• 更新日 : 2026年9月3日

出生後休業支援給付金を正しく理解するには?支給要件・計算方法・手取り10割の仕組みを解説

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Point出生後休業支援給付金とは何か?

出生後休業支援給付金は、育児休業給付金に13%上乗せされる給付金で、2025年4月から施行された「手取り実質10割」を実現する制度です。

  • 夫婦ともに14日以上の育休取得が受給要件
  • 支給上限は28日間・給付率は合計80%
  • 給付金は非課税社会保険料も免除対象

Q. なぜ「手取り10割」と言われるのか?

A. 給付率80%に加え、育休中は社会保険料が免除され給付金も非課税となるため、就労時の手取りとほぼ同水準になるからです。

出生後休業支援給付金とは、育児休業給付に上乗せして支給される経済的支援制度です。2025年4月に施行され、育休中の手取りが実質10割相当になる仕組みとして注目されています。本記事では、産後パパ育休や育児休業給付金との関係、支給要件、計算方法、社会保険料の扱いまで、企業の人事労務担当者が押さえておくべきポイントを網羅して解説します。

出生後休業支援給付金とは?

出生後休業支援給付金とは、育児休業給付金または出生時育児休業給付金に上乗せして支給される給付金のことです。単体で受給することはできず、既存の育児休業給付制度の上乗せ分という位置づけになります。

この給付金は、社会保険料に上乗せして徴収されている「子ども・子育て支援金」を財源としており、2025年4月1日から施行されました。目的は、育休取得による収入減少への不安を解消し、特に男性の育児休業取得を後押しすることにあります。

この章では、出生後休業支援給付金の対象期間・支給条件・支給額の全体像を解説します。

出生後休業支援給付金は最大28日間支給

出生後休業支援給付金は、子の出生直後に取得する育児休業を対象に、支給最大28日間されます。対象となる期間は、父親と母親で起算点が異なる点に注意が必要です。

具体的には、父親(産後休業を取得しない側)は子の出生日から8週間を経過する日の翌日までが対象期間です。一方、母親(産後休業を取得した場合)は、産後休業終了後さらに8週間、つまり出生日から通算すると16週間を経過する日の翌日までが対象期間となります。この期間中であれば、育児休業を2回以上に分けて取得した場合でも、それぞれの休業がまとめて支給対象になります。

人事労務担当者は、父母で対象期間の数え方が異なる点を誤解しやすいため、従業員への説明時には特に注意しましょう。

出生後休業支援給付金の支給条件

出生後休業支援給付金の支給条件は、被保険者本人の要件と配偶者の要件の両方を満たす必要があります。原則として夫婦がともに一定日数以上の育児休業を取得していることが前提です。

主な支給条件は以下の通りです。

条件区分 内容
被保険者期間 出生時休業開始日前2年間に、みなし被保険者期間が12か月以上あること
取得時期 子の出生直後の一定期間内(父親は出生後8週間以内、母親は産後休業後8週間以内)に育児休業を取得すること
取得日数 被保険者本人と配偶者の両方が、対象期間に通算14日以上の育児休業を取得すること

夫婦双方が14日以上の育児休業取得を要件としている点が最大の特徴で、男性の育休取得を促す制度設計になっています。

参考:出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツール|厚生労働省

出生後休業支援給付金の支給額

出生後休業支援給付金の支給額は、休業開始前の賃金日額をもとに算出されます。計算式は「休業開始時賃金日額×休業日数(上限28日)×13%」です。

賃金日額は、休業開始前6か月間の賃金総額を180日で割って算出します。なお、賃金日額には上限が設けられており、2026年8月1日時点では16,540円(毎年8月1日に改定)です。

たとえば、月給30万円の従業員が28日間の育児休業を取得した場合の目安は以下の通りです。

項目 計算式 金額
賃金日額 30万円×6か月÷180日 約1万円
出生後休業支援給付金 1万円×28日×13% 3万6,400円

育児休業給付金の給付率は最大67%のため、これに13%が上乗せされることで給付率は合計80%に達します。ただし、休業期間中に休業前賃金の一定割合を超える収入があった場合は、減額または不支給となることがあります。

出生後休業支援給付金の申請手続き

出生後休業支援給付金の申請は、育児休業給付金または出生時育児休業給付金の初回申請と同一の申請書で行うのが原則です。単独での申請書類は用意されていません。

STEP1として、従業員から母子健康手帳の写しや育児休業の取得状況が分かる資料を提出してもらいます。STEP2として、賃金台帳や出勤簿など賃金額を証明する書類を人事担当者が準備します。STEP3として、育児休業給付金・出生時育児休業給付金の支給申請書に必要事項を記載し、ハローワークへ提出します。配偶者が別会社に勤務している場合は、配偶者の被保険者番号の記載も必要になるため、事前確認が欠かせません。

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出生後休業支援給付金はなぜ「手取り10割」と言われる?

出生後休業支援給付金によって、育休中の手取り額が休業前とほぼ同水準になることを指して「手取り10割」と呼ばれています。給付率自体は80%ですが、税・社会保険料の免除により実質的な手取りが休業前と同程度になる仕組みです。

通常、育児休業給付金の給付率は休業開始から180日間は67%、181日目以降は50%です。ここに出生後休業支援給付金の13%が上乗せされることで、給付率は最大80%まで引き上げられます。加えて育休中は社会保険料が免除され、給付金自体も非課税であるため、就労時の手取りに占める税・社会保険料の負担割合(おおむね20%)を差し引いた実質手取りと、給付率80%がほぼ一致するというのが「手取り10割」の根拠です。

出生後休業支援給付金と育児休業給付金の違い

出生後休業支援給付金は、育児休業給付金に上乗せされる給付金であり、単体で受給することはできません。育児休業給付金が育休中の基本的な所得保障であるのに対し、出生後休業支援給付金はそこに追加される加算分という位置づけです。

夫婦がともに14日以上の育児休業を取得した場合にのみ加算される点が、育児休業給付金との明確な違いです。この仕組みにより、父親の育児参加と夫婦間の育児分担の促進が図られています。

産後パパ育休と出生後休業支援給付金は同時にもらえる

産後パパ育休(出生時育児休業)と出生後休業支援給付金は同時に利用できます。産後パパ育休は子の出生後8週間以内に最長4週間まで取得できる制度で、この期間の休業に対して出生時育児休業給付金と出生後休業支援給付金が併給されます。

両親双方の育児休業取得を後押しする制度趣旨から、産後パパ育休の取得は出生後休業支援給付金の受給要件を満たしやすい選択肢の一つです。ただし、育休中に一定額を超える就労収入があった場合は、給付が減額または不支給となる可能性があるため注意しましょう。

出生後休業支援給付金の支給要件に例外はある?

出生後休業支援給付金には、配偶者の育休取得を要件としない例外規定が設けられています。家族構成や配偶者の就労形態によって、支給要件の一部が緩和されるケースがあります。

配偶者が専業主婦(夫)もしくは配偶者がいない場合

配偶者が専業主婦(夫)である場合や、配偶者がいないひとり親家庭の場合でも、出生後休業支援給付金の支給対象となります。通常は夫婦双方の14日以上の育児休業取得が要件ですが、配偶者が離婚・死別・行方不明などにより育児休業を取得できない事情がある場合は、本人の要件のみで支給対象になります。

配偶者が雇用労働者以外の場合

配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用労働者ではない場合も、出生後休業支援給付金の支給対象です。育児休業を取得する本人が雇用保険の被保険者であり、ほかの支給要件を満たしていれば問題ありません。

出生後休業支援給付金の受給中、社会保険料や税金はどう扱われる?

出生後休業支援給付金の受給期間中(育児休業期間中)は、社会保険料の多くが免除され、給付金自体にも税金がかかりません。従業員にとって経済的負担が大幅に軽減される仕組みです。

厚生年金・健康保険料

出生後休業支援給付金の受給期間中は、厚生年金保険料・健康保険料が原則として免除されます。企業が「育児休業等取得者申出書」を年金事務所へ提出することで手続きが完了します。

免除期間中も健康保険の給付は通常どおり受けられ、厚生年金保険料は「納付済期間」として扱われるため、将来の年金額や健康保険給付への影響はありません。

雇用保険料

出生後休業支援給付金の受給中は、雇用保険料が控除されることはありません。育児休業中は賃金が支払われず給付金のみとなるため、保険料の負担そのものが発生しない仕組みです。

ただし、育休中に一定額以上の給与が支払われる場合は、その給与部分に対して通常どおり雇用保険料が発生するため、給与体系によっては控除が生じる点に注意が必要です。

所得税

出生後休業支援給付金は非課税所得として扱われるため、所得税は課されません。育児休業給付金や出生時育児休業給付金も同様に非課税です。

ただし、休業期間中に給与や手当が別途支払われた場合、その部分は課税対象となります。給付金と給与の課税関係が混同されやすいため、人事担当者は従業員への説明を丁寧に行う必要があります。

住民税

住民税は前年の所得を基準に計算されるため、出生後休業支援給付金を受け取る年であっても、通常どおりの納付義務が発生します。給付金自体は非課税ですが、前年の課税所得に応じた住民税は別途課される点に留意しましょう。

育休中は給与が支払われないケースも多いため、事前に住民税の納付方法やスケジュールを従業員へ案内しておくことが望まれます。

出生後休業支援給付金にはどのようなメリットがある?

出生後休業支援給付金の最大のメリットは、育休取得による収入減少への不安を軽減し、夫婦での育児分担を後押しする点にあります。制度導入により、企業側にもワークライフバランス向上という副次的効果が期待できます。

男性も育休を取得しやすくなる

出生後休業支援給付金により、男性が育児休業を取得しやすくなります。父親が主な収入源となっている家庭では、育休中の収入減が取得をためらう要因になりがちですが、給付金がその不安を和らげます。

企業が制度を積極的に周知し、従業員の育休取得を後押しすることは、職場全体の従業員満足度向上にもつながります。

夫婦で育児を分担しやすくなる

出生後休業支援給付金の導入により、夫婦での育児分担がより現実的な選択肢になります。父親が育児休業を取得することで母親の負担が軽減され、家事・育児の役割分担を柔軟に見直すきっかけにもなります。

育休中も収入が補償される

出生後休業支援給付金により、育休中の収入が一定割合で補償され、生活費への不安が軽減されます。給付金は非課税で支給されるため、実質的な手取り額は休業前とほぼ変わらない水準になるケースが多くなります。

出生後休業支援給付金が不支給となるのはどんなケース?

出生後休業支援給付金は、育児休業給付金が減額される場合でも減額されることはありません。しかし、一定の条件に該当すると不支給となります。代表的な不支給ケースをあらかじめ把握しておくことで、従業員への案内漏れを防げます。

ケース 概要
休業中の賃金が一定額を超えた 休業開始前賃金の80%以上に相当する賃金が支払われた場合、給付対象外となる
申請期限を過ぎた 育児休業給付金・出生時育児休業給付金の申請期限を過ぎると、上乗せ分も申請できなくなる
育児休業の要件を満たしていない 対象期間外の休業や、育児目的以外の休業は給付対象外となる
雇用保険に未加入 雇用保険の被保険者でない場合、育児休業給付自体の対象外となる

企業の人事労務担当者は、これらの不支給ケースをあらかじめ従業員に説明し、要件を満たしているかどうかを申請前に確認しておくことが重要です。

参考:出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツール|厚生労働省

出生後休業支援給付金の対応で企業が行うべきことは?

出生後休業支援給付金への対応では、既存の育児休業給付手続きへの組み込みと、男性が取得しやすい職場環境の整備が企業に求められます。

STEP1:育児休業給付金・出生時育児休業給付金と併せて申請する

出生後休業支援給付金は、育児休業給付金または出生時育児休業給付金と併せて申請する必要があります。単独の申請書は用意されていないため、既存の申請フローに組み込む形で手続きを進めます。

人事担当者は申請書類の準備状況や提出スケジュールを従業員に案内し、必要な情報を漏れなく収集する体制を整えましょう。

STEP2:男性が育児休業を取得しやすい環境を整える

出生後休業支援給付金を有効活用するには、男性が育児休業を取得しやすい職場環境の整備が欠かせません。育児休業の取得がキャリアに不利益をもたらさないことを企業として明確にし、取得を推奨する姿勢を示すことが求められます。

社内での制度周知やロールモデルの紹介、休業取得者の業務をサポートする体制づくりも、取得率向上に効果的です。

STEP3:復職後のフォロー体制を整える

休業取得者がスムーズに職場復帰できるよう、業務の引き継ぎ体制や復職後の面談機会を用意しておくことも大切です。制度の利用しやすさは、取得前だけでなく復職後のフォローによっても左右されます。

出生後休業支援給付金や育休手続きにおける企業の課題と対応

実務担当者の負担となっている業務とは

出生後休業支援給付金を含む育休関連の手続きにおいて、企業の人事労務担当者はどのような課題を抱えているのでしょうか。

マネーフォワードが独自に実施した調査によると、育児休業に関する一連の手続きの中で最も工数がかかる、または判断が難しい業務は「育児休業給付金の申請書類作成と提出」で、43.2%でした。次いで「社会保険料免除(産休・育休中)に関する手続き」が42.3%、「育休中の社会保険料や給付金の見込額の試算・説明」が29.8%と続きます。

デジタル化の現状と求められる支援

手続き業務におけるデジタルツールの活用状況については、最も多いのは「行政への電子申請は行っているが、社内の進捗管理や書類準備は手作業(紙・Excel)である」で、43.8%でした。行政への申請と社内管理の間でデジタル化に分断が生じている実態がわかります。

また、手続き負担を軽減するために最も必要な支援として「従業員への説明や個別試算にそのまま使えるテンプレート」が35.6%で最多となりました。

企業はシステム化の推進に加え、従業員への給付金説明などを効率化する実用的なツールを取り入れることが、スムーズな育休対応の鍵となります。

出典:マネーフォワード クラウド、特に工数がかかる、または判断が難しい業務、現在のデジタルツールの活用状況、手続き負担を軽減するために最も必要な支援【産休・育休に関する調査データ】(回答者:産休・育休の実務に関与している674名、集計期間:2026年3月)

出生後休業支援給付金を正しく活用するには

出生後休業支援給付金は、育児休業給付金に上乗せされることで手取り実質10割相当を実現し、夫婦での育休取得を後押しする制度です。企業は申請手続きの仕組みや不支給要件を正確に把握し、従業員が安心して育児休業を取得できる環境を整えることが求められます。デジタル化やテンプレート活用による業務効率化も、今後の実務対応の鍵となるでしょう。

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