- 更新日 : 2026年7月6日
福利厚生の目的とは?メリット・デメリット・導入手順を解説
福利厚生の目的は、従業員の定着率向上・採用力強化・生産性向上・法人税節約の4つです。
- 定着率向上と採用力強化に効果的
- 福利厚生費は経費計上で節税も可能
- 導入時はコストと不公平感に注意
Q. 福利厚生の対象者は正社員のみ?
A. パート・アルバイト・派遣労働者も対象で、雇用形態による不合理な待遇差は法律で禁止されています。
福利厚生の目的は、従業員の定着率の向上や、採用力の強化、法人税の節約などです。
本記事では、福利厚生を導入する目的の詳細を説明した上で、メリット・デメリットや具体的な導入手順について解説します。 自社で福利厚生を導入する際の参考にしてみてください。
福利厚生の目的とは?
ここでは、福利厚生を導入する主な目的について解説します。
福利厚生の詳細については、こちらの記事も参考にしてください。
従業員の定着率向上
福利厚生を導入する目的の一つとして、従業員の定着率向上が挙げられます。
従業員のニーズに合った制度を充実させることで、生活の負担が減ったり、働きやすい職場環境が整ったりします。結果として、「会社にきちんと支えてもらえている」という安心感を生み、長く働きたいという気持ちにつながるでしょう。
ただし、制度はただ整えるだけでは十分に活きません。従業員の声に耳を傾けながら定期的に見直していくことが、定着率を着実に高めるポイントです。
採用力の強化
現在の求職者は、仕事内容だけでなく福利厚生の内容も重視する傾向があります。求職者にとって魅力的な福利厚生を整備することが大切です。
株式会社マイナビの「2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識>」によると、企業に安定性を感じるポイントとして「福利厚生が充実している」と回答した学生は57.3%であり、最も高い結果でした。
求める人材のニーズに合った福利厚生を提供することで、応募者に企業の魅力を効果的にアピールできます。また、企業独自の福利厚生を導入することで他社との差別化を図ることができ、優秀な人材の確保にもつながります。
参考:2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識> | マイナビキャリアリサーチLab
生産性の向上
福利厚生を導入する目的の一つが、従業員の生産性を高めることです。健康診断やメンタルヘルス対策、フィットネス補助などを通じて心身の健康を支えると、集中力や意欲が高まり、一人あたりの業務効率が向上するでしょう。
スキルアップを支える福利厚生も、生産性に直結します。書籍購入制度やオンライン学習サービスのように社員のスキル向上を目的とした制度を整えることで、従業員の能力が高まり、業務の質やスピードの向上につながります。
企業のイメージ向上
企業イメージ向上も福利厚生制度を導入する目的です。福利厚生の充実は、社内の従業員だけでなく、社外に向けて「従業員を大切にする会社」という印象を発信し、企業の好感度や信頼の向上につながります 。
その効果がはっきり表れるのが採用の場面です。法定外福利厚生を充実させることで従業員のモチベーションが向上し、企業への定着率が高まるとともに、他社との差別化にもつながり、企業の魅力を高める要因になります。
さらに、顧客や取引先からの評価向上によるビジネスチャンスの拡大につながる可能性もあるでしょう。
法人税の節約
福利厚生制度を導入することで、一定の条件を満たした費用を福利厚生費として経費計上できるため、法人税負担の軽減につながる場合があります。
人件費や各種コストが増加し、負担を感じている企業もあるでしょう。適切に福利厚生制度を活用することで、税務上損金として扱われ、法人税の対象になる所得が減り、節税することが可能です。
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福利厚生の対象者
福利厚生の対象者は正社員だけでなく、パート・アルバイト、有期雇用労働者、派遣労働者も該当します。これは、「パートタイム・有期雇用労働法」および「労働者派遣法」に基づく考え方によるものです。
パートタイム・有期雇用労働法では、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間に不合理な待遇差を設けることを禁止しています。また、労働者派遣法では、派遣労働者と通常の労働者との均衡・均等待遇を確保することが求められています。
さらに、同一労働同一賃金ガイドラインでは、福利厚生についても雇用形態のみを理由とした不合理な待遇差を設けないことが求められており、休暇制度や福利厚生施設の利用などについて適切な対応が必要とされているのです。
このように、福利厚生は正社員のみを対象とするものではなく、パート・アルバイト、有期雇用労働者、派遣労働者を含め、雇用形態にかかわらず適切に提供することが求められています。
参考:パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために|厚生労働省
参考:派遣労働者の同一労働同一賃金について|厚生労働省
参考:同一労働同一賃金特集ページ |厚生労働省
参考:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省
福利厚生費とは?
福利厚生費とは、企業が給与とは別に、従業員の生活環境や労働環境の向上を目的として負担する費用のことです。一定の要件を満たすことで経費として計上できるため、法人税負担の軽減につながる場合がある点もメリットの一つです。
福利厚生費の具体例は、以下のとおりです。
ただし、福利厚生費として認められるのは、従業員の生活環境や労働環境の向上を目的とした、社会通念上妥当な範囲の費用に限られます。そのため、高額すぎる支出や特定の従業員のみが利益を受けるものなどは、福利厚生費として認められない場合があるため注意が必要です。
福利厚生費については、こちらも参考にしてください。
福利厚生の種類
福利厚生は大きく分けると「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」となります。以下では内容について解説します。
法定福利厚生
法定福利厚生とは、企業に対して法律により加入や費用負担が義務付けられている福利厚生制度のことです。従業員が安心して働ける環境を整えるための制度であり、企業は定められた保険料や拠出金を負担しなければなりません。
加入義務を怠った場合は法令違反となり、罰則や追徴金などの対象となる可能性があります。
主な法定福利厚生には、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険、子ども・子育て拠出金などがあります。
| 項目 | 内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 健康保険 厚生年金保険 |
【健康保険】 組合健保と全国健康保険協会(協会けんぽ)の2種類 【厚生年金保険】 会社員や公務員が加入する公的年金制度の一つ |
【健康保険】 標準報酬月額や標準賞与額×健康保険料率×1/2 (健康保険料率は全国健康保険協会の場合9.21~10.55%) 【厚生年金保険】 ・標準報酬月額や標準賞与額×厚生年金保険料率×1/2 (厚生年金保険料率は18.3%) |
| 雇用保険 | ・労働者の生活と雇用の安定が目的 ・失業予防 |
賃金の総額×会社が負担する雇用保険料率 (雇用保険料率は0.85~1.05%) |
| 労災保険 | 労災事故があった場合などに被災した労働者に対して必要な給付を行う | 賃金の総額×労災保険料率 (労災保険料率は0.25~8.8%) |
| 介護保険 | 高齢者に必要な介護を提供するために設立。40歳になると負担義務となる。 | 標準報酬月額や標準賞与額×介護保険料率×1/2 (介護保険料率は1.62%) |
| 子ども・子育て拠出金 | 児童手当の支給に必要な費用、国や自治体が実施する子育て支援事業にかかる費用のこと | 標準報酬月額や標準賞与額×子ども・子育て拠出金率 (子ども・子育て拠出金率は0.36%) |
※2026年6月時点
法定外福利厚生
法定外福利厚生とは、法律で加入や費用負担が義務付けられている法定福利厚生(社会保険など)とは異なり、企業が独自に導入・運用する任意の福利厚生制度のことです。
法定外福利厚生の具体例は、以下のとおりです。
- 家賃補助
- 休暇制度(アニバーサリー休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇など)
- メンタルケア
- フィットネスジムの補助
- 財形貯蓄制度
- 食事手当
- 企業内での弁当販売
- 働き方への対応(フレックス、在宅勤務)
企業は従業員のニーズや自社の方針に合わせて、多様な制度を自由に設計できるため、企業の特徴や魅力をアピールできます。
また、福利厚生を充実させることで、従業員満足度の向上や働く意欲の向上が期待できるほか、人材の定着や採用力の強化にもつながります。
福利厚生を導入する際の注意点
福利厚生は従業員満足度の向上や人材の定着といった目的を達成するうえで効果的な施策ですが、導入すれば必ずプラスに働くとは限りません。あらかじめ注意点を押さえておくことが大切です。ここでは、特に見落とされがちな2つのポイントを解説します。
コストが発生する
福利厚生を導入する際にまず意識しておきたいのが、コストの発生です。制度そのものにかかる費用に加え、維持・管理のためのランニングコストも継続的に発生します。
注意したいのは、導入しても利用されなければ維持費だけがかかり、費用対効果が下がる点です。
福利厚生は導入が目的ではなく、従業員に使われてはじめて価値が生まれます。自社のニーズに合った制度を選ぶことが大切です。
新たに福利厚生を導入する際は、事前にどれくらい費用がかかるかシミュレーションしましょう。
管理者の負担が大きくなる
福利厚生を充実させて制度の種類が増えるほど、管理業務も複雑になり、担当者の負担は大きくなります。福利厚生ごとに申請手続きや受付方法、運用ルールが異なるため、適切な管理体制を整える必要があります。
また、福利厚生サービスの提供事業者との連絡や調整が発生するケースもあり、管理担当者の業務負荷が増加する点も課題の一つです。
利用状況の把握や制度内容の見直しを継続的に行い、従業員のニーズに合った福利厚生内容にする作業が必要な点にも注意しましょう。
不公平感が生まれる可能性がある
福利厚生が利用できる対象者を絞ることで、従業員の不公平感が生まれる可能性があるので、注意が必要です。
従業員のライフスタイルや価値観、ニーズは多様であり、求める福利厚生も人それぞれ異なるため、制度内容によっては、一部の従業員が不公平だと感じる恐れがあるでしょう。
例えば、子育て中の従業員にとっては育児休業制度や家族手当が大きなメリットとなりますが、独身の従業員にとっては利用する機会が少ない場合があります。
このように、特定の従業員層のみが利用しやすい福利厚生に偏ると、利用できない従業員に不公平感が生じる可能性があります。そのため、できるだけ幅広い従業員が利用しやすい制度設計を行い、多様なニーズに対応することが必要です。
福利厚生を導入する際のポイント
ここでは、福利厚生の導入を成功させるポイントを解説します。
現場の声を反映する
福利厚生は、従業員が働きやすい環境を整えるための制度です。そのため、制度を導入する際には、現場の従業員がどのような福利厚生を求めているのかを把握する必要があります。
従業員のニーズに合わない福利厚生を導入しても、十分に活用されなかったり、一部の従業員しか利用できず不公平感が生じたりする可能性があります。そのため、アンケートやヒアリングなどを通じて定期的に従業員の意見を収集し、制度内容の見直しや改善を行うことが大切です。
一度導入してから廃止すると労働条件の不利益変更に該当する恐れがある
一度導入した福利厚生制度を廃止しようとすると、労働条件の不利益変更に該当する恐れがあります。労働条件の不利益変更とは、現在の労働条件を従業員が不利益になるように変更することです。労働条件とは賃金、休暇、労働時間、福利厚生など労働に関する全てが含まれます。
変更する場合は、従業員の同意を得たり、従業員が納得できる代替案を提示したりする必要があるので、制度を導入する際や、廃止する場合は、慎重に行う必要があります。
不利益変更に該当するような内容は、従業員に不信感を与え離職につながることも考えられるため、導入の際は配慮して進めることが大切です。
福利厚生制度を導入する手順
実際に福利厚生を導入する際、どのような手順で行うのかについて解説します。
1. 導入目的を明確にする
福利厚生を導入する際は、まず目的を明確にしましょう。人材採用の強化を目的とするのか、従業員の健康増進や定着率向上を目的とするのかによって、導入すべき福利厚生の制度は異なります。
福利厚生によってどのような成果を目指すのかを整理し、導入目的を明確にしたうえで制度設計を進めることが大切です。
2. 従業員のニーズを調査する
福利厚生の導入効果を高めるためには、従業員がどのような制度を求めているのかを把握する必要があります。
アンケートやヒアリングなどを実施し、従業員のニーズや課題を把握しましょう。現場の声を反映した制度にすることで、福利厚生の利用率や満足度向上につながります。
3. ニーズを踏まえて制度内容を検討する
従業員へのアンケートやヒアリングを通じてニーズを把握したら、その内容を踏まえて福利厚生制度の内容を検討します。
例えば、「休暇を取得しやすい環境を整えてほしい」という要望が多い場合は、有給休暇の取得促進やリフレッシュ休暇制度の導入などが選択肢として考えられます。
また、制度を選定する際は、従業員満足度の向上だけでなく、企業が抱える課題の解決や人材確保、定着率向上といった導入目的に合致しているかを確認することも欠かせません。従業員と企業の双方にメリットがある制度を選ぶことで、福利厚生の効果を高めやすくなります。
一度に多くの制度を導入するのではなく、優先度の高いものから段階的に導入するのもおすすめです。従業員の反応や利用状況を確認しながら制度を拡充していくことで、コストを抑えつつ効果的な福利厚生制度を構築できるでしょう。
4. コストを試算する
福利厚生を導入する際は、事前に必要なコストを試算しておきましょう。制度の導入時に発生する初期費用だけでなく、継続的にかかる費用も含めて、具体的に試算することが必要です。
5. 予算を確保する
福利厚生の導入費用や運用費用の試算ができたら、実際に予算を確保します。
福利厚生は継続的な運用が前提となるため、企業の経営状況や予算と照らし合わせながら、無理のない範囲で導入計画を立てることが大切です。
6. 制度設計を行う
導入・運用コストの試算と予算確保が完了したら、福利厚生制度の設計を行います。
福利厚生の制度設計の際に決めておきたい項目は、以下のとおりです。
- 利用対象者
- 申請方法
- 利用回数の上限
- 経費申請
- 承認フロー
さらに、新たな福利厚生制度の導入に伴い、就業規則や社内規程の変更が必要になる場合があります。制度開始後に混乱が生じないよう、事前に運用ルールを整理し、従業員へ周知できる体制を整えておくことが大切です。
7. マニュアルを作成する
福利厚生制度の内容が決まったら、円滑に運用できるようマニュアルを作成しましょう。
マニュアルには以下の項目を記載し、従業員が迷わず利用できるようにすることが重要です。
- 利用条件
- 申請方法
- 承認手続き
- 利用開始までの流れ
また、人事部門や総務部門、各部署の管理者など、それぞれの役割や対応範囲を明確にすることで、運用時の混乱を防ぎやすくなります。
8. 運用を開始する
福利厚生制度の設計や運用ルールの整備が完了したら、従業員へ制度内容を周知し、運用を開始します。
制度を十分に活用してもらうためには、利用方法や対象者、申請手続きなどをわかりやすく伝えましょう。
以下のような施策を行い、従業員の福利厚生の利用を促すことも、利用率の向上に効果的です。
- マニュアルの配布
- 社内掲示板での告知
- 社内説明会の実施
- 経営層や管理職からの呼びかけ
運用開始後は、従業員へのアンケートやヒアリングを定期的に実施し、利用状況や満足度を把握することも必要です。収集した意見をもとに制度内容を見直し、改善を重ねることで、より利用しやすく効果的な福利厚生制度へと発展させることができます。
福利厚生制度の企業事例
ここでは、実際に福利厚生を導入している企業例を紹介します。
福利厚生導入例については、こちらも参考にしてください。
書籍購入の補助(株式会社メルカリ)
株式会社メルカリの書籍購入の補助(学習サポート制度)は、従業員の自己啓発やスキルアップを支援することを目的とした福利厚生制度です。業務に関連する書籍や自己学習に役立つ書籍の購入費用について、毎月一定額まで会社が補助します。
参考:Talent Development | 株式会社メルカリ – 採用情報
食事補助制度(楽天グループ株式会社)
楽天グループ株式会社のカフェテリアのあるオフィスでは、朝・昼・晩の3食の食事が無料で利用することが可能です。しっかり食べたい人向けのメニューや野菜中心のメニューに加えて、一部ではハラル対応メニューも提供されていて、多様な従業員のニーズに対応しています。
また、厨房のない小規模なオフィスでは、ケータリングによる食事提供などの食事補助があります。
福利厚生の目的は従業員の定着率を向上させたり、生産性を高めたりすることです。効果的に福利厚生を運用していくと、企業・従業員の双方にメリットがあります。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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