- 更新日 : 2026年7月7日
第三の賃上げとは?福利厚生を導入する利点と目的を解説
第三の賃上げとは、福利厚生を充実させることで税負担を増やさずに従業員の実質手取りを増やす手法です。
Q. なぜ給与増額より福利厚生の方が手取りが増えるの?
A. 福利厚生は要件を満たせば非課税で社会保険料の算定にも含まれないため、企業が投じたコストが税金で削られず従業員の手取りに直結するからです。
近年、物価上昇や人材不足を背景に、多くの企業で賃上げへの対応が求められています。
そうした中で、定期昇給の第一の賃上げ、基本給の水準を底上げする第二の賃上げとは異なる「第三の賃上げ」が気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、第三の賃上げの概要や具体的な施策、実施するメリットなどを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
第三の賃上げとは?
「第三の賃上げ」とは、福利厚生制度を充実させることで従業員の家計負担を軽減し、実質的な手取り額を増やす新しい賃上げ手法のことです。
現金給与を増やすと、それに応じて所得税・住民税・社会保険料の負担が増えるため、額面ほど手取りが増えず、従業員の恩恵が少なくなります。
一方、食事補助や社宅などの福利厚生は、一定の要件を満たせば非課税扱いとなり、社会保険料の算定基礎からも除外されます。
企業が投じたコストが税金で削られないため、従業員の手取りを実質的に増やせるのが第三の賃上げの特徴です。
第三の賃上げが注目される背景
第三の賃上げが注目されている背景には、物価高騰が挙げられます。
近年、世界的な物価高騰が賃金上昇を上回り、実質賃金がマイナスになる状況が続いています。
給与が上がっても生活が楽にならないという従業員の不満を解消する方法として、福利厚生の充実が有効です。
また、原材料費や人件費の高騰に直面する企業にとって、永続的な固定費増につながる給与の増額は負担が大きく、慎重にならざるを得ないという事情もあります。
こうした背景から、企業側と従業員側の双方にメリットのある施策として、第三の賃上げが注目されているのです。
なお、福利厚生の概要については、以下の記事で詳しく解説しています。法定・法定外の種類や具体的な制度を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
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※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
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第三の賃上げの具体的な手法6選
ここでは、第三の賃上げの具体的な手法を紹介します。主な福利厚生制度は、以下のとおりです。
食事補助
食事補助は、企業が従業員の飲食代の一部を補助する制度です。
専用のICカードやアプリを利用して、全国の提携飲食店やコンビニで支払う際の費用を会社が半額補助するサービスや、社食の運営、お弁当の支給といった形態があります。
ただし、食事補助が福利厚生として非課税になるには、以下の2つの要件を両方とも満たす必要があります。
- 従業員が補助額と同額以上の金額を自ら負担していること
- 企業の補助額が1か月あたり月額7,500円以下であること
栄養バランスの取れた食事を提供することで、従業員の健康維持や業務中の集中力向上も期待できるでしょう。
社宅
社宅は、企業が住宅を借り上げ、福利厚生として従業員に提供する制度を指します。
給与の一部を社宅の家賃として徴収し、所得税や社会保険料の算定基準となる額面給与を下げ、税金や保険料の負担を軽減する仕組みです。
このとき市場価格よりも低い家賃を設定できるため、家計の支出で大きな割合を占める住居費が軽減され、従業員の手取り額向上にも大きく寄与します。
ただし、現金で住宅手当を支給していた場合、福利厚生として非課税の対象にはみなされないため、必ず社宅という形態で提供するようにしましょう。
家賃徴収に関する注意点としては、国が定めた計算式による「賃貸料相当額」の50%以上を従業員から家賃として受け取る必要があります。
良かれと思って無料にしたりあまりにも低額な家賃設定にすると、その分が「給与」とみなされてしまい、従業員に所得税負担が発生する等、かえって手取りが減ってしまうことになるので注意が必要です。
通勤手当
従業員が職場に出勤するために必要な交通費を企業が支援する制度です。
公共交通機関の利用費や自動車通勤のガソリン代を支給するもので、距離ごとに設定された限度額までは非課税項目となります。
一方で、リモートワークと併用して導入する際には注意が必要です。
たとえば、週に数回リモートワークを行っている状態で、数か月分の定期券を通勤手当として支給すると、使用実態に見合わない手当を支払うことになってしまいます。
そのため、通勤手当制度を導入する際は、「出社日数に応じて支給する」などの条件を設けておきましょう。
育児・介護支援
育児・介護支援は、従業員が結婚・出産・育児・介護といったライフイベントと仕事を両立できるよう、家計負担を軽減しつつ継続的な就労を支える福利厚生です。
たとえば、以下のような施策が挙げられます。
- ベビーシッターや外部保育サービスの利用料補助
- 社内託児所の設置
- 介護サービス利用料の補助
- 介護休暇の拡充 など
育児・介護支援自体は、法定福利厚生でも導入が義務付けられていますが、第三の賃上げとして法定以上の福利厚生を充実させるのもひとつです。
健康支援
健康支援は、従業員の心身の健康維持・増進にかかる医療費や予防するためのコストを企業が負担し、元気に働ける状態をつくる福利厚生です。
たとえば、以下のような施策が挙げられます。
- 人間ドック・がん検診・婦人科検診の費用補助
- フィットネス・スポーツジムの利用補助
- 産業医や専門家によるメンタルヘルスケア相談
- インフルエンザなどの予防接種費用補助 など
従業員が日頃から心身をケアできる環境を整え、従業員の集中力やモチベーションを支えることが、安定した組織運営につながります。
キャリア支援
キャリア支援は、従業員のスキルアップや資格取得を会社が支援し、個人の成長と企業の競争力強化を同時に目指す手法のことです。
たとえば、以下のような施策が挙げられます。
- 業務に関連する資格の受験料補助
- 資格の合格奨励金の支給
- eラーニングやオンライン講座の提供
- 外部セミナーの受講費補助 など
なお、以下の記事では、福利厚生の人気ランキングを紹介しています。従業員からのニーズがある福利厚生が知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
第三の賃上げを実施する企業側のメリット
福利厚生を充実させることによる企業側のメリットは、以下のとおりです。
法人税や社会保険料の負担を軽減できる
「第三の賃上げ」として導入する施策の出費を「福利厚生費」として処理することで、企業の税金や社会保険料の負担増加を抑制できます。
福利厚生費として支出した費用は、会計上で「損金(経費)」として全額を処理できるため、課税対象となる法人利益が減り、法人税の節約になります。
また、食事補助や社宅といった福利厚生を従業員に提供した場合も、これらの費用は社会保険料の算定基礎に算入されません。
そのため、従業員の手取り額を増やしながら、企業が支払う社会保険料の支払いを抑制することも可能です。
採用力を向上できる
第三の賃上げとして、福利厚生を充実させることで、求職者に対して他社との差別化を図り、採用力を向上させられます。
求人票に「食事補助あり」や「実質手取りがアップする独自の福利厚生」といった具体的な支援内容を記載することで、求職者への強い訴求となります。
とくに物価高が続く現状では、実際の手取り額が大きくなる施策は、求職者からも肯定的に受け止められるでしょう。
ただし、福利厚生の内容が求職者のライフスタイルに合致していないと採用力の向上にはつながらないため、事前にニーズを把握しておくことが大切です。
なお、以下の記事では、就活で重視される福利厚生を紹介しています。学生からのニーズがある福利厚生を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
従業員の離職を防止できる
充実した福利厚生を提供することで、従業員の会社へのエンゲージメントを高め、定着率を向上できます。
また、従業員が離職しないことで、求人広告費やエージェント費用など、各種採用コストの削減にもつながります。
離職した人材の代わりに、新たな人材を確保する際の教育コストも減るため、現場の負担も軽減されるでしょう。
第三の賃上げを実施する従業員側のメリット
福利厚生は企業だけでなく、従業員にもメリットがあります。具体的には、以下のとおりです。
実質的な手取り額の向上
福利厚生を通して各種生活コストを企業側が負担することで、従業員の手取り額の向上につながります。
基本給が上がれば、税金や社会保険料の負担が増えますが、非課税の福利厚生なら、税金や社会保険料の負担を増やさずに制度の恩恵が受けられます。
住居費や食費などの固定費の自己負担も軽減されるので、結果的に可処分所得も向上させられるでしょう。
家庭と仕事を両立できる
育児や介護を支援する制度を充実させておければ、従業員がこれらのライフイベントに直面したとしても、仕事を続けやすくなります。
現代では共働き世帯が一般化しており、育児や介護をしながら仕事を続けることを希望する傾向にあります。
具体的な制度には、育児・介護休業や社内託児所の設置、家事代行補助などが挙げられます。
また、時短勤務制度やテレワーク、フレックスタイム制といった柔軟な働き方の導入も、従業員の満足度を向上させられる有効な施策になるでしょう。
希望のキャリアを実現する機会が得られる
会社が学びの機会や学習支援を提供することで、従業員は希望のキャリアを実現する機会が得られます。
AIの進化や社会情勢など、ビジネス環境の変化が激しい現代において、自らの市場価値を高めるために「リスキリング(学び直し)」をしている社会人は珍しくありません。
こうした意欲的な従業員に対してキャリア支援の福利厚生を提供すると、自らのキャリア志向にもとづいた専門性やスキルを身につけられ、その結果、社内での昇進や新たな職務への挑戦を目指せるようになります。
第三の賃上げを実施する際のポイント
ここからは、第三の賃上げを実施するにあたってのポイントを紹介します。
従業員のニーズを事前に把握する
制度を設計、導入する前に、従業員が現在どのような課題を抱えており、どのような制度を望んでいるのかを事前にリサーチしておきましょう。
従業員のニーズにそぐわない福利厚生を導入しても、誰も利用せず制度の形骸化を招いてしまいます。
また、整備された福利厚生制度を維持・運営するためのコストが発生しているため、それらが無駄になってしまう恐れがあります。
全従業員を対象にしたアンケート調査やヒアリングを行い、利用される福利厚生を事前に把握しておくのが大切です。
従業員間で不公平にならないように設計する
年齢や属性、家族構成などにかかわらず、従業員同士で公平に恩恵を得られる制度設計を行いましょう。
たとえば、育児世帯向けの福利厚生を充実させた場合、子どものいない世帯や独身世帯の従業員は福利厚生の恩恵を得られません。
このように特定層を優遇した制度設計は、対象外の層から不公平感を覚えてしまい、会社への不信感や離職を招く恐れがあります。
そのため、食事補助や社宅、通勤手当など、多くの従業員が恩恵を受けられる福利厚生から優先的に導入するようにしましょう。
導入後の効果測定を行い改善を繰り返す
福利厚生は導入して終わりではなく、定期的に利用状況や従業員の満足度を確認、分析し、制度の内容を継続的に改善していきましょう。
導入当時は利用者が多く満足度が高かった制度も、従業員の年齢層の変化や働き方の変化によって、ニーズが合わなくなってしまうことは珍しくありません。
利用率が低い制度に予算を投じ続けることは、企業にとっても費用対効果の悪い施策となります。
各メニューの月間や年間の利用率を算出したり、年に1、2回程度満足度アンケートを実施したりすることで、従業員のニーズを調査します。
そこで、効果が薄いと判断された制度については、廃止やルール変更、新しい制度への変更を検討しましょう。
外部サービスの利用も検討する
自社でゼロから制度を構築、運営するのではなく、専門の業者が提供する福利厚生代行サービスを活用しましょう。
制度設計や対象範囲の特定、申請対応、費用管理などをすべて自社で対応しようとすると、担当部署や担当者の業務負担は大きくなります。
外部サービスを活用すれば、社内のリソースを圧迫することなく、従業員に品質の高い福利厚生を提供できるでしょう。
ただし、外部に委託すると、その分毎月のランニングコストや初期費用が発生してしまうため、費用対効果が期待できるサービスを選択するのが重要です。
なお、マネーフォワードでは社宅系の福利厚生サービスを提供しています。第三の賃上げとして、社宅系福利厚生の導入を検討している方は、ぜひ検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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