• 更新日 : 2026年6月16日

引っ越し手当はどこまで会社負担?対象費用や制度設計のポイントを解説

Point 引っ越し手当はどこまで会社が負担する?

「対象範囲と支給条件を整理すれば、公平で運用しやすい制度を設計できます」

  • 業者代や賃貸の初期費用は企業が補助する
  • 新規の家具家電は従業員が支払う
  • 業務上必要な移転費は非課税で扱える

借り上げ社宅など住宅費を見直す制度とあわせて検討するのがおすすめです。

採用や転勤に伴う引っ越し費用は、従業員の負担になりやすいため、引っ越し手当を導入する企業が増えています。

しかし、「どこまで会社負担にするべきか」「課税対象になるのか」など、制度設計に悩む担当者も少なくありません。

本記事では、会社負担・自己負担になりやすい費用や、制度化する際の注意点をわかりやすく解説します。

引っ越し手当とは?

引っ越し手当とは、従業員の転勤や入社に伴い発生する住居の移転費用について、企業がその一部または全部を補助する福利厚生制度です。

対象となる費用は企業によって異なりますが、一般的には引っ越し業者への支払い費用や住居契約時の初期費用などが含まれます。

引っ越し手当には、転勤や遠方からの人材採用における従業員の経済的・心理的負担を軽減する役割があります。採用競争力の向上や定着率の改善も期待できるため、多くの企業で導入が進んでいる施策の一つです。

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企業が引っ越し手当を導入する3つのメリット

引っ越し手当は、採用活動の強化や人材確保の幅を広げるとともに、企業ブランディングの観点でも効果が期待できる制度です。

ここでは導入によって得られる主な3つのメリットを解説します。

1.採用時の応募ハードルを下げられる

引っ越し手当を導入することで、求職者が入社時に負担する初期費用の不安を軽減でき、応募の心理的ハードルを下げられます。

住居の移転には敷金・礼金や引っ越し費用など一定の費用負担が発生するため、これが障壁となり応募をためらうケースも見られます。企業が費用の一部または全部を補助することで、経済的負担を抑え、より幅広い層からの応募を促進できるでしょう。

また、入社意欲の高い候補者との接点増加につながり、採用活動の効率化にも寄与します。

2.遠方人材の採用を進めやすくなる

引っ越し手当は、採用対象エリアを広げるうえで有効な施策です。

勤務地から距離のある地域に居住する人材であっても、転居に伴う経済的負担が軽減されることで、応募を検討しやすくなります。これにより、従来の通勤圏に限定されない採用活動が可能となり、専門スキルや実務経験を持つ人材を広く確保できる可能性が高まります。

とくに人材獲得競争が激しい業界においては、採用母集団を拡大する手段として有効です。

3.企業のイメージ向上につながる

引っ越し手当の導入は、企業イメージにも影響します。

従業員の生活環境に配慮した福利厚生制度を整備している企業として認識されることで、求職者や従業員からの信頼性が高まります。入社時や転勤時に発生する金銭的・心理的負担を軽減する姿勢は、働きやすい職場環境づくりの一環として評価されやすく、採用ブランディングの強化にも効果的です。

こうした取り組みは単なる福利厚生にとどまらず、企業文化や組織風土そのものへの評価にも影響を与えます。結果として、従業員の定着率向上や組織へのエンゲージメントの強化が期待できます。

会社負担になりやすい引っ越し手当

会社都合の異動や入社に伴う引っ越しでは、従業員の負担軽減の観点から、一定の費用を会社が負担するケースが多く見られます。

ここでは、会社負担の対象となる主な費用について見ていきましょう。

引っ越し業者に支払う費用

引っ越し費用のうち、業者に支払う基本的な実費は会社負担となるのが一般的です。具体的には、荷物の搬出入にかかる人件費や運搬費、トラックのチャーター費用などが該当します。

ただし、引っ越し業者の指定や見積もり条件を設けて運用している企業も見られます。

敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用

賃貸契約時に発生する敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用は、住居確保に必要な支出として会社負担とされるケースが多い項目です。

企業としては、入社や異動に伴う従業員の初期負担を抑える目的で制度に組み込むことが一般的です。

退去時の原状回復費用が敷金を超過した場合は、その差額を個人負担とする運用もあり、精算範囲の整理が求められます。

火災保険料や鍵交換費用などの入居時にかかる諸経費

入居時には、火災保険料や鍵交換費用、入居前の消毒費、ハウスクリーニング代など諸経費が発生します。これらは住環境の安全性確保や契約上の必須要件に関連する費用として、多くの企業で会社負担の対象に含められています。

また、物件条件や契約形態によって費用水準が変動するため、社内基準として整理しておくとよいでしょう。

新居までの交通費・宿泊費

転勤や入社に伴う移動では、新居までの交通費や必要に応じた宿泊費が会社負担となる場合があります。業務命令にもとづく移動として扱われる場合は、出張費に準じた形で精算されるのが一般的です。

ただし、利用可能な交通手段や上限額は企業ごとに異なり、規程により条件が定められています。また、家族帯同の場合には対象範囲を拡張する運用も見られます。

自己負担になりやすい引っ越し手当

企業が支給する引っ越し手当は、転居に伴う費用の一部を補助する制度ですが、すべての関連費用を網羅するものではありません。

新規の家具・家電購入費や特殊荷物の運搬費、社内規程の上限を超えた金額は自己負担となるケースが多く、制度設計時に対象範囲を明確にしておく必要があります。

新たに購入する家具・家電の費用

新居の間取りや設備仕様によって、従来使用していた家具や家電をそのまま利用できない場合があり、買い替えが発生することがあります。とくに冷蔵庫や洗濯機などの大型家電は設置条件に左右されやすく、カーテンについても窓サイズの違いから再購入が必要になりやすいといえます。

このような新規購入費用は引っ越し手当の対象外となるのが一般的です。ただし、海外転勤の場合は規格差を理由に会社負担となる例もあります。

ピアノ・自家用車など特殊な荷物の運送費用

通常の引っ越しで発生する荷物の運搬費は会社負担となることが多い一方で、ピアノや美術品、骨董品などの特殊な荷物は一般的な引っ越し業者では対応できない場合があります。

また、自家用車やバイクの輸送も専門的な輸送手段や追加手続きが必要となり、オプション扱いとして別途費用が発生することが一般的です。

ペットの移送についても専用ケースや交通機関の運賃が発生するため、自己負担となるケースが多く見られます。

上限額を超えた引っ越し費用

企業によっては引っ越し手当や費用補助に上限額が設定されており、その範囲内で実費が支給される仕組みになっています。実際の引っ越し費用が上限を超えた場合、その超過分は従業員の自己負担となります。

上限額は企業ごとに異なるため、転居内容や距離によっては差額が発生しやすい点が特徴です。

また、荷造りや不用品処分などのオプションサービスは標準的な引っ越し範囲外とされ、支給対象から外れる場合もあります。

引っ越し手当を制度化する際の4つの注意点

引っ越し手当を制度として導入する際は、単なる福利厚生の一つとして扱うのではなく、社内ルールとしての整合性や公平性を確保することが求められます。制度の内容によって従業員の納得度や運用負担も大きく変わるため、事前の整理が重要です。

ここでは、制度設計時にとくに注意すべき4つのポイントを解説します。

1.支給条件を明確にする

引っ越し手当を適切に運用するには、まず支給対象となる条件を明確に定めることが重要です。

たとえば、「会社都合の転勤のみを対象とするのか」「自己都合の転居も一定の条件で対象とするのか」によって制度の性質は大きく変わります。正社員や契約社員といった雇用形態ごとの適用範囲や、勤続年数による制限の有無についても整理しておく必要があります。

また、支給額の上限や算定方法、申請に必要な手続きなどを具体化することで、運用時の判断のばらつきやトラブルを防ぐことが可能です。

条件を明文化することで、制度の透明性が高まり、従業員にとってもわかりやすい制度となります。

2.課税・非課税の扱いを確認する

引っ越し手当は、会社命令による転勤など業務上の必要性にもとづいて支給される場合は、給与課税の対象とならないケースがあります。これは、従業員への経済的利益というよりも、業務遂行に必要な費用を会社が負担するという考え方にもとづくものです。

一方で、非課税として扱われるのはあくまで「通常必要と認められる範囲」に限られます。移動や住居の移転に直接必要な費用であっても、内容や金額が社会通念上の範囲を超える場合には、超過部分が給与として課税対象となる可能性があります。

また、支給内容によっても扱いは異なり、「実費精算か定額支給か」または「生活支援的な手当が含まれるか」によって判断が分かれる点にも注意が必要です。そのため、制度設計の段階で支給範囲や基準を明確にし、必要に応じて税務の専門家に確認することが望ましいでしょう。

引っ越し手当の課税・非課税の取り扱いについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

3.就業規則・福利厚生規程に明記する

引っ越し手当を継続的かつ安定的に運用するためには、就業規則や福利厚生規程への明記が欠かせません。

制度内容を文書として整理することで、支給基準や対象範囲が明確になり、従業員間の認識のずれを防ぐことが可能です。また、規程として整備することで、社内手続きの統一化が図られ、担当者ごとの判断差や運用のばらつきを抑えられます。

さらに、制度は一度定めて終わりではなく、法改正や組織体制の変更などに応じて定期的に見直すことが求められます。

このように制度をルールとして明文化しておくことは、企業としての説明責任を果たすだけでなく、結果として透明性や信頼性の向上にもつながるでしょう。

4.不公平感が出ないように設計する

制度設計においては、従業員間で過度な不公平感が生じないよう配慮することが重要です。

たとえば、転勤距離や転居の必要性など、客観的かつ合理的な基準を設けることで、納得感の高い制度設計が可能になります。

ただし、すべての状況において完全な公平性を確保することは難しいため、不公平感をできる限り抑えられるような設計思想が現実的です。従業員の理解を得るために、制度への信頼性を高めるために、制度の目的や背景、支給基準の考え方について社内へ丁寧に周知しましょう。

引っ越し手当に関するよくある質問

最後に、引っ越し手当に関するよくある質問を紹介します。

引っ越し手当は課税対象ですか?

引っ越し手当の税務上の取り扱いは、支給方法や内容によって異なります。

会社都合の転勤に伴い、業務上必要と認められる範囲の引っ越し費用(運賃や移転費など)を実費で会社が負担する場合は、原則として給与課税の対象にはなりません。

一方で、定額で支給される引っ越し手当や、生活支援的な性質をもつ支給については、給与として課税対象となるのが一般的です。実費精算であっても社会通念上「通常必要と認められる範囲」を超える部分は課税対象となる可能性があります。

引っ越し費用を全額負担する必要はありますか?

企業が従業員の引っ越し費用を必ず全額負担する法的義務はありません。

支給の有無や負担割合については、各企業の福利厚生制度や人事制度にもとづいて個別に定められています。そのため、全額補助とする企業もあれば、一定額の上限を設定する企業や、一部費用のみを補助する企業もあります。

新卒入社者にも引っ越し手当を支給できますか?

新卒入社者にも引っ越し手当を支給することは可能です。とくに遠方からの入社や初任地への配属に伴う転居費用の負担軽減を目的として、導入する企業もあります。

支給方法には、定額支給、実費精算、上限付き補助などがあります。ただし、支給条件や対象範囲を明確に定めておかないと運用上の不公平感につながる可能性があるため、事前に社内規程として整理しておくことが重要です。

引っ越し手当は、入社時や転勤時に発生する一時的な負担軽減に有効な制度です。一方で、近年は住宅費負担そのものを見直す福利厚生制度を導入する企業も増えています。

たとえば、借り上げ社宅制度や福利厚生賃貸を活用することで、従業員の住居費負担の軽減や福利厚生の充実につなげるケースもあります。

マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸」は、従業員が住んでいる賃貸物件を法人契約へ切り替え、給与天引きで家賃を支払う仕組みにより、企業の福利厚生強化を支援するサービスです。

契約手続きや制度導入時のサポートも提供されているため、住宅関連制度を整備したい企業は、引っ越し手当とあわせて検討しましょう。


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