- 作成日 : 2026年8月12日
一括有期事業報告書とは?書き方・計算方法・提出期限をわかりやすく解説
一括有期事業報告書は、消費税抜きの請負金額に業種ごとの労務費率を掛けて賃金総額を算出し、年度更新で提出する書類です。
- 提出期限は毎年6月1日〜7月10日
- 請負金額は必ず消費税抜きで記載
- 500万円未満の工事は合算記載が可能
Q. 下請工事は報告書に記載が必要?
A. 不要です。記載するのは元請工事のみで、下請工事を含めると二重計上になります。
建設業の年度更新で提出する一括有期事業報告書(様式第7号)は、請負金額への労務費率の掛け方や消費税の扱いを誤ると、賃金総額や保険料の申告額にズレが生じやすい書類です。本記事では、一括有期事業の対象要件、賃金総額の計算方法、報告書の書き方、提出手順、間違えやすいポイントまで、実務担当者向けに整理して解説します。
一括有期事業報告書とは?
一括有期事業報告書は、建設業や立木伐採業の事業主が労働保険の年度更新の際に提出する書類です。厚生労働省が定める様式第7号にあたり、年度内に完了した対象工事の請負金額や賃金総額を、工事ごとに記載します。
そもそも「有期事業」とは、建設工事のように期間があらかじめ決まっている事業を指します。本来、有期事業では工事ごとに労働保険の成立届を提出する必要がありますが、小規模な工事を1件ずつ届け出るのは現実的ではありません。そこで、一定の規模要件を満たす工事をまとめて1つの保険関係として扱い、年に1回まとめて申告できる「一括有期事業」という仕組みが設けられています。
年度更新の際には、一括有期事業報告書・一括有期事業総括表・確定保険料申告書の3点をセットで提出します。報告書で個々の工事情報を記載し、総括表で集計結果をとりまとめ、申告書で確定保険料を算出・納付するという流れです。提出先は所轄の労働基準監督署または都道府県労働局で、提出期間は例年6月1日から7月10日までと定められています。
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一括有期事業の対象となる要件は?
一括有期事業として扱われるには、工事ごとに「請負金額」と「概算保険料」の2つの規模要件を両方とも満たす必要があります。どちらか一方でも超える場合、その工事は単独の有期事業として個別に届け出なければなりません。
主な要件は次のとおりです。
- 建設の事業にあっては、請負金額が1億8,000万円未満(消費税抜き)であること
- 立木の伐採の事業にあっては、素材の見込み生産量が1000立方メートル未満であること
- 概算保険料が160万円未満であること
- 事業の種類が建設の事業または立木の伐採の事業であること
- 事業主が同一であること
- それぞれの事業が労災保険率表に掲げる事業の種類を同じくすること
請負金額の判定で注意したいのは、必ず消費税抜きの金額で判断する点です。消費税を含んだ金額のまま判定すると、本来は一括有期事業の対象になる工事を単独有期事業として扱ってしまうなど、判定ミスにつながりやすくなります。
なお、概算保険料160万円の要件は、賃金総額に保険料率を掛けた額または、請負金額に労務費率と保険料率を掛けて算出した額で判定します。請負金額の要件を満たしていても概算保険料の要件を超えるケースはまれですが、念のため両方の数値を確認しておくと安心です。
一括有期事業報告書の計算方法と書き方は?
一括有期事業報告書の記入は「請負金額×労務費率=賃金総額」の計算が中心です。厚生労働省が業種ごとに定める労務費率を使うことで、実際の賃金台帳がなくても賃金総額を算出できます。
業種ごとの労務費率を確認する
労務費率は工事の種類によって異なります。主な業種の労務費率は以下のとおりです。
| 事業の種類 | 労務費率 |
|---|---|
| 水力発電施設・ずい道等新設事業 | 19% |
| 道路新設事業 | 19% |
| 舗装工事業 | 17% |
| 鉄道又は軌道新設事業 | 19% |
| 建築事業(既設建築物設備工事業を除く) | 23% |
| 既設建築物設備工事業 | 23% |
| 機械装置の組立て又は据付けの事業 | 38%(組立てまたは取付けに関するもの) 21%(その他のもの) |
| その他の建設事業 | 23% |
労務費率は改定される場合があるため、年度更新のたびに最新の料率を確認するようにしてください。
賃金総額の算出手順を把握する
賃金総額は、次の手順で算出します。
- 工事ごとの請負金額から消費税額を差し引く
- 発注者から支給された資材がある場合は、その評価額を請負金額に加算する
- 加算後の請負金額に該当する業種の労務費率を掛ける
- 算出された金額が「賃金総額」として報告書に記載する数字になる
例えば、税抜き請負金額3,000万円の建築工事であれば、3,000万円×23%=690万円が賃金総額の計算例です(実際の数値は工事ごとに異なります)。
500万円未満の小規模工事は合算して記載できる
請負金額が500万円未満(消費税抜き)の小規模工事は、同じ業種であれば1行にまとめて記載できます。年間に数十件の小規模修繕工事を受注する事業者にとって、この合算処理は記入の手間を大きく減らせるポイントです。
記載方法は「〇〇工事 外△件」とし、合算した請負金額と賃金総額を1行で記入します。500万円以上の工事は1件ずつ個別に記載する必要があり、合算対象かどうかの判定も消費税抜きの金額で行う点に注意してください。
報告書の主な記入項目を確認する
一括有期事業報告書(様式第7号)の主な記入欄は次のとおりです。
- 事業の名称:工事名を記載
- 事業の所在地:工事現場の住所
- 事業の期間:工事の着工日と完了日
- 請負金額:消費税抜きの金額
- 賃金総額:請負金額×労務費率で算出した額または支払賃金
- 事業の種類:該当する業種番号
対象年度中(4月1日から翌年3月31日)に完了した工事のみを記載し、年度をまたいで施工中の工事は完了した年度に報告するのがルールです。
一括有期事業報告書の提出方法は?
一括有期事業報告書の提出方法は、紙での窓口提出・郵送と、e-Gov(イーガブ)を利用した電子申請の2通りです。提出期間は例年6月1日から7月10日までで、期限を過ぎると延滞金が発生する場合があるため早めの対応が必要です。
紙で提出する場合
紙提出の手順は次のとおりです。
- 厚生労働省のホームページから様式第7号(一括有期事業報告書)をダウンロードし印刷する
- 対象年度に完了した工事を1件ずつ(500万円未満は合算可)記入する
- 一括有期事業総括表に報告書の集計結果を転記する
- 確定保険料申告書と合わせて、所轄の労働基準監督署または労働局の窓口に提出するか、郵送する
窓口提出であれば担当者にその場で記載内容を確認してもらえるため、初めて作成する場合は窓口での提出を検討するとよいでしょう。
郵送で提出する場合
郵送提出では、宛先を「管轄労働基準監督署」または「管轄労働局」宛てとし、封筒に「労働保険年度更新申告書在中」と明記するのが基本です。宛先を誤ると返送や到着遅延につながり、期限内提出ができなくなるおそれがあります。
また、提出した報告書・総括表・申告書は、控えを必ず手元に残しておいてください。控えがあれば、翌年度の年度更新で前年の記載内容を参照する際や、労働基準監督署から照会があった際にすぐ対応できます。控えの保管期間について明確な定めはありませんが、労働保険料の徴収に関する書類として、少なくとも3年程度は保管しておくと安心です。
e-Gov電子申請で提出する場合
バックオフィスの業務効率化を進めたいなら、e-Gov電子申請での提出が便利です。手順は次のとおりです。
- 厚生労働省のホームページから「年度更新申告書計算支援ツール」をダウンロードする
- ツールに工事情報を入力し、自動計算された賃金総額・保険料を確認する
- 計算支援ツールの出力機能を使い、報告書・総括表をPDF化する
- e-Govの電子申請ページで「労働保険年度更新申告」の手続きを検索し、申請フォームを開く
- PDF化した報告書・総括表を添付ファイルとしてアップロードし、申告書の情報を入力して送信する
計算支援ツールは請負金額を入力するだけで賃金総額や保険料を自動算出してくれるため、手計算によるミスを防げます。e-Govの利用には、法人・個人事業主向けの共通認証システムであるGビズIDが必要になる場合が多いため、年度更新の時期より前にアカウントを取得しておくとスムーズです。
一括有期事業報告書で間違えやすい点は?
一括有期事業報告書の記載ミスは、保険料の過払いや追加徴収につながります。代表的な誤りのパターンを、質問形式で確認しておきましょう。
請負金額は税込み・税抜きどちらで記載する?
請負金額は必ず消費税抜きの金額で記載します。税込みのまま記入すると、賃金総額が実態より大きく算出され、保険料を余計に支払うことになります。
請負契約書に記載された税込金額をそのまま転記してしまうミスは、経理や事務担当者が交代したタイミングで起きやすい傾向があります。対策として、報告書の請負金額欄に記入する前に「税抜き変換済み」を確認するチェック欄を社内の帳票に設けておくと、記載ミスを防ぎやすくなります。
下請工事は報告書に含める必要がある?
下請工事は一括有期事業報告書に含めません。報告書に記載するのは元請工事のみで、下請けとして受注した工事は元請業者側の保険関係に含まれるため、下請業者側で報告書に記載すると二重計上になってしまいます。
自社の工事台帳で元請・下請の区分が明確になっているかを、記入前に確認しておくとよいでしょう。
元請工事の実績がない年度でも報告書は必要?
対象年度中に完了した元請工事が1件もなかった場合、一括有期事業報告書と総括表の提出は不要です。この点を知らずに、実績がない年でも「ゼロ円」で報告書を作成・提出してしまうケースが見受けられます。
ただし、報告書・総括表が不要な場合でも、確定保険料申告書そのものは提出が必要です。申告書の確定保険料欄を0円として、通常どおり年度更新手続きを進めてください。申告書の提出自体を怠ると、行政側が保険料を決定する認定決定の対象になり得るため注意が必要です。
一括有期事業報告書のよくある質問
実務担当者が迷いやすい疑問を、Q&A形式で整理しました。
発注者から資材を支給された場合はどう処理する?
発注者から無償で支給された資材がある場合は、その評価額を請負金額に加算して賃金総額を計算します。労災保険の保険料は、工事に関わるすべての費用をベースに算出する考え方によるためです。
加算漏れがあると保険料の不足が生じ、後日精算を求められるケースがあります。契約書や発注書で支給資材の有無を確認しておくとよいでしょう。
機械装置の組立て等がある場合の労務費率は?
機械装置の組立てまたは取付け部分は、工事全体から分離して労務費率38%を適用します。建築工事の一部として機械設備の据付けが含まれる場合、工事全体に労務費率を一律で適用するのではなく、組立てまたは取付け部分を切り分けて計算するのが正しい処理です。
一括有期事業報告書と一括有期事業総括表はどう違う?
一括有期事業報告書は工事ごとの請負金額・賃金総額を記載する書類で、一括有期事業総括表はその報告書の内容を業種ごとに集計する書類です。両者はセットで提出するもので、報告書が明細、総括表が集計表という関係になります。
年度更新では、報告書で個々の工事を記載したあと、その合計を総括表に転記し、最終的な賃金総額・保険料を確定保険料申告書に反映させる流れになります。
労務費率が改定された場合はどうする?
労務費率が改定された場合は、改定後の新しい料率を使って賃金総額を計算します。年度更新は前年度分の工事実績を集計する手続きのため、原則として工事が完了した年度時点で適用されていた料率を用いる点に注意してください。
労務費率は数年おきに見直されることがあるため、年度更新の作業を始める前に、その年度に適用される最新の料率を確認しておくと安心です。
最新の様式はどこからダウンロードできる?
一括有期事業報告書の様式(様式第7号)は、厚生労働省のホームページの「労働保険関係各種様式」ページから、Excel版・PDF版をダウンロードできます。年度更新の計算支援ツールも同じページから入手可能です。
様式は年度ごとに更新される場合があるため、過去にダウンロードしたファイルを使い回さず、毎年最新版を取得するようにしてください。古い様式で提出すると差し戻しになることもあるため、提出前にバージョンを確認しておくと安心です。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労働保険適用・徴収関係主要様式)|厚生労働省
参考:令和8年度事業主の皆様へ(一括有期事業用)労働保険年度更新申告書の書き方|厚生労働省
一括有期事業報告書の書き方・提出のポイントを押さえよう
一括有期事業報告書は、請負金額の消費税抜き処理と労務費率の適用を正確に行うことで、保険料の過払いや追加徴収を防げます。500万円未満の小規模工事の合算処理や、厚生労働省の計算支援ツールを活用すれば、年度更新の作業を効率よく進められるでしょう。提出期間である7月10日までの期限に向け、工事情報の整理や控えの保管方法まで含めて、早めに準備を進めておくことをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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