- 更新日 : 2026年6月17日
退職したら家賃補助はどうなる?代わりに申請できる住居確保給付金とは?
退職日を境に支給停止となるのが原則で、退職月の計算方法は就業規則によって異なります。
- 退職月の手当が日割りか月割りかは就業規則で定められている
- 会社名義の社宅は原則として退職日までに退去する必要がある
- 離職後は自治体の住居確保給付金で家賃相当額の支援を受けられる
退職の申し出を受けた段階で規程を確認し、支給額や退去期日を早めに案内すると安心です。
従業員が退職する際、総務担当者として適切に案内すべき事項の一つに家賃補助があります。退職に伴い、家賃補助は支給停止となりますが、従業員がこの仕組みを誤解していると思わぬトラブルに発展しかねません。
ただ、「どのようなことを案内すべき?」「総務がチェックしておくべきポイントとは?」と気になっている人もいるでしょう。
そこで本記事では、退職に伴う家賃補助についての基本ルールや発生しやすいトラブルと対策について解説します。また、公的な支援制度「住居確保給付金」の概要や受給条件なども紹介します。
目次
退職したら家賃補助はどうなる?
従業員が会社を退職する場合、それまで福利厚生や手当として支給されていた家賃補助(住宅手当)は、退職日を境に支給停止となるのが原則です。
しかし、退職月に支給される手当が日割り計算になるのか、あるいは月割り(全額支給)になるのかは、各企業が定める就業規則の内容によって異なります。また企業によっては、毎月15日以降の退職であれば満額、15日以前であれば半額を支給するといった独自の基準を設けているところもあります。
住宅手当の支給が打ち切られると、これまで補助によって負担が軽減されていた家賃がダイレクトに従業員の家計を圧迫することになるでしょう。そのため、総務担当者は従業員から退職の申し出があった段階で該当箇所を確認し、速やかに今後の手当の支給について本人に説明するのが望ましいです。
社宅は期日までに退去してもらう必要がある
会社が保有する社有社宅や会社名義で契約している借り上げ社宅に従業員が居住している場合、原則として期日までにその社宅を退去してもらう必要があります。
社有社宅に関しては、退職をもって利用資格を失うため、退去の対象となります。なお、基本的には退職日当日に退去を済ませる必要がありますが、退職日以降に猶予日数が設けられている場合もあるため、就業規則を確認したうえで従業員に前もって共有しましょう。
一方で、民間の物件を会社が契約している借り上げ社宅の場合も、基本的に社有社宅と同様に退職日には退去しなければならない場合がほとんどです。ただ、従業員が敷金や礼金の一部を会社に支払い、賃貸契約の名義を「会社名義」から「個人名義」へと切り替えることで、そのまま住み続けられるケースもあります。
借り上げ社宅の場合も、総務担当者は事前に社内ルールを確認してから退職予定者へ的確に案内できる状態にしておきましょう。
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退職時に起こりやすい家賃補助に関するトラブル
退職時に起こりやすい家賃補助に関するトラブルを4つ紹介します。
退職月も家賃補助を全額もらえると従業員が認識していた
退職時に頻発するのが、退職月も手当は全額もらえるものと従業員が思い込んでいたというトラブルです。
具体的には、「当月支給」や「前月遅れ支給」といった支給サイクルについて、退職月の勤務日数に応じた日割り計算の有無について、認識が食い違っていることがよくあります。
最後の給与明細を確認した従業員から「予定していた額より少ない」「支給額が間違っているのではないか」という問い合わせが来ることもあるでしょう。
こうした認識の齟齬を防ぐため、退職届を受理した後の面談や退職時に交付する書類で、退職月における家賃補助の計算方法や最終的な手取り額を説明するのが望ましいです。口頭で丁寧に説明するとともに、合意した旨を記載する書面を交付して記録を残すと、大きなトラブルにも発展しにくくなります。
家賃補助を不正受給していた
退職手続きをする過程で家賃補助の不正受給が発覚することがあります。
よくあるのが、従業員が申請していた住所からすでに転居しているにもかかわらず、会社への届出を怠り、旧住所のまま家賃補助を受け取り続けていたというケースです。また、家賃補助の上限を上げるために、実際には同居していない親族を世帯員として偽って申告しているケースも稀にあります。
これらは、退職手続きをする際に住民票を確認したり、源泉徴収票の送付先を調べたりするタイミングで発覚することが多いです。必要以上に過払いしていた手当については、本人へ返還を請求できます。
ただ、本人が支払いを拒否したり退職後に連絡が一切取れなくなったりすることもあります。総務担当者としては、このような事態に陥ることに備えて「専門家に相談する」「緊急連絡先へ返還を求める」といったマニュアルを作成しておくと良いでしょう。
支給していた家賃補助が規定より少なかった
会社側の手続きミスにより、本来支給すべき家賃補助が規定よりも少なく支払われていたというケースが退職時に発覚することもあります。これは、過去の人事異動や昇給などに伴う手当の変動が正しく反映されていなかったり、経理上の計算ミスが見落とされたまま放置されていたりした場合に発生します。
このような過失が明らかになった場合、会社側は誠実に事実を説明して速やかに謝罪するべきです。従業員が本来受け取るはずだった未払い分は、最終給与の支払いに上乗せして支給するのが望ましいです。
こうしたトラブルは注意していても発生しやすいため、従業員から退職の申し出があった段階で、過去数年分の家賃補助を賃金規程と照合して過不足ないか確認すると良いでしょう。
期日を過ぎても従業員が社宅から引っ越さない
社宅や寮の明渡しにおいて、事前に合意していた期日を過ぎても元従業員が住居に居座り続けて退去しないというトラブルも稀に起こります。
会社としては速やかに次の入居者のために部屋を確保したいところですが、たとえ退職済みではあっても、強硬手段は法的に認められない場合が多いです。
そのため、このような事態に直面した場合は、退去が遅れている理由をヒアリングしつつ、弁護士名義の催告書や内容証明郵便を送付し、自発的な退去を促すこととなります。法的措置も視野に入れておくと良いでしょう。
こういったトラブルを未然に防ぐためには、社宅への入居契約時に「退職日から◯日以内に明渡すこと」と明記した誓約書を締結しておくことをおすすめします。加えて、退去遅延時の損害金やペナルティなども事前に誓約書や規程に盛り込んでおくのが望ましいです。
家賃補助について従業員の退職前にチェックしておきたいポイント
家賃補助について従業員の退職前にチェックしておきたいポイントを、家賃補助を支給している場合と社宅を貸し出している場合に分けて紹介します。
家賃補助や住宅手当を支給している場合
従業員が退職するにあたり、手当関連の手続きをスムーズに進めるためには、総務担当者として以下のポイントを事前に確認しておきましょう。
- 就業規則および賃金規程の確認
- 過不足金の確認と清算手続き
- 給与天引きのスケジュール調整
退職月における家賃補助の支給方法が、日割り計算なのか月割りなのかを最新の規程に沿って確認することが重要です。
また、過去に手当の過不足がなかったか、履歴と支給ルールを照らし合わせながら確認し、過不足がある場合は最終給与で相殺もしくは追加支給を行います。
給与計算の担当者が別にいる場合は、精算のズレを防ぐためにも担当者とも情報を共有しておきましょう。
社宅や寮を貸している場合
社宅や寮を従業員へ貸している場合は、退去に向けた手続きについて数ヶ月前から準備する必要があります。
- 明け渡し期限の合意
- 原状回復・クリーニング費用の明確化
- 退去時の立ち会い・確認
退職日の数ヶ月前には従業員と面談を行い、社宅規程にて定められた退去期日を共有します。現実的に無理のない引っ越しスケジュールを組み、明け渡し期限の合意を得ましょう。
物件の原状回復やハウスクリーニングの費用については、会社と本人のどちらがどの割合で負担するかを賃貸借契約書や社内規程などで確認します。その負担分を退職時の給与と相殺するか、退職後に別途請求するかを本人との話し合いで決めてこれも認識をすり合わせておきましょう。
退去日当日(または直前)に、不動産管理会社・会社担当者・本人の三者による現地立ち会いを行い、壁や設備に破損や汚損がないかを直接確認します。
退職する従業員へ案内したい支援制度「住居確保給付金」
従業員の中には、会社の倒産やリストラだけでなく、病気や家庭の事情による自己都合退職によって急に収入が途絶え、住まいを失う不安を抱える人も少なくありません。
そうした従業員に対し、総務担当者がセーフティネットとして案内できる公的支援制度が「住居確保給付金」です。これは、離職や廃業によって経済的に困窮し住居を失う恐れがある者に対し、自治体から家賃相当額を家主へ直接支給することで、住まいの確保と再就職を支援するという制度です。
住居確保給付金は、個人のやむを得ない事情による自己都合退職の場合であっても受給の対象となります。ただし、「自ら希望して勤務日数を減らした」「シフトを減らして自分の時間を優先した」といった、自発的かつ意図的に収入を減少させた場合は対象外です。
総務担当者は、精神的なゆとりを持って求職活動に専念できる制度として、退職手続きの際に紹介できるように準備しておくと良いでしょう。
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住居確保給付金の受給条件
住居確保給付金を受給するためには、厚生労働省の定める以下の全ての要件を満たしている必要があります。総務担当者として、受給可否について聞かれた際には、以下に挙げる要件に当てはまっているか確認するよう案内しましょう。
- 離職・廃業から2年以内である場合。もしくは、個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合。
- 直近の月の世帯収入合計額が、市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12と家賃の合計額を超えていないこと。
- 現在の世帯の預貯金合計額が、各市区町村で定める額を超えていないこと。
- 求職活動等要件として、ハローワーク等に求職の申込をし、誠実かつ熱心に求職活動を行うこと。
条件に合致するかどうか、最終的には、住民票を置く自治体の窓口で審査を受ける必要があるため、まずは相談に行くようアドバイスするとスムーズです。
参考:厚生労働省|厚生労働省生活支援特設ウェブサイト | 住居確保給付金:制度概要
住居確保給付金の支給額
住居確保給付金として実際に支給される金額は、世帯人数や住んでいる地域によって変わります。
以下は、東京都世田谷区の支給上限額と算定基準です。
| 世帯人数 | 基準額 | 家賃上限額 (支給上限額) |
収入要件上限額 (基準額+家賃上限額) |
資産要件 |
|---|---|---|---|---|
| 単身世帯 | 84,000円 | 53,700円 | 137,700円以下 | 504,000円以下 |
| 2人世帯 | 130,000円 | 64,000円 | 194,000円以下 | 780,000円以下 |
| 3人世帯 | 172,000円 | 69,800円 | 241,800円以下 | 1,000,000円以下 |
| 4人世帯 | 214,000円 | 69,800円 | 283,800円以下 | 1,000,000円以下 |
「基準額」とは、自治体が非課税所得などをもとに定める生活維持のための目安額です。
「家賃上限額」は支給される家賃補助の最大値を指し、世帯人数が増加するにつれて上限額も段階的に引き上げられます。なお、実際の家賃が上限額を超えている場合、差額分は自己負担として自力で支払う必要があります。
「収入要件上限額」とは、世帯全体の月収のボーダーラインのことです。この上限額以下でなければ、給付金をもらうことができません。また、金融資産の上限である「資産要件」も満たす必要があります。
住居確保給付金が支給されたときのシミュレーション
住居確保給付金の支給額は、申請時の世帯月収と基準額の関係によって全額支給か一部支給に分かれます。
以下に、単身世帯(実際の家賃が5万円の場合)におけるシミュレーションを紹介します。
【ケース1】世帯収入が基準額以下の場合(例:月収が5万円の場合)
世帯収入(5万円)が基準額(8.4万円)以下であり、かつ家賃が上限に達していない
ため、実際の家賃額が全額支給されます。
自己負担=0円
【ケース2】世帯収入が基準額を「超える」場合(例:月収が10万円の場合)
世帯収入(10万円)が基準額(8.4万円)を超えているものの、収入要件上限額(5+8.4=13.4万円)以下であるため、一部支給となります。
支給額=84,000円(基準額)+50,000円(家賃)-100,000円(世帯収入)= 34,000円
自己負担=50,000円(家賃)-34,000円(支給額)=16,000円
このように、本人の求職活動中の収入レベルに応じて段階的に給付額が補正されるため、多少のアルバイトや副収入があっても、上限の範囲内で一部支給を受け取れます。
住居確保給付金と失業手当を同時に受け取れる?
退職後の再就職活動中に、ハローワークから受給できる失業手当と住居確保給付金は、要件を満たしていれば同時に受給することが可能です。
この両制度は、それぞれ目的が異なります。住居確保給付金は住まいを失うのを防ぐための住宅扶助、失業手当は次の就職までの生活費を支えるための生活保障という性質を持つため、重複して活用できます。
また申請の手順において、どちらを先に申し込むべきといった規定も特に定められていないため、同時に申請しても問題ありません。
ただし、受給する失業手当の金額は、住居確保給付金における本人の月収(世帯収入)として算定されてしまう点には注意が必要です。詳しくは、本記事の「住居確保給付金に関する注意点」における「失業手当は収入として算定」をご参照ください。
失業手当については、以下の関連記事にて詳しく解説しています。
住居確保給付金に関する注意点
最後に、住居確保給付金に関する注意点を3つ紹介します。
支給対象となるのは家賃のみ
住居確保給付金は、純粋な月額の家賃のみを補助する制度です。
物件の賃貸借契約において、毎月家賃と一緒に請求された場合でも以下のような諸経費は給付金の支給対象外となります。
- 共益費、管理費
- 水道光熱費
- 駐車場代、駐輪場代
- インターネット使用料
また、一時的に発生する契約更新料、火災保険料、保証会社への事務手数料なども対象外であり、これらは元従業員が自費で家主に支払わなければなりません。
契約書に記載された毎月の支払額の内訳を詳細に確認し、純粋な家賃がいくらなのかを本人が正しく把握しておく必要があります。
ルームシェアは支給の対象外
住居確保給付金は、原則として生計を共にする世帯が申請の対象となります。
そのため、友人同士でルームシェアを行っている場合、給付金の支給対象外となるケースが多いです。契約書が連名でなかったり世帯分離をしていたりすると、それぞれの家賃の負担割合が明確ではないことが主な理由です。
ただし、個別の賃貸借契約書の仕様によっては例外的に対象となる場合もあるため、まずは賃貸借契約書を持って自治体の相談窓口に相談するように促すと良いでしょう。
なお、事業用に契約している物件も給付金の支給対象外となります。
失業手当は収入として算定
前述の通り、失業手当は住居確保給付金の支給要件における世帯収入として算定されます。
そのため、給付金の支給決定後に、失業手当の受給が始まったり受給金額に変動があったりした場合は、それに応じて住居確保給付金の支給額も変わる可能性があります。
従業員がどちらも満額を受け取りたいようであれば、失業手当の受給が終了するタイミングに合わせて、住居確保給付金の新規申請を行うと良いと案内しましょう。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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