- 更新日 : 2026年7月3日
採用に関する助成金とは?申請するメリットや流れ、注意点を解説
厚生労働省の雇用関係助成金には、採用に活用できる制度が複数あります。
- キャリアアップ助成金は正社員化で最大80万円を支給する
- 特定求職者雇用開発助成金は最大240万円を支給する
- 申請には雇入れ前の計画書提出と雇用継続が求められる
制度ごとに対象者や紹介経路の要件が異なるため、申請前の確認が重要です。
人件費の負担を軽減しながら必要な人材を確保したいと考えている人事担当者は少なくありません。こうした企業の採用課題に対し、国は雇用関係助成金として、採用シーンに応じた支援制度を用意しています。
本記事では、活用しやすい主要な採用に関する助成金5種類を中心に、申請の流れや注意点を解説します。採用に関する助成金の活用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
採用に関する助成金とは?
採用に関する助成金とは、新たな従業員の雇い入れや採用後の処遇改善に対し、国が事業主に給付する返還不要の支援金です。
一般的に、厚生労働省が所管する「雇用関係助成金」のうち、採用や雇用継続に関連する制度を指します。
対象は中小企業を中心とした幅広い事業主であり、要件を満たして申請すれば、採用1人あたり数十万〜数百万円の支給を受けられます。
対象となる業種
採用に関する助成金は特定の業種に限定されず、製造業や建設業、サービス業など幅広い業種の事業主が対象となります。
基本的な前提は雇用保険の適用事業所であることで、条件を満たしていれば業種を問わずに申請が検討できます。
ただし、地域雇用開発助成金のように、対象となる地域や事業所の設置要件が定められている制度があるため注意が必要です。
また、業種に制限がなくても制度ごとの要件で対象外となる場合もあるため、自社が対象になるかどうかを各助成金の要件と照らし合わせましょう。
申請条件
採用に関する助成金を受給するには、各助成金に共通する条件を満たす必要があります。
共通する主な申請条件は、以下のとおりです。
- 雇用保険の適用事業所であること
- 支給審査に必要な書類を整備・保管していること
- 労働局などの実地調査に協力できること
- 労働関係法令に重大な違反がないこと
- 一定期間内に事業主都合の解雇を行っていないこと
これらの共通条件に加えて、助成金ごとに対象となる労働者や雇用形態などの個別要件が定められています。
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採用に関する助成金を活用するメリット
採用に関する助成金は、人材の雇い入れや正社員化に連動した、労働条件の向上等にかかる費用の一部を国が支援する制度であり、原則として返還は不要です。
そのため、採用活動や人材の定着にかかる費用負担を抑えながら、必要な人材を確保できる点が大きなメリットです。
また、多くの助成金では受給要件として、就業規則の整備やキャリアアップ計画の作成、雇用管理制度の導入などが求められます。
申請を機にこうした社内制度が整うため、結果的に従業員の定着や働きやすい職場環境づくりにつながる点も特徴です。
さらに、助成金は要件を満たせば原則として支給されるため、審査や予算枠で採否が決まる補助金より計画的に活用しやすい制度です。
採用に関する助成金と補助金の違い
採用に関する助成金と補助金は、いずれも返還不要の支援金である点が共通しています。
一方で、採択方式や運用主体など、以下のような違いがあります。
| 項目 | 採用に関する助成金 | 補助金 |
|---|---|---|
| 採択方式 | 要件を満たせば原則受給可能 | 公募審査で採択者が決まる |
| 運用主体 | 厚生労働省・労働局・ハローワーク | 経済産業省・地方自治体ほか |
| 募集期間 | 通年で申請可能 | 公募期間・採択枠が限定される |
| 主な目的 | 雇用の安定・労働環境の改善 | 産業振興・事業革新 |
採用にかかる費用の支援を受けたい場合は、助成金を主軸に検討し、必要に応じて補助金を組み合わせるのがおすすめです。
主要な5つの採用に関する助成金
採用の場面で活用しやすい主要な助成金として、キャリアアップ助成金や特定求職者雇用開発助成金など、5つの制度があげられます。
ここでは、それぞれの助成金の概要と支給額について解説します。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップに取り組んだ事業主を支援する制度です。
有期雇用労働者などを正社員へ転換する際に助成を受けられる「正社員化コース」をはじめ、複数のパターンがあります。
正社員化コースでは転換時に賃金を3%以上引き上げることが必須要件となり、中小企業の支給額は重点支援対象者の場合、第1期40万円と第2期40万円をあわせて、1人あたり最大80万円です。
なお、重点支援対象者とは、雇用期間3年以上の有期雇用労働者、正規雇用経験が少ない不安定雇用者・派遣労働者・母子家庭の母・父子家庭の父などが該当します。
また、中小企業において、「障害者正社員化コース」では重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者の有期雇用労働者を正規雇用に転換させると1人あたり最大120万円(60万円×2期分)が支給されます。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、ハローワークなどの紹介で就職困難者を継続して雇用する事業主に支給される制度です。
対象者の属性に応じて複数のコースに分かれています。
中心となる「特定就職困難者コース」は、60歳以上の高年齢者や母子家庭の母、父子家庭の父、身体・知的・精神障害者などが対象です。
2026年5月1日以降は、高齢者は職業紹介を受ける時点で、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることが、要件として追加されました。
中小企業の支給額は、対象者の区分に応じて1人あたり60万円から最大240万円(重度障害者など)まで設定されています。
申請は雇入れから6ヶ月ごとの分割で行い、支給期間は1年で2分割(高年齢者など)から最長3年で6分割(重度障害者など)まで区分ごとに異なります。
ただし、ハローワークなどの紹介による雇入れが必須要件である点には注意が必要です。
なお、2026年4月1日以降の申請からは、全コースで賃金台帳の提出が必須化されています。
参照:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)|厚生労働省
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、職業経験の不足などで安定した就労に課題のある求職者を、原則3ヶ月間試行雇用した事業主に支給される制度です。
中心となる「一般トライアルコース」は、正規雇用への移行を前提に、採用のミスマッチを抑える目的で利用されています。
支給額は対象者1人あたり月額4万円、最大3ヶ月で合計最大12万円です。
ただし、母子家庭の母や父子家庭の父を雇い入れた場合は、月額5万円となります。
対象者はハローワークなどの紹介で雇い入れる必要があり、雇入れ前に「トライアル雇用実施計画書」の提出が必須です。
なお、障害者や建設業の若年・女性の試行雇用には、対象属性ごとの専用コースが用意されています。
参照:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)
早期再就職支援等助成金は、離職者の早期再就職支援や中途採用の拡大に取り組む事業主を支援する制度です。
採用の場面で関係するのは「中途採用拡大コース」であり、中途採用者の雇用管理制度を整備したうえで中途採用を拡大した事業主が対象となります。
支給額は中途採用者1人あたり20万円で、1事業所1年度あたり20名が上限です。
さらに生産性の向上など一定の要件を満たすと、1人あたり10万円が加算されます。
なお、2026年4月8日に支給要領・支給額の見直しが行われたため、対象要件や賃上げ要件などは申請前に最新の支給要領での確認が求められます。
参照:早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)|厚生労働省
地域雇用開発助成金
地域雇用開発助成金は、雇用情勢がとくに厳しい地域で事業所を設置・整備し、地域の求職者を雇い入れた事業主に支給される制度です。
中心となる「地域雇用開発コース」は、地方拠点の新設・増設に伴う採用に適しています。
支給額は、設置・整備費用と対象労働者の増加数に応じた1回50万円から最大800万円であり、最大3回に分けて支給される仕組みです。
また、助成対象となる設置・整備費用は1点あたり20万円以上で、合計額が300万円以上という要件があります。
中小企業事業主の場合は、初回の支給時に支給額の2分の1が上乗せされます。
対象地域は厚生労働省が指定する同意雇用開発促進地域などに限定されるため、自社の事業所所在地が対象になるかを事前に確認しましょう。
採用に関する助成金の申請の流れ
採用に関する助成金の申請は、助成金選びから支給申請まで4つのステップで進みます。ここでは、申請の流れをステップごとに解説します。
申請する助成金と窓口を確認する
採用に関する助成金の申請窓口は、助成金の種類によって異なります。
たとえばトライアル雇用助成金と特定求職者雇用開発助成金は、所轄のハローワークが窓口です。
キャリアアップ助成金・地域雇用開発助成金・早期再就職支援等助成金は、事業所を管轄する都道府県労働局またはハローワークが窓口となります。
自社で使える制度を探す際は、厚生労働省の「雇用関係助成金検索ツール」で対象労働者や取り組み内容から候補を抽出すると、効率的に絞り込めます。
申請は郵送のほか、「雇用関係助成金ポータル」からの電子申請も可能です。
雇入れ前に計画書や届出を提出する
採用に関する助成金の多くは、雇入れの前段階で計画書や届出の提出が必須要件です。
雇入れ後にさかのぼって提出する運用は認められていないため、提出のタイミングを誤ると受給の機会そのものを失います。
また、提出する書類はトライアル雇用助成金なら「トライアル雇用実施計画書」、キャリアアップ助成金なら「キャリアアップ計画書」と、助成金やコースごとに様式と提出先が異なります。
自社の採用予定スケジュールから逆算して、求人申込や計画書提出の期限を少なくとも雇入れの数週間〜1ヶ月以上前には確認しておきましょう。
要件期間にわたり対象者を雇用する
計画書の認定後に対象者を雇い入れたら、各助成金で定められた要件期間にわたり雇用を継続することが重要です。
この期間の雇用実績が支給の判定基準となるため、対象者が早期に離職すると受給できない場合があります。
要件期間の長さは助成金ごとに異なり、トライアル雇用助成金は最大3ヶ月間のトライアル雇用期間、特定求職者雇用開発助成金は6ヶ月単位の支給対象期間が設定されています。
また、要件期間中の勤務実態は支給審査で確認されるため、対象者の出勤簿・賃金台帳・雇用保険被保険者資格取得届などを月次で整備し、申請に備えて保管しておきましょう。
定められた期限内に支給申請する
要件期間の終了後、各助成金で定められた申請期限内に、管轄の労働局またはハローワークへ支給申請書を提出しましょう。
申請期限は制度ごとに異なり、「支給対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内」など比較的短い期間が設定されています。
助成金は期限を過ぎると受給できないため、早めに準備を進めましょう。
また、必要書類は以下のように多岐にわたるため、提出を忘れないための確認が求められます。
- 支給申請書
- 雇入れ通知書
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 雇用契約書
- 就業規則の写し
「雇用関係助成金ポータル」からのオンライン申請を活用すると、郵送の手間や書類紛失のリスクを抑えられます。
採用に関する助成金の申請で押さえたい注意点
採用に関する助成金の申請には細かな要件があり、確認が不足すると不支給となるおそれがあります。
ここでは、申請時に押さえておきたい注意点を解説します。
解雇歴や法令違反があると不支給になる
採用に関する助成金は雇用保険を財源とすることから、雇用の安定への取り組みを前提とした要件設計になっています。
そのため、申請する事業主の労務管理の状況が支給の可否に影響します。
具体的には、対象労働者の雇入れ日以前の一定期間から第1期支給申請日までの間に、事業所内で雇用保険被保険者を事業主都合で離職させていないことが共通要件です。
あわせて、賃金不払いや労働基準法違反、最低賃金法違反など労働関係法令の違反があると不支給となります。
対象労働者や雇用経路の要件を満たす必要がある
助成金ごとに対象労働者の要件が細かく定められており、年齢・雇用形態・離職期間・前職などの条件を1つでも満たさないと支給対象になりません。
特定求職者雇用開発助成金における雇入れ日時点の年齢区分や障害の有無、トライアル雇用助成金における安定した就労に課題のある求職者であることなどが代表的な要件です。
また、トライアル雇用助成金や特定求職者雇用開発助成金などは、ハローワークや職業紹介事業者の紹介による雇入れが必須となります。
そのため、自社サイトや求人広告のみで採用した場合は、他の要件をすべて満たしていても対象外です。
採用してから要件外と判明しても助成金は受給できないため、雇い入れたい人材が対象労働者の要件に合致するか、どの経路で雇い入れるかを確認しておきましょう。
不正受給は全額返還と5年間の受給停止を受ける
故意の虚偽記載だけでなく、確認不足による誤った申請も不正受給と扱われる場合があります。
不正受給と判定されると、受給額の全額返還に加え、延滞金と不正受給額の20%に相当する額の追加納付が求められます。
なお、雇用関係助成金は、不正受給の決定日から5年間は受給できません。
厚生労働省や都道府県労働局では、不正受給を行った事業所名と代表者名を公表する運用をとっているため、不正が発覚すると自社の信用にも大きな影響がおよびます。
申請前に複数人で書類を確認する体制を整えるなどし、不正受給を防止しましょう。
採用に関する助成金に関するよくある質問
採用に関する助成金を活用する際には、受給額や申請経路、併用の可否など、申請前に迷いやすいポイントがあります。
ここでは、採用に関する助成金についてよくある質問と回答を紹介します。
採用に関する助成金は1人雇うといくら受給できる?
採用に関する助成金の金額は、助成金の種類と対象者の区分によって幅があります。
たとえば、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は1人あたり最大12万円、キャリアアップ助成金(正社員化コース)は重点支援対象者の場合、中小企業で1人あたり最大80万円支給されます。
また、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、対象者の区分に応じて1人あたり60万円から最大240万円です。
1人あたりの受給金額には差があるため、自社が使う助成金の支給額を個別に確認したうえで採用計画を立てましょう。
採用に関する助成金はハローワーク経由でないと受給できない?
すべての助成金がハローワーク経由を必須とするわけではなく、紹介経路の要件は助成金ごとに異なります。
トライアル雇用助成金や特定求職者雇用開発助成金は、ハローワークや職業紹介事業者の紹介による雇入れが必須要件です。
一方で、キャリアアップ助成金のように、紹介経路を問わず自社で採用した労働者でも受給できる助成金もあります。
このように紹介経路の要件は助成金ごとに異なるため、自社の採用経路で受給できるかどうか、雇入れ前に各助成金の支給要領で確認しておきましょう。
複数の採用に関する助成金は併用できる?
対象となる労働者や経費が重複しなければ、複数の採用に関する助成金を併用できます。
ただし、同一の労働者の雇入れや同一の経費を対象として2つ以上の助成金を申請した場合は、双方の要件を満たしても一方のみの支給となるのが原則です。
たとえば、同じ労働者の同じ正社員化に対して、複数の助成金から重複して受給することはできません。
一方、雇入れの段階や取り組み内容が異なれば、同一の労働者でも別の助成金につなげて活用できるケースもあります。
併給調整の考え方は助成金ごとに細かく定められているため、判断に迷う場合は管轄の労働局やハローワークへ事前に相談しましょう。
採用に関する助成金を受給した場合の会計処理は?
受給した採用に関する助成金は法人税法上の益金にあたり、勘定科目は一般に「雑収入」として計上します。
消費税法上は対価性のない取引として、不課税で扱われるため、人件費から差し引くのではなく、収益として総額で計上するのがポイントです。
なお、計上する時期は、原則として支給決定により受給額が確定した日が属する事業年度です。
また、申請から支給決定までに時間がかかるため、決算期をまたぐ場合は計上年度の判断に注意が必要になります。ただし、原則は「支給決定通知」が到達した日の属する年度で計上します。
会計・税務処理は個別の状況によっても異なるため、具体的な処理は顧問税理士や所轄の税務署に確認しましょう。
多くの助成金は対象者の継続雇用が受給の前提であり、採用した人材が早期に離職すると、助成金を受給できないだけでなく採用にかけたコストも無駄になります。
そこで、人材の定着を支える施策としておすすめなのが福利厚生の充実です。
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離職率の改善や採用競争力の向上が期待できるうえに、助成金とあわせて人材確保の体制づくりに活用できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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