- 更新日 : 2026年6月17日
【企業向け】手取り20万・家賃補助なしの生活実態と定着支援策
適正な家賃なら成立しますが、都市部では負担が重く、借り上げ社宅などの代替策が定着率を左右します。
- 家賃は手取りの25〜30%、5万〜6万円台に抑える。
- 家賃8万円は手取りの40%で、貯蓄や急な出費に対応できない。
- 借り上げ社宅やリモート勤務で、実質負担と離職を減らす。
住宅手当の有無だけでなく、基本給や働き方を含めた待遇全体で説明すると、若手の納得感が高まります。
手取り20万円・家賃補助なしで一人暮らしを成立させることは、適正な家賃の物件を選べば可能です。
しかし、都市部などでは生活にゆとりを持てないケースが多く、経済的な不満が若手社員の早期離職を招く大きな原因になります。
本記事では、手取り20万円のリアルな生活費シミュレーションから、定着率を高める借り上げ社宅などの代替施策、納得感のある制度設計のポイントまで、人事・経営者に向けて実務視点で解説します。
目次
手取り20万円・家賃補助なしでも一人暮らしは可能
手取り20万円で家賃補助なしでも、一人暮らしは可能です。単身世帯の月間消費支出は平均17万〜18万円台が目安であり、支出を管理すれば、生活は成立します。
ただし、家賃が高すぎると、貯蓄や急な出費への対応が困難です。企業側も、無理のない家賃目安を共有し、従業員のサポートをしましょう。
参考:総務省「家計調査年報」
家賃の目安は手取りの25〜30%
手取り20万円の従業員が無理なく暮らすには、家賃を手取りの25〜30%に抑える必要があります。金額にすると、5万〜6万円台が現実的な目安です。
一般的に、「家賃は手取りの30%」といわれてきました。手取り20万円の30%は6万円です。管理費込みで6万円台前半に収まれば、食費や通信費を削りすぎず、毎月2万円前後の貯蓄や資格学習費も確保できます。
一方で、奨学金返済や医療費、帰省費がかかる従業員は、25%前後の5万円台を目安にしたほうが安全です。企業が若手従業員に生活設計を伝える際は、額面月収ではなく手取り額を基準に案内しましょう。
家賃8万円以上は入居審査・生活ともに困難
手取り20万円で家賃8万円以上の物件を選ぶと、入居審査と生活の両面で厳しくなります。家賃8万円は手取りの40%にあたり、住居費の割合が高すぎる水準です。
賃貸審査では、家賃が月収の3分の1以内かを見られます。家賃8万円なら、額面月収24万円以上がひとつの目安です。手取り20万円の従業員でも、額面が25万円前後なら、条件上は届きますが、生活費の余力は少なくなります。
家賃8万円を支払うと、手元に残る生活費は12万円です。食費、水道光熱費、通信費、交通費を払うと、貯蓄や自己投資に回せる金額は限られます。補助がない若手従業員には、審査基準よりも生活継続性を重視するよう伝えましょう。
参考:厚生労働省「令和6年全国家計構造調査」
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手取り20万円の生活費シミュレーション
手取り20万円の従業員は、家賃6万円台なら生活を組み立てやすくなります。7万円を超えると交際費や娯楽費の調整が必要になり、8万円では貯蓄や急な支出への対応力が下がります。家賃別の支出例を、以下にまとめました。
| 費目 | 家賃6万円 | 家賃7万円 | 家賃8万円 |
|---|---|---|---|
| 家賃 | 6万円 | 7万円 | 8万円 |
| 食費 | 4.2万円 | 3.9万円 | 3.6万円 |
| 水道光熱費 | 1.2万円 | 1.1万円 | 1万円 |
| 通信費 | 0.6万円 | 0.5万円 | 0.5万円 |
| 交通費 | 1.4万円 | 1.3万円 | 1.2万円 |
| 日用品・被服費 | 1万円 | 1万円 | 1万円 |
| 医療・保険関連 | 0.8万円 | 0.7万円 | 0.6万円 |
| 娯楽・交際費 | 2万円 | 1.9万円 | 1.7万円 |
| その他 | 2.8万円 | 2.6万円 | 2.4万円 |
| 支出合計 | 20万円 | 20万円 | 20万円 |
出典:厚生労働省「令和6年全国家計構造調査」
家賃6万円なら、食費や交際費を削りすぎずに生活できます。ただし、この表では貯蓄を明確に確保していません。毎月2万〜3万円を貯めるには、自炊、通信費の見直し、サブスク解約なども必要です。
家賃7万円では、外食や娯楽費の管理が欠かせません。また、家賃8万円では生活費のどこかを削る前提になり、冠婚葬祭や医療費が発生した月は赤字に近づきます。
家賃補助がない企業は珍しい?
家賃補助がない企業は、珍しくありません。厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」によると、令和6年11月分に「住宅手当など」を支給した企業割合は、全企業のうち41.7%です。
また、1,000人以上の企業で60.8%、30〜99人の企業で41.6%となっており、企業規模によって制度の有無に差が見られます。
大企業でも家賃補助がないケースはある
大企業でも、家賃補助を設けていないケースは存在します。福利厚生の内容は、企業規模だけで決まりません。報酬方針や働き方の設計によって、住宅手当を置かない判断をする企業もあります。
近年は、住宅手当のような属人的な手当を整理し、基本給や賞与に原資を集約する企業もあります。実家暮らし・賃貸・持ち家など、従業員の居住形態で待遇差をつけない設計です。
ただし、採用において「家賃補助なし」の企業は、不利になりかねません。採用時には、基本給や賞与・働き方・成長支援を含めた総合的な待遇を説明し、理解を得ましょう。
家賃補助(住宅手当)を設けない企業の背景
企業が家賃補助(住宅手当)を設けない背景には、公平性や社会保険料、制度運用の課題があります。住宅手当は居住形態によって、手取り額に格差が生まれやすい制度です。実績にかかわらず給与に差が生じるのは、従業員のモチベーション低下につながりかねません。
また、住宅手当は原則として、給与として扱われます。支給額が増えると、所得税や社会保険料の負担も増える仕組みです。企業側も、社会保険料の会社負担が増えるため、総人件費への影響は小さくありません。
そのため、住宅手当の支給を止めて、基本給や借り上げ社宅などに切り替える企業もあります。
家賃補助なしで従業員が感じる負担
家賃補助がない場合、従業員は住居費を全額自己負担することになります。手取り20万円の従業員は、固定費の影響は大きくなるでしょう。住居費の負担は、貯蓄や生活の選択肢、転職意向に影響します。企業は従業員の負担を把握し、適切なサポートを行いましょう。
貯蓄がしにくい
家賃補助なしの従業員は、毎月の貯蓄額を確保しにくくなります。手取り20万円から家賃6万〜7万円を支払うと、残りは13万〜14万円です。食費・水道光熱費・通信費・交通費・交際費を支払ったあと、自由に使える金額は限られます。
手取りが20万円だと、毎月2万円を貯めるだけでも、外食や趣味の予算管理が必要です。家電の買い替えや医療費、冠婚葬祭などの出費が重なると、その月の貯蓄は難しいでしょう。
企業は、貯蓄できない従業員を、自己管理不足と決めつけるべきではありません。家賃と生活費の実態を踏まえ、給与水準や支援策を見直しましょう。
生活の自由度が下がる
家賃補助がないと、従業員の生活の自由度は下がります。とくに東京や大阪などの都市部では、家賃が手取りに占める割合が高くなりがちです。
家賃を抑えるには、以下の条件で物件を選ぶ方法があります。
- 駅から遠い物件
- 築年数の古い物件
- 職場から離れたエリア
いずれも利便性が低い地域の物件であり、会社からの通勤時間が延びがちです。通勤時間が片道60分を超えれば、睡眠時間や自己学習の時間が削られる従業員も出るでしょう。
一方で、駅近の家賃8万円の物件を選ぶと、毎月の貯蓄が困難です。企業はリモート勤務や時差出勤を整え、住む場所の選択肢を広げる支援も検討しましょう。
若手従業員の離職理由になりやすい
家賃補助がないと、若手従業員の離職につながりかねません。同じ額面給与でも、住宅支援の有無で、実質的な手取り額が変わるためです。
たとえば、競合他社に月2万円の住宅手当があれば、年間では24万円の差になります。若手従業員にとっては、引っ越し費用や資格学習費に相当する金額です。
また、生活費の不足が続くと、仕事内容よりも生活維持を優先して転職を考えはじめます。企業は住宅手当だけで離職を防ぐのではなく、基本給・働き方・成長支援を含めた待遇全体で、納得感のある勤務環境を作りましょう。
家賃補助なしのメリット
企業が家賃補助を設けない理由は、従業員間の公平性を保ちやすく、制度運用の負担を抑えやすいためです。住宅手当は居住形態によって支給対象が分かれるため、あえて設けないことで報酬制度をシンプルにできます。
基本給を上げられる
住宅手当を設けない場合、原資を基本給に回せます。基本給を上げれば、従業員の待遇改善が可能です。また、求人票にも記載しやすく、求職者にも給与水準の高さを伝わりやすくなる効果もあります。
住宅手当は、賃貸契約の有無や、世帯主かどうかで対象が変わります。一方、基本給は全従業員に共通する報酬です。住まいではなく、職務や成果に応じて、報酬を決めたい企業に向いています。
ただし、基本給に統合する際は、既存従業員の不利益変更に注意しましょう。移行期間を設け、年収や手取りへの影響を試算したうえで、従業員に制度内容を説明する必要があります。
制度運用がシンプルになる
家賃補助をなくすと、制度運用がシンプルになります。
住宅手当は、支給対象の確認や変更手続きが発生しやすい制度です。たとえば、手当の支給時には、賃貸契約書・住民票・世帯主確認・同居家族の有無などを確認する必要があります。また、従業員が引っ越すたびに、支給条件や金額の見直しも必要です。
家賃補助を置かない設計なら、住まいに関する個別確認を減らせるでしょう。代わりに、従業員が損をしたと感じないよう、基本給や福利厚生全体で納得感を作りましょう。
家賃補助の代替となる施策
家賃補助を設けない場合でも、従業員の住居負担を支援する方法はあります。代表的な選択肢は、借り上げ社宅や一時金などです。自社の規模や勤務地、従業員の年齢層にあわせて、制度設計をしましょう。
借り上げ社宅を導入する
借り上げ社宅は、企業が物件を契約して従業員に貸与する、家賃補助の代替策です。住宅手当として現金を支給するより、従業員の実質的な手取りを高めやすくなります。また、一定の本人負担など税務上の要件を満たせば、給与課税を抑えられるのも利点です。
たとえば、月2万円の住宅手当を現金で支給すると、所得税や社会保険料の対象になり、額面ほど手取りが増えません。しかし、借り上げ社宅は自己負担額の設定によって、従業員と企業の負担を抑えられます。
ただし、物件管理や契約手続きなどの管理コストは必要です。導入時は社宅規程を新たに作成するか、就業規則に対象者、本人負担額、退職時の扱いなどを明記しましょう。
一時金や引っ越し補助を支給する
毎月の家賃補助が難しい企業には、一時金や引っ越し補助が向いています。固定費を増やさず、入社時や転勤時の負担を軽くできるためです。
一人暮らしの開始時には、敷金や礼金、仲介手数料、家具・家電の購入費が発生します。初期費用だけで20万〜40万円程度かかるケースもあるため、手取り20万円の従業員には重い負担です。
新卒入社時に5万円の引っ越し補助を支給するだけでも、家電購入や移動費の助けになります。制度を新設する場合は、支給条件や上限額、申請期限、領収書の要否を就業規則に明記しましょう。
リモート勤務やテレワークを導入する
リモート勤務やテレワークも、家賃補助の代替施策になります。住む場所の選択肢が広がり、家賃の安い地域を選びやすくなるためです。
都市部のオフィスへ毎日通勤する前提では、従業員は職場に近い物件を選びがちです。結果として、家賃が高いエリアに住まざるを得ません。しかし、週2〜3日のリモート勤務を認めれば、都心部や駅近にこだわる必要性は下がります。
ただし、テレワークには、業務管理やコミュニケーション設計が欠かせません。導入時は、対象業務や出社頻度、通信費補助、評価方法を明確にしましょう。また、業務に関するコミュニケーションを密にする工夫も必要です。
手取り20万円・家賃補助なしの従業員をサポートするポイント
手取り20万円で家賃補助なしの従業員を支えるには、生活実態を踏まえた制度設計が必要になります。
家賃6万円台を前提に生活設計を支援する
企業は、手取り20万円の従業員に対して、家賃6万円台を前提に生活設計を支援しましょう。家賃が7万円を超えると、貯蓄や突発的な支出への対応力が下がりかねません。
対策として、入社時研修や面談で、給与に見合った家賃目安を伝えましょう。あわせて、食費や通信費、サブスク、保険料など固定費の目安も併記すると、従業員の生活が安定しやすくなります。
ただし、企業は物件選びに、過度に介入すべきではありません。情報提供にとどめ、最終判断は従業員に委ねましょう。
都市部勤務者への配慮が必要になる
都市部勤務者には、とくに配慮が必要です。東京23区や大阪市中心部では、同じ家賃でも選べる物件の条件が限られます。家賃を抑えるほど、通勤時間や住環境にしわ寄せが出かねません。
都市部の勤務者だけ負担が重い場合は、地域手当やサテライトオフィス、リモート勤務を検討しましょう。一方で、都市部だけを優遇すると地方勤務者に不公平感が生まれるため、調整が必要です。
家賃補助なしでも納得できる制度設計にする
家賃補助なしでも、従業員が納得できる制度設計はできます。住宅手当を設けない理由と、代わりに何で還元しているか、明確にするのが重要です。
たとえば、住宅手当を置かない代わりに基本給を高くする、資格取得支援を手厚くする、リモート勤務を認めるなどの設計があります。このような形式なら、従業員は単独の手当ではなく、待遇全体で納得感を判断するでしょう。
また、給与制度と福利厚生の全体像を見せる説明資料があれば、従業員の理解を得やすくなります。あわせて採用担当者、上司、人事担当者の説明内容もそろえましょう。
定期的に制度を見直す
住宅支援制度は、定期的な見直しが必要です。家賃相場や物価、働き方、法制度は、常に変化します。一度決めた制度を放置すると、従業員の生活実態と制度内容がずれかねません。
とくに、同一労働同一賃金の観点では、不合理な待遇差がないかの確認が必須です。正社員だけに住宅手当を支給する制度や、対象条件が曖昧な制度は、法的な根拠の説明が求められます。
年に1回は、家賃相場と従業員の可処分所得を確認しましょう。また、家賃補助を新設しない場合でも、借り上げ社宅や引っ越し補助、リモート勤務などの代替策を検討できます。
借り上げ社宅の導入や見直しを進めるなら、社宅制度の設計から運用まで支援できるサービスの活用も有効です。
「マネーフォワードクラウド福利厚生賃貸」を活用すれば、家賃補助なしでも社員の実質負担を抑えやすくなり、人事・労務担当者の管理負担も軽減できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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