- 更新日 : 2026年6月22日
福利厚生費に上限はある?項目別の金額目安と損金算入の条件を解説
法定外福利費に法律上の上限はなく、損金算入には3つの条件を満たす必要があります。
- 全従業員を対象とし現物支給とすることが経費計上の前提となる。
- 食事補助は2026年4月から月7,500円まで非課税となる。
- 現金や商品券での支給は金額を問わず給与として課税される。
社内規程に支給基準を明記しておくと税務調査での否認リスクを下げられます。
法人の福利厚生費をどこまで損金算入できるか、税務調査で否認されないかと悩む担当者は少なくありません。適切に計上するためには、損金算入の3条件と項目ごとの上限額を正確に把握することが重要です。
本記事では、法人が福利厚生費を損金算入する条件や食事補助・通勤手当など項目別の限度額、税務調査の代表的なケースを解説します。節税効果を高めながら税務リスクを回避したい担当者は、ぜひ参考にしてみてください。
福利厚生費の取り扱い
福利厚生費は法定福利費と法定外福利費に分類されます。
ここでは、それぞれの福利厚生の概要と、法人・個人事業主それぞれの取り扱いについて解説します。
福利厚生費の種類
法定福利費は、法律によって事業主負担が義務づけられた費用です。法定福利費として、以下の6種類が該当します。
一方で、法定外福利費は企業が任意で設ける制度であり、食事補助・住宅手当・社員旅行・慶弔見舞金・健康診断費用などが含まれます。
税務上、損金算入の対象になる「福利厚生費」として計上するには、法定外福利費について3つの条件を満たす必要があります。
具体的には、全従業員が対象であること、現物支給であること、社会通念上妥当な金額であることです。
これらを満たさない場合、給与や交際費として扱われ、課税対象となる可能性があるため注意しましょう。
法人と個人事業主での扱いの違い
福利厚生費の取り扱いは、法人と個人事業主で異なります。法人は代表者・役員・従業員を含む全員を対象とした制度として設計すれば、損金算入が認められます。
一方で個人事業主は「家族以外の従業員がいること」が前提であり、事業主本人や生計を一にする家族のみへの支出は、福利厚生費として計上できません。
しかし実際には、家族のみの事業体で福利厚生費を計上してしまうケースが少なくなく、税務調査での否認事例としても頻出するため注意が必要です。
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福利厚生費の上限の有無
法定外福利費の全体合計に、法律上の上限額は設けられていません。
ただし、税務上は「社会通念上妥当な金額」という判断基準が適用され、過度に高額な支出は給与と判定されるリスクがあります。
実務上の目安としては、社員旅行であれば従業員1人あたり10万円以内が「常識の範囲内」とされています。
つまり「上限なし」とは「何を計上しても問題ない」という意味ではなく、あくまで社会通念の範囲内であれば上限規定が設けられていないと理解しておきましょう。
税務調査で否認されないためには、この基準を意識したうえで支出額を設定することが重要です。
福利厚生費を経費計上するための条件
福利厚生費を損金算入するためには、3つの条件をすべて満たす必要があります。
ここでは、各条件について詳しく解説します。
全社員に利用できる機会があること
福利厚生費の第一条件は、役員・正社員・パート・アルバイトを問わず、全従業員が平等に利用できる制度であることです。
「全員が必ず利用する」ではなく、「全員に利用の機会がある」制度設計であれば条件を満たせます。
一方で、役員や一部の管理職だけが対象のサービスは、給与課税の対象となる可能性があります。
全従業員が対象であることを社内規程または就業規則に明記し、社内に周知しておくことで、税務調査の際に制度設計の根拠として示せるでしょう。
ただし、勤務時間・雇用形態に応じた合理的な差異は認められる場合があります。
パートタイムや契約社員を対象に含めるかどうかも含め、対象範囲を社内規程に明記しておくことが大切です。
現物支給または同等の給付であること
現金での支給は金額を問わず給与課税の対象となるため、福利厚生費として計上するには物品・サービス・利用権など現物に近い形での提供が求められます。
商品券・プリペイドカード・ギフト券も換金性の高さから「現金と同等」と判定され、福利厚生費として非課税にならないケースがある点にも注意しましょう。
一方で社員食堂やスポーツジムの法人契約、健康診断の費用直接負担といったサービス提供型の支出は、現物給付として認められやすい傾向にあります。
なお、現金支給や非課税要件を超えた支給は従業員側でも所得として課税されるため、制度設計時には従業員の税負担への影響も考慮しておきましょう。
社会通念上妥当な金額であること
社会通念上妥当な金額とは、同業他社の水準や支出の目的・内容から判断した合理的な金額の範囲を指します。
著しく高額な費用や特定個人への集中した支出は、給与の迂回支払いとみなされるリスクがあるため注意が必要です。
社内規程に支給金額の上限・支給条件を明記しておくことで、妥当性の根拠を示せるようになり、税務調査での指摘リスクを下げられるでしょう。
なお、法定福利費の従業員1人あたり月額平均は50,283円、法定外福利費は4,882円とされています。
項目別の福利厚生費の上限金額と非課税要件
福利厚生費には、項目ごとに非課税要件や金額の目安があります。ここでは、主要な項目別に上限金額と条件を解説します。
食事補助
食事補助の非課税上限は、2026年4月1日の施行前まで月3,500円(税抜)であり、従業員が食事代の50%以上を自己負担することが条件でした。
2026年4月1日以降、この上限が月7,500円(税抜)に引き上げられています。1984年の設定以来42年ぶりの改正であり、従業員の50%以上自己負担という条件は引き続き適用されます。
会社負担額が月7,500円を超えた分は、給与として課税対象となる点に注意しましょう。
また、深夜勤務者への現金支給についても、1食あたり300円以下から650円以下に引き上げられました(2026年4月施行)。
参考:食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて|国税庁
通勤手当
公共交通機関を利用する場合、通勤手当の非課税限度額は月15万円であり、実費の範囲内で計上できます。
マイカーや自転車通勤の場合は通勤距離に応じた非課税限度額が設定されており、片道2km未満は非課税の対象外、2〜10kmは月4,200円など距離区分ごとに上限が異なります。
なお、通勤手当は非課税であっても社会保険料の算定基礎(標準報酬月額)には含まれるため、制度設計時には社会保険料への影響も考慮しておきましょう。
健康診断
法定健康診断(一般健康診断)は、労働安全衛生法第66条にもとづく事業主の実施義務であり、費用は全額損金算入できます。
法定外の人間ドック(総合健康診断)についても、全従業員を対象として医療機関へ直接支払いする形であれば損金算入が認められます。
なお、費用の目安は1人あたり2〜5万円程度です。
また、常時50人以上の労働者を使用する事業場に義務づけられる年1回のストレスチェックの実施費用も、福利厚生費として計上できます。
いずれの場合も、医療機関への直接支払いや全従業員対象、領収書等の証憑保管が非課税処理の前提となる点を押さえておきましょう。
参考:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう|厚生労働省
社員旅行・慰安旅行
社員旅行の費用は「社会通念上常識の範囲内」であれば福利厚生費として認められており、実務上の目安は1人あたり年間10万円程度・期間4泊5日以内とされています。
さらに、全従業員を対象とした旅行で参加者が全体の50%以上であることが、非課税要件の目安です。
一方で、役員のみが参加する旅行や家族同伴の観光旅行は給与課税の対象となる可能性があるため、対象者の範囲には注意が必要です。
慶弔見舞金
慶弔見舞金には法律上の上限金額はありません。ただし、社内規程に支給基準・金額・支給対象を明記し、全従業員に平等に適用することが非課税の条件となります。
社会通念上の金額としては、以下が一般的な目安となります。
- 結婚祝金1〜5万円
- 出産祝金1〜3万円
- 弔慰金(香典)1〜3万円
- 入院見舞金1〜2万円
- 災害見舞金3〜10万円
これを大きく超える支給は「社会通念の範囲外」として否認される可能性があります。
なお、慶弔見舞金は現金で支給しても非課税扱いとなる例外的なケースであり、社会的儀礼としての性質上、給与等には該当しないと解釈されています。
福利厚生費として認められない主なケース
税務調査で問題となりやすいケースとして、主に以下の3つのパターンがあげられます。ここでは、各ケースの詳細と注意点を解説します。
特定の役員・社員のみが対象のケース
社長・役員・一部の管理職のみが参加できる旅行や利用できるサービスは、全従業員対象の条件を満たさないため給与課税の対象となります。
よくある否認事例としては、役員家族のみが参加した旅行を社員旅行として計上するケースや、経営陣のみが加入できる保険を福利厚生費として処理するケースがあげられます。
こうした指摘を避けるには、制度設計の段階で全員適用の仕組みを就業規則や社内規程に記載し、税務調査時の根拠として活用できる状態にしておくことが大切です。
現金・換金性の高いもので支給するケース
現金での支給は金額を問わず給与課税の対象となります。
また、商品券やプリペイドカード、ギフト券など換金性の高いものも現金と同等と判定され、福利厚生費として非課税処理できないケースがあるため注意しましょう。
福利厚生ポイント制度についても、現金化や転売が可能な設計の場合は給与課税の対象となるため、使途制限や換金禁止の仕組みを設けておく必要があります。
金額が社会通念上不相当なケース
1人あたりの費用が著しく高額な場合、税務調査官は給与の迂回支払いとして否認することがあります。
たとえば、1人あたり100万円を超える慰安旅行費や毎月数十万円の従業員向け接待費、特定社員のみへの高額な人間ドックオプション検査などが否認事例にあたります。
高額な支出を計上する際は、同業他社の水準や社内規程の根拠、参加者全員への同一条件利用を記録として保管しておくことが求められるでしょう。
福利厚生費の上限に関するよくある質問
福利厚生費の上限に関してよく寄せられる4つの質問と回答を紹介します。
食事補助の上限はいくらが目安?
2026年4月以降、食事補助の非課税上限は月7,500円(税抜)に引き上げられています。会社負担額が月7,500円を超えた分は給与として課税対象です。
従業員が食事代の50%以上を自己負担することが引き続き条件であり、社員食堂・食券・フードデリバリー補助等の形式を問わず適用されます。
ただし、現金での直接支給は金額を問わず給与扱いとなる点に注意しましょう。
社員旅行1人あたりの旅費はいくらが目安?
1人あたり10万円以内が目安であり、旅行期間は国内・海外ともに4泊5日以内が非課税要件の基準とされています。
また、全従業員を対象とし、参加者が全従業員の50%以上であることも条件に含まれます。
なお、不参加者への代替金銭支給は給与課税対象とみなされる可能性があるため注意しましょう。
懇親会費用の上限はいくらが目安?
法的な上限額は設けられていませんが、1人あたり5,000〜1万円程度が「社会通念上の範囲内」の目安とされています。
部署単位での開催であっても、全部署が対象で1人あたりの支出がおおむね一律であれば福利厚生費として計上できます。
一方で、特定の役職・部署のみを対象とした場合は交際費または給与として扱われる可能性があるため、対象範囲の設定には注意が必要です。
飲み会補助費用の上限はいくらが目安?
実務上は1人あたり5,000円程度が一般的な水準とされており、著しく高額な場合は社会通念上妥当でないと判断されるリスクがあります。
非課税で処理するには、現金や商品券での支給ではなく、飲食代の直接補助(現物支給)や飲食店で使える食事券・補助ポイントなど、現物に近い形での提供が必要です。
また、全従業員を対象とした制度設計で、参加者が全従業員の50%以上であることが非課税要件の目安とされています。
特定の部署・役職のみを対象とした補助は給与課税の対象となる可能性があるため、制度の適用範囲を明確にしておきましょう。
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