- 更新日 : 2026年7月7日
雇用助成金とは?主な8種類と選び方、申請方法をわかりやすく解説
雇用助成金は、雇用維持・採用・人材育成に取り組む事業主へ国が費用の一部を支援する返済不要の制度です。
- 厚生労働省所管で返済不要・用途も幅広い
- 代表的な種類は8種類、目的別に選ぶ
- 取り組み前に計画届の提出が原則必要
Q. 自社に合う雇用助成金はどう選べばよい?
A. 解決したい課題から逆算して選ぶのが基本です。雇用維持なら雇用調整助成金、採用ならトライアル雇用助成金、育成なら人材開発支援助成金が代表的な候補です。
人材に関する取り組みの費用負担が抑えられる「雇用助成金(雇用関係助成金)」は、返済が不要かつ、使い道も幅広いのが特徴です。
一方で、種類が多いことから、どの助成金を活用できるのか判断に迷いやすい側面があります。
そこで本記事では、「雇用助成金(雇用関係助成金)」の主な種類から自社に合う助成金の選び方、受給要件や申請の流れを解説します。ぜひ、参考にしてみてください。
雇用助成金(雇用関係助成金)とは?
「雇用助成金(雇用関係助成金)」とは、従業員の雇用維持や採用、人材育成などに取り組む事業主に対して国から費用の一部を支援してもらえる、厚生労働省が所管の制度です。
人材の採用や育成、職場環境の整備など、幅広い用途で活用でき、雇用の安定と労働者の能力開発を後押しするために設けられています。
一方で、定められた要件を満たせば原則として受給できる点で、審査・採択を経て受給可否が決まる補助金とは異なります。
また、返済を前提とする融資とも異なり、受給した助成金に返済義務はありません。
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雇用助成金の主な種類
「雇用助成金(雇用関係助成金)」には、取り組みの目的に応じたさまざまな種類が用意されています。
なお、各助成金で支給額や要件が異なります。年度ごとに内容も見直されるため、最新情報を確認しておきましょう。
雇用調整助成金
「雇用調整助成金」は、景気の悪化などで事業を縮小する際に、休業や教育訓練、出向によって従業員の雇用を維持したい事業主を支援するための助成金です。
休業手当などを支払った分の一定割合が助成されます。たとえば、中小企業の助成率は原則3分の2となっており、1人1日あたり8,870円が上限の目安となります。
なお、助成率や上限額は毎年8月に見直されるため、申請前に最新の案内を確認しておきましょう。
特定求職者雇用開発助成金
「特定求職者雇用開発助成金」は、ハローワークからの紹介など、就職が困難な人を継続して雇い入れている事業主に支給される助成金です。
対象となるのは、高年齢者や障害者、母子家庭の母などです。
たとえば、特定就職困難者コースでは、中小企業の場合、対象者の区分に応じて1人あたり最大40〜240万円の範囲が支給されます。
複数回に支給を分けて行われ、対象者の区分ごとに複数のコースと上限額が設けられています。
参考:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)|厚生労働省
トライアル雇用助成金
「トライアル雇用助成金」は、職業経験の不足などから就職が難しい求職者を、原則3ヶ月の試行雇用として受け入れた場合に支給される助成金です。
たとえば、一般トライアルコースの支給額は、対象者1人あたり月額4万円で、最大3ヶ月分の12万円となります。
一方、対象者が母子家庭の母や父子家庭の父などの場合は、月額5万円が3ヶ月支給され、最大15万円になります。
なお、試行雇用の期間が終わったあとに本採用をする義務はありません。
参考:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
キャリアアップ助成金
「キャリアアップ助成金」は、有期契約やパート、派遣社員などの非正規雇用の従業員を正社員に変更したり、処遇を改善した事業主に支給される助成金です。
たとえば正社員化コースでは、有期雇用の従業員を正社員に変更した場合、中小企業で1人あたり40万円、重点支援対象者の場合は80万円が支給されます。
なお、対象者の区分や企業規模、加算の要件によって1人あたりの支給額は変わります。
人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」は、従業員に職業訓練や教育訓練を実施している事業主を支援するための助成金です。
訓練中の賃金の一部と、訓練にかかる経費の一部が助成の対象となります。
一方、デジタル分野の人材育成などを対象とする、事業展開等リスキリング支援コースでは、助成率が高く設定される場合があるため注意しましょう。
なお、人材開発支援助成金については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
人材確保等支援助成金
「人材確保等支援助成金」は、雇用管理制度の整備やテレワークの導入などにより、人材の定着や確保に取り組んでいる事業主を支援するための助成金です。
たとえば、テレワークコースでは、制度の導入に対して20万円が支給されます。
導入によって離職率が制度導入前より低くなるなど、一定の目標を達成した場合は、目標達成の助成金として10万円、賃金要件を満たしている場合は15万円が加算されます。
なお、コースや上限額は見直されることがあるため、年度ごとに最新の情報を確認しておきましょう。
参考:人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)|厚生労働省
参考:人材確保等支援助成金(テレワークコース)|厚生労働省
両立支援等助成金
「両立支援等助成金」は、育児や介護、不妊治療など、仕事と家庭の両立を支援する制度の整備に取り組んでいる事業主に支給される助成金です。
たとえば、出生時両立支援コースでは、男性従業員の育児休業の取得に対して1人目で20万円、2人目と3人目でそれぞれ10万円の支給となります。
さらに、男性従業員の育児休業の取得率を一定の水準まで満たした場合は、60万円が支給されます。
なお、コースごとに1人あたりまたは、事業所あたりの上限額が設けられているため、あらかじめ確認しておくことが必要です。
参考:2026(令和8)年度 両立支援等助成金のご案内|厚生労働省
65歳超雇用推進助成金
「65歳超雇用推進助成金」は、定年の引き上げや定年の廃止、継続雇用制度の導入など、高年齢者が長く働ける環境を目指している事業主を支援するための助成金です。
代表的な65歳超継続雇用促進コースの支給額は、措置の内容や定年の引き上げ幅、60歳以上の従業員の人数によって決まります。
たとえば、1年以上継続雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が10人以上在籍し、定年の定めを廃止した場合、最大の240万円が支給されます。
そのほか、高年齢者の雇用管理の改善や、無期雇用への転換を支援するコースも対象です。
なお、相談と申請の窓口は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の各都道府県支部となり、ハローワークではない点に注意しましょう。
自社に合った雇用助成金の選び方
自社に合う「雇用助成金(雇用関係助成金)」を選択するためには、以下のようなポイントを押さえておくことが重要です。
解決したい課題から探す
雇用助成金は、自社が解決したい課題から逆算して探すと選びやすくなります。
たとえば、雇用の維持なら雇用調整助成金、採用なら特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金が候補となります。
また、人材育成では人材開発支援助成金、職場環境の改善では人材確保等支援助成金や両立支援等助成金が代表的な候補です。
採用と労働条件の向上をセットで取り組みたい場合は、キャリアアップ助成金も検討できます。
一方で、課題ではなく支給額の大きさを基準に助成金を選ぶと、社内の現状や課題と異なる方向に取り組みが進むおそれがあるため注意が必要です。
まずは自社の課題を明確にしたうえで、該当する助成金を検討しましょう。
複数申請する場合は併給調整を確認する
複数の助成金を同時に申請する場合は、併給可否の事前確認が求められます。
また、同じ取り組みや同じ対象者について、複数の助成金を重ねて受給できないケースもあります。
助成金ごとに併給の可否が定められているため、判断に迷う場合は労働局やハローワークに確認しておきましょう。
雇用助成金の受給要件
「雇用助成金(雇用関係助成金)」には、種類を問わず、共通して満たすべき受給要件があります。
ここでは、すべての雇用助成金に共通する3つの受給要件について解説します。
雇用保険適用事業所の事業主であること
「雇用助成金(雇用関係助成金)」は、雇用保険の適用事業所の事業主であることが共通の前提となります。
雇用保険に加入する従業員を雇用していれば、個人事業主でも対象です。
財源が事業主の納める雇用保険料であるため、保険料を適切に納めていることも前提となります。
この前提が満たされない場合は、まず雇用保険の加入手続きから進める必要があります。
支給に必要な書類を整備・保管していること
受給要件として、出勤簿や賃金台帳、労働者名簿など、支給の審査に必要な書類を整備していることが求められます。
これらの書類は、申請後の調査に備えて一定の期間にわたり保管しなければなりません。
なお、助成金の支給決定日の翌日から5年間が、原則的な保存期間です。
一方、書類に不備があると、審査の遅れや不支給につながります。
労働局やハローワークの実地調査にいつでも応じられるよう、書類を提示できる状態に整理しておきましょう。
受給対象から除外される事由に該当しないこと
以下のいずれかに該当する事業主は、原則としてすべての雇用助成金を受給できません。
- 過去の労働保険料を納付していない
- 直近1年以内に労働関係法令の違反がある
- 過去5年以内に、不正受給により支給停止や返還命令を受けている
- 性風俗関連営業など、一部の業種のみを営んでいる
- 暴力団関係事業主など、反社会的勢力と関係がある
助成金の種類によっては「解雇・会社都合の退職」によって、支給対象外になることもあるため注意が必要です。
適切に受給を進めるためには、除外事由に当てはまらないか、申請の前に自社の状況を確認することが求められます。
雇用助成金の申請から受給までの流れ
「雇用助成金(雇用関係助成金)」の申請から受給までの一般的な流れは、以下のとおりです。
1.申請する助成金と支給要件を確認する
まず、選んだ助成金の支給対象や要件を確認しましょう。
なお、受付の期間や予算の上限が定められている助成金もあるため、募集状況を早めに確認する必要があります。
判断に迷う場合は、管轄の労働局やハローワークに相談しながら進めましょう。
2.計画届を作成して労働局・ハローワークに提出する
「雇用助成金(雇用関係助成金)」は、取り組みを始める前に計画届を作成し、管轄の労働局やハローワークに提出することが一般的です。
一方、雇用調整助成金など休業を伴う助成金は、計画届の提出にくわえて労使協定の事前締結が必要になります。
また、特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金など、計画届が不要かつ雇い入れ後に申請する助成金もあります。
3.計画にもとづいて取り組みを実施する
提出した計画にもとづいて、休業や雇い入れ、訓練などの取り組みを実施しましょう。
計画と異なる内容で進めると、支給の対象外となるおそれがあるためです。
なお、途中で計画を変更する場合は、事前に変更届の提出が必要になります。
具体的には、キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金は、変更届を出さないまま進めると、不支給となる可能性があります。
4.必要書類をそろえて支給申請する
取り組みの実施後、定められた支給申請の期間内に必要書類をそろえて申請しましょう。
申請の期間は助成金ごとに定められており、取り組み後2ヶ月以内が目安であることが一般的です。
期間を過ぎると受給できないため、早めに準備しておきましょう。
5.審査を経て助成金を受給する
申請後、労働局などの審査を経て支給額が決定し、指定の口座に助成金が振り込まれます。
審査の過程で追加の書類提出や確認を求められる場合があるため、いつでも対応できる体制を整えておきましょう。
なお、申請から入金まで数ヶ月かかることがある点にも注意が必要です。
雇用助成金を申請するうえでの注意点
「雇用助成金(雇用関係助成金)」は、申請すれば必ず受給できるわけではありません。
ここでは、申請するうえで気をつけておきたいポイントを解説します。
申請期限を必ず確認する
助成金ごとに計画届の提出期限や支給申請の期間が定められているため、期限を過ぎると受給できません。
制度によっては、年度の途中でも予算額に達した時点で、新規の受付が終了することもあります。
余裕をもって準備と申請を進めましょう。
不正受給のペナルティを理解する
偽りや不正な手段で助成金を受給すると、支給が取り消されるうえに、受給額を全額返還しなければなりません。
返還額には年3パーセントの延滞金と、返還額の20パーセントにあたる額が加算されます。
さらに、原則として5年間はすべての雇用助成金を申請できなくなり、事業主の名称などが公表されます。
意図的な不正だけでなく、要件を満たさないまま申請したケースも不正受給と判断される場合があるため、適切に提出しましょう。
入金までの期間を見込んで資金計画を立てる
「雇用助成金(雇用関係助成金)」は、取り組みの実施後に申請する後払いの制度です。
申請から入金までは数ヶ月以上かかることがあるため、費用の支出が先に発生する点を見込んで資金計画を立てる必要があります。
受給額を雑収入として正しく計上する
受給した助成金は、会計上は雑収入として処理するのが一般的です。
原則として、支給額が確定した日、つまり支給決定の通知を受けた日に計上します。
ただし、計上の時期は制度や会計処理によって異なる場合があるため、必要に応じて税理士に確認する対応が求められます。
さらに、雇用助成金は法人税や所得税の課税の対象となるため、注意が必要です。
なお、雇用助成金は人材の採用や定着を後押しする制度ですが、従業員に長く働いてもらうには、働き続けたいと思える環境づくりが欠かせません。
たとえば、社宅制度を法人名義に切り替えると、税金や社会保険料の負担を抑えながら、従業員の手取りを増やせます。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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