- 更新日 : 2026年6月15日
借り上げ寮とは?社有寮との違いやメリット・デメリットを解説
制度を整えれば、税負担を抑えつつ人材を集められます。
- 企業は家賃を損金に算入する
- 従業員は手取りが実質的に増える
- 無償で貸すと給与とみなされ課税される
ただし社会保険料が下がり老後資産に影響するため、丁寧な説明が大切です。
借り上げ寮とは、企業が賃貸物件を借り上げ、従業員に提供する制度です。借り上げ寮を導入することは、企業側の採用強化やコスト削減につながるだけでなく、従業員側も家賃負担の軽減や節税が可能です。
本記事では、借り上げ寮と社有との違いやメリット・デメリット、よくある質問(Q&A)を解説します。
借り上げ寮とは?
借り上げ寮とは、企業が賃貸物件を借り上げ、従業員に貸し出す制度です。企業が物件を持たないため、初期投資を抑えられます。
節税をしながら人材確保や福利厚生の充実を図りたい企業におすすめです。
借り上げ寮と社有寮の違い
借り上げ寮と社有寮の違いは、所有者や費用などです。以下の表を参考にしてみてください。
| 項目 | 借り上げ寮 | 社有寮 |
|---|---|---|
| 物件の所有者 | 不動産会社 | 企業 |
| 初期費用 | 比較的低い (敷金・礼金) |
高い (土地・建設費) |
| 毎月の出費 | 家賃・共益費など | 固定資産税・修繕費など |
| 管理の手間 | 比較的かからない (家賃の支払い) |
手間がかかる (維持・修繕) |
借り上げ寮と社有寮の主な違いは、物件の所有者が不動産会社か企業かです。この違いが初期費用や毎月の出費、管理の手間に影響します。
借り上げ寮は初期費用が抑えられる一方、毎月の家賃支払いがランニングコストになります。管理は管理会社が担うため、企業側の負担は比較的小さいです。
借り上げ寮と住宅手当の違い
住宅手当とは、従業員が個人で契約した住まいの賃料の一部を企業が金銭で負担する制度です。住宅手当は、給与として支給されるため、税金や社会保険料の負担が増える可能性があります。
| 項目 | 借り上げ寮 | 住宅手当 |
|---|---|---|
| 契約者 | 企業 | 従業員 |
| 支給方法 | 物件を貸与 | 手当として現金を支給 |
| 税の負担 | 社会保険料が減少する | 所得税・社会保険料が増加する |
住宅手当は課税対象になります。しかし、借り上げ寮は、一定の要件を満たせば給与として課税されない点が特徴です。詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
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借り上げ寮のメリット|企業と従業員ごとに解説
借り上げ寮には、企業と従業員の双方にメリットがあります。それぞれの視点からメリットを整理しましょう。
【企業側】借り上げ寮のメリット
借り上げ寮には、企業側にも従業員側にもメリットがあります。まずは企業側のメリットです。
人材の確保と定着につながる
借り上げ寮を導入することで、「採用力」と「定着率」の向上が可能です。
住まいのサポートがない企業と比べ、採用時に選ばれやすくなります。都市部の家賃は年々上昇しており、低コストで住まいを提供できることは強みになるでしょう。
住居費の負担軽減による従業員の生活の安定化は、エンゲージメントの向上につながり、人材の定着に良い影響を与えやすいです。また、同じ寮に住むことで生まれる日常的な交流によって、チームでの連携が深まり、プロジェクトを円滑に進めやすくなります。
節税・コスト削減効果がある
借り上げ寮には、企業が支払う家賃を損金算入できるというメリットがあります。損金とは、企業の収益から差し引くことができる「費用・損失」のことです。
住宅手当は現金支給となるため、全額が給与所得として課税対象になります。そのため、社会保険料や法人税などの負担が大きくなることもあります。
社有寮の観点からも同様です。社有寮とは異なり、建設費や固定資産税、維持管理コストも不要なことが借り上げ寮の魅力です。
社有社宅より管理が手軽である
借り上げ寮は、企業が物件を所有しないため、社有社宅と比べて管理負担が比較的軽いです。社有社宅とは異なり、建物の維持や修繕の管理は管理会社が行います。
特に、老朽化に伴う修繕費・改修費の増加のリスクがある企業の場合、管理会社に委託することで業務負担を減らすことが可能です。人事・総務部の負担を減らしつつ、従業員に住まいを提供できる点で、福利厚生制度として運用しやすいといえます。
【従業員側】借り上げ寮のメリット
借り上げ寮は従業員にもメリットがあります。具体的には以下の3つです。
住居に関わる「初期費用と固定費」が削減される
借り上げ寮に入居すると、本来必要な敷金・礼金などの初期費用が会社負担になります。家賃も通常の賃貸契約よりも基本的に安く設定されており、毎月の固定費を抑えやすいです。
費用の削減により、浮いたお金を貯蓄や趣味・自己投資などに回せる余裕が生まれ、結果的に生活の質や将来への安心感を高めやすくなります。
通勤時間の短縮がワークライフバランスの安定につながる
借り上げ寮の場合、職場の近くに住めることが多く、通勤時間を短縮しやすい点が特徴です。短縮された時間を睡眠や趣味などに充てることができるため、ワークライフバランスの安定につながります。
通勤時間が減ると、満員電車などのストレスを回避でき、仕事と私生活の両立ができ、仕事での生産性も高まるでしょう。
手取りが実質的に増える
借り上げ寮は、給与額面を変えずに従業員の手取り額を増やしやすい制度です。住宅手当は課税対象となるので、額面ほど手取りが増えにくい可能性があります。また、企業によって住宅手当の支給条件が異なる点も、注意が必要です。
一方、借り上げ寮は一定の賃料を天引きするため、会社負担分の家賃は非課税扱いになります。手取りを増やしたいが、社会保険料の負担が気になる従業員にとって、選択肢の一つになるでしょう。
借り上げ寮のデメリット|企業と従業員ごとに解説
借り上げ寮には企業・従業員双方にデメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
【企業側】借り上げ寮のデメリット
借り上げ寮を導入・運用する際、企業側には以下のデメリットがあります。
課税リスクがある
借り上げ寮を無償で提供すると課税対象になるため、家賃相当額が現物給与とみなされないように一定額以上の家賃を徴収しなければなりません。賃貸料相当額は、以下の3つを合計して算出します。
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
- 12円 ×(その建物の総床面積(㎡)/ 3.3㎡)
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%
引用:No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁
これらの3つを合計した賃料相当額の50%以上を従業員から徴収することで、借り上げ寮の課税リスクを回避しましょう。
退去時の原状回復トラブルが発生することがある
原状回復とは、通常損耗や経年劣化を除き、借主の故意・過失による損傷を修繕することです。トラブルを防ぐには、入居時に「入退去時の物件状況確認リスト」や写真で室内を記録し、状態を明確にします。
契約時には国土交通省のガイドラインに沿って費用負担の範囲を具体的に明文化し、事前説明をしましょう。退去時も、指摘箇所を対面で丁寧に説明し、その場で合意書の内容を確認してもらうことが、互いの誤解を防ぎ、スムーズな退去につながります。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
参考:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン (再改訂版)|国土交通省
管理業務の負担が増加する
借り上げ寮の導入には、企業側の管理業務が必須です。具体的には、以下の業務が発生します。
- 物件の契約手続き
- 毎月の家賃支払い
- 従業員の入退去に伴う事務処理 など
また、従業員が退職・転勤で退去した後、次の入居者が決まるまでの空室でも家賃を支払い続けなければなりません。
さらに、契約期間の途中で解約すると違約金を支払う恐れがあります。負担を軽減するために、専門業者への外部委託や一元管理システムの導入を検討することが有効です。
【従業員側】借り上げ寮のデメリット
従業員側にも以下のようなデメリット・注意点が存在します。事前に確認しましょう。
社会保障額が減る可能性がある
借り上げ寮は、家賃負担分を天引きにすることで標準報酬月額が抑制され、住宅手当と比較して所得税・住民税の負担が軽減されます。
しかし、社会保険料の支払額も減少するため、目先の手取り額が増える反面、長期的な老後資産の形成には影響を及ぼします。
特に、若年層ほど今後働く年数が長いため、仕組みを正しく理解しておくことが重要です。企業側は借り上げ寮の導入時に構造を丁寧に説明し、浮いた手取りを貯蓄や投資などに回すことの重要性を伝えましょう。
自分の希望する物件を選べない恐れがある
借り上げ寮は、企業が契約した物件の中から選ぶことになるため、住宅手当と異なり、従業員が希望する立地や設備に住めるとは限りません。ペット可・築年数・収納スペースなどの要望も、賃貸物件の契約条件次第であることも懸念材料です。
しかし、企業が経済的な負担をすることで、従業員は経済的なメリットを得られる面もあります。入居前に間取りや周辺環境を従業員にあらかじめ説明しましょう。
入居者間でのトラブルが発生する可能性がある
借り上げ寮に住む同僚間では、以下のようなさまざまなトラブルが考えられます。
- ゴミの出し方や共有エリアのルール違反
- 第三者の出入り
- 入居者同士の騒音トラブル
仕事でも顔を合わせる相手だからこそ、プライベートのトラブルが業務関係に悪影響を及ぼしかねません。
トラブルを未然に防ぐために、トラブル発生時の対応方法を規程に明記して、従業員の入居時に寮内の社宅規程を説明して書面を交付しましょう。さらに、相談窓口を設置することで、トラブルの早期解決につながります。
借り上げ寮と社有寮が向いている企業の特徴
借り上げ寮と社有寮は、それぞれ向き不向きがあります。自社の経営状況や人材戦略に合わせて、どちらの制度が適しているかを判断することが重要です。本章では、それぞれの特徴を紹介します。
借り上げ寮が向いている企業の特徴
借り上げ寮が向いている企業は主に以下のような企業です。
- 初期投資を抑えつつも事業を拡大したい企業
- 単身者向けの住宅支援を検討している企業
- 福利厚生を強化し、採用力向上や離職率改善を目指す企業
自社の経営状況や採用戦略、従業員のニーズと照らし合わせながら導入を検討してみてください。現状に課題を持つ企業にとって選択肢の一つになります。
社有寮が向いている企業の特徴
社有寮が向いている企業は主に以下のような企業です。
- 子育て世帯の社員が多い企業
- 長期的に安定した住宅支援を提供したい企業
- 資産形成や財務戦略として社有寮を活用したい企業
社有寮は、長期のスパンで考える企業にとって資産形成や安定性が優れています。特徴を踏まえ、自社に合った制度を検討しましょう。
借り上げ寮に関するよくある質問(Q&A)
借り上げ寮について、家賃負担や退職時の扱い、入居審査や私生活のルールまで、気になるポイントをQ&A形式で解説します。制度理解の参考にしてください。
家賃の相場や自己負担額はどれくらいですか?
借り上げ寮の自己負担額は比較的低くされています。自己負担割合は10%〜30%が一般的です。企業は、この割合の間で自己負担額を設定するのが良いでしょう。
家賃の自己負担額は、人事院の調査によると全国の借り上げ寮の平均家賃負担は以下の通りです。
| 項目 | 従業員の家賃負担 (55㎡未満の場合) |
平均月額賃料 (55㎡未満の場合) |
|---|---|---|
| 500人以上 | 27,799円 | 94,303円 |
| 100人以上500人未満 | 23,861円 | 85,794円 |
| 50人以上100人未満 | 25,787円 | 92,646円 |
上記の表にある通り、従業員の家賃負担の割合は10~30%ほどであると言えるでしょう。
火災保険料や光熱費などの諸費用は誰が負担しますか?
一般的には光熱費は「従業員負担」、火災保険料は「企業負担」とされています。
光熱費は、本来従業員が負担すべきものを、会社がわざわざ負担していることから従業員に対する経済的利益と判断され、給与とみなされる可能性が高いです。
一方、火災保険料は会社が全戸まとめて管理できるため、保険加入漏れなどを防げます。ただし、火災保険料の中の「家財保険」については、従業員の所有物に対する保険なので、従業員に負担させることが一般的です。
退職した従業員が借り上げ寮に住み続けている場合、どうすればいいですか?
退職した従業員が借り上げ寮に住み続けている場合、社宅規程に則って対応しましょう。
社宅規程に退職したときの対応について記載していない場合、協議の長期化や企業側と対立を招きかねません。
トラブルを避けるために、社宅規程に退去期限・猶予期間の内容を明記しましょう。猶予期間を与える場合でも、トラブルに企業が一切責任を負わないことなどの条件を取り決める必要があります。
従業員が借り上げ寮に友人を呼んだり、交際相手と同棲を始めたりしたらどうすればいいですか?
従業員が借り上げ寮に友人を呼んだり、交際相手と同棲を始めたりした場合、社宅規程の内容に則って対応する必要があります。
一般的に、借り上げ寮の安全を維持するために、友人を呼ぶことや交際相手との同棲を禁止しているケースが多いです。
社宅規程に禁止の条項や違反したときの措置を記載しておくことが大切です。
友達や交際相手を借り上げ寮に入れることを認める場合でも、「数泊まで」や「あらかじめ申請したとき」に限るなどの一定の条件を設けましょう。
マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸であれば、従業員の住む賃貸物件を法人名義に切り替えて家賃を給与から天引きすることで、社員の手取りを増やすことが可能です。
従業員の家賃の金銭的な負担を減らしつつ、手取りを増やして、エンゲージメントを高められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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