• 更新日 : 2026年5月11日

独立して個人事業主になるには?開業届から届出・手続きまで解説

Point個人事業主になるには?

税務署へ開業届を提出し、必要に応じて青色申告承認申請書などの届出を行います。

  • 開業届を事業開始から1か月以内に納税地の税務署へ提出する
  • 最大65万円の控除を受けるため青色申告承認申請書を併せて出す
  • 退職後14日以内に国民健康保険や国民年金への切り替えを行う

独立(目的)には、税務署への開業届提出が必須であり、青色申告の手続きを同時に進めることで節税メリットを最大化しつつ、社会保険の切り替えを速やかに行うことが重要です。

独立して個人事業主になるには、税務署へ「開業届」を提出し、必要に応じて青色申告承認申請書などの届出を行います。開業届の提出により屋号付き口座の開設や青色申告特別控除(最大65万円)が利用でき、事業の信頼性や節税面で大きなメリットがあります。「届出の書き方がわからない」「会社員のまま副業で始められるのか」といった疑問を抱える方に向けて、独立・開業に必要な手続きや届出の流れ、個人事業主として知っておきたい税金・保険の知識までまとめました。

目次

独立して個人事業主になるとはどういうことか?

個人事業主とは、法人を設立せず個人の名義で事業を営んでいる人を指す税法上の呼び方です。税務署に開業届を出し、継続的に事業収入を得ている状態が「個人事業主」の条件になります。

個人事業主の定義を確認する

個人事業主は、会社(法人)をつくらずに自分の名前や屋号で仕事を行う事業者です。フリーランスのエンジニアやデザイナー、飲食店オーナー、建設業の一人親方など、業種は多岐にわたります。

フリーランスは「組織に属さない働き方」を指す言葉であり、事業的な規模で業務を行ってはじめて税務上の個人事業主となります。両者はイコールではなく、フリーランスであっても事業的な規模で業務を行っていなければ個人事業主には該当しません。

参照:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン|厚生労働省

個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人では、設立コスト・税制・社会的信用に差があります。それぞれの特徴を比較すると以下のとおりです。

項目 個人事業主 法人
設立費用 0円(届出のみ) 約6万〜25万円
税金 所得税(累進課税) 法人税(一定税率)
社会的信用 法人より低い傾向 取引先から信用されやすい

独立当初は売上の見通しが立ちにくいため、費用をかけずに始められる個人事業主からスタートし、事業が安定してから法人化を検討する方が少なくありません。

フリーランスとの違い

フリーランスとは、特定の企業に雇用されず案件ごとに業務を受注する「働き方」のことです。一方、個人事業主は税務署に開業届を提出し、継続的に事業を行う「税法上の立場」を表します。厚生労働省のガイドラインでも、フリーランスは「実店舗を持たず雇人もいない自営業主や一人社長」と広く定義されており、個人事業主と完全に一致するわけではないでしょう。

副業でフリーランスとして働く会社員が、開業届を出して個人事業主を兼ねるケースも増えています。

独立で個人事業主になるメリット・デメリットとは?

個人事業主として独立する最大のメリットは、開業手続きの手軽さと青色申告による節税効果です。一方で、社会保険の全額自己負担や収入の不安定さといったデメリットもあります。

独立するメリット

登記などの手続きなく事業を始められ、法人のように登記費用がかからない点が最初のメリットです。また、青色申告を利用すれば最大65万円の特別控除が受けられます。赤字を3年間繰り越せる制度や、専業の家族への給与を経費にできる青色事業専従者給与など、個人事業主ならではの節税の仕組みも用意されています。

屋号付きの銀行口座を開設できるようになるため、プライベートと事業の資金管理を分けやすくなるのも実務面の利点でしょう。

独立するデメリットやリスク

会社員時代は勤務先が半額を負担していた社会保険料を、独立後はすべて自分で支払う必要があります。国民健康保険と国民年金への切り替えが必要で、保障の範囲も厚生年金保険より限定的です。また、売上が不安定な時期には、毎月の固定費(家賃、通信費、保険料など)が負担に感じる場面もあるのではないでしょうか。

個人で所得補償保険などに加入していない限り、就労不能になった際の保障がない点も見落としがちなリスクです。

会社員をしながら個人事業主になれるか

会社員のまま副業として個人事業主になることは制度上は認められています。開業届を出し、副業で得た所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。ただし、勤務先の就業規則で副業が制限されていないか、事前に確認しましょう。

副業で開業届を出すと、失業時に雇用保険の基本手当(失業手当)を受給できなくなる場合があるため、タイミングには注意が求められます。

個人事業主の開業届はどう書く?提出方法と手順

開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)は、開業した年の確定申告書の提出期限までに所轄の税務署へ提出します。書式は国税庁のサイトからダウンロードできるほか、e-Taxを使ったオンライン提出にも対応しています。

STEP1:開業届を入手する

開業届の用紙は、国税庁の公式サイト「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」ページからPDFをダウンロードできます。税務署の窓口にも備え付けがあります。

また、マネーフォワード クラウド開業届といったオンラインサービスを使えば、質問に答える形式で自動作成も可能です。

参照:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

STEP2:開業届に記入する

記入する主な項目は、納税地(住所)、氏名、生年月日、屋号、事業の概要、開業日などです。屋号は空欄でも提出できますが、屋号付き銀行口座を開設したい場合は記入しておくとよいでしょう。事業の概要欄には「Webデザイン業」「飲食業」など、具体的な業種を記載します。

なお、2026年(令和8年)1月1日施行の改正により、開業届の届出期限が見直される予定です。従来は事業開始から1か月以内とされていましたが、改正後の内容については国税庁の最新情報を確認してください。

STEP3:税務署へ提出する

提出方法は、税務署への直接持参、郵送、e-Tax(オンライン)の3種類です。2025年1月以降、紙で提出した場合の「収受日付印」の押なつが廃止されました。そのため、提出の証明が必要な場面ではe-Taxでの送信がスムーズです。

e-Taxで提出すると「受信通知」や「電子申請等証明書」が発行され、開業届の提出を証明する書類として利用できます。窓口・郵送で提出した場合は、経過措置として「税務署名と日付が記載されたリーフレット」を受け取れます。

参照:令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて|国税庁

開業届と一緒に出すべき届出・申請書は?

開業届と同時に提出しておきたい書類がいくつかあります。特に青色申告承認申請書は、提出期限を過ぎると1年目から青色申告ができなくなるため、開業届とセットで準備しましょう。

青色申告承認申請書を提出する

青色申告の特別控除(最大65万円)を受けるためには、原則として事業開始日から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。

開業届と同時に提出するのが一般的です。青色申告では複式簿記による帳簿付けが求められますが、会計ソフト(マネーフォワードクラウドなど)を使えば専門知識がなくても対応できるでしょう。

給与支払事務所等の開設届を出す

従業員やアルバイトを雇う場合、もしくは青色事業専従者給与を支払う場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します。提出期限は開設から1か月以内です。家族を青色事業専従者として雇用する予定がある方は、「青色事業専従者給与に関する届出書」もあわせて提出しておきましょう。

事業開始等申告書を都道府県へ出す

開業届とは別に、都道府県税事務所へ「事業開始等申告書」を提出する必要があります。個人事業税に関する届出であり、名称は地域によって異なります(東京都では「事業開設等申告書」)。提出しなくても罰則はありませんが、届出を済ませておくと行政からの案内や通知がスムーズに届くため、開業届と一緒に手続きを済ませる方が多いです。

個人事業主が独立後に対応すべき税金と確定申告

独立後は所得税、住民税、個人事業税、消費税(課税事業者の場合)など、複数の税金を自分で管理しなければなりません。毎年2月16日〜3月15日の期間に確定申告を行い、1年間の所得と税額を申告します。

確定申告の流れを押さえる

確定申告では、1月1日から12月31日までの収入・経費を集計し、所得金額を計算します。青色申告の場合は貸借対照表損益計算書の作成も必要です。e-Taxを利用すると自宅から申告でき、青色申告特別控除も65万円の満額を適用できます。帳簿類(仕訳帳総勘定元帳など)は7年間の保存義務があるため、日頃からこまめに記帳しておくと年末の作業がスムーズになるでしょう。

インボイス制度への対応を検討する

2023年10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、課税事業者と取引する個人事業主は、適格請求書発行事業者への登録を検討する場面が増えました。登録すると消費税の申告・納付義務が生じますが、取引先が仕入税額控除を受けるためには適格請求書が必要です。2026年10月には経過措置の控除割合が変わるタイミングでもあるため、取引先との関係をふまえて判断しましょう。

参照:インボイス制度について|国税庁

経費にできるものを把握する

個人事業主は、事業に関連する支出を経費として計上できます。代表的な経費には、仕入代金、家賃(事業使用分)、通信費、交通費消耗品費広告宣伝費などがあります。

自宅で仕事をする場合は、家賃や光熱費の一部を「家事按分」として経費にできます。按分割合は使用面積や使用時間で合理的に算出し、根拠を説明できるようにしておきましょう。領収書やレシートは5年〜7年の保存が必要です。

個人事業主の独立後に必要な社会保険の手続き

会社員から独立すると、健康保険は国民健康保険へ、年金は国民年金への切り替えが必要になります。退職日から14日以内に、市区町村の窓口で手続きを行いましょう。

国民健康保険に加入する

会社の健康保険から脱退した後は、お住まいの市区町村で国民健康保険の加入手続きを行います。保険料は前年の所得に基づいて計算されるため、独立1年目は会社員時代の所得をベースにした高い保険料になることがあります。なお、退職後2年間は前職の健康保険を「任意継続」する選択肢もあるため、保険料を比較して有利なほうを選ぶとよいでしょう。

国民年金に切り替える

厚生年金保険から国民年金(第1号被保険者)への切り替えも市区町村の窓口で行います。厚生年金保険に比べて将来の受給額が少なくなるため、国民年金基金やiDeCo(個人型確定拠出年金)を上乗せする方も増えています。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象になるため、節税対策としても有効です。

小規模企業共済や退職金制度を活用する

個人事業主には退職金制度がないため、廃業や引退時の備えとして「小規模企業共済」への加入を検討しましょう。中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する制度で、毎月の掛金(1,000円〜70,000円)は全額所得控除になります。

事業をたたむ際にまとまった共済金を受け取れるため、個人事業主の「退職金代わり」として広く利用されています。

参照:小規模企業共済|中小機構

独立前に個人事業主が準備しておくべきこと

勢いだけで独立すると、資金不足や売上の低迷で苦しむ場面が出てきます。在職中にできる準備を整えてから独立に踏み出すほうが、事業を安定させやすいでしょう。

事業計画と資金計画を立てる

どのような事業を行い、誰を顧客にするのかを整理し、開業後6か月〜1年間の収支をシミュレーションしておきます。日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円です。ただし、約42%の開業者が500万円未満で事業を始めており、自宅開業やオンラインビジネスであれば少額でスタートできるケースもあります。

運転資金として最低3か月分の生活費と事業経費を確保しておくと安心です。

参照:2025年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所

事業用の銀行口座やクレジットカードを用意する

事業用とプライベートの口座を分けることで、経理処理が格段にやりやすくなります。屋号付き口座を開設できる銀行は限られますが、ネット銀行を中心に個人事業主向けの口座開設サービスが広がっています。事業用のクレジットカード(ビジネスカード)もあわせて作っておくと、経費の把握がスムーズです。

開業届提出前にクレジットや賃貸借契約を済ませる

独立直後は「会社員」という信用がなくなるため、クレジットカードの審査や賃貸借契約の審査が通りにくくなることがあります。必要なカードの発行やオフィス・自宅の賃貸借契約は、在職中に済ませておくのが賢明です。住宅ローンの借り入れについても、独立後は審査が厳しくなる傾向があるため、タイミングを慎重に検討しましょう。

個人事業主の独立で見落としがちな届出・登録まとめ

開業届や青色申告以外にも、業種によっては許認可や届出が求められます。届出を忘れると営業停止や罰則の対象になることもあるため、事前のチェックが欠かせません。

業種別の許認可を調べる

飲食店であれば「食品衛生責任者」の資格と保健所の営業許可、美容室なら「美容所開設届」の提出と確認が必要です。建設業で請負金額が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)になる場合は建設業許可の取得が求められます。許認可の取得には一定の審査期間を要するため、開業日から逆算して余裕を持って準備を進めましょう。

インボイス登録番号の取得を判断する

前述のインボイス制度に関連して、適格請求書発行事業者の登録番号を取得するかどうかの判断も開業時に行います。2年前の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者は登録が任意ですが、法人の取引先が多い場合は登録を求められるケースが増えています。

登録・未登録それぞれの影響を試算し、税理士に相談のうえで方針を決めるとよいでしょう。

開業届の届出期限の改正に備える

2026年(令和8年)1月1日施行の税制改正により、開業届の届出期限が変更されます。改正前は「事業開始から1か月以内」でしたが、「確定申告期限まで」に変更されました。届出期限を過ぎても罰則はありませんが、青色申告承認申請書とセットで提出するスケジュールを組んでおくと漏れが防げます。

参照:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続

独立して個人事業主になるには必要な届出と手続きを確認しましょう

独立して個人事業主として事業を始めるには、開業届の提出、青色申告承認申請書の準備、社会保険の切り替えが基本の3ステップです。業種によっては許認可の取得やインボイス登録番号の判断も加わります。

在職中に事業計画や資金計画を練り、開業届と関連届出をまとめて提出する段取りを組むことで、独立後のスタートがスムーズになるでしょう。

届出や申告に不安がある場合は、税理士への相談も選択肢に入れてみてください。


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