- 更新日 : 2021年9月22日
年末調整で交通費は給与に含まれるのか
アルバイトやパートとして働くことで会社から受け取る収入を年間103万円以下に抑えれば、さまざまなメリットがあるとよく言われます。これは給与所得控除と基礎控除と呼ばれる制度によって、勤務先が実施する年末調整において所得税の税額が全額控除される年収の上限が103万円以下とされているためです。
収入を得ている本人が享受できるメリットは、103万円以下に年収を抑えることで年末調整によって所得税を支払わなくて済む点にあります。また、もう一つのメリットは、年末調整で夫もしくは妻の所得税を計算する際、共働きであれば配偶者控除を受けられるので、夫もしくは妻の所得税が減額される点にあります。
なお、平成30年分以降の年末調整及び確定申告では、夫もしくは妻の合計所得金額が1,000万円を超えた場合には配偶者控除が受けられませんのでご注意ください。
仮に所得を「給与所得のみ」とした場合、給与収入が1,195万円を超えると配偶者控除が受けられません。
これらのメリットを受けるために、年収を103万円以下に抑えようとした場合、交通費が給与のなかに含まれるのかどうかは気になるところです。
ここでは、年末調整において税額控除を受けるために、年収を103万円以下に抑える際の交通費の考え方についてご説明します。
目次
年末調整の税額控除対象の103万円に交通費は含まれるのか?
ほとんどの人が、職場に通うために何らかしらの交通手段を利用していると思いますが、会社からは一般的に通勤するために必要な交通費が支払われます。
交通費が年収に含まれるかどうかは気になるところですが、実際のところ交通費(非課税分のみ)は含まれないとされています。
電車やバスなどの交通機関、または、有料道路を使って自動車で通勤する人に対して支給される通勤手当については、月15万円までであれば、課税対象とはなりません。
一般道路を利用した車通勤の人や、自転車通勤の人に対して支給される通勤手当については、非課税限度額の上限が片道の距離によって異なります(交通機関等を利用する場合より低くなります)ので、超過するかしないかきわどい金額の交通費支給を受けている人は注意してください。
通勤手当の非課税限度額として設定されている金額を上回る交通費の支給を受けている場合は、超過分は課税対象となりますので、年末調整で103万円の年収を計算する際、課税対象分の交通費を含めて計算する必要があります。
税制改正により交通費の非課税限度額が引き上げ
平成28年度の税制改正により、公共の交通機関を使わずに、マイカーや自転車などの交通用具だけで通勤している給与所得者に対して支給する交通費の非課税限度額が引き上げられました。限度額の引き上げについては、平成28年1月1日以降に支払われるべき通勤手当に対して適用されます。
改正後の1カ月あたりの非課税限度額は以下の通りとなっています。
交通機関や有料の道路を使う人に支給する交通費
合理的として認められる1カ月あたりの運賃の額(最高限度額15万円)
自動車や自転車などの交通用具を使う人に支給する交通費
通勤の距離が片道55キロメートル以上 | 31,600円 |
通勤の距離が片道45キロメートル以上55キロメートル未満 | 28,000円 |
通勤の距離が片道35キロメートル以上45キロメートル未満 | 24,400円 |
通勤の距離が片道25キロメートル以上35キロメートル未満 | 18,700円 |
通勤の距離が片道15キロメートル以上25キロメートル未満 | 12,900円 |
通勤の距離が片道10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,100円 |
通勤の距離が片道2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 |
通勤の距離が片道2キロメートル未満 | 全額課税 |
交通機関を使う人に支給する通勤用の定期乗車券
合理的として認められる1カ月あたりの運賃の額(最高限度額15万円)
交通機関や有料の道路を使い且つ自動車や自転車などの交通用具も使う人に支給する通勤手当や通勤用の定期乗車券
合理的として認められる1カ月あたりの運賃の額と、自動車や自転車などの交通用具の利用に対して支給される通勤手当の金額との合計額(最高限度額10万円)
「103万円の壁」を超えないために非課税限度額の確認を
年末調整の際に税額控除を受けるために、年収を103万円に抑えるよう配慮している人にとって交通費の扱いは、103万円というボーダーラインに対してどのように影響するのかが気になるところです。
税制改正後、控除の限度額も引き上げられていますし、通勤の形態によってそれぞれ限度額が設定されています。
年末調整に向けて年収を103万円に抑えようと調整している人は、非課税限度額をチェックして年末調整の際にしっかりと税額控除を受けるようにしましょう。
よくある質問
交通費の非課税限度額とは?
交通費には、通勤手段や通勤距離に応じて、所得税がかからない「非課税限度額」が定められています。詳しくはこちらをご覧ください。
年末調整では非課税限度額内の交通費は含まれる?
年末調整では交通費を含めた総支給額から非課税限度額を控除した金額で所得税を精算します。詳しくはこちらをご覧ください。
扶養となる「103万円」の判定に非課税限度額は含める?
103万円の判定をする際には非課税限度額は含めません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
年末調整で「配偶者控除」を受けられないケースとは?具体的な年収をもとに解説
年末調整のシーズンがやってきました。毎年11月頃になると勤務先から書類の提出を求められますが、後回しにしてまだ手続きをしていない方もいることでしょう。 2017年度の税制改正の影響を受け、「配偶者控除」の仕組みが変わりました。主な変更点を確…
詳しくみる定額減税について年末調整時の対応を解説!人事労務担当者が行うこと
令和6年6月から実施された定額減税は、企業の担当者にとって煩雑な税務処理だと言えるでしょう。年末調整時の年調減税は、令和6年9月頃から国税庁HPに随時掲載する予定とされているため、頭の痛い問題です。 本記事では、現時点で確認できる年調減税の…
詳しくみる年末調整の対象とならない人とは?
通常、給与所得者は年末調整において年間の所得税を精算することで納税関係が終了しますが、例外的に年末調整の対象とならない従業員がいるケースがあります。 年末調整の対象となるケースと対象とならないケースでは、それぞれどのような点で異なるでしょう…
詳しくみる年末調整と専業主婦の関係
年末調整は、所得税の過不足を調整することを目的に行われます。そのため、所得のない専業主婦は無関係と思っている方も多いのではないでしょうか。 しかし、専業主婦も控除という形で年末調整と関わってきます。当記事では、年末調整と専業主婦の関係につい…
詳しくみる年末調整の納付書とは?どこでもらえる?
年末調整時、事業者は個々の従業員から源泉徴収した税の不足超過額について計算し、還付や徴収をします。そして、年末調整後の源泉所得税を納付する際に「所得税徴収高計算書(納付書)」を一緒に提出しなければなりません。本記事では、所得税徴収高計算書(…
詳しくみる派遣社員は年末調整を自分でするの?しないとどうなる?
年末調整は会社が行うもので、個人が行うことはできません。会社員が勤務している会社で年末調整をしてもらえるのと同じように、派遣社員も会社で年末調整をしてもらえます。派遣社員の年末調整を行うのは就業している会社ではなく、派遣会社です。ただし、年…
詳しくみる