- 更新日 : 2026年8月4日
標準報酬月額・標準賞与額とは?社会保険料の計算方法と決定要因を徹底解説
標準報酬月額は給与を等級に変換した基準値、標準賞与額は賞与から1,000円未満を切り捨てた基準値です。
- 標準報酬月額は年1回の定時決定で改定
- 標準賞与額の上限は健保年573万円・厚年月150万円
- 年4回以上の賞与は標準報酬月額に算入
Q. 標準報酬月額はいつ・どのように決まる?
A. 入社時・毎年7月の定時決定・固定的賃金変動時の随時改定の3つのタイミングで決定されます。
給与や賞与にかかる社会保険料は、実際の支給額ではなく、標準報酬月額および標準賞与額を基準に算定されます。この2つは計算の仕組みや上限額が異なり、保険料の徴収対象となる報酬の範囲や免除条件も各種特例によって複雑です。本記事では、担当者が迷いやすいポイントを「違い・計算方法・決定要因・特別なケース」の順に整理して解説します。
標準報酬月額・標準賞与額とは何か?
健康保険・厚生年金保険などの社会保険料は、従業員の実際の給与・賞与の金額をそのまま使うのではなく、それぞれ「標準報酬月額」と「標準賞与額」という基準値に変換してから保険料率をかけて算出します。この変換を挟む理由は、毎月の給与額が残業などで変動しても保険料計算を一定期間安定させ、事業所と日本年金機構双方の事務負担を軽減するためです。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
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※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
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標準報酬月額とはどのような仕組み?
標準報酬月額とは、健康保険・厚生年金保険の保険料および各種給付額を計算するための基準となる月額です。報酬月額を等級に当てはめることで、実際の給与額に関わらず等級別に定められた標準額を用います。
等級の区分と上限
健康保険では第1等級(58,000円)から第50等級(1,390,000円)、厚生年金保険では第1等級(88,000円)から第32等級(650,000円)までの等級が設けられています。各等級には対応する報酬月額の範囲があり、実際の報酬月額がその範囲に収まる等級が適用されます。健康保険と厚生年金では上限・下限が異なる点に注意が必要です。
なお、2025年6月に成立した年金制度改正法により、厚生年金保険の標準報酬月額の上限は2027年9月以降、68万円(33等級)から段階的に引き上げられ、最終的に75万円(35等級)まで拡大される予定です(健康保険の等級には現時点で影響なし)。

参考:令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)|全国健康保険協会
参考:厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて|厚生労働省
対象となる報酬の範囲
標準報酬月額の算定に用いる報酬には、基本給のほか、役職手当・通勤手当などの固定的な手当、残業手当・歩合給など月によって変動する手当も含まれます。また、通勤定期券・食事・食券・社宅・独身寮のように現物で支給されるものも報酬に含まれます。一方、年3回以下の支給となる賞与や、継続的に発生しない臨時のインセンティブは標準報酬月額の算定対象外です。
標準報酬月額が影響する給付
標準報酬月額は保険料の算定だけでなく、傷病手当金・出産手当金・老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金などの給付額の計算基礎にもなります。標準報酬月額が高いほど将来の給付額も増える一方、毎月の保険料負担も大きくなります。
標準賞与額とはどのような仕組み?
標準賞与額とは、年3回以下の賞与支給に対して社会保険料を計算する際の基準となる金額です。税引き前の賞与支給総額から1,000円未満を切り捨てて算出します。
たとえば、税引き前の賞与支給総額が253,800円の場合、1,000円未満の800円を切り捨て、標準賞与額は253,000円となります。保険料の計算式は次のとおりです。
賞与にかかる保険料 = 標準賞与額 × 健康保険・厚生年金の保険料率
保険料は事業主と従業員が折半して負担します。健康保険料率は都道府県や加入する健康保険組合によって異なり、厚生年金保険料率は全国一律18.3%(令和6年度時点)です。40歳以上の従業員は健康保険料に加えて介護保険料も加算されます。
標準賞与額の上限
健康保険と厚生年金保険でそれぞれ上限が設定されています。
| 保険の種類 | 上限額 | 集計期間 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 573万円(年間累計) | 毎年4月1日〜翌年3月31日 |
| 厚生年金保険 | 150万円(1回あたり) | 支給ごとに判定 |
上限を超えた部分については保険料の対象外となります。
標準賞与額の対象となる賞与の範囲
期末手当・決算賞与など名称を問わず、労働者が労働の対償として年3回以下で支払われる賞与が対象です。業績・成果に応じたもの、季節的なもの、自社製品など現物支給も含まれます。
一方、以下は標準賞与額の対象外です。
- 結婚祝金・病気見舞金・災害見舞金など恩恵的なもの
- 出張旅費・交際費など実質弁償的なもの
- 大入袋・退職金・解雇予告手当など臨時的・一時的に受け取るもの
- 株主配当金のように労働の対償ではないもの
- 年金・休業補償給付・傷病手当金など公的給付として受け取るもの
標準報酬月額と標準賞与額の違いは?
標準報酬月額と標準賞与額の最大の違いは、報酬月額を「等級に変換」するか、「1,000円未満切り捨て」で算出するかという点です。
| 比較項目 | 標準報酬月額 | 標準賞与額 |
|---|---|---|
| 対象 | 毎月の給与 | 年3回以下の賞与 |
| 算出方法 | 報酬月額を等級表に当てはめる | 支給額から1,000円未満を切り捨て |
| 上限 | 健保:139万円/厚年:65万円(等級の上限による) | 健保:年573万円/厚年:月150万円 |
| 更新タイミング | 定時決定(年1回)・随時改定・資格取得時など | 賞与支給のたびに算定 |
年4回以上の賞与を標準報酬月額に含める場合
年4回以上支給される性質の賞与については「賞与に係る報酬」とみなされ、標準賞与額ではなく標準報酬月額に算入して計算します。定時決定の際には次の方法で計算します。
ア. 7月1日より以前に支給された1年間の賞与総額を12で割った額
イ. 7月1日以前1年内に賞与の支給回数が変更され、賞与に係る報酬に該当したときは、支給実績をもとに7月1日より以前の1年間に受けたであろう賞与額を算定し、その額を12で割った額
定時決定等の際には、ア・イで得た額を各月の報酬に加えて報酬額を算定します。
ただし、通常は年3回の支給であったが、その年だけ臨時に1回追加されて4回になった場合は、報酬に含める必要はありません。
標準報酬月額はどのように決定される?
標準報酬月額は、事業主が届け出る書類をもとに日本年金機構(年金事務所)が決定します。決定のタイミングは主に「資格取得時」「定時決定」「随時改定」の3種類です。
STEP1:資格取得時の決定
従業員の入社時に事業主が被保険者資格取得届を提出し、雇用契約による報酬月額を届け出ることで標準報酬月額が決定します。1〜5月に入社した従業員はその年の8月まで、6〜12月に入社した従業員は翌年の8月まで、この時点で決定した標準報酬月額を使用します。
STEP2:定時決定(算定基礎届)
毎年7月に、4月〜6月の3か月間の給与支給額をもとに標準報酬月額を改定する手続きを定時決定といいます。各月の支払基礎日数(給与計算の対象となる日数)が17日以上の月のみを対象とし、3か月の平均報酬月額を算出して等級に当てはめます。
なお、特定適用事業所に勤務する短時間労働者(パートタイマーなど)の場合、支払基礎日数が11日以上の月を対象として計算します。定時決定で決定された標準報酬月額はその年の9月から翌年の8月まで適用されます。
参考:算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和8年度)|日本年金機構
STEP3:随時改定(月額変更届)
昇給・降給などにより固定的賃金が変動した場合で、一定の要件を満たすときは随時改定を行います。随時改定が認められる要件は次の3つすべてを満たす場合です。
- 固定的賃金(基本給・役職手当など毎月決まって支払われるもの)に変動があったとき
- 変動月から継続した3か月の支払基礎日数がすべて17日以上あること(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)
- 変動月から継続した3か月の平均報酬月額が、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上の差があること
固定的賃金が上昇したにもかかわらず残業減少により平均報酬月額が下がった場合など、固定的賃金の変動方向と標準報酬月額の変動方向が逆になるケースは随時改定の対象外となります。7月以降に変更した場合は翌年の8月まで変更後の標準報酬月額を使用します。
賞与にかかる社会保険の手続き方法は?
賞与にも社会保険料の負担があります。等級はなく、1回の支給ごとに標準賞与額に保険料率をかけた金額が保険料となります。
企業は被保険者へ賞与を支給した場合、賞与を支給した日から5日以内に管轄の年金事務所へ「被保険者賞与支払届」を提出します。届出用紙は日本年金機構に登録されている賞与支払い予定月の前月に事業所へ送付されます。賞与支払いの前々月19日以降に入社した従業員は氏名の記載がないため、手書きで追記が必要です。賞与にかかる保険料は月々の保険料と合算され、賞与支給翌月の「納入告知書」で通知されます。
産前産後休業・育児休業中に賞与を支給した場合
産前産後休業および育児休業中は、事業主の申請により被保険者・事業主双方の社会保険料納付が免除されます。そのため、免除期間中に支給された賞与には保険料はかかりません。ただし、保険料免除期間に賞与が支払われた場合でも年間累計額には加算されるため、他の従業員と同様に賞与支払届の提出は必要です。
退職する月に賞与を支給した場合
退職月の賞与に対する保険料の取扱いは、退職日と賞与支給日の前後関係によって異なります。
| 賞与支給日 | 退職日 | 保険料の徴収 | 賞与支払届の提出 |
|---|---|---|---|
| 12月10日(賞与支給) | 12月31日(月末退職) | 必要あり | 必要あり |
| 12月10日(賞与支給) | 12月20日(月末前退職) | 不要 | 必要あり |
| 12月10日(退職) | 12月20日(賞与支給) | 不要 | 不要 |
月末退職の場合、資格喪失日は翌月1日となるため保険料の支払いが必要です。月末より前に退職した場合は資格喪失月に賞与が支払われるため保険料は不要です。
賞与支払い予定月に支給しなかった場合
日本年金機構にあらかじめ登録した賞与支払い予定月に賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。この場合、賞与支払届の提出は不要です。
参考:令和3年4月から賞与不支給報告書を新設します|日本年金機構
育児休業終了時の標準報酬月額改定とは?
3歳未満の子を養育中の被保険者は、定められた条件を満たす場合、随時改定とは別に育児休業終了時の改定が認められています。
育児休業終了日の翌日が属する月以降3か月間に受け取った報酬の平均額をもとに、4か月目以降の標準報酬月額を改定できます。手続きは被保険者からの申し出を受けた事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構へ提出します。
以下の条件をいずれも満たした場合に改定が認められます。
- 改定後の標準報酬月額の等級が、直前の等級と比べて1等級以上変動すること
- 育児休業終了日の翌日を含む月以降3か月のうち、少なくとも1か月の支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所に勤める短時間労働者は11日以上)あること
標準報酬月額が1〜6月に改定された場合はその年の8月まで、7〜12月に改定された場合は翌年の8月まで適用されます(随時改定等がない場合)。
標準報酬月額や社会保険料免除を伴う産休・育休手続きの実態
マネーフォワードでは、従業員の産休・育休に関する実務に携わる担当者を対象に、業務における課題についての調査を実施しました。
社会保険料免除の手続きや従業員への試算説明が負担に
調査の結果、育児休業に関する一連の手続きの中で、特に工数がかかる、または判断が難しい業務として最も多く挙げられたのは育児休業給付金の申請書類作成と提出で43.2%でした。さらに、社会保険料免除(産休・育休中)に関する手続きが42.3%、育休中の社会保険料や給付金の支払見込額の試算・説明が29.8%と続いています。
標準報酬月額の改定や社会保険料免除の手続きは、計算方法や適用要件が細かく規定されているため、実務上の大きな負担となっていることが客観的なデータからも伺えます。また、休業中の社会保険料や給付金の見込額を算出して従業員へ個別に説明する業務も、担当者にとって工数のかかる複雑なプロセスとなっています。
標準報酬月額・標準賞与額を正しく理解して確実な事務処理を
標準報酬月額と標準賞与額は、社会保険料の算定だけでなく、傷病手当金や将来の年金額にも直結する重要な基準値です。決定方法・対象報酬の範囲・特例ケースの取り扱いに誤りがあると、保険料の過不足だけでなく年末調整処理にも影響します。定時決定・随時改定・賞与支払届など各種手続きの期限と要件を正確に把握し、スムーズな給与・賞与計算を心がけましょう。
よくある質問
標準賞与額とは何ですか?
企業が支給した賞与にも社会保険料がかかります。この保険料を決定するもとの金額となるのが標準賞与額です。支給された賞与の税引前総額から、1,000円未満を切り捨てて算出します。詳しくはこちらをご覧ください。
標準報酬月額と標準賞与額の違いについて解説してください
標準報酬月額は月々の社会保険料を算出するもととなる額のことをいいます。4月から6月に支給された給与をもとに、等級に当てはめて算出します。標準賞与額とは賞与にかかる社会保険料のもととなる額をいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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