• 更新日 : 2026年6月16日

社宅制度とは?住宅手当との違い・規程・メリット・導入方法をわかりやすく解説

Point 社宅制度とは?住宅手当とどちらがお得?

条件を満たして導入すれば、税金を抑えつつ手取りを増やせます。

  • 借り上げた住居を安い家賃で従業員へ貸す
  • 一定額を徴収すれば企業負担分が非課税になる
  • 規程を整えて入退去のトラブルを防ぐ

管理の手間や住まいの自由度には注意が必要ですが、設計次第で労使双方に利点があります。

社宅制度は、企業が所有・契約した物件を比較的低い家賃で従業員に貸与する福利厚生制度のひとつです。

企業と従業員にメリットがある一方、制度設計や運用を誤るとトラブルやコスト増加につながる可能性があります。

本記事では、社宅制度の定義や、住宅手当との違い、メリット・デメリット、運用ルール、導入ステップなどを解説します。

社宅制度とは?住宅手当との違い

社宅制度を導入する前に、基本的な仕組みや住宅手当との違いを理解しておきましょう。ここでは、社宅制度の定義や税務上の扱いを解説します。

社宅制度の定義

社宅制度とは、企業が所有または貸主などから借り上げた物件を、従業員に安い家賃で提供する福利厚生制度です。企業が家賃の一部を負担し、従業員は一定の自己負担額を給料から天引きされます。

従業員は、相場より低い家賃で住居を確保できるため、経済的な負担を減らすことが可能です。また、就職時や転勤時にも企業が物件を手配するため、住居探しや契約などの手間が軽減されます。

借り上げ社宅と社有社宅の違いと現在の主流

社宅には、企業が貸主などから賃貸物件を借りて従業員に貸与する「借り上げ社宅」と、企業が建設または購入した建物を社宅として貸与する「社有社宅」があります。

現在は賃貸物件を活用する借り上げ社宅が主流です。人事院の「令和6年 民間企業の勤務条件制度等調査」によると、社宅制度がある企業のうち、借り上げ社宅を導入している企業は79.7%、自社保有社宅がある企業は37.7%となっています。

借り上げ社宅は、資産を抱えるリスクを抑えられ、また従業員の人数や勤務地などに合わせて柔軟な物件選定がしやすくなるため、多くの企業で導入されています。

借り上げ社宅について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

参考:令和6年 民間企業の勤務条件制度等調査 結果概要|人事院

社宅制度と住宅手当(家賃補助)の主な違いは税務上の扱い

住宅手当は、給与として支給されるため所得税や住民税の課税対象となります。一方で社宅は、一定の条件を満たせば、企業負担分の家賃は給与として扱われません。

国税庁は、一定額(賃貸料相当額の50%)以上の家賃を従業員から徴収していれば、企業負担分の家賃は課税しないと定められているためです。

なお、住宅手当は手当額が大きくなるほど、所得税や住民税の負担が大きくなりやすいです。

その結果、同じ住居支援制度でも、住宅手当より社宅制度のほうが従業員の手取りが増えやすい傾向があります。

参考:国税庁|No.2597使用人に社宅や寮などを貸したとき

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社宅制度のメリット|企業と従業員の視点から

社宅制度は、企業と従業員の双方にとってメリットがあります。採用力の強化や手取りアップにどうつながるのか、具体的に解説します。

【企業側】社会保険料等の削減と採用力・定着率の向上

社宅制度の導入により、住宅手当のように給与を上乗せして支給する場合と比べて、社会保険料の負担を抑えられる可能性があります。

社会保険料等は従業員の給与所得標準報酬月額)を基準に算定されるため、給与が増えると負担も増加するのです。一方、社宅制度では現金給与の増加を抑えられるため、企業と従業員双方とも社会保険料の負担を軽減できるケースがあります。

企業の家賃負担分は、経費として損金算入できるため、節税にもつながります。

また、社宅を利用することで従業員は住居費を抑えられます。結果、従業員の満足度が高まり、定着率も向上しやすくなります。魅力的な福利厚生としてアピールでき、他社との差別化により採用力の強化にもつながりやすいです。

【従業員側】節税で手取り増加と初期費用軽減

社宅制度では、企業が家賃の一部を負担することで従業員の経済的負担が軽くなり、手取りの面でもメリットを感じやすくなります。

また、住宅手当のように現金給与として支給される場合と比べて、 課税対象額が抑えやすく 、所得税や住民税が軽くなる可能性が高いです。

そのうえ物件探しや契約の手間も減ります。さらに、敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用を企業が負担するケースも多く、住居にかかる初期コストを抑えられる点もメリットのひとつです。

社宅制度のデメリットと注意点

社宅制度には、企業側の維持管理・人的コストの負担や、従業員の住宅環境に関しての自由度の制限といったデメリットもあります。

【企業側】管理負担とコスト増加

社宅制度を導入すると、物件探しや管理会社との賃貸契約、入退去管理などの業務が発生します。家賃の支払いや更新手続きも定期的に必要なため、事務負担が増える点に注意が必要です。

また、企業が負担する家賃分のコストが発生します。福利厚生の一環として、礼金・敷金・更新料などの管理費用も企業側が負担するケースが多いでしょう。

異動や退職などのタイミングにより、空室が発生する場合でも、家賃は継続的に支払う必要があるため、無駄なコストになる可能性もあります。

【従業員側】自由度の制限による不満

社宅制度はメリットが多い一方で、立地条件や間取りなど物件を自由に選べないため、住まいに自分の理想を求める人には物足りなく感じる場合があります。

また、周囲が同じ会社の従業員ばかりである可能性が高く、プライベートと仕事の間に一線を引きたい人には不向きかもしれません。同居や家族構成による利用制限、条件によって利用できる従業員とできない従業員の待遇差も、不公平感につながりやすいです。

社宅制度を導入する際は、利用の柔軟性や選択肢の多様化などを意識した制度設計をすることが大切です。

社宅制度廃止のリスク|「不利益変更」とトラブル

社宅業務に必要な社内のリソースが不足し、社宅制度を廃止する場合、労働条件の「不利益変更」に該当する可能性があるため、注意が必要です。

賃貸借契約や更新手続きなどの業務負担増加や条件に合う物件が見つからないなどの理由で社宅制度を継続できない場合があります。

しかし、勝手に社宅を廃止すると労働契約法上の問題となる可能性があるほか、退去交渉をめぐるトラブルも発生しやすくなります。

リソース不足の場合は、社宅管理を外部に委託することも検討すると良いでしょう。

社宅と住宅手当はどちらがお得か|シミュレーション

社宅と住宅手当では税務と社会保険料等の扱いが異なります。ここでは、具体的にどの程度差が出るのか、家賃7万円のケースのシミュレーションもあわせて紹介します。

住宅手当は課税対象で「給与扱い」となる

住宅手当は、給与に上乗せされる形で現金で支給されるため、給与と同様に所得税や住民税の課税対象となり、税務上の負担が増えることがあります。そのうえ、社会保険料の算定対象にもなるため、従業員と企業双方で負担が増加する可能性が高いです。

一方で社宅は、条件を満たせば企業負担分が給与課税されないため、課税対象額を抑えやすいです。

このように、住宅手当は社宅と比べると、従業員と企業双方にとって、一定の負担が増えることがあります。

社宅が非課税になる条件|賃貸料相当額

社宅の場合、従業員から「賃貸料相当額(国税庁の基準)」の50%以上の家賃を徴収していれば、企業が負担する残りの家賃分は非課税とされます。

賃貸料相当額は、次の3つの合計額で計算されます。

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
  2. 12円 ×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%

家賃の全額を企業負担にすると、逆に家賃全額が給与扱いとなり、節税メリットが消えてしまうため注意が必要です。

また、このルールは使用人(従業員)に適用されるものであり、役員社宅や高額物件については別の基準が適用されるため、税務担当者や税理士に確認することが望ましいです。

参考:国税庁|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき

比較|家賃7万円の場合の節税効果と手取り額の差

ここでは、家賃7万円のケースで、従業員の手取りはどのくらいになるのか、社宅と住宅手当を比較してみました。

試算条件:基本給20万円を想定/独身・扶養無し/住民税・雇用保険は除外。

項目 住宅手当 社宅
総支給額 24万円(住宅手当4万円含む) 20万円
社会保険料負担額(概算) ▲33,780円 ▲28,150円
所得税(概算) ▲4,340円 ▲3,270円
手取り 201,880円 168,580円
家賃 ▲70,000円 ▲30,000円
可処分所得 201,880-70,000=131,880円 168,580 − 30,000 =138,580円

138,580円(社宅)-131,880円(住宅手当)=6,700円(約7,000円)

住宅手当の場合は、給与が増える分所得税や社会保険料の負担が増え、可処分所得は131,880円となります。一方、社宅の場合は可処分所得は138,580円となり、住宅手当よりも6,000〜7,000円多くなるのです。

社宅制度では、企業側の社会保険料負担も抑えられる場合が多く、所得税・住民税などに関する節税効果が住宅手当よりも大きくなるケースが多いと考えられます。

参考:国税庁|給与所得の源泉徴収税額表(令和8年分)
参考:協会けんぽ|令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

社宅制度の規程と運用設計のポイント|トラブルを防ぐルール作り

社宅制度は、運用ルールによって従業員とのトラブルが発生する可能性があります。そのため、公平でわかりやすいルールをあらかじめ整備しておきましょう。

同棲は原則認められないことが多い|単身・家族用の利用規程

一般的に、単身者向けの社宅で、知人を住まわせることは認められていないことが多いです。もし従業員が違反した場合、管理会社と賃貸契約をしている企業側に違約金などのトラブルが発生する可能性があります。

あらかじめ管理会社に確認し、企業が認めた同居親族や婚約者に限って事前申請で認めるなど、社宅規程に盛り込み整理しておくことが必要です。

借り上げ社宅における同棲の可否について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

転勤・異動時のスムーズな入退去フロー

転勤や異動に伴う社宅の入退去では、従業員との認識違いによるトラブルを防ぐため、あらかじめルールを明確にしておきます。

国土交通省が定めたガイドラインを基本に設計するとよいでしょう。そのうえで自社独自の禁止事項や負担区分を社宅規程に明記し、従業員に十分に説明しておく必要があります。

たとえば、退去時の原状回復費用の負担の有無や割合、異動発令後の退去期限、事前通知期限などを事前に設定し、周知しておくとトラブルも防ぎやすいです。

社宅の退去費用について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

参考:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

社宅制度の導入ステップ

社宅制度は、導入目的を明確にしたうえで、社宅規程の作成や管理体制の整備、従業員への周知を段階的に進めることで、スムーズに導入・運用しやすくなります。

社宅制度を導入する目的の明確化|福利厚生か節税か

社宅制度を導入する際は、採用力強化かコスト削減か、目的を明確にすることが大切です。

優先順位にそって、物件や対象者を決定します。

福利厚生のアピールなら、立地条件や築年数など一定水準以上の物件を選ぶことで、従業員満足度の向上や採用時の他社との差別化が図れます。

一方、コスト削減や節税を重視する場合は、非課税メリットを活かせる範囲で企業負担割合や対象者を適切に設定し、税務上の要件を満たした運用を行いましょう。

社宅管理規程(運用ルール)の作成

社宅制度を円滑に運用するためには、あらかじめ社宅管理規程を整備し、運用ルールを明確にしておくことが大切です。

たとえば、入居資格(勤続年数・役職・年齢など)、入居期間、自己負担額、退去時のルールなどを具体的に定めておきます。「誰が・いつまで・いくらで住めるのか」を明文化することで、従業員にも制度内容が伝わりやすくなります。

また、同棲やペット飼育の可否など、例外的なケースへの対応方針も事前に決めておくと、スムーズに運用しやすいです。

基準が曖昧なままだと、従業員間で不公平感が生じたり、入退去時のトラブルにつながったりする可能性があるため、公平性と明確性を意識したルール設計が必要です。

管理体制の構築|自社管理かアウトソーシングか

社宅を自社で管理するか、外部へ委託するかを検討することが必要です。社宅制度の運用では、物件契約や入退去手続き、トラブル発生時の管理会社との調整・対応など、さまざまな業務が発生し、社内のリソースが不足することが考えられます。

そのため、管理戸数が増える見込みがあれば、社宅管理会社への業務委託を検討することも有効です。運用代行を活用することで業務量を削減し、円滑に運用しやすくなります。

従業員への周知・説明の徹底

社宅制度を円滑に運用するためには、制度内容や利用ルールについて従業員へ十分に周知する必要があります。

制度導入時には、説明会の開催やマニュアルの配布などを行い、入居条件や自己負担額、利用時の注意点などを共有しましょう。事前にルールを理解してもらうことで、制度への不満や運用トラブル、近隣住民とのトラブルを防ぎやすくなります。

また、住宅手当制度から社宅制度へ移行する場合は、従業員の負担や待遇に影響する可能性もあるため、制度変更の目的やメリットを丁寧に説明し、慎重に合意形成を進めることが大切です。

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