- 更新日 : 2026年1月30日
賞与・ボーナスにも社会保険料がかかる?計算方法や免除されるケースなど解説
賞与(ボーナス)からも毎月の給与と同様に、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料といった社会保険料が控除されます。ただし、計算には「標準賞与額」が用いられ、住民税がかからないなど給与とは異なる点があります。
本記事では、賞与にかかる社会保険料の計算式や上限額、手取り額のシミュレーション、産休・育休や退職時の免除ルールまで、人事担当者にも従業員にも役立つ知識をわかりやすく解説します。
目次
賞与・ボーナスにも社会保険料はかかる?
賞与にも社会保険料はかかります。ただし、毎月の給与と全く同じルールで計算されるわけではなく、賞与ならではの計算方法や控除されない項目が存在します。
賞与にかかるお金と手取りの目安
賞与には、毎月の給与と同じく社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)と所得税が控除されますが、住民税は控除されません。
一般的に賞与の「手取り額」は、額面金額からこれらの社会保険料と所得税を差し引いた金額となります。控除額の合計は額面の約20%〜25%程度になるため、手取りは額面の75%〜80%程度になると考えておくとよいでしょう。
給与と賞与の控除項目の違い
給与と賞与では、控除される項目や計算の基礎となる金額の扱いに違いがあります。主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 賞与からの控除 | 備考(給与との違いなど) |
|---|---|---|
| 健康保険料 | ◯ | 給与と異なり「標準賞与額」を用いて計算 |
| 介護保険料 | ◯ | 40歳以上64歳以下の従業員のみ対象 |
| 厚生年金保険料 | ◯ | 給与と異なり「標準賞与額」を用いて計算 |
| 雇用保険料 | ◯ | 賞与総支給額を用いて計算 |
| 所得税 | ◯ | 賞与用の計算用テーブル(税率表)を使用 |
| 住民税 | ✕ | 賞与からは原則控除されない(給与は◯) |
特徴的なのは住民税です。住民税は「前年の所得」に基づいて年間の税額が決定され、それを毎月の給与から12分割して徴収(特別徴収)する仕組みになっています。そのため、原則として賞与からの天引きはありません。
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賞与の社会保険料はどうやって計算する?
賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、各保険料率を掛けて算出します(雇用保険を除く)。
賞与の社会保険料計算で最も重要なのが「標準賞与額」と「上限額」、そして「端数処理」のルールです。
計算の基礎となる標準賞与額と端数処理
社会保険(健康保険・厚生年金)と労働保険(雇用保険)では、計算の元になる金額の扱いが異なります。
- 健康保険・厚生年金
賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた金額(=標準賞与額)を使います。
(例:支給額 500,999円 → 標準賞与額 500,000円) - 雇用保険
賞与の総支給額そのもの(1円単位まで含む)を使います。
健康保険料・介護保険料の計算方法
保険料は会社と従業員が折半して負担します。料率は「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の場合、都道府県ごとに定められています。
40歳以上64歳未満の従業員は、これに介護保険料率(令和7年度:1.59%)が加算されます。なお、健康保険における標準賞与は、年間で573万円が上限です。
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料は、標準賞与額 × 18.3%(本人負担分は9.15%)で計算します。 厚生年金保険料率は全国一律で18.3%となっており、これを労使折半します。
- 上限額のルール 1月の賞与支給につき、標準賞与額150万円が上限です。 (例:賞与200万円の場合でも、150万円として計算)
雇用保険料の計算方法
雇用保険料は、賞与総支給額 × 雇用保険料率(本人負担分)で計算します。
標準賞与額ではなく「実際の支給総額」に料率をかける点に注意が必要です。事業の種類によって以下の料率が適用されます。
| 事業の種類 | 従業員負担率 | 会社負担率 |
|---|---|---|
| 一般の事業 | 5.5/1,000 | 9/1,000 |
| 農林水産・清酒製造 | 6.5/1,000 | 10/1,000 |
| 建設の事業 | 6.5/1,000 | 11/1,000 |
- 端数処理
計算結果に1円未満の端数が出た場合、50銭以下は切り捨て、50銭1厘以上は切り上げて処理するのが一般的です(ただし、労使間の慣習や特約がある場合はそれに従います)。
出典:令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省
【金額シミュレーション】賞与50万円・100万円の手取り額
額面50万円の場合、社会保険料と税金を引いた手取りは約40万円〜41万円前後となります。
以下の条件で、賞与額面別の控除額と手取り額を試算しました。
(条件:令和7年・東京都・協会けんぽ・40歳未満・扶養親族なし・一般事業のケース)
| 額面(標準賞与額) | 社会保険料の内訳 | 手取り目安 |
|---|---|---|
| 30万円 | 健保:14,865円 厚年:27,450円 雇用:1,650円 計:43,965円 | 約24.5万円 |
| 50万円 | 健保:24,775円 厚年:45,750円 雇用:2,750円 計:73,275円 | 約40.5万円 |
| 100万円 | 健保:49,550円 厚年:91,500円 雇用:5,500円 計:146,550円 | 約81.0万円 |
※手取り目安は、社会保険料と所得税を控除した金額です。所得税は前月の給与額等により変動するため、上記金額は概算となります。賞与の約15%が社会保険料として引かれます。
賞与の所得税はどう計算する?
賞与から控除される所得税は、通常の給与(月額表)とは計算方法が異なります。
基本的には、前月の給与額と扶養親族の数に基づき、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて計算します。
賞与に対する所得税の計算手順
賞与の所得税額は、社会保険料を控除した後の金額を基準に、以下の3ステップで算出します。
- 前月の給与額を確認
前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額を確認します。 - 算出率(税率)を決定
国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に、手順1の金額と扶養親族の数をあてはめ、適用される税率(%)を求めます。 - 所得税額を計算
以下の計算式で算出します。
所得税額 = (賞与支給額 - 社会保険料合計額) × 税率
注意点:前月に給与がない場合や、賞与の額が前月給与の10倍を超える場合は、通常の算出率表が使えず、別途特例的な計算(月額表を用いた計算など)が必要になります。
【計算例】所得税額のシミュレーション
先ほどのモデルケース(令和7年・東京都・協会けんぽ・40歳未満・扶養0人)で、所得税が実際にいくらになるかを見てみましょう。
賞与額が高くなるほど、適用される税率も段階的に上がることがわかります。
| 額面(賞与) | 課税対象額(賞与 - 社保) | 税率と所得税額 |
|---|---|---|
| 30万円 | 30万 – 4.4万 = 256,035円 | 税率 4.084% 約 10,456円 |
| 50万円 | 50万 – 7.3万 = 426,725円 | 税率 6.126% 約 26,141円 |
| 100万円 | 100万 – 14.7万 = 843,450円 | 税率 10.210% 約 87,137円 |
※税率は、前月の給与額によって変動します(上記は標準的な月給額を想定したモデルケースです)。
社会保険上の賞与の定義とは?(年3回ルール)
一般的に「ボーナス」や「決算賞与」と呼ばれるものでも、社会保険のルール上では、年間に支給される回数によって「賞与」として扱うかどうかが厳密に区別されています。
社会保険における賞与の定義
社会保険(健康保険・厚生年金保険)において「賞与」とは、労働の対価として「年3回以下」支給されるものを指します。
この定義は法律で明記されており(健康保険法第3条第6項、厚生年金保険法第3条第4項)、名称が「期末手当」や「特別手当」などであっても、この回数要件(年3回以内)に当てはまる場合は、前述した「標準賞与額」を用いた保険料計算を行います。
年4回以上支給される場合の取り扱い
一方で、年4回以上支給される賞与は、社会保険上は「賞与」としては扱われません。これらは「標準報酬月額(毎月の給与)」の一部とみなして計算されます。
この場合、賞与支給時の保険料控除(標準賞与額計算)は行わず、毎月の社会保険料を決める「定時決定(算定基礎届)」などの計算対象に含めることになります。計算の前提が根本から変わるため、四半期ごとに賞与を出す企業などは注意が必要です。
社会保険料がかからない・免除されるケースとは?
産前産後休業・育児休業中の支給や、資格喪失月(退職月)の条件を満たす場合は免除されます。以下のケースでは、賞与にかかる社会保険料の一部または全部が免除されます。
産前産後休業・育児休業中の賞与
産前産後休業および育児休業期間中に支給された賞与は、社会保険料(健康保険・厚生年金)が全額免除されます。
会社負担分・従業員負担分ともに免除となりますが、将来の年金受給額には反映される(保険料を納めたとみなされる)特例があります。
- 免除の要件: 賞与が支給された月の末日が、休業期間中に含まれていること。 (※2022年10月の法改正により、育児休業の場合は「支給月の末日を含んだ連続1ヶ月を超える休業」等の詳細要件が加わっています)
退職する従業員への賞与(月末退職と月中退職)
退職月に賞与が支給される場合、退職日によって保険料がかかるかどうかが変わります。
- 月末に退職する場合(例:6月30日退職)
- 翌月1日(7月1日)が資格喪失日となります。
- 6月分は保険料徴収の対象となるため、6月支給の賞与には社会保険料がかかります。
- 月の途中で退職する場合(例:6月15日退職)
- 翌日(6月16日)が資格喪失日となります。
- 6月分は保険料徴収の対象とならないため、6月支給の賞与には社会保険料(健康保険・厚生年金)はかかりません。
注意:雇用保険料と所得税は、退職日に関わらず支給されれば必ずかかります。
事業主・担当者が行うべき賞与の手続きは?
賞与の支給業務は、単に金額を計算して振り込むだけではありません。事業主(担当者)は、支給決定から支給後にかけて、法令に基づいた手続きを行う必要があります。
1. 被保険者賞与支払届の提出
従業員に賞与を支給した場合は、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を管轄の年金事務所(または事務センター)へ提出しなければなりません。 この届出により、各従業員の「標準賞与額」が決定され、会社が納付すべき保険料額が確定します。
【賞与を支給しなかった場合は?】 賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。総括表の廃止に伴い設けられた書類で、賞与を支給するか否かに関わらず、支給予定月前月に年金機構から送付されます。
2. 賞与明細書の発行
給与と同様に、賞与を支給する際も従業員に対して「賞与明細書」を交付する義務があります。 明細書には、支給総額だけでなく、控除した社会保険料や税金の額を項目ごとに明記する必要があります。従業員が手取り額や控除の根拠を確認するための重要な書類となります。
賞与支給の負担を軽減する方法は?
賞与計算は、標準賞与額の決定や所得税率の算出など、通常の給与計算とは異なるルールが多く、担当者にとっては大きな負担となります。 ミスを防ぎ、業務を効率化するための3つのアプローチを紹介します。
給与計算システムの導入
給与計算システムを導入することで、複雑な賞与計算や社会保険料の算出を自動化できます。
- メリット:法改正に合わせた税率や保険料率の自動更新、明細書のWeb発行などが可能になり、計算ミスやペーパーワークを大幅に削減できます。
- 効果:年末調整や給与計算とデータを連携できるため、年間を通じた業務効率化が期待できます。
業務のアウトソーシング
慢性的な人手不足や、賞与時期の業務集中を解消したい場合は、計算業務自体を外部へ委託(アウトソーシング)するのも一つの手段です。
- メリット:専門家に任せることで正確性が担保され、社内リソースをコア業務(採用や制度設計など)に集中させることができます。
- 検討のポイント:コストはかかりますが、担当者の残業削減や採用コストとのバランスを考慮すると、費用対効果が高いケースもあります。
業務マニュアルの整備とチェックリスト活用
システムや外部委託に頼る前に、社内の業務フローを見直すことも重要です。賞与支給は年に数回しかないため、担当者が手順を忘れてしまったり、特定の社員しか計算できなかったりする(属人化)リスクがあります。
- メリット:手順をマニュアル化し、計算や届出のチェックリストを作成しておくことで、担当者が変わってもスムーズに業務を行えるようになります。
- 効果:「誰でもできる状態」を作ることで、急な退職や休職による業務停滞リスクを回避できます。
賞与の社会保険料に関するよくある質問
Q. 引かれている金額がおかしいと感じたら?
まずは計算の基礎となる金額と、計算式が合っているかを確認しましょう。
- 計算の確認:「標準賞与額(1,000円未満切り捨て)」で計算しているか、雇用保険は「総支給額」で計算しているかを確認します。
- 明細の確認:前月の給与明細と比較し、扶養人数などに変更がないかチェックします。
- 担当者へ問い合わせ:それでも合わない場合は、会社の給与担当者へ問い合わせましょう。目安として額面の約15%(本人負担分)が社会保険料となります。
Q. 退職時の賞与は社会保険料がかからない?
「いつ退職したか(資格喪失日)」によって異なります。 賞与支給月の「末日」に退職した場合はかかりますが、月の途中(例:15日)に退職した場合は、その月の賞与には社会保険料(健康保険・厚生年金)はかかりません。ただし、雇用保険料と所得税は退職時期に関わらずかかります。
Q. 同じ月に2回賞与が支給された場合は?
12月に「冬季賞与」と「決算賞与」が出るなど、同一月に複数回支給された場合は、すべての支給額を合算して標準賞与額を決定します。個別に計算して端数処理をするのではなく、合計額の1,000円未満を切り捨てて保険料を算出します。「賞与支払届」も合算した金額で提出する必要があります。
Q. 賞与の手取りを増やす方法は?
社会保険料は法定の計算式で決まるため、意図的に減らすことはできません。 しかし、iDeCo(個人型確定拠出年金)などを活用して所得控除を増やすことで、結果的に所得税や住民税を節約し、年間の手取り額(可処分所得)を増やす工夫は可能です。会社の制度として企業型DC(マッチング拠出など)がないか確認してみるのもよいでしょう。
賞与の社会保険料の計算方法と免除ルールを正しく理解しよう
賞与(ボーナス)からも、原則として毎月の給与と同じように社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)が控除されます。
計算においては、健康保険・厚生年金は「標準賞与額(1,000円未満切り捨て)」を、雇用保険は「総支給額」を用いるなど、対象となる金額の扱いが異なる点に注意が必要です。 また、健康保険には年度累計573万円、厚生年金には1月150万円の上限額があるほか、産休・育休中などの場合は、免除されるケースもあります。
企業担当者は、正しい計算に基づき期限内に「賞与支払届」を提出するとともに、従業員への説明にも本記事のシミュレーションをぜひ活用してください。
よくある質問
賞与からも社会保険料が引かれる?
賞与からも社会保険料と所得税(源泉徴収税)が引かれます。詳しくはこちらをご覧ください。
賞与から控除される社会保険料の計算方法は?
賞与の金額の千円未満を切り捨てた額を標準賞与額とし、健康保険料や厚生年金保険料を計算します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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