- 更新日 : 2026年6月16日
住宅手当は世帯主ではない従業員も対象?企業が確認すべき支給条件まで解説
社内規程で要件を定めれば、世帯主以外にも支払えます。
- 対象を世帯主に限るか決める
- 家賃負担の実態を書類で確かめる
- 同一住居への二重払いを防ぐ
現金で渡す手当は給与として課税されるため、社宅制度など他の支援策も比較しましょう。
住宅手当は、世帯主ではない従業員を一律に対象外とするのではなく、社内規程で定めた支給条件に沿って判断します。
とくに、住民票上の世帯主・賃貸借契約の名義人・実際の家賃負担者が異なる場合、確認基準が曖昧だと支給漏れや二重支給につながりかねません。
本記事では、世帯主ではない従業員への住宅手当の支給可否や、企業が確認すべき基準、申請書類、税金や給与計算の注意点を解説します。住宅手当の運用を見直し、社内規程と給与計算フローを整理する際の参考にしてください。
目次
世帯主ではない従業員を住宅手当の対象にするかは社内規程で決まる
住宅手当の対象に非世帯主を含めるかは法律の定めがなく、各企業の判断に委ねられています。労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する事業場に就業規則の作成・届出義務があります。住宅手当を設ける場合は、支給条件や計算方法を就業規則や賃金規程に明記し、自社の規程に沿って判断することが大切です。
ここでは、住宅手当の規程で想定される2つの記載例について解説します。
「世帯主に限る」と書かれている場合
社内規程に「世帯主に限る」と明記されている場合、非世帯主の従業員は、原則として支給対象外と判断されます。
たとえば、親が世帯主である実家暮らしの従業員や、配偶者が世帯主となっている従業員などは、対象外となる可能性があります。
ただし、世帯主かどうかだけで支給可否を判断すると、家賃を実際に負担している従業員との間で認識のズレが生じかねません。そのため、企業側は、世帯主の定義に加え、賃貸借契約の名義や家賃負担の有無を確認するかどうかも社内規程で明確にしておく必要があります。
「賃料を負担している者」と書かれている場合
社内規程に「賃料を負担している者」と書かれている場合、企業は世帯主かどうかにかかわらず、家賃負担の実態をもとに支給対象を判断します。
たとえば、同棲や家族との同居で世帯主が別であっても、従業員本人が家賃の一部または全部を負担している場合は、規程上の対象に含める運用が一般的です。
ただし、家賃負担の実態を確認しないまま支給すると、対象者の判断にばらつきが出るおそれがあります。企業は、賃貸借契約書、家賃の引き落とし口座が確認できる通帳の写し、振込明細など、申請時に提出する書類を社内規程で明確にしましょう。
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住宅手当の支給対象を決めるときに企業が確認すべき3つの基準
住宅手当の支給基準が曖昧な場合、従業員間の不公平感が生じるだけでなく、手当の二重支給といったトラブルにつながるおそれがあります。支給判断にばらつきが出ないようにするには、規程を設ける前に、支給対象者や確認書類などの基準を整理しておきましょう。
1. 住宅手当の支給対象を「世帯主のみ」にするか決める
住宅手当の支給対象を決める際は、まず「世帯主のみ」に限定するかどうかを決めましょう。共働き世帯やルームシェア、親との同居などでは、従業員本人が世帯主ではなくても、家賃の一部または全部を負担している場合があります。
もし企業が「世帯主であること」だけを条件にすると、実際に住居費を支払っている従業員が支給対象から外れかねません。その結果、従業員間の不公平感が生じるおそれもあります。
そのため、企業は、対象を住民票上の世帯主に限定するのか、世帯主かどうかにかかわらず実際の家賃負担を基準にするのかを、社内規程で明確にしましょう。
2. 住民票上の世帯主と実際の家賃負担者を確認する
手当の公平性を保つためには、住民票上の世帯主と実際の家賃負担者が一致しているかを確認しましょう。世帯主という立場はあくまで行政上の代表者を示すものであり、実際の費用負担者と一致するとは限りません。
たとえば、従業員本人が世帯主として登録されていても、親や配偶者が家賃を支払っているケースがあります。住民票の記載のみで判断すると、住居費を負担していない従業員へ手当を支給することになりかねません。
支給対象の判断ミスを防ぐには、申請時に住民票だけでなく、賃貸借契約書や家賃の引き落とし口座がわかる通帳のコピーなどを一緒に提出させ、負担の実態を確認できる仕組みを整えておくことが大切です。
3. 夫婦・同棲・親子間で二重支給が起きない条件にする
手当の制度設計では、同一住居への二重支給を防ぐ条件も整理しておきましょう。同じ会社に勤める夫婦や親子、同居している従業員から同一住所で複数の申請があった場合、制限を設けていないと、会社が想定していない範囲まで手当を支給するおそれがあります。
同一住居への重複支給や従業員間の不公平感を防ぐには、「1住居につき支給対象は1名に限定する」「主たる家賃負担者を対象にする」「家賃の負担割合に応じて支給額を調整する」などのルールを定めておきましょう。
同じ住所から複数の申請があった場合の対処法を定めておくと、担当者が判断基準を確認しやすくなります。
住宅手当の申請で企業が確認したい3つの書類
住宅手当の不正受給や支給ミスを防ぐには、規程の整備だけでなく、申請時の書類審査が必要です。本人の自己申告だけで判断すると、支給要件を満たしていない従業員に誤って支給するおそれがあるため、事前に書類を正しく確認しましょう。
1. 住民票
住民票は、従業員の現住所や世帯主の氏名、世帯主との続柄を公的に証明する基本書類です。社内規程で「世帯主であること」を支給要件としている場合、本人の自己申告ではなく、客観的な事実関係を確定させるために提出を求めましょう。
ただし、住民票から確認できるのは、住民票から確認できるのは、現住所や世帯主の情報です。実際に誰が家賃を負担しているかまでは判断できません。そのため、住民票は基本情報の確認書類と位置づけ、家賃負担の有無は賃貸借契約書や振込履歴とあわせて確認しましょう。
2. 賃貸借契約書
賃貸借契約書は、従業員本人が契約者であるか、毎月の賃料がいくらかを証明するための書類です。社内規程で「本人名義の契約であること」や「賃料負担」を支給要件としている場合、住民票だけでは確認できない借主名義や物件情報を確認できます。
具体的に確認すべき項目は、借主名義や物件所在地、賃料、契約期間です。たとえば、同棲やルームシェアなどで連名契約になっている場合、誰がどの程度家賃を負担しているかによって、支給対象者や支給額の判断が変わる場合があります。
そのため、単に提出を求めるだけでなく、自社の支給条件に照らして契約内容を確認しておくことが大切です。
3. 家賃の支払証明
家賃の支払証明は、従業員本人が実際に家賃を負担しているかを確認するための書類です。賃貸借契約書では契約名義は確認できますが、実際の支払者までは判断できない場合があります。
社内規程で「本人が賃料を負担していること」を支給要件とする場合、企業は家賃の引き落とし口座がわかる通帳の写しや、毎月の振込明細、領収書などの提出を求める必要があります。支払証明と賃貸借契約書をあわせて確認すると、契約名義と家賃負担の実態が異なる申請を確認しやすくなり、支給対象の判断もしやすくなるでしょう。
住宅手当は世帯主ではない公務員でも対象になる?
公務員の住居手当は、民間企業の住宅手当とは異なり、勤務先の区分ごとに支給条件が定められています。世帯主ではない職員が対象になるかも、国家公務員か地方公務員かによって確認先が変わります。
そのため、公務員の住居手当を確認する際は、民間企業の住宅手当と同じ基準で判断せず、勤務先の区分に応じた規程を確認することが大切です。
公務員の住居手当は人事院規則や自治体規程で決まる
公務員の場合、世帯主かどうかだけでなく、住宅の借り受け状況や家賃負担の有無など、規則で定められた要件に沿って支給可否が判断されます。国家公務員であれば人事院規則、地方公務員であれば各自治体の条例や規則に基づいて、支給条件が定められています。
国家公務員の場合、主な要件は、自ら居住するための住宅を借り受け、一定額を超える家賃を支払っていることです。具体的な支給可否は、人事院規則や運用通知に沿って確認されます。そのため、住民票上の世帯主かどうかだけではなく、住宅の借り受け状況や家賃負担の有無などをもとに判断されます。
民間企業のように会社ごとに独自の支給条件を設けるのではなく、定められた規則や条例に沿って確認される点を押さえておきましょう。
地方公務員の住居手当は自治体の条例・規則で決まる
地方公務員の住居手当は、各自治体の条例や規則によって支給要件が定められています。本人が借受人として家賃を支払っているか、生活の本拠として居住しているかなどの扱いは自治体ごとに異なります。
ただし、具体的な支給要件は各自治体の条例によって細かく異なる点に注意が必要です。たとえば京都府では「職員自身が居住し、生活の本拠としていること」を基本要件としています。一方、栃木県では、単身赴任手当受給者が配偶者等の居住する住宅を借り受け、月額1万6千円を超える家賃を支払っている場合を住居手当の対象とする規程があります。
地方公務員の住居手当を確認する際は、特定自治体の例を一般化せず、勤務先の条例や規則を確認しましょう。
住宅手当を現金支給する場合の税金と給与計算の注意点
住宅手当を現金支給する場合は、課税処理や給与計算上の扱いを整理しておく必要があります。社宅とは税務上の扱いが異なり、現金で支給する住宅手当は給与として扱われるのが基本です。
また、支給条件によっては割増賃金の算定基礎に含める必要が出る可能性があるため、就業規則や賃金規程で支給方法を明確にしておきましょう。
1. 住宅手当は原則として給与所得に含まれる
住宅手当を現金で支給する場合、給与として課税対象になるのが基本です。国税庁のタックスアンサーでも、役員や使用人に支給する手当は原則として給与所得となり、住宅手当もその一例として示されています。
たとえば、基本給25万円の従業員に住宅手当3万円を支給する場合、住宅手当を含めた28万円が給与計算上の対象額に含まれます。実際の所得税や社会保険料は、控除や標準報酬月額などのルールに沿って計算しましょう。
万が一、住宅手当を非課税扱いで処理してしまうと、後日の確認で源泉徴収税額の不足が判明し、追加対応が必要になるおそれがあるため、給与計算システム等で正しく算入されるよう設定を確認しておきましょう。
2. 社宅制度とは税務上の扱いが異なる
住宅支援を現金で行う場合と、会社が物件を借り上げて従業員へ貸与する社宅制度では、税務上の扱いが異なります。会社が従業員へ現金で住宅手当を支給する場合は、給与として課税対象になるのが基本です。
一方、使用人に社宅を貸与する場合、国税庁が定める賃貸料相当額の50%以上を従業員から受け取っていれば、社宅の貸与による経済的利益は給与として課税されません。なお、賃貸料相当額は会社が負担する家賃そのものではなく、所定の計算方法で算出します。
現金支給の住宅手当は報酬月額に含まれるため、社会保険料の算定にも影響する場合があります。社宅制度の導入を検討する際は、現金支給と社宅制度の税務上の違いを整理し、会社と従業員の負担を確認しておきましょう。
3. 一律支給にすると割増賃金計算に影響する場合がある
住宅手当という名称であっても、住宅費に関係なく一律定額で支給する場合は、割増賃金の算定基礎から除外できない可能性があります。厚生労働省の資料でも、住宅に要する費用に応じて算定される手当は除外できる一方、住宅費にかかわらず一律定額で支給される手当は除外できないと示されています。
たとえば「賃貸住まいの従業員全員に毎月2万円を支給する」といったルールでは、住宅費に応じた手当とは扱われにくくなるでしょう。結果として、割増賃金の単価が上がり、給与計算上の負担額に影響する場合があります。
住宅手当を割増賃金の算定基礎から除外する前提で設計する場合は、住宅に要する費用に応じて算定される手当になっているかを確認しましょう。
住宅手当の割増賃金に関する計算ルールについては、関連記事をご覧ください。
4. 給与計算では課税・非課税の区分を正しく設定する
住宅手当を新たに導入する際は、給与計算システムの支給項目設定を確認しておきましょう。現金支給の住宅手当は、所得税の課税対象となり、社会保険料の算定にも関係します。
万が一、給与計算ソフトで住宅手当を誤って「非課税」や「固定的賃金対象外」の区分で登録すると、源泉徴収税額や社会保険料の判定に影響するおそれがあります。さらに、社会保険料の随時改定に該当するかどうかの判定から漏れる場合もあるため、年末調整の修正や社会保険料の追加徴収・調整が必要になる場合もあるでしょう。
そのため、手当の支給を開始する前にテスト計算を行い、税金と社会保険料が想定どおりに算出されるかの確認が重要です。
家賃補助の税金に関する計算方法は、関連記事をあわせてご覧ください。
住宅手当でトラブルを防ぐための3つのポイント
住宅手当の支給要件が曖昧なままでは、対象外の従業員への誤支給やトラブルを招きかねません。無駄なコストや労務リスクを未然に防ぐためにも、自社の規程や運用フローを事前に確認しましょう。
1. 支給対象を曖昧にしたまま運用しない
住宅手当の支給目的や対象者の定義が曖昧なまま運用すると、社内トラブルにつながるおそれがあります。条件が明確でなければ、申請を受け付ける担当者によって支給判断にばらつきが出やすくなり、従業員間の不満や不公平感につながる可能性があります。
申請トラブルを防ぐには、「世帯主限定」「本人名義の賃貸契約のみ」「転勤者のみ」など、誰が見ても審査できる具体的な条件をあらかじめ定めておくことが大切です。
制度設計の段階で、誰に、どの理由で支給するのかを説明できる形に整えておきましょう。
2. 世帯主ではないケースの判断表を作る
共働き夫婦やルームシェアなど、従業員本人が世帯主ではない申請では、担当者の判断だけで支給可否を決めると、同じような申請でも扱いが変わるおそれがあります。社内で公平に判断しやすくするためにも、確認項目をまとめた判断表を作成しておきましょう。
判断表には、「実態として家賃を負担しているか」「負担割合を確認できるか」「同居人の勤務先で同様の手当を受給していないか」などを入れると、支給可否を判断しやすくなります。
あわせて、「契約名義人かつ家賃負担者であれば対象」「親名義の住宅で本人の家賃負担がない場合は対象外とする」など、具体的な判断例を共有しておくと、担当者ごとの判断のばらつきを抑えやすくなります。
3. 制度変更時は従業員へ説明する
住宅手当の減額や廃止は、従業員の手取り額に影響する可能性があり、労働条件の不利益変更にあたる場合があります。会社が一方的に制度を変更すると、労働者への周知や変更内容の合理性が問題になるため、変更前に従業員へ説明することが大切です。
また、説明時は、廃止や減額の事実だけでなく、制度を見直す理由も伝えましょう。たとえば、見直し後の財源を基本給へ段階的に組み込む、数年間は移行期間を設けて手取り額への急な影響を抑える、といった対応も考えられます。
住宅手当は給与として扱われるため、所得税や社会保険料の対象です。課税処理や給与計算の負担を抑えたい場合は、現金支給以外の住宅支援も検討しましょう。マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸は、従業員が住む賃貸物件を会社が審査したうえで法人名義に切り替え、家賃を給与から天引きする社宅系福利厚生サービスです。
契約手続きや管理会社との調整、制度導入時の規程整備や社内説明会まで支援を受けられるため、住宅手当の見直しとあわせて検討できます。
住宅手当の課税処理や給与計算の負担を整理したい場合は、現金支給を続けるだけでなく、福利厚生賃貸のような社宅系制度も選択肢に入れて、自社に合う住宅支援を確認しましょう。
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