指示に従ってください。
【退職時】扶養から外れる場合の書き方は?
「転職」には、前職を「退職する」手続きも含まれます。前職の退職に伴い、前職の会社が資格喪失届を提出することで、家族は扶養から外れる(資格を失う)ます。退職者に被扶養者がいる場合であっても、健康保険被扶養者(異動)届の手続きは不要です。
この手続きは、従業員本人が記入するというより、前職の会社が退職手続きの一環として処理するのが一般的です。その際、従業員は家族全員分の資格証明書(発行されている場合)を前職の会社に返却します。
家族が扶養から外れる場合の記入ポイント
家族が被扶養者の条件に該当しなくなった場合の健康保険被扶養者(異動)届の書き方のポイントは以下のとおりです。
事業主情報と被保険者情報を記入したら、「2.非該当」に〇をして、以下の事項を記入します。
被扶養者でなくなった日:
就職の場合は就職年月日、離婚した場合は離婚年月日、死亡した場合は死亡日の翌日、後期高齢者医療の被保険者となった場合は被保険者となった日を記入します。
事由(理由):
「被扶養者でなくなった」の理由欄を選びます。
「死亡」「離婚」「就職・収入増加」「75歳到達」など該当する項目の番号を選んで〇をします。
保資格確認書の扱い(扶養から外れる場合)
扶養から外れる場合、それまで使用していた資格証明書は、健康保険被扶養者(異動)届に添付して返却します。資格証明書が返却できない場合は、「資格確認書回収不能届」を健康保険被扶養者(異動)届に添付して提出します。
扶養から外れた場合、 資格証明書は使用できませんので注意しましょう。
なお、マイナンバーカードを保険証として利用していた場合は、扶養から外れた事実は自動的にシステムに反映されます。
【記入例】健康保険被扶養者(異動)届(記入例)|日本年金機構
転職時の健康保険被扶養者(異動)届で労務担当者が押さえておきたいポイント
転職者や中途入社者を受け入れる企業の人事・労務担当者は、扶養関連の手続きをスムーズに案内することが求められます。
入社時オリエンテーションと書類の整備
入社手続きの際に、以下の点を明確に伝え、必要な書類を漏れなく回収できるチェックリストを準備しましょう。
- 扶養家族の有無を必ず確認する
「扶養家族がいる場合は健康保険被扶養者(異動)届の提出が必須である」ことを入社書類一覧に明記します。 - マイナンバー(本人・家族分)の提出を必須とする
届出には本人と扶養家族全員のマイナンバー記載が法律で義務付けられているため、入社日までに準備するよう事前に案内します。 - 提出期限(5日以内)を明確に伝える
事由発生(=入社日)から「5日以内」が原則の提出期限であると伝えます。遅れると「資格確認書」の発行が遅れるリスクを説明します。 - 転職者特有の「添付書類」を具体的に案内する
家族の状況(退職直後、パート、学生など)に応じて、必要な添付書類が異なることを伝えます。
例)家族が退職した直後の場合、「退職証明書」や「雇用保険被保険者離職票」のコピー。
例)失業給付を受給中の場合、「雇用保険受給資格者証」のコピー(日額により扶養に入れない場合があることも補足)。
例)パート等の収入がある場合、「直近の給与明細」や「収入見込証明書」など。 - 別居扶養の要件を明記する
別居の家族(親など)を扶養に入れる場合は、「仕送りの事実(振込明細など)」が必須であることを案内します。 - 資格証明書の扱いを説明する
従来の保険証は原則発行されず、マイナンバーカードを保険証として利用することを推奨し、利用しない方には「資格確認書」が送付されることを説明します。
扶養の状況が変わった場合の情報共有を周知徹底する
入社時だけでなく、在籍中に扶養状況が変わった際の届出も重要です。特に「扶養から外す」手続きの漏れは、後で医療費の返還トラブル になりやすいため、定期的な情報共有が欠かせません。
定期的にリマインドを実施する
入社時だけでなく、年末調整の時期や社内ポータルなどで、「家族の状況(就職、収入増、死亡など)が変わったらすぐに報告が必要」であることを周知します。
「扶養から外れるケース」を例示する
従業員が見落としがちな具体例を挙げて注意喚起します。
- 子供が就職した(アルバイト先で社会保険に入った場合も含む)。
- 配偶者のパート収入が年間130万円を超えそうになった。
- 家族が75歳になった(後期高齢者医療制度へ移行するため)。
- 家族が死亡した。
退職時の資格確認書回収を徹底する
従業員が退職する際は、本人だけでなく扶養家族全員分の資格確認書を必ず回収するプロセスを確立します。回収漏れが資格喪失後の不正使用につながるリスクを伝えます。
【FAQ】転職時の健康保険被扶養者(異動)届に関するよくある質問
転職時の扶養手続きに関して、よくある疑問点をまとめました。
Q1. 扶養家族がいない場合でも届出は必要?
いいえ、扶養する家族がいない(単身で入社する)場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する必要はありません。 ただし、入社後に結婚などで扶養家族が増えた場合は、その時点で速やかに提出が必要です。
Q2. 扶養に入る収入の目安は?
一般的には、扶養に入る家族の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であることが基準の一つです。 また、同居の場合は「被保険者の年収の半分未満」、別居の場合は「被保険者からの仕送り額より少ない」といった基準もあります。扶養認定日が令和7年10月1日以降は、扶養認定を受ける人19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く)である場合は、年間収入130万円未満が年間収入150万円未満に変更されてることに注意しましょう。また、健康保険組合によっては独自の基準を設けていることもあるため、転職先の基準の確認が必要です。
Q3. 前職の資格証明書はどうすればいい?
資格証明書(家族の分も含む)は、退職日までに、前職の会社に必ず返却します。 退職日の翌日(資格喪失日)以降は使用できません。もし誤って使用してしまうと、後日、医療費の返還を求められることになるため、注意してください。
なお、2024年12月2日から従来の健康保険証の新規発行が終了し、マイナンバーカードに健康保険証を利用登録したマイナ保険証で医療機関を受診する仕組みに移行されています。従来の健康保険証は2025年12月2日から使用できない予定でしたが、移行期の暫定措置として、2026年3月末まで使えることになりました。マイナンバーカードを保険証として利用している場合、、資格証明書は原則発行されません。 ただし、マイナンバーカードを保険証として利用しない方には、代わりに資格確認書が送付されます。
Q4. 転職先で扶養に入れない場合、家族はどうなる?
転職先の健康保険組合の審査の結果、家族が扶養の条件を満たさない(収入超過など)と判断された場合、その家族は扶養に入れません。 その場合、その家族はお住まいの市区町村の窓口で「国民健康保険」に加入するか、または(子供が就職した場合など)ご自身の勤務先の健康保険に加入する手続きが別途必要になります。
転職時は健康保険被扶養者(異動)届を忘れずに提出しよう
転職や入社のタイミングでは、本人の保険加入手続きと同時に、家族の扶養資格を新しい健康保険へ移す必要があります。 この際に欠かせないのが「健康保険被扶養者(異動)届」です。
書類の提出を忘れると、家族の保険証が発行されなかったり、扶養認定が遅れたりすることがあります。
添付書類の種類や提出期限は健康保険組合によって異なるため、会社の案内を確認しながら正確に対応しましょう。
人事・労務担当者は入社手続きリストにこの項目を含め、従業員にも扶養手続きの重要性を共有しておくと安心です。
スムーズな転職後の生活のために、早めの届出を心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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