- 作成日 : 2026年6月22日
役員向けの福利厚生費は認められる?否認されないためのポイントを紹介
役員への支給も原則認められ、福利厚生費として非課税で計上できます。
- 全従業員を対象とする制度として設計する
- 社宅活用で家賃負担を10〜20%まで軽減する
- 特定の役職者のみ対象の制度は給与とみなされ課税される
金額は社会通念上妥当な範囲にとどめ、専門家への相談を検討しましょう。
役員の手取り額向上や企業の税負担軽減を目的に、役員へ向けた福利厚生を導入しようと考えている経営者もいらっしゃるでしょう。
ただし、役員に向けた福利厚生の中には、従業員の福利厚生とは違った要件が求められるものもあり、導入に際してはそれらの要件を押さえておく必要があります。
本記事では、役員への福利厚生を整備してもよいのかという部分から、役員と従業員で取り扱いが異なる福利厚生、役員向けのおすすめの福利厚生などを解説します。
役員も福利厚生の対象?
役員への福利厚生は原則として認められるため、役員へ支給した福利厚生費も非課税で計上できます。
ただし、税務署から福利厚生費として認められるためには、全従業員を対象としている必要があります。
たとえば、役員のみ、特定の役職者のみを対象として福利厚生制度は認められません。
役員向けの福利厚生を導入するとしても、その制度自体はすべての従業員が利用できる状態にしておきましょう。
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福利厚生の種類と定義
福利厚生には法定福利厚生と、法定外福利厚生の2種類が挙げられます。
役員向けの福利厚生を導入するにあたって、これらの定義について理解を深めておきましょう。
以下の記事では福利厚生について詳しく解説しています。カテゴリ別の福利厚生例や福利厚生を充実させるメリットなどを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
法定福利厚生とは
法定福利厚生とは、法律によって企業に導入が義務付けられている福利厚生です。
主に以下の6種類が挙げられます。
法律で負担額や条件が定められているため、企業努力による他社との差別化や、支給額の調整をすることはできません。
役員向けに福利厚生の充実を検討しているならば、法定福利厚生ではなく、法定外福利厚生に着目しましょう。
法定外福利厚生とは
法定外福利厚生とは、法律によって導入が義務付けられておらず、企業が任意で独自に導入する福利厚生です。
従業員の満足度向上や優秀な人材の確保、節税などを目的に導入されます。
代表的なものには、以下が挙げられます。
- 社宅
- 住宅手当
- 社員食堂
- 慶弔見舞金
- 人間ドック
- 社員旅行 など
これらの福利厚生は企業側で内容を調整できるため、役員のニーズに沿った制度を導入できます。
ただし、法定外福利厚生の支出が非課税として認められるには、「社会通念上で妥当な金額、内容」である必要があります。
役員向けに内容を調整するとしても、専門家と相談しながら制度設計を進めるのがおすすめです。
役員と従業員で福利厚生の取り扱いが異なる
一部の福利厚生では、役員と一般の従業員で扱いが異なります。具体的には以下のとおりです。
社宅の取り扱い
社宅が福利厚生として認められるには、一定の割合を利用者が負担している必要があります。なお、役員と従業員では負担すべき割合が異なります。
| 従業員 | 国税庁が定める「賃貸料相当額」の50%以上が本人負担 |
|---|---|
| 役員 | 住宅の区分ごとに異なる計算式を行って「賃貸料相当額」を算出し、その数値が本人負担 |
【役員向け社宅における「賃料相当額」の計算方法】
| 役員に貸与する社宅が小規模な住宅である場合 | 次の(1)から(3)までの合計額
|
|---|---|
| 役員に貸与する社宅が小規模な住宅でない場合 | ・自社所有の社宅の場合 次の(1)と(2)の合計額の12分の1
・借り受け社宅の場合
|
役員の方が賃貸料相当額の算出方法が厳格に定められているのが特徴です。
正しく運用できていなければ、非課税対象とみなされない恐れがあるため、社宅を導入する際には専門家に相談するのがおすすめです。
慶弔見舞金の取り扱い
慶弔見舞金とは、役員・従業員やその家族の冠婚葬祭、災害時に支給する福利厚生金です。
役員と従業員では、支給額の設定基準が異なり、双方のバランスが重視されます。
| 従業員 | 就業規則に基づき、社会通念上相当な金額であれば全額が福利厚生費として認められる |
|---|---|
| 役員 | 従業員と比べて著しく高額である場合や、社会通念上の範囲を超えている場合は、福利厚生費ではなく役員給与とみなされる場合がある (※役職や勤続年数に応じて従業員より高い金額を設定することは認められている) |
慶弔見舞金は本来、従業員への慰安や生活サポートを目的としています。
そのため、役員だけに多額の金銭を支給することは、福利厚生の目的を外れた利益供与とみなされる場合があるでしょう。
役員の慶弔見舞金を整備する際は、同業他社の水準や社会通念に照らして高すぎると判断されない金額にとどめ、従業員との格差を常識的な範囲に抑えましょう。
役員向けのおすすめ福利厚生
役員向けの福利厚生としておすすめの制度を紹介します。
ただし、制度を導入する際は、必ず全従業員が活用できるような状態にしましょう。
以下の記事では、人気の福利厚生をランキング形式で紹介しています。従業員からのニーズが高い福利厚生を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
社宅
社宅は最も節税効果が高い制度のひとつです。社宅制度をうまく活用すれば、役員側の家賃負担を10〜20%程度に収めることもできるでしょう。
会社負担分を福利厚生費として経費にしながら、役員個人の社会保険料や税負担を大幅に軽減できるのも利点です。
ただし、床面積が240㎡を超える物件や、プール付き、役員の個人的嗜好が著しく反映された物件などは「豪華社宅」と判定されます。
豪華社宅とみなされると、福利厚生費として計上できなくなってしまうため、どの物件を役員向け社宅とすればいいのか、専門家に相談しながら進めましょう。
以下の記事では社宅について詳しく解説しています。各種住宅支援との違いや導入する流れなどを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
出張手当
出張手当は、適正な額であれば会社側は全額経費となり、受け取る役員側も所得税・住民税が非課税、社会保険料も対象外となります。
とくに出張が多い役員の場合、出張手当によって得られる恩恵も大きくなり、節税効果ならびに手取り額増が期待できます。
導入時には、同業種・同規模の他社や国家公務員の出張手当・旅費を参照して、社会通念上妥当な金額にしておきましょう。
人間ドック
法律で義務付けられた法定健康診断に加え、追加の人間ドックの検査費用を会社が負担する制度です。
経営に不可欠な役員の健康管理を会社の経費で行うことができ、一定の要件を満たせば給与課税されません。
満たすべき要件は、たとえば以下のとおりです。
- 一定の年齢以上の希望者全員が受けられる
- 費用が社会通念上常識的な範囲内
- 会社が医療機関へ直接払う
とくに、役員へ一度立て替えてもらってから、会社から現金を支給するという形式は給与とみなされる恐れがあるため、適切な制度設計を行いましょう。
以下の記事では健康経営について解説しています。従業員の健康を意識するメリットや重要性が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
食事補助
社員食堂の運営やランチ代の一部負担など、会社側が役員や従業員の食事費用を一部負担する制度です。
社宅や健康診断と比べて導入のハードルが低く、日常的な生活コストを会社経費で補填できるため、恩恵を感じやすいでしょう。
ただし、食事補助に関する福利厚生費を非課税とするには、以下2点の要件を満たさなければなりません。
- 役員や従業員が食事の価額の半分以上を負担していること
- 会社負担額が1ヶ月当たり7,500円(消費税および地方消費税の額を除く)以下であること
また、食事手当として現金を支給した場合、給与とみなされてしまい、課税対象となります。
非課税の食事補助を提供したいのであれば、お弁当の現物支給や要件を満たした食事補助サービスなどの制度設計にしましょう。
役員向けの福利厚生として認められないケース
ここでは、役員向けの福利厚生として認められないケースについても紹介します。
なぜこれらのケースは福利厚生として認められないのか、福利厚生として認められるにはどのような制度内容にすればよいかを確認してみてください。
役員のみが加入する養老保険
役員や特定の役職者のみを対象として養老保険に加入し、会社が保険料を負担する場合、保険費用は福利厚生費として認められません。
福利厚生費は、原則として「全従業員を平等に対象としていること」が条件です。
役員のみが加入する場合、福利厚生費ではなく役員への給与や賞与とみなされ、課税対象となってしまいます。
認められるには全従業員を被保険者として加入させる必要があります。
職種や年齢、勤続年数などによって保険金額に格差を設ける場合も、社会通念上妥当な範囲に収めましょう。
役員のみが利用できるレジャー施設、ゴルフ会員権
役員専用の保養所や、特定の役員のみが利用するゴルフ会員権の入会金・年会費を会社が負担した場合、これらの費用は福利厚生費として認められません。
役員しか使えない施設や特定の個人しか利用できない施設は、福利厚生ではなく個人の嗜好品への援助とみなされてしまいます。
また、ゴルフは「接待」か「私用」の区別が難しく、役員だけが利用している場合は私的流用とみなされる可能性が高くなります。
福利厚生として整備する際には、従業員全員が利用できる形式にするのはもちろん、実際に誰がどのような意図で利用したかの記録を残しておくことが重要です。
とくに接待で利用した場合は「交際費」として処理し、参加者や目的を明確に記録すると税務上のリスクを最小限に抑えられます。
役員のみを対象にしたお祝い金
役員のみを対象に記念金制度を導入していた場合も、その費用は福利厚生費として認められません。
ほかの従業員と比較して著しい差がある場合や、役員のみを優遇する特別な手当は、実質的な役員報酬とみなされ、給与課税となる恐れがあります。
あらかじめ社内規定にて慶弔見舞金に関する規定を設けておき、どの役職の従業員にはどの程度の金額を支給するのか明文化しておきましょう。
また、役職による差を設ける際にも、社会通念上妥当な範囲にとどめるようにするのが大切です。
役員専用の送迎車の私的利用
会社名義の役員車や運転手付きの送迎車を、休日の家族旅行やゴルフなど、私的な用途に使用するケースも、ガソリン代や維持費などは福利厚生費として認められません。
業務と関係のない移動にかかるコストを会社が負担することは、役員の個人的な支出を肩代わりしているのと同じであり、役員報酬とみなされてしまいます。
仮に会社名義の役員車を私的利用する場合、運行記録表や運転日報を作成・保存し、「業務利用」と「私的利用」を明確に区分しましょう。
税務調査時に業務での使用分を客観的に証明できるようにしておくのが大切です。
役員のみが使用できる会社備品
会社名義で購入したマッサージチェアやコーヒーメーカーなどを役員室などの役員しか入れない場所に設置した場合、購入費は福利厚生費として認められません。
福利厚生費の対象はあくまで従業員全体の労働支援、生活環境の改善の支出のみであり、特定の個人のみが独占している備品は認められないためです。
福利厚生として購入した備品については、休憩スペースや共有フロアなど、全従業員がいつでも自由に利用できる場所に設置する必要があります。
また、備品の内容や金額が、職場の環境改善として社会通念上妥当な範囲であることを意識しましょう。
役員の福利厚生についてよくある質問
ここからは、役員の福利厚生に関するよくある質問を紹介します。中小企業や家族経営の方は、ぜひ参考にしてください。
従業員が役員しかいない場合は福利厚生はどうすればいい?
従業員がおらず役員のみで構成される会社では、原則として法定外福利厚生を福利厚生費として計上するのが困難です。
比較対象となる第三者の従業員がいない環境では、福利厚生に関する支出が「福利厚生」なのか「役員個人の私的な支出」なのかの区別がつかないためです。
役員のみの旅行や飲食費用を福利厚生費として計上しても、実態が「家族での飲食や旅行」とみなされれば役員報酬とみなされてしまうでしょう。
一方で、人間ドックなど、会社が義務として実施する側面があるものは、役員のみの会社でも福利厚生として認められる傾向にあるため、事前に専門家と相談しておきましょう。
社長1人で経営している場合の福利厚生はどうすればいい?
社長1人の会社(一人社長)の場合、福利厚生として認められる基準は、「従業員が役員のみ」の場合よりも厳格となります。
そもそも、社長は雇用される側(従業員)ではなく経営する側であるため、自分自身に対する福利厚生という考え方が成立しにくいのです。
ただし、一人社長でも活用できる福利厚生としては役員社宅が挙げられます。
福利厚生費を活用した節税をしたい場合は、役員社宅の活用を検討してみてください。
社長の子どもが役員を勤めている場合の福利厚生はどうすればいい?
社長の子どもが役員を勤めている場合、その会社に家族以外の従業員がいるかどうかで、扱いが大きく異なります。
家族以外の従業員がいない家族経営の場合、事業主と同一会計上の扱いと判断されるため、社長1人の場合と同様、法定外福利厚生費の計上は認められにくくなるためです。
一方で、ほかの従業員がおり、なおかつ全従業員が平等に利用できる福利厚生制度ならば、社長の子どもである役員も同様にその制度を活用できます。
なお、役員向け福利厚生の導入を検討している方には、社宅関連の制度を導入するのがおすすめです。
手続きや運用にお困りの場合は、マネーフォワードクラウドのサービスをぜひご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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