青色申告には、「複式簿記」と「簡易簿記」による記帳方法があります。納税者はこれらの方法のうち、いずれかの方法を選択することができるということをご存じですか?ここでは10万円控除の簡易簿記を選択した場合について解説します。

複式簿記と簡易簿記の違い

複式簿記と簡易簿記の違い

複式簿記と簡易簿記の大きな違いは、確定申告における控除額があげられます。複式簿記を選択した場合は65万円控除、それ以外の青色申告者は10万円控除となります。

青色申告制度が導入された昭和25年当初、個人事業主に記帳や帳簿書類の保存という概念がありませんでした。そこで納税者の記帳水準を上げることを目的に青色申告制度が導入され、法人と同じように複式簿記を行った個人事業主はインセンティブとして65万円の控除を受けることができるようになりました。

また複式簿記でなくても簡易簿記による場合は10万円控除を設定することで、青色申告者ではない場合、つまり白色申告者との差別化を図ってきたのです。

現金主義(現金主義簡易簿記)との違い

さらに青色申告の簡易簿記には、「簡易簿記」と「現金主義(現金主義簡易簿記)」の2種類に分かれます。青色申告と白色申告の二重構造になっているばかりでなく、青色申告のうち3種類の記帳方法があるため、構造の複雑さに少々混乱してしまうかもしれません。

青色申告と白色申告の構造

ここで注目していただきたいのが、青色申告の簡易簿記と現金主義が同じ10万円控除である点です。どちらを選択しても10万円控除には変わりありません。

また現金主義の特例を受けようとする前々年度の事業所得の金額及び不動産所得の金額が300万以上である場合は、現金主義を選択することはできません。300万円以下の場合、「所得税の青色申告承認申請書 現金主義の所得計算による旨の届出書」を申請することで、現金主義の適用を受けることができるのです。

現金主義のメリットは、現金の授受が発生した時点で帳簿に記録するため、現金に関する帳簿が1冊で事足りるという点が挙げられます。また白色申告の収支計算書と比較しても記入項目が少なく、より簡易であることがお分かりいただけると思います。

青色申告決算書(現金主義用)

青色申告決算書(現金主義用)

収支内訳書(一般用)

収支内訳書(一般用)

また現金主義のデメリットとして、現金主義で届け出てしまうと、いくら複式簿記で記帳しても10万円しか控除されないという点が挙げられます。また貸倒引当金を計上することができないため、取引先の倒産などに備えることができません。さらに事業規模が拡大して所得金額が300万円を超えてしまうと現金主義の適用対象外となり、切り替えに関する事務手続きが発生します。

簡易簿記のメリット

青色申告における現金主義は、300万円以下の事業規模の場合に適用される記帳方法です。事業規模をどんどん大きくしたいとお思いであれば、300万円を超えると現金主義は適用されなくなるため、始めから簡易簿記を選択しておけば、切り替えに関する事務手続きは発生しない上に、記帳方法も一から覚えなおしたりする必要がありません。

また、「複式簿記は難しそう」と躊躇している方にとっても、お小遣い帳程度の知識があれば簡単に記帳できるため、会計や経理が苦手な人でも簡単に記帳義務を果たすことができます。

PCを使わずに手書きで記帳する人に導入しやすい帳簿方式ですし、PCを活用してクラウド会計サービスや表計算ソフトを利用し、記帳作業を楽にすることも可能です。

つまり、簡易簿記はこんな人におすすめです。

・今後、事業規模を拡大しようと思っている人
・複式簿記の知識がまったくない人
・PC操作が苦手な人

簡易簿記の書き方

用意するもの

事業内容によって異なりますが、原則として以下の5つの帳簿が必要となります。

1. 現金出納帳
2. 売掛帳
3. 買掛帳
4. 経費帳
5. 固定資産台帳

記載例

ここでは実際に現金出納帳を例に挙げて説明します。

現金出納帳例

現金が入ってきたら入金欄へ、現金を支出したら出金欄へ記入します。売掛帳や買掛帳、経費帳も同じように記帳していきます。固定資産台帳は青色申告決算書(一般用)の書き方の減価償却費の計算をご覧ください。

参考:
帳簿の記帳のしかた -事業所得者用- (税務署 24年4月)
平成26年分 青色申告決算書(一般用)の書き方

作成するときの注意点

・事業用とプライベート用の現金を区別しましょう。
・受け取った小切手は現金となりますが、振り出した小切手は当座預金の引き出しとなるので取扱に注意しましょう。
・費用を現金で支払った場合、現金出納帳と同時に経費帳にも記入が必要となります。
・貸倒引当金などの引当金は、買掛帳を使用します。
・経費帳は、経費ごとに記帳する必要があるため、あらかじめ使用する費用(通信費、消耗品費など)を決める必要があります。
・固定資産台帳で記入する償却額は、定額法や定率法などあらかじめ税務署に届けた償却方法にて計算を行ないます。

白色申告の簡易簿記と青色申告の簡易簿記の違い

白色申告の簡易簿記と青色申告の簡易簿記の記帳方法に違いはありません。つまり、同じ簡易簿記で記帳しているにも関わらず、「青色申告承認申請書」を提出しているか提出していないかによって、青色申告10万円控除の適用有無が変わってくるのです。

同じ簡易簿記で記帳しているのに白色申告者は控除額0円となってしまうため、青色申告に切り替えたほうが断然メリットは大きくなります。

簡易簿記から複式簿記に変更する

手続き

簡易簿記から複式簿記に変更するには、2つの方法があります。

1. 簡易簿記を応用する方法
2. 複式簿記を導入する方法

簡易簿記と複式簿記の決定的な違いは、貸借対照表が作成できるかどうかという点です。2の複式簿記を導入すれば問題なく貸借対照表を作成することができますが、簡易簿記だけですと、貸借対照表を作成することができません。

そこで簡易簿記であったとしても、貸借対照表を作成するための預金や手形、元入金などの債権債務科目を用意して記帳し、棚卸資産の棚卸や決算整理を行なうことで、複式簿記と同様の効果が得られることになります。これが1の簡易簿記を応用する方法となります。

用意するもの、作らなければならないもの

簡易簿記を応用する方法に関しては、
・貸借対照表を作成するための債権債務科目を用意すること
・棚卸や決算整理に関する作業が必要になること

複式簿記を導入するにあたっては、
・複式簿記の概念(資産、負債、純資産(資本)、費用、収益)を理解すること
・借方と貸方に金額を記入する仕訳を切る記帳方法が必要になること
などが挙げられます。

これまでの帳票とは別に、仕訳帳や総勘定元帳を新たに用意する必要があります。

加えて、白色から青色に切り替える際には「青色申告承認申請書」が必要となり、現金主義に切り替える際には「現金主義の所得計算による旨の届出書」が必要となります。

しかし、青色申告内で簡易簿記から複式簿記に切り替える際に申請する必要のある書類はありません。

まとめ

青色申告における簡易簿記は、白色の簡易簿記控除額0円よりはメリットが大きく、青色の複式簿記による65万円控除よりはややメリットが小さいという、ちょうど中間に存在しています。

いままで記帳していなかった白色申告者が青色申告に切り替えたときに特に導入しやすい記帳方式です。手書きでも、エクセルなどの表計算ソフトでも管理しやすいのが最大のメリットです。

全体的な注意点としては、事業所得者が提出する青色申告決算書に簡易簿記専用用紙が無いという点です。よって、複式簿記と同じ一般用の青色申告決算書を使用し、青色申告特別控除額に10万円と記入して提出しましょう。これで、簡易簿記の青色申告決算書として提出することができます。



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