• 更新日 : 2026年6月17日

家賃補助が社会保険料に与える影響は?社宅とどちらがお得か解説

Point家賃補助は社会保険料にどう影響する?

現金支給の家賃補助は報酬月額に算入されるため、社会保険料の負担増につながります。

  • 家賃補助は基本給と合算され、標準報酬月額の等級を押し上げる
  • 等級が上がると翌年9月の定時決定まで負担が続く場合がある
  • 借り上げ社宅へ切り替えると現物給与扱いとなり算入を回避できる

従業員へは額面ではなく手取りベースの影響額で説明すると、認識の齟齬を防げます。

家賃補助を導入・見直し検討中の人事・労務担当者のなかには「社会保険料にどう影響するのか」「どうすれば負担をおさえられるのか」と考える人も多いのではないでしょうか。

現金支給の家賃補助は報酬月額に算入されるため、社会保険料の負担増につながります。

本記事では、家賃補助で社会保険料が上がる理由やメリット・デメリット、注意点を解説します。

家賃補助で社会保険料が上がる理由

なぜ家賃補助を出すと、社会保険料に影響が出るのでしょうか。

家賃補助で社会保険料が上がる主な理由は以下のとおりです。

  • 現金支給の家賃補助は報酬月額に含まれるため
  • 報酬月額が上がると社会保険料を決めるもととなる標準報酬月額と等級が上がる(場合がある)ため

現金支給の家賃補助は報酬月額に含まれるため

社会保険制度では、手当で従業員に支払われるものは原則として「給与」に該当します。

家賃補助を現金で支給する場合も同様で、基本給と合算したうえで報酬月額が算出される仕組みです。

基本給が20万円、家賃補助が3万円であれば、報酬月額は23万円となります。

報酬月額を一定幅の金額で区切ったものを標準報酬月額といい、標準報酬月額に応じて社会保険料が決定する仕組みです。標準報酬月額毎に等級が定められており、たとえば標準報酬月額20万円であれば17等級、26万円であれば20等級となります。該当する等級の標準報酬月額に保険料を乗じたものが社会保険料です。

そのため、支給形態が現金である以上、社会保険料への影響は避けられないでしょう。

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報酬月額が上がると標準報酬月額と等級が上がるため

社会保険料の計算は、標準報酬月額に保険料率を乗じて計算され、報酬月額の増加によって等級が上がると、連動して保険料の額も増加します。

たとえば、標準報酬月額が24万円から28万円に変わると、等級が2段階上がります。

保険料率は加入する健康保険組合や都道府県によって異なるため、具体的な金額は年金事務所や加入先の健康保険組合に確認しましょう。

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家賃補助のデメリット

家賃補助は従業員の住居費をサポートできる制度であるものの、現金で支給する以上、双方の社会保険料についてのコスト負担増加は避けられません。

事前にリスクや影響額を正しく把握しておかなければ、福利厚生を充実させたつもりが、想定外の人件費高騰や手取りの目減りを招く原因となるでしょう。

ここでは、家賃補助のデメリットを解説します。

社会保険料が増え手取りが減る

家賃補助を現金で支給すると多くの場合、社会保険料の増加だけにとどまらず、所得税や住民税の課税対象額も増えます。

結果、支給額の全額が手取りに上乗せされるのではなく、手取り増加額は支給額を下回ります。

従業員への制度説明では、額面ではなく手取りベースでの影響額を伝えるのが認識齟齬を防ぐうえで重要です。

影響額の試算には、国税庁の税額表や協会けんぽの保険料額表を活用しましょう。

等級が上がると翌年以降も負担が続く

都道府県や加入する健康保険組合によって保険料率は異なるものの、社会保険料の等級は一度上がると、次の定時決定(毎年9月)まで同じ等級が適用され続けます。

4〜6月に支給を開始した場合は、その年の定時決定で等級が確定し、7月以降に開始した場合は随時改定(月額変更届)が必要になる場合があります。

いずれの場合も支給開始と保険料の切り替わるタイミングがずれるため、事前に従業員へ説明しましょう。

家賃補助のメリット

家賃補助で生活の基盤となる住居費をサポートするのは、優秀な人材の確保や業務へのモチベーション向上につながります。

ここでは、家賃補助のメリットを解説します。

導入・運用がシンプルである

現金支給の家賃補助は、管理業務が発生しないため、導入・運用がシンプルです。

会社が賃貸借契約の当事者となる借り上げ社宅制度では、物件ごとの契約管理や更新手続き、現物給与としての賃料相当額の計算など、毎月の事務工数の増加を避けられません。

一方、家賃補助であれば給料に上乗せして支給するかたちをとるため、給与計算ソフトに項目を追加するだけで処理が完結します。

支給対象者の追加や金額の変更も通常の給与処理の流れでおこなうため、物件管理に伴うトラブルや手続きに追われるリスクがありません。

家賃補助は、人事・労務リソースが限られている企業でも導入しやすい制度といえるでしょう。

従業員が支給額を把握しやすい

現金支給の家賃補助は、会社からいくらの支援を受けているのか、従業員側が把握しやすい制度です。

毎月の給与明細に「家賃補助」として金額が明示されるため、支給額を一目で確認できます。

一方、借り上げ社宅制度の補助額は、会社が支払う家賃と従業員の自己負担額との差額になります。現物給与の計算過程が複雑なため、従業員側が支給額を把握しにくいでしょう。

家賃補助であれば、給与改定時の確認や福利厚生としての効果説明もしやすいため、従業員の納得感や満足度につながりやすくなります。

物件や使途を自由に選べる

現金支給の家賃補助であれば、従業員が物件や使途を自由に選べます。

これは、賃貸借契約の名義は従業員本人となるからです。

一方、借り上げ社宅制度では、会社が指定する物件への居住が条件となるケースが多く、通勤距離や間取りなど従業員側の希望にあわない場合があります。

現金支給の家賃補助であれば、転勤・結婚・出産などライフステージの変化にあわせて、従業員自身が物件を選択できます。

多様な働き方や個々の生活スタイルに対応しやすい点は、従業員側にとってメリットになるでしょう。

家賃補助の注意点

家賃補助の導入時は、社会保険料の負担増以外にも実務上の注意点があります。具体的には、月額変更届の提出や給与規定への明記が必要となり、怠ると法令違反や思わぬ労使トラブルに発展しかねません。

月額変更届が必要になる場合がある

家賃補助の支給開始・変更に伴い、月額変更届の提出が必要になる場合があります。

固定賃金が変動し、変動月以降3か月間の標準報酬月額が従前と比べて2等級以上変動した場合、月額変更届の提出が義務づけられているためです。

手続き漏れがあると罰せられる可能性があるため、支給開始や金額変更後、所定のタイミングで該当の有無を確認しましょう。

給与規程への明記が必要になる

家賃補助を支給する場合は、給与規程への明記が必要です。

支給条件・金額・対象者が不明確な状態で運用すると、労使トラブルの原因となりかねません。

たとえば、規程に明記せずに一部の従業員のみ支給していた場合、対象外の従業員から不公平感を訴えられるケースがあります。

導入前に規程を整備し、トラブルを未然に防ぎましょう。

家賃補助に代わる住居支援「借り上げ社宅」

家賃補助による社会保険料負担の軽減を検討する場合、選択肢となるのが借り上げ社宅です。

借り上げ社宅は現物給与として扱われるため、現金支給とは社会保険料の取り扱いが異なり ます。

ここでは、借り上げ社宅について解説します。

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借り上げ社宅に切り替えると社会保険料はどう変わるか

借り上げ社宅は現物給与にあたるため、家賃補助から切り替えると、社会保険料の負担をおさえられる場合があります。

現金支給の家賃補助は全額が「報酬」となるものの、借り上げ社宅は「現物給与」として扱われ、一定の条件下で算定基礎から除外できる仕組みになっています。

ただし、借り上げ社宅にすれば社会保険料に一切影響しないわけではありません。

日本年金機構の規定により、厚生労働大臣が定める「現物給与の価額(都道府県ごとに決定)」と従業員が支払う自己負担額との間に差額が発生すると、差額が報酬(算定基礎)に含まれます。

社会保険料への算入を防ぐには、現物給与の価額以上の適切な自己負担額を従業員側に設定しましょう。

家賃補助と借り上げ社宅の使い分けのポイント

住宅支援制度を導入・見直しする際は、自社の状況にあわせて家賃補助と借り上げ社宅を使い分けるのが重要です。

社会保険料や税金の負担をおさえたい場合は、借り上げ社宅が有利なケースが多く見られます。しかし、会社名義での物件契約手続きや社宅管理規程の整備が必要となるため、導入・運用の管理コストが増えます。

一方で、現金支給の家賃補助は社会保険料の負担増は避けられないものの、給与計算ソフトの項目の追加だけで完結するため、導入・運用がシンプルです。

どちらが自社に適しているかは、従業員数や管理部門の手間、社会保険料の増減影響を総合的に判断したうえで検討しましょう。

家賃補助と住宅手当との違い

家賃補助と住宅手当は明確に区別されるものではなく、企業がどちらの呼称を用いるかの違いです。

あえて分けるとしたら、以下のようになるでしょう。

項目 家賃補助 住宅手当
対象範囲 賃貸住宅の家賃に限定 賃貸・持ち家を問わない
支給目的 賃料負担の軽減 住居費全般の補助

社会保険料の扱いは、どちらも全額が標準報酬月額の算定対象です。また、所得税や住民税についても、全額が課税対象になります。

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家賃補助と社有社宅の違い

家賃補助と社有社宅は、支給形態・社会保険料への影響・運用コストの点で異なります。

家賃補助と社有社宅の違いは、以下のとおりです。

項目 家賃補助 社有社宅
物件の所有形態 従業員が個別に契約 会社所有
支給形態 現金 現物
社会保険料への影響 報酬月額に算定 適正な自己負担で算入回避が可能
税金への影響 所得税・住民税の課税対象 適正な自己負担で非課税
初期コスト 低い 高い(物件取得費用)
運用コスト 低い 高い(維持管理費用)
従業員の自由度 高い 低い

家賃補助についてよくある質問

ここでは、家賃補助についてよくある質問に回答します。

家賃補助と社宅どちらが得ですか?

社会保険料や従業員の税負担をおさえたい場合、借り上げ社宅のほうが得になるケースが多いです。

現金支給の家賃補助は、標準報酬月額の算定基礎に含まれるのに対し、借り上げ社宅は適切な自己負担額を設定することで算定基礎から除外されるためです。

しかし、借り上げ社宅の導入には、物件の契約管理や規程整備の手間がかかります。

自社の運用コストとのバランスを考慮したうえで、最適なほうを選びましょう。

借り上げ社宅への切り替え手続きはどうすればよいですか?

借り上げ社宅への切り替え手続きは、以下の3ステップで進めます。

1.社宅管理規程の改定
  • 対象者の範囲や入居可能な物件の条件、家賃の負担割合などを定める
  • 既存の住宅手当(現金支給)を廃止して移行する場合は、不利益変更とならないよう従業員への事前説明と合意取得をおこなう
2.会社名義での物件の選定・契約
  • 企業が契約主体(賃借人)となり、貸主や管理会社と法人契約を結ぶ
  • 従業員が現在住んでいる賃貸物件を社宅へ切り替える場合は、個人契約から法人契約への名義変更手続きを進める
  • 1と並行して実施する場合もある
3.標準報酬月額の変動確認と手続き
  • 現金支給の廃止に伴い、対象従業員の報酬月額がどのように変動するかを確認する
  • 固定的賃金の変動によって標準報酬月額の等級が従来の算定から2等級以上変わる場合は、日本年金機構へ「月額変更届」を提出する

適切な自己負担額(賃貸料相当額)の算出や月額変更届の判断は、複雑なケースがあるため、社会保険労務士といった専門家に相談しながら進めましょう。

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