• 更新日 : 2026年6月17日

住宅手当がある企業の割合は?企業事例と制度設計について解説

住宅手当を支給する企業は全体の4割程度です。

しかし、世間の相場に合わせようと安易に手当を増額・支給すると、給与課税や社会保険料の増加を招きかねません。また、同一労働同一賃金への対応も求められます。

本記事では、経営者や人事担当者が知っておくべき補助割合・金額の相場を解説します。法的リスクを防ぐ制度設計の手順、会社負担を抑える代替施策までまとめているので、参考にしてください。

住宅手当を支給する企業の割合

厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」によると、住宅手当を支給する企業割合は、全体の4割程度です。

住宅手当制度の導入は、採用力や定着率の向上につながります。一方、毎月の固定費にもなるため、採用課題や人件費の総額を見ながら、制度内容を決めましょう。

住宅手当がある会社の割合は約41.7%

厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」によれば、住宅手当などを支給する企業割合は、全体で約41.7%です。企業規模を考えなければ、半数以上の企業が、住宅手当を支給していない計算になります。

住宅手当は、企業が任意で設ける福利厚生のひとつです。採用したい人材、従業員の年齢層、給与水準とのバランスを見て、支給の可否や金額を決めましょう。

ただし、手当があっても、基本給が低ければ、十分な補助にはなりません。給与や賞与、在宅勤務手当、借り上げ社宅など、関連制度を含めて設計しましょう。

企業規模・業種によって異なる導入率の実態

住宅手当の導入率は、企業規模が大きいほど高くなります。厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」によれば、企業規模別の支給割合は、以下の通りです。

企業規模(従業員数) 住宅手当の支給割合 背景・傾向
1,000人以上 60.8% 全国採用や転勤への対応で制度化が進みやすい
30〜99人 41.6% 経営への固定費負担を考慮し、慎重な設計が必要

1,000人以上の企業と30〜99人規模の企業では、19.2ポイントの差があります。

大企業で住宅手当の支給割合が高いのは、全国採用や転勤対応のためです。住宅支援を制度化し、従業員の勤務場所によらず、生活をサポートするねらいがあります。

一方、中小企業は支社が少ない場合も多く、採用範囲も限定されやすいケースがほとんどです。また、毎月の固定費が経営に影響しやすく、支給対象や金額の設計は慎重にならざるを得ません。

住宅手当を廃止・見直す企業が増えている理由

住宅手当を見直す主な理由は、従業員間の不公平感と、固定費の増加です。

とくに家賃補助は、基本的に賃貸暮らしの従業員を対象とします。持ち家や実家暮らしの従業員は、補助の対象とならないことがほとんどです。こういった仕組みから業務量や質に関わらず、住居形態のみで支給の有無が変わるため、社員間で納得感に差が出ます。

また、テレワークの普及も、住宅手当を見直す理由のひとつです。出社頻度が少ない職場では、会社の近くに住む社員を優遇し、手当を支給する根拠が弱くなります。

制度を見直す際は、基本給への組み込み、在宅勤務手当への変更、借り上げ社宅への移行などの手段も検討しましょう。

広告

この記事をお読みの方におすすめのガイド4選

この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。

※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。

従業員の賃上げに潜むリスクと、企業が打つべき対策

人手不足や物価上昇などを背景に、賃上げが企業経営の重要テーマとなっています。しかし、賃上げには様々なリスクを伴います。

本資料では、企業が賃上げを進める際に注意すべきリスクと対策について解説します。

無料ダウンロードはこちら

住宅手当申請書(ワード)

住宅手当の申請にご利用いただけるテンプレートです。 Wordファイル形式のため、直接入力や編集が可能です。

ダウンロード後、必要事項をご記入の上、申請手続きにお役立てください。

無料ダウンロードはこちら

休業手当の計算シート(エクセル)

休業手当の計算にご利用いただける、Excel形式の計算シートです。

Excelファイル形式のため、ダウンロード後自由にご使用いただけます。 業務での休業手当の計算を行う際にお役立てください。

無料ダウンロードはこちら

割増賃金 徹底解説ガイド(時間外労働・休日労働・深夜労働)

割増賃金は、時間外労働や休日労働など種類を分けて計算する必要があります。

本資料では、時間外労働・休日労働・深夜労働の法的なルールを整理し、具体的な計算例を示しながら割増賃金の計算方法を解説します。

無料ダウンロードはこちら

住宅手当は家賃の何割が目安?補助割合の相場

住宅手当の割合は、家賃の50%以下が目安です。会社の負担を抑えつつ、社員にも適度な自己負担を残せる、現実的なバランスになります。

補助割合の目安は「家賃の50%以下」

住宅手当の補助割合は、家賃の50%以下を目安にしましょう。家賃の半分を超えて支給すると、会社の固定費が増えやすくなります。

たとえば、家賃100,000円の社員に50%を補助すると、月額は50,000円です。対象者が10人なら月500,000円、年間6,000,000円の負担になります。

さらに採用を進め、対象者が30人になった場合、年間負担は18,000,000円です。従業員の人数を増やすほど金額も増えるため、制度設計の段階で上限額を決めておきましょう。

制度上の支給基準は「家賃の30%、上限20,000円」のように、数値で示すのが有効です。社員への説明や給与計算でも、正しい金額が確認しやすくなります。

補助割合を50%以下に設定する税務・労務上の理由

住宅手当を50%以下に抑える理由は、税金と人件費の増加を管理しやすくするためです。

現金で支給する住宅手当は、原則として給与所得に含まれ、所得税と住民税の対象になります。したがって、額面20,000円の手当すべてが、手取りとして残るわけではありません。

また、社会保険料への影響もあります。毎月支給する住宅手当は、健康保険や厚生年金保険の算定対象です。標準報酬月額の等級が上がれば、社員の社会保険料、税金と、会社が負担する法定福利費(事業主負担の社会保険料)が増えます。実質的な人件費が膨らむと、費用対効果を検証しにくくなるでしょう。

住宅手当は、所得税や住民税、社会保険料、残業代への影響を含めて試算しましょう。

「定額制」と「定率制」どちらを選ぶべきか

住宅手当の計算方法は、企業規模や運用体制に合わせて選びます。

中小企業では、まず定額制を検討しましょう。「月20,000円」のように、決まった金額を支給する方法です。給与計算と予算管理がしやすく、運用にかかる事務負担も抑えやすくなります。ただし、居住地域の差や、家賃差を細かく反映しにくいのが弱点です。

一方の定率制は、「家賃の30%」のように、家賃の金額に応じて支給します。公平感を出しやすい反面、家賃証明の確認や上限管理が必要です。定率制を導入するなら、上限を必ず設定しましょう。

住宅手当の平均支給額と企業規模別の相場

住宅手当の金額を決める際、平均支給額だけを基準にするのは避けましょう。支給金額の水準は、企業規模によって変わるためです。

中小企業が大企業の金額をそのまま真似ると、固定費が重くなります。自社の利益率、採用課題、対象人数に合わせて、最適な金額に設定しましょう。

住宅手当の平均額は約1万8,700円

厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、住宅手当などの平均支給額は、月額約18,700円です。平均支給額は、自社の住宅手当支給額を決めるうえで、ひとつの基準になります。

しかし、平均支給額のみをもとに、自社の制度を決めるのは避けましょう。住宅手当の目的が「若手の定着」なのか、「転居を伴う採用支援」なのかで、必要な金額は変わります。

たとえば、若手社員の離職防止を狙うなら、支給期間を入社後3年間に絞るのが有効です。また、遠方からの採用を強めたい会社では、転居を伴う入社者を対象にしましょう。制度内容を決める際は、制度の目的を整理し、対象を絞り込むのが重要です。

大企業と中小企業の支給額の差

住宅手当の支給額は、大企業ほど高い傾向があります。企業規模別の支給額を、下表にまとめました。

企業規模(従業員数) 住宅手当の支給額
1,000人以上 約21,100円
30〜99人 約17,500円

両者の差は約3,600円で、年間では43,200円の違いになります。支給額が他社より高ければ、求人への応募は増える可能性があります。しかし、採用人数を増やすほど、手当の支給額は膨らんでいきます。

中小企業にとって、年間数百万円単位の支出は、無視できません。対象者を絞り、必要な従業員に手当が届くよう、制度を設計する必要があります。

地域別(東京・地方)の支給額の違い

住宅手当は、勤務地の家賃相場に合わせて設計する必要があります。東京などの都市部では、地方より家賃が高くなりやすいためです。

たとえば、同じ20,000円の住宅手当でも、東京と地方では支援効果が変わります。全国一律の支給額なら、運用負担が減るのは事実です。しかし、地域間で家賃相場が異なるため、一律支給は従業員間の不公平感につながるリスクがあります。

地域格差の対策をしたい場合、地域区分を設ける方法が有効です。たとえば「首都圏」と「その他地域」の2区分に分け、首都圏の支給額を高めに設定すれば、家賃の格差に配慮できます。

住宅手当の税金・社会保険・残業代への影響

住宅手当は、社員の手取りがそのまま増える制度ではありません。現金で支給すると、税金や社会保険料に影響します。

さらに、支給方式によっては残業代の計算にも関係します。制度を作る前に、給与計算上の扱いを確認しましょう。

住宅手当は「所得税・住民税」の課税対象になる

現金で支給する住宅手当は、給与所得に含まれるため、所得税と住民税の対象です。

課税対象である点を説明しないまま制度を導入すると、社員の期待と、実際の手取りに差が出ます。会社が費用を負担しても、従業員満足度が上がりにくくなるでしょう。手取り感を重視する社員が多い場合は、借り上げ社宅や他の福利厚生と比較し、実質的なメリットを示すことが大切です。

社会保険料の算定基礎対象でもある

住宅手当は、社会保険料の算定基礎にも含まれます。毎月支給する住宅手当によって標準報酬月額が上がると、健康保険料や厚生年金保険料が増えるため、手取りが額面どおりに増えません。

社会保険料は、社員だけでなく会社も負担するものです。たとえば手当の増額によって等級が上がると、社員の給与から控除する額だけでなく、会社の法定福利費も上がります。したがって、住宅手当の金額は「法定福利費(社会保険料)の上昇も見据えた総額人件費」を基準に決めるのが重要です。

金額だけを先に決めると、あとから固定費の負担が重くなりかねません。制度を継続させるため、金額の設定は慎重に行いましょう。

割増賃金(残業代)の算定基礎から除外できる

住宅手当は、条件を満たせば、割増賃金の算定基礎から除外できます。ただし、名称が「住宅手当」であれば、常に除外できるわけではありません。

家賃の一定割合を支給する方式や、家賃額に応じた段階支給など、住宅費用に応じて算定される方式は、除外対象です。反対に、家賃額と関係なく一律で支給する住宅手当は、割増賃金の算定基礎に含める必要があります。

住宅手当と「借り上げ社宅」のメリット・デメリット

住宅手当を見直すなら、借り上げ社宅も比較対象に入れましょう。現金支給と社宅では、税務上の扱いが異なるため、状況によって有利に働く場合があります。

住宅手当(現金支給)は社員の税負担が重い

現金支給の住宅手当は、シンプルで導入しやすい制度です。給与に上乗せするだけなので、物件契約や家主対応は発生しません。中小企業でもはじめやすいのは、大きな利点です。

一方で、住宅手当は給与所得として扱われるため、所得税・住民税・社会保険料の対象になります。そのため、会社が月20,000円を支給しても、社員の手取りが20,000円増えるわけではありません。

現金支給で納得感を高めるには、支給額だけでなく「手取りへの影響」まで説明することが重要です。たとえば、社内説明では「住宅手当は課税対象であり、税金・社会保険料控除後の金額が実際の手取りになる」と明記します。

手取り額を重視する場合は、借り上げ社宅との比較も有効です。住宅手当を増額するより、借り上げ社宅へ切り替えたほうが、社員の実質的な負担を抑えられる場合があります。

借り上げ社宅なら「非課税」で実質的な手取りを増やせる

借り上げ社宅は、会社が物件を契約し、社員に貸与する制度です。一定の要件を満たして社員から社宅使用料を徴収すれば、給与課税の対象外にできる場合があります。

借り上げ社宅の強みは、住宅手当と比べて社員の実質的な手取りを増やせる点です。会社が家賃の一部を負担しても、従業員から一定額以上の自己負担額を徴収すれば現金の住宅手当より税負担を抑えられる場合があります。若手採用や遠方人材の採用では、訴求材料になるでしょう。

ただし、物件の契約手続き、更新管理、退去対応などの事務負担は増えます。導入時は、対象者を転勤者や新卒社員に限定するなど、無理なく継続が見込める範囲からはじめるのが現実的です。

借り上げ社宅の導入・運用を効率化したい場合は、『マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸』の活用も選択肢に入ります。物件契約や従業員情報の管理を仕組み化することで、人事・労務担当者の事務負担を抑えながら、住宅支援制度の整備が可能です。

自社に最適な住宅手当制度を導入・見直す3ステップ

住宅手当制度の導入時は、目的や金額などを順番に決める必要があります。とくに中小企業では、属人的な判断を避けることが重要です。3つのステップで、支給基準を説明できる制度に整えましょう。

1. 支給目的(離職防止・採用強化)の明確化

最初に、住宅手当の支給目的を設定します。目的が曖昧なまま制度を作ると、支給対象の基準が揺らぎかねません。結果として、社員間の不公平感や労務トラブルにつながります。

避けるべきなのは、慣例的な理由で、手当の支給を続けることです。同一労働同一賃金の観点でも、雇用形態によって支給の有無が変わるのであれば、合理的な理由(業務・責任の範囲の違い、転勤の有無など)を説明できる状態に整理する必要があります。目的を言語化してから、不合理な差が生まれないことに留意して対象者を決めましょう。

2. 補助割合・上限額・対象範囲のシミュレーション

目的が決まったら、補助割合や上限額、対象範囲を試算します。住宅手当の割合は、家賃の50%以下を目安にしつつ、負担上限を先に決めるのが重要です。

たとえば「家賃の30%、上限20,000円」とする場合、対象者が10人なら月200,000円、年2,400,000円が最大負担となります。30人なら、年7,200,000円です。さらに会社負担の社会保険料=福利厚生費の上昇もシミュレーションしておくことが大切です。対象者数が増えた場合に備えて、将来的な上限コストまで確認しましょう。

また、見直しで手当が減る社員がいる場合は、経過措置も検討しましょう。移行期間を設けたり、基本給へ組み込んだりすることで、従業員も見直しに同意しやすくなります。

3. 就業規則への明記と従業員への周知

最後に、決定した制度を、就業規則や賃金規程に明記します。住宅手当は賃金に関わるため、以下の項目を具体的に記載しましょう。

  • 支給対象
  • 支給額
  • 計算方法
  • 支給時期
  • 必要書類

記載内容が曖昧だと、判断が属人化します。たとえば「必要に応じて支給する」という表現では、対象となる従業員が担当者によって変わりかねません。「賃貸契約の名義人」「世帯主」「転居を伴う入社」など、客観的な条件に落とし込みましょう。

制度変更時は、従業員への周知も欠かせません。とくに廃止や減額を伴う場合は、変更理由や移行期間、代替措置を説明しましょう。コスト削減だけでなく、公平な報酬制度へ見直す取り組みだと伝えましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事