サラリーマンも青色申告 メリットと注意点を解説
「仕事の経験を活かしてフリーランスとして週末起業しているけれど、赤字」「不動産賃貸業をしているけれど、空室が多いため赤字」そんなサラリーマンの方は、青色申告によってより多くの税金が戻ってくる可能性があることをご存知でしょうか?
今回は、サラリーマンの方が青色申告する場合のメリットと注意点についてご説明します。
目次
サラリーマンと確定申告
冒頭の例のように、事業所得や不動産所得に損失があるサラリーマンの場合には、確定申告をすることによりそれらの損失の額と給与所得とが損益通算され、給与から差し引かれていた源泉所得税の還付を受けられます。
損失がある場合
事業所得や不動産所得に損失がある場合は、同一年の他の所得と「損益通算」し、それでも控除しきれない金額がある場合には「青色申告」を利用することにより翌年以降に繰越し又は前年に繰戻しをすることができます。
損益通算
事業所得や不動産所得などの赤字を同一年の他の所得と相殺する制度です。青色申告・白色申告いずれの申告方法でも適用されます。
青色申告
「不動産所得」「事業所得」「山林所得」について、所定の帳簿書類を備え付け、正確な所得計算を行う者に対して優遇措置が与えられる制度です。青色申告を利用することにより、同一年で損益通算しきれない損失の額について下記のいずれかの制度を受けられます。
・純損失の繰戻し還付:前年分の所得に対する税金から還付を受けることができる
損益通算は「その年の所得の相殺」という単年の制度ですが、青色申告は事業継続を前提とした制度であり、厳正な手続きが必要です。
「青色申告を利用するための手続きとは何か?」以下、メリット・注意点など含めて解説します。
サラリーマンと青色申告
給与所得のあるサラリーマンが青色申告をする場合、どのようなことに留意する必要があるのでしょうか。当然、何らかの事業を展開していることが大前提となります。
青色申告事業の主な要件
1.所得の種類が「不動産所得」「事業所得」「山林所得」である
不動産所得の場合、独立した家屋の貸家数がおおむね5棟以上又はアパート等の独立した室数がおおむね10室以上であれば、事業的規模として取り扱われます。
2.「青色申告の承認申請書」を提出している
青色申告の承認申請書は通常の場合、承認を受けようとする年の3月15日まで(1月16日以降に事業を始めた場合は開業日から2カ月以内)の申請が必要となります。
詳細については「青色申告承認申請と届け出の流れ」をご覧ください。
3.帳簿作成義務
青色申告をする場合には、適正な帳簿の作成が必要です。そもそも青色申告には納税者の申告を正しいものにするだけでなく、記帳をする習慣をつける、という趣旨があります。
「記帳の習慣をつけることに意味があるのか?」と思う方もいるかもしれませんが、事業が大きくなった場合、帳簿からなる決算書は経営に不可欠な存在です。
事業を行う者なら、しっかりと帳簿をつけておきたいものです。
より具体的な内容については「帳簿記帳について」をご参照ください。
青色申告のメリットと注意点
青色申告のメリット
青色申告の主なメリットは以下のようになります。
1. 青色申告特別控除最大65万円(又は10万円)
2. 青色事業専従者給与の必要経費算入
3. 貸倒引当金の繰り入れ
4. 少額減価償却資産の特例(取得価額30万円未満の減価償却資産を全額必要経費に算入)
5. 純損失の繰越し控除
6. 純損失の繰戻し還付
青色申告の注意点(青色申告特別控除と純損失の繰越控除)
青色申告の注意点について説明いたします。前部分でメリットとして挙げた「1.青色申告特別控除」と「5.純損失の繰越控除」の関係には注意が必要です。
「青色申告特別控除」として所得から最大65万円(又は10万円)を差し引くことができますが、この控除は所得が65万円(又は10万円)未満の場合には、その所得を限度として差し引くこととなります。したがって、この場合は赤字とならないため、「純損失の繰越控除」の適用はありません。
一方、控除する前の所得が赤字になっている状態であれば、その赤字を「純損失の繰越控除」として翌年以降に繰り越すことができます。
また2020年分以降の青色申告特別控除額は55万円となりますが、これまでの要件に加えて、e-Taxによる電子申告あるいは電子帳簿保存のいずれかを行うことで、控除額65万円を受けることができます。
まとめ
「サラリーマンが青色申告するときの注意点」というテーマで書いてきましたが、青色申告の本旨は帳簿書類の備え付けと適正な申告です。
「還付ありき」の申告にならないよう注意しましょう。いくら赤字を出しても、元々の納税額を超える還付金を受けることはできません。
元々の納税額が少ないならば青色申告は割が合わない作業となるかもしれません。
「もっと事業を大きくしたいのか」「今年限りの副業なのか」など、将来のビジョンも考えつつ青色申告するかどうかを決めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。