• 作成日 : 2026年8月12日

傷病の状態の報告とは?様式第16号の11・第16号の2の書き方と提出期限を解説

Point傷病の状態の報告とは?

傷病の状態の報告は、様式第16号の2(届)と第16号の11(報告書)で提出時期・目的が異なります。

  • 届は1年6か月経過後1か月以内に1回提出
  • 報告書は毎年1月の休業給付請求時に添付
  • 傷病名は診断書と一字一句一致させる

Q. 報告書を提出しないと給付はどうなる?

A. 労基署が回復状況を確認できず、給付が保留される可能性があります。

傷病の状態の報告は、労災保険と健康保険のどちらに該当するかで使用する書類・提出先・期限がまったく異なります。労災では様式第16号の2(届)と様式第16号の11(報告書)を使い分ける必要があり、選択や記入を誤ると給付の遅延につながります。本記事では、傷病の状態等に関する報告書の書き方や届との違い、差し戻しを防ぐ実務のポイントを整理します。

傷病の状態の報告が必要な場面は?

傷病の状態の報告とは、労災保険において長期療養中の労働者の回復状況や傷病等級への該当性を、所轄の労働基準監督署に届け出る一連の手続きを指します。労災で長期療養中の従業員がいる場合は労災保険の様式を、私傷病で休職中の場合は健康保険組合の書式を使うため、まず「どちらの制度に該当するか」を確認するのが出発点です。

労災保険で使う書類を確認する

労災保険で傷病の状態を報告する書類は、主に以下の2種類です。

書類名 様式番号 提出タイミング
傷病の状態等に関する届 様式第16号の2 療養開始から1年6か月経過後1か月以内
傷病の状態等に関する報告書 様式第16号の11 毎年1月の休業給付請求時

どちらも提出先は所轄の労働基準監督署です。書類名が似ているため混同しやすいですが、提出時期と目的が異なるので注意しましょう。違いの詳細は後のセクションで整理します。

参考:傷病(補償)年金 傷病の状態等に関する届(16号の2)、傷病の状態等に関する報告書(16号の11)|和歌山労働局

健康保険の傷病手当金状況報告書との違いを押さえる

業務外のケガや病気の場合は、労災保険ではなく健康保険の傷病手当金が対象となり、報告書の書式・提出先も労災とは異なります。一部の健康保険組合では「傷病手当金状況報告書」や「療養状況・日常生活状況報告書」の提出を求めるケースもあります。

労災保険と健康保険では書式・提出先・添付書類がすべて異なるため、従業員から「傷病の報告書を出してほしい」と相談を受けたときは、まず労災か私傷病かを確認してから対応に入ると手戻りを防げるでしょう。

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傷病(補償)年金への切り替えの仕組みは?

労災の休業(補償)給付は、療養開始から1年6か月を経過しても傷病が治癒(症状固定)しておらず、傷病等級1〜3級に該当する場合、労働基準監督署長の職権によって傷病(補償)年金へ切り替わります。労働者災害補償保険法施行規則第18条の2において、この切り替えは労基署長の職権で行うと定められています。傷病が治った後に残る後遺障害については、別の制度である障害(補償)給付で対応する点も押さえておきましょう。

参考:労働者災害補償保険法施行規則|e-Gov法令検索

「1年6か月の壁」で変わること

療養開始から1年6か月が経過すると、労基署は傷病の状態を審査します。傷病等級に該当すれば、休業(補償)給付が打ち切られ、代わりに傷病(補償)年金が支給される流れです。

傷病(補償)年金は請求ではなく職権で支給が決定されるため、従業員本人が「切り替えの申請書」を出す必要はありません。ただし、労基署が判断材料とする「傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)」の提出は本人側に求められます。

参考:労働者災害補償保険法|e-Gov法令検索

傷病等級1〜3級の該当要件を確認する

傷病等級は障害の程度に応じて1級から3級までに区分されており、労働者災害補償保険法第18条および同法別表第一に基づき、それぞれ給付基礎日額に対する年金額が異なります。

傷病等級 年金額(給付基礎日額) 状態の目安
1級 313日分 常時介護を要する状態
2級 277日分 随時介護を要する状態
3級 245日分 常態として労務に服せない状態

等級に該当しない場合は、引き続き休業(補償)給付が支給されます。その場合でも、毎年1月に「傷病の状態等に関する報告書(様式第16号の11)」を提出する義務が継続するため、人事担当者は対象従業員のスケジュールを管理しておく必要があるでしょう。

参考:傷病(補償)等年金|福井労働局

傷病の状態の届と報告書の違いは?

「届」は1年6か月経過後に1回だけ提出する書類で、「報告書」は傷病等級に該当しなかった場合に毎年提出する書類です。冒頭で触れたとおり両者は名称が似ているため、役割・提出時期・添付書類の違いを改めて整理しておきましょう。

様式第16号の2(届)は1年6か月経過後に提出する

「傷病の状態等に関する届」は、療養開始日から1年6か月が経過した日の翌日から1か月以内に提出します。労基署はこの届をもとに、傷病(補償)年金へ切り替えるかどうかを判断します。

届には医師の診断書(または意見書)を添付する必要があります。診断書の取得には時間がかかることもあるため、経過日の1〜2か月前から準備を始めるのが現場では一般的です。

様式第16号の11(報告書)は毎年1月に提出する

「傷病の状態等に関する報告書」は、1年6か月を経過しても傷病等級に該当しなかった労働者が、翌年以降の毎年1月に休業給付を請求する際に添付して提出します。労基署が継続的に傷病の回復状況を確認するための書類といえるでしょう。

報告書を提出しないまま休業給付の請求だけを行うと、給付が保留されるおそれがあります。1月の請求スケジュールにあわせて、前年の12月ごろから従業員への案内と書類準備を進めておくとスムーズです。

参考:様式第16号の11 傷病の状態等に関する報告書|厚生労働省

届と報告書の比較

両書類の違いを一覧で確認しておきましょう。

項目 届(様式第16号の2) 報告書(様式第16号の11)
提出タイミング 療養開始1年6か月経過後1か月以内 毎年1月の休業給付請求時
提出回数 原則1回 傷病等級に該当するまで毎年
目的 傷病(補償)年金への切り替え判断 傷病の回復状況の継続確認
添付書類 医師の診断書 医師の診断書
提出先 所轄の労働基準監督署 所轄の労働基準監督署

傷病の状態の報告書の書き方は?

報告書(様式第16号の11)は、被災労働者本人の情報と傷病の関する情報で構成されています。記入漏れや添付書類の不足があると差し戻しになり、給付の支給が遅れるため、各項目のポイントを押さえて記入しましょう。

被災労働者本人が記入する欄のポイント

本人記入欄には、主に以下の情報を記載します。

  1. 労働保険番号:事業所の労働保険番号を記入する
  2. 氏名・住所・生年月日:住民票の表記と一致させる。引っ越し済みの場合は現住所を記入する
  3. 傷病名:診断書と同一の傷病名を記入する。通称や略称は避ける
  4. 負傷または発症年月日、療養開始年月日:それぞれの年月日を正確に記入する

特に傷病名は、医師の診断書と一文字でも違うと確認が入りやすいポイントです。記入前に診断書のコピーを手元に用意しておくと、表記ゆれを防げます。

医師の診断書・意見書の添付で気をつけること

届(様式第16号の2)では医師の診断書(意見書)の添付が必要です。

医師への依頼時に意識しておきたい点は次のとおりです。

  1. 発行に1〜2週間かかる医療機関もあるため、提出期限から逆算して早めに依頼する
  2. 「労災保険用の診断書」であることを窓口で伝える。通常の診断書と書式が異なる場合がある
  3. 診断書の発行費用は労災保険から給付される場合があるため、領収書を保管しておく

例えば、1月中に報告書を提出する必要があるなら、12月上旬には医療機関へ依頼を出しておくと、年末年始の休診期間を考慮しても余裕を持てるでしょう。

傷病の状態の報告書で差し戻しを防ぐには?

差し戻しの多くは、記入漏れ・傷病名の不一致・添付書類の不足といった原因に集中しています。人事・総務の担当者が事前に確認フローを整えておくだけで、修正対応にかかる時間を大幅に減らせるでしょう。

よくある差し戻し事例と対処法

差し戻しの原因ごとに、再提出までの対応手順を押さえておくと復旧が早まります。

差し戻しの原因 主な発生パターン 対処法
傷病名の不一致 本人記入欄の傷病名が診断書と表記違い 診断書の正式名称どおりに書き直して再提出する
添付書類の不足 診断書の添付漏れ 医師へ発行を依頼し、添付する
記入漏れ・誤り 住所変更や生年月日欄の空欄、記入の誤り 本人へ確認のうえ再記入し提出する

いずれの場合も、労基署から差し戻し理由の連絡を受けたらできるだけ早く本人・医療機関へ確認を取ることが、給付遅延を防ぐ鍵になります。

記入前に下書きメモを共有する

報告書は被災労働者本人が記入する欄が多いため、いきなり本番用紙を渡すと記入ミスが起きやすくなります。事前に下書き用のメモシートを共有し、記入すべき項目と注意点を一覧にしておくと効果的です。

下書きメモに含めておくと便利な項目は次のとおりです。

  • 労働保険番号(支給決定通知書に記載)
  • 傷病名(診断書に記載されている正式名称)
  • 現在の治療内容(通院頻度・リハビリの有無など)
  • 日常生活の状況(歩行・食事・入浴などの自立度)

長期療養中の従業員は体調に波があるケースも多いため、「一度で完璧に書いてもらう」よりも「メモをもとに下書き→確認→清書」の3ステップで案内すると、本人の負担も軽減できます。

医師への依頼時の伝え方を統一する

従業員が医師に診断書を依頼する際、「労災の報告書に使います」とだけ伝えると、医療機関側で書式や記載内容が食い違うケースが起こりがちです。

人事から従業員へ渡す依頼テンプレートに、以下の情報を盛り込んでおくと差し戻しリスクが下がります。

  • 書類の正式名称(「傷病の状態等に関する届」または「報告書」)と様式番号
  • 医師に記載してもらいたい項目(傷病名・現在の症状・就労の可否・回復の見込み)
  • 提出期限と、そこから逆算した診断書の希望完成日

依頼文をあらかじめ社内フォーマット化しておくと、担当者が変わっても記載内容がぶれにくくなり、差し戻しの頻度を抑えやすくなります。傷病名の解釈や労災認定の判断が難しいケースでは、社会保険労務士に相談し、提出代行を依頼する選択肢もあります。実際に様式第16号の11には社会保険労務士の記載欄が設けられており、専門家が事務代理者として提出手続きに関与できる仕組みになっています。

傷病の状態の報告は電子申請できる?

傷病の状態の報告は、届・報告書の双方がe-Gov(イーガブ)を通じた電子申請に対応しています。郵送や窓口に赴く手間を省けるため、積極的に活用してください。なお、原則365日24時間電子申請が可能ですが、保守作業等で利用できない場合もあるため、公式ページを確認しておくと安心です。

電子申請できない場合は持参または郵送する

電子申請を利用できる環境にない場合など、電子申請できない場合は、窓口へ持参するか郵送薄ることになります。郵送の場合は配達記録が残る書留や特定記録郵便を利用すると、提出日の証明が残るため安心です。

参考:労働保険関係手続の電子申請について|厚生労働省

社会保険労務士への手続き代行も検討

傷病の状態に関する報告は、社会保険労務士に手続きを代行してもらうことが可能です。これは電子申請でも変わりません。社会保険労務士に手続きを委任している場合は、事務代理者として電子申請を代行できる仕組みが整っています。委任契約の範囲や利用できる電子証明書は事務所ごとに異なるため、依頼前にどの手続きまで電子申請で対応できるかを確認しておくと、紙提出との使い分けがスムーズになります。

参考:手続検索|e-Gov電子申請

書類のスキャン保存で管理負担を減らす

電子申請の可否にかかわらず、提出前の書類をスキャンしてPDF保存しておくと、社内管理の手間を減らせます。特に長期療養のケースでは、毎年提出する報告書が蓄積されるため、紙だけで管理していると過去分の参照に時間がかかりがちです。

スキャン保存で実践しやすい運用ルールの例を挙げます。

  1. ファイル名に「従業員名_提出年月_様式番号」を付けて保存する
  2. クラウドストレージの共有フォルダに年度別で格納する
  3. 提出済み・未提出のステータスを管理表(スプレッドシート等)で一元化する

クラウド会計ソフトや労務管理ツールを導入済みの企業であれば、書類管理機能と連携させることで提出期限のリマインドも自動化できます。対象従業員が複数名いる場合は、個別の期限をカレンダーアプリに登録しておくだけでも提出漏れの防止につながるでしょう。

傷病の状態に関するよくある質問

傷病の状態に関するよくある質問をまとめました。

傷病の状態の報告書を提出しないとどうなる?

報告書を提出しないまま休業給付の請求だけを行うと、労基署が回復状況を確認できず、給付が保留される可能性があります。翌年以降も傷病等級に該当するまで、毎年1月の提出が必要です。

傷病(補償)年金は自分で申請が必要?

傷病(補償)年金は職権主義がとられているため、本人が支給申請書を提出する必要はありません。ただし、労基署が切り替えを判断するための「傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)」の提出は本人側に求められます。

様式第16号の11はどこで入手できる?

所轄の労働基準監督署の窓口で受け取れるほか、厚生労働省の公式サイトからPDF形式でダウンロードできます。

参考:様式第16号の11 傷病の状態等に関する報告書|厚生労働省

差し戻しになった場合、再提出までどのくらい時間がかかる?

差し戻しの理由によって異なりますが、医師の再証明が必要なケースでは1〜2週間程度を見込んでおくと安心です。傷病名の表記違いなど本人側で修正できる内容であれば、より短期間での再提出も可能です。

社会保険労務士に依頼できる?

報告書には社会保険労務士の記載欄が設けられており、提出代行や事務代理を依頼できます。書類作成に不安がある場合や、労災認定・傷病等級の判断が難しいケースでは、専門家への相談も選択肢の一つです。

傷病の状態報告で給付遅延を防ぐために

傷病の状態の報告は、書類の選択・記入・期限管理を正しく行うことで給付遅延を防ぐことができます。労災か私傷病かを最初に確認し、届(様式第16号の2)と報告書(様式第16号の11)の提出時期を混同しないよう管理しましょう。診断書の作成は、2週間程度かかる場合もあるため、余裕をもって作成を依頼しておくと、差し戻しのリスクを抑えられます。まずは対象従業員の療養開始日を確認し、提出期限をカレンダーに登録するところから始めてみてください。


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