- 更新日 : 2026年3月18日
合同会社と個人事業主の違いは?メリット・デメリットやどちらを選ぶべきかを解説
費用と手軽さを重視するなら個人事業主、節税と社会的信用を重視するなら合同会社が最適です。
合同会社は最低約6万円から設立可能で、株式会社(約20万円〜)に比べ安価です。
これから起業を考えている方や、現在フリーランスとして活動している方にとって、「個人事業主としてスタートするか」「合同会社を設立するか」は大きな悩みどころです。結論から言えば、「売上規模が小さくコストを抑えたいなら個人事業主」、「節税効果や対外的な信用、リスク回避を重視するなら合同会社」が適しています。
本記事では、合同会社と個人事業主の法的な違い、税金面での損益分岐点、それぞれのメリット・デメリットを解説します。自身の事業フェーズに合った最適な選択肢を見つけましょう。
目次
合同会社と個人事業主の比較【一覧表】
合同会社と個人事業主の最大の違いは、「法人格の有無」と「責任の範囲」、そして「適用される税制」です。まずは以下の比較表で、全体像を把握しましょう。
| 項目 | 合同会社 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 法人格 | あり | なし |
| 責任範囲 | 有限責任 | 無限責任 |
| 設立費用 | 約6万円〜(登録免許税等) | 0円 |
| 適用税金 |
|
|
| 節税効果 | 高い | 限定的 |
| 赤字繰越 | 最大10年 | 最大3年 |
| 社会保険 | 強制加入 | 任意※ |
| 信用度 | 高い | 低い |
※業種によって異なりますが、原則として個人事業主本人は国民健康保険・国民年金となります。
合同会社とは?
合同会社とは、株式会社などと同様に日本の会社形態の一種です。2006年の会社法施行により、それまであった有限会社が廃止※され、合同会社が設立できるようになりました。
※すでに設立済みの有限会社で会社法施行時に特に手続きを行わなかったところは、2022年現在もそのまま有限会社として存在しています。
合同会社の特徴を簡単に押さえておきましょう。
- 出資者と会社の所有者(経営者)が同じ
株式会社は出資者(株主)と経営者が別です。また、株主総会を開催する必要があり、株主は出資比率に応じて議決権を持ちます。しかし、合同会社は出資者と会社の所有者が同じです。株主総会を開く必要もなく、出資者以外の人が経営についての議決権を持つこともありません。 - 社員全員が有限責任社員
合同会社の社員は出資した金額までしか責任を持たなくても良い「有限責任社員」です。倒産し、大きな負債を抱えた場合でも、出資金額以上の責任を負う必要がありません。
合同会社についての詳細はこちらの記事も参考にしてください。
個人事業主とは?
個人事業主とは、株式会社や合同会社などの法人を設立せず、個人で事業を行う人のことです。この場合の事業とは「独立して継続的に同じ種類の取引を行う」ことを指します。不定期にフリーマーケットに出店し、不用品を販売しているといった人は個人事業主とはなりません。また、個人で事業を行う際は税務署に「開業届」を提出する必要があります。
個人事業主についての詳細はこちらの記事も参考にしてください。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気のガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
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合同会社と個人事業主の具体的な違いは?
ここからは、開業判断で特に重要となる5つのポイントを深掘りして解説します。
1. 初期費用(イニシャルコスト)の違い
個人事業主は無料で開業できますが、合同会社の設立には最低でも約6万円の実費が必要です。
2. 税金の違い
個人事業主の場合、超過累進課税のため、所得金額が増えるとその分所得税額も増えます。以下の所得税の速算表で税率を確認してみましょう。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
| 195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
合同会社の場合は法人税を納めます。法人税の税率は原則として以下の通りです。
| 課税される所得金額 | 税率 |
|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 約15% |
| 年800万円超の部分 | 約23.2% |
なお、個人事業主は赤字なら住民税は課税されませんが、法人の場合は赤字でも法人住民税の均等割(最低7万円)の支払いが毎年発生するため注意が必要です。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁、No.5759 法人税の税率|国税庁
3. 社会保険の加入義務の違い
固定費を抑えたい初期段階では、個人事業主の方が負担が少ない場合があります。
- 個人事業主:原則として国民健康保険・国民年金
法定の業種であり、かつ従業員を5人以上雇用しない限り、社会保険(厚生年金・健康保険)への強制加入はありません。注意したいのが、個人事業主という立場だと社会保険に加入できないことです。そのため、5人以上雇用して強制加入になったとしても、個人事業主自身は国民保健保険、国民年金に入り続ける必要があります。 - 合同会社:強制加入
社長1人だけの会社であっても、社会保険への加入が義務付けられます。会社負担分を含めると保険料の負担感は増しますが、将来受け取る年金額が増えるメリットもあります。
4. 責任範囲の違い
個人事業主は事業の失敗を個人の私財で償う必要がありますが、合同会社なら出資額の範囲内で済みます。
- 個人事業主:無限責任
事業で失敗して多額の負債を抱えた場合、個人の貯金や自宅を売却してでも返済する義務があります。 - 合同会社:有限責任
会社が倒産しても、原則として出資額(資本金)が戻ってこないだけで済みます。個人の私財まで差し押さえられることはありません。
※ただし、金融機関からの借入時に代表者が「連帯保証人」になっている場合は例外です。
参考:有限責任と無限責任について教えてください。| ビジネスQ&A | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
5. 経理事務・決算の違い
事務負担の軽さなら「個人事業主」、厳格な会計なら「合同会社」です。
個人事業主が合同会社を設立するメリットは?
個人事業主から法人化(法人成り)することには、大きなメリットがあります。
1. 高い節税効果
「役員報酬」の活用により、個人と法人のダブルで節税が可能です。法人税率の低さに加え、自分自身に「役員報酬」を支払うことで、法人側はそれを経費にでき(利益圧縮)、個人側では「給与所得控除」を受けられます。この所得分散効果により、トータルの納税額を抑えやすくなります。
2. 社会的信用の向上
法人であること自体が信頼の証となり、企業との取引や銀行融資において有利に働きます。
大手企業の中には、コンプライアンス規定により「個人事業主とは直接契約しない」というケースも少なくありません。合同会社として法人化することで、取引の幅が広がります。また、金融機関からの融資審査でも、決算書のある法人は信用力を評価されやすくなります。
3. 設立手続きが簡単・低コスト
株式会社に比べ、時間と費用を節約して法人化できます。株式会社設立時に必要な「定款認証(公証役場での手続き)」が合同会社では不要です。
- 株式会社: 費用約20万円〜、定款認証が必要。
- 合同会社: 費用約6万円〜、定款認証が不要。決算公告の義務もなし。
個人事業主が合同会社を設立するデメリットは?
一方で、注意すべきデメリットも存在します。
1. 設立費用とランニングコストがかかる
開業時だけでなく、維持費も個人事業主より高くなります。設立に最低6万円かかるほか、たとえ赤字でも毎年約7万円の法人住民税がかかります。また、税務処理を税理士に依頼する場合、年間数十万円の顧問料等のコストを見込んでおく必要があります。
2. 資金調達方法が限られる
上場を目指すような大規模な資金調達には向きません。合同会社は株式を発行できないため、投資家からの資金調達や上場(IPO)ができません。将来的に上場を目指すのであれば、最初から株式会社を選ぶか、途中で組織変更する必要があります。
合同会社・個人事業主がおすすめな人は?
事業規模、リスク許容度、そして「手間」をどれだけかけられるかによって、選ぶべき形態は明確に分かれます。以下にそれぞれの形態が適しているケースをまとめました。
合同会社がおすすめな人
売上が大きく、対外的な信用や節税メリットを最大限に活かしたい人は法人が適しています。
- 社会的信用を高めたい:大手企業との取引や、銀行融資をスムーズに進めたい場合。
- 高所得で節税したい:利益が800万円を超え、所得税よりも法人税率のメリットを受けたい場合。
- 経費範囲を広げたい:自分への給与(役員報酬)を経費にしたり、社宅制度を活用したりしたい場合。
- リスクを限定したい:万が一の倒産時に、個人の生活資金を守りたい場合。
- 事業拡大を見据えている:赤字繰越期間(10年)を活用し、長期的な投資回収サイクルを想定している場合。
個人事業主がおすすめな人
まずは小さく始めたい、複雑な事務作業やコストを避けたい人は個人事業が最適です。
- 手軽に早く始めたい:開業届を出すだけで、費用をかけずに即日スタートしたい場合。
- 事業規模がまだ小さい:売上が少なく、赤字になる可能性が高い初期フェーズ。
- 社会保険負担を避けたい:法人化による社会保険料の会社負担(約15%)を重荷に感じる場合。
- 事務管理を楽にしたい:複雑な法人決算や税務申告を避け、自分で確定申告を済ませたい場合。
個人事業主が法人成りすべきタイミングはいつ?
法人化(法人成り)の目安は「課税所得800万円」ですが、個人事業と法人を両立させる「兼業」も有効な戦略です。いきなり全てを法人にするのではなく、状況に合わせた柔軟な運用が可能です。
法人化すべき損益分岐点
一般的に、課税所得(利益)が800万円〜900万円を超えた時点が、税金面で法人化がお得になるラインです。
個人事業主の所得税率は累進課税のため、所得が増えるほど税負担が重くなります。一方、法人税は年800万円以下の部分は約15%と低く設定されています。また、売上1,000万円を超えて消費税の課税事業者になるタイミングで法人化すると、さらに最大2年間の免税期間を得られる可能性があります(インボイス制度の登録状況による)。
個人事業主が合同会社を設立する手順は?
合同会社の設立は、株式会社に比べて手続きがシンプルで、定款の認証(公証役場での手続き)が不要という特徴があります。主な流れは以下の3ステップです。
1. 基本事項の決定と印鑑作成
まずは会社名(商号)、所在地、事業目的、資本金額などの「定款」に記載する基本ルールを決定します。
- 商号:「合同会社」という文字を必ず含める必要があります。
- 事業目的:将来行う可能性のある事業も含めて記載しておくと、後々の変更手数料を節約できます。
- 会社実印:登記申請に必要となるため、商号が決まり次第、代表者印を作成します。
2. 定款の作成
会社の根本規則となる「定款」を作成し、出資者全員が署名・捺印します。
株式会社とは異なり、合同会社は公証役場での定款認証が不要です。これにより、認証手数料(約5万円)がかかりません。また、紙ではなくPDFなどの「電子定款」を作成すれば、収入印紙代(4万円)も節約でき、コストを最小限に抑えられます。
マネーフォワード クラウド会社設立では、合同会社の定款に使えるテンプレートを提供しています。無料でダウンロードしてご活用ください。
3. 資本金の払込と登記申請
出資金を個人の銀行口座へ入金し、法務局へ登記書類を提出することで設立が完了します。
- 払込:発起人(代表者)個人の口座に、資本金を振り込みます(通帳のコピー等が証明書になります)。
- 登記:「合同会社設立登記申請書」を作成し、登録免許税(最低6万円)を添えて、管轄の法務局へ提出します。
- 完了:申請書類に不備がなければ、1週間〜10日程度で登記が完了し、晴れて合同会社となります。
マネーフォワード クラウド会社設立では、合同会社の払込証明書に使えるテンプレートを提供しています。無料でダウンロードしてご活用ください。
合同会社と個人事業主の選択に迷ったら先輩起業家のデータも参考に
個人事業主のまま事業を続けるか、合同会社などの法人を設立するか迷う場合は、実際に会社を設立した先輩起業家のデータも参考にしてみましょう。
マネーフォワード クラウドが会社設立経験者を対象に設立前の状況を調査した結果、全体の57.8%が会社設立前に個人事業主として事業を行っており、法人成りの形で会社を設立したことがわかりました。特に設立2〜3年以内の企業では75.2%に上り、まずは個人事業主として手軽に始め、売上や利益が伸びたタイミングで合同会社などに法人化するケースが多い傾向にあります。
一方で、会社設立の手続きには苦労も伴うようです。会社設立の手続きで大変さを感じた項目を尋ねたところ、最も会社設立の手続きで大変さを感じた項目として挙げられたのは申請書類の作成で、48.7%でした。次いで、会社設立のやり方・手続きを調べること(44.9%)、会社の基礎情報を決定すること(37.5%)と続きます。
出典:マネーフォワード クラウド、個人事業主からの法人成りに関する全体傾向・会社設立で「大変さ」を感じた項目【会社設立の意思決定調査】(回答者:会社設立の経験がある方1,040名、集計期間:2024年1月)
合同会社の設立は株式会社より費用や手間が抑えやすいメリットがありますが、手続きや書類作成には一定のハードルがあるため、効率的に進めるための準備が重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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