- 更新日 : 2026年6月16日
福利厚生のメリットとは?会社側の利点や導入しやすい制度を解説
従業員のニーズに合わせて選べば、入社や定着を後押しできます。
- 採用力を高めて離職リスクを抑える
- 課税要件を満たし損金に計上する
- 数が多いほど費用や手間がかさむ
目的を整理し優先度の高いものから段階的に導入すると、運用の負担を減らしつつ効果を出しやすくなります。
福利厚生を充実させると、採用力の強化・離職率の低下・企業イメージの向上など複数の経営上のメリットが得られます。制度の内容によっては福利厚生費として損金処理できる場合もあり、税務上の扱いを確認したうえで設計することが大切です。
一方で、制度を増やすほど費用負担や管理コストが増える点は見落とされがちです。どの制度を選ぶかによって、従業員への恩恵の届き方も変わります。
そこで本記事では、企業が福利厚生を整える具体的なメリット、導入しやすい制度の例、選び方のポイント、注意点、導入の流れを順に解説します。
企業が福利厚生を充実させる5つのメリット
福利厚生が充実していると、経営に関わる複数の課題に同時にアプローチできます。費用面では、一定の条件を満たせば経費として計上できる場合があるため、税務上の扱いも確認しながら制度を設計する必要があります。
福利厚生の基本的な種類や法定福利厚生との違いを確認したい場合は、関連記事も参考にしてください。
1. 求職者に選ばれやすくなり採用力を高められる
福利厚生を充実させると、求職者に選ばれやすくなり、採用力の向上につながります。求職者は給与や仕事内容だけでなく、入社後の働きやすさや生活面の支援も見て企業を比較します。
株式会社マイナビの「2024年卒大学生活動実態調査(4月)」でも、学生の63.4%が福利厚生に対して「勤務地・仕事内容・給料と同程度関心がある」と回答しました。
たとえば、住宅手当や資格取得支援、育児・介護支援などがあると、入社後の生活や働き方を具体的に想像しやすくなります。給与や仕事内容に大きな差がない企業を比較する場合、福利厚生の内容が応募や入社を後押しする要素となるでしょう。
2. 従業員の定着につながり離職リスクを抑えやすい
福利厚生を充実させると、従業員が退職以外の選択肢を持ちやすくなり、離職リスクを抑えやすくなります。育児や介護、自身の健康問題などにより、これまでと同じ働き方を続けにくくなる従業員もいます。
該当する従業員に対して、柔軟に取得できる休暇制度や時短勤務、専用の相談窓口などのサポート体制を提供できれば、当事者は退職以外の選択肢を検討することが可能です。
内閣府の「仕事と生活の調和」推進サイトでも、仕事と生活の調和に向けた取り組みは、人材の確保・育成・定着につながるとされています。
仕事以外の負担を抱える従業員が働き続けやすい環境を整えることは、人材の定着にもつながります。
3. 生活支援により仕事に集中しやすい環境を作れる
企業が食事補助や健康相談、休暇制度を整えることで、生活費や健康面の不安を軽減しやすくなります。たとえば、食費の負担が大きい場合は食事補助、体調面の不安がある場合は健康相談、休みにくさが課題であれば休暇制度の見直しが選択肢になります。
ただし、福利厚生を導入すれば必ず業務効率が上がるわけではありません。従業員の負担が食費なのか、体調管理なのか、休みにくさなのかを確認し、課題に合う制度を選ぶことが大切です。
4. 企業イメージの向上につながり信頼を得やすい
企業イメージの向上につなげるには、従業員の働きやすさを支える福利厚生を整えることが大切です。
柔軟な勤務制度や時短勤務、健康支援などがあると、社内外から「働きやすい環境づくりに取り組む企業」とポジティブな評価を得られるでしょう。健康支援については、経済産業省も健康保持・増進の取り組みが従業員の活力向上や組織の活性化につながり、企業価値の向上も期待できるとしています。
ただし、制度を増やすだけで信頼を得られるとは限りません。従業員が使いやすい内容に整え、採用サイトや社内外への発信で取り組みを具体的に伝えることが重要です。
5. 一定条件を満たせば福利厚生費として処理できる場合がある
福利厚生費は、企業が従業員のために支出する給与以外の費用です。従業員のために支出した費用は、要件を満たすことで法人の損金として計上でき、法人税の負担を軽減できる場合があります。
たとえば、全従業員を対象とした一般的な健康診断の費用や、社会通念上妥当と認められる金額の慶弔見舞金は、福利厚生費として扱える場合があります。
一方で、現金で支給すると給与として扱われる場合があり、所得税や社会保険料の確認が必要です。特定の従業員だけを対象にした制度や、不当に高額な支出も、給与として課税されるおそれがあります。
福利厚生を導入する際は、国税庁が示す税務上の取扱いを確認し、税理士などの専門家に相談しながら制度を設計することが大切です。
福利厚生費については、関連記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
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福利厚生として導入しやすい制度5選
福利厚生は、従業員の生活や健康を支える制度から検討すると導入後の利用場面を想定しやすくなります。福利厚生の導入を検討している場合は、事前にそれぞれの特徴を確認しておきましょう。
また、ユニークな福利厚生の導入をご検討の方は、関連記事もあわせてご覧ください。
1. 住宅手当・家賃補助
住宅手当や家賃補助は、従業員の住居費を支える福利厚生です。具体例は、毎月一定額を支給する住宅手当や、会社が賃貸住宅を借り上げて従業員に貸与する社宅制度などです。
ただし、支給方法によって税務上の扱いは異なります。現金で支給する住宅手当や、従業員が直接契約している住宅の家賃を会社が負担する場合は、原則として給与として課税されるのが一般的です。
一方、会社が住宅を借り上げて従業員に貸与する場合、会社負担分を福利厚生費や地代家賃として処理できる場合があります。ただし、従業員の負担額が少なすぎると、会社負担分が給与として扱われる可能性があるため注意が必要です。
国税庁は、社宅や寮を貸与する場合、従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば、給与として課税されないとしています。そのため、制度を設計する際は、金銭支給にするのか、社宅として貸与するのかを分けて検討しましょう。
2. 食事補助
食事補助は、従業員の昼食代や勤務中の食事代を企業が一部負担する福利厚生です。社員食堂や弁当の提供、社食サービスなどがあり、企業規模や勤務形態に合わせて導入できます。
昼食代のように日常的に発生する費用を支援できるため、利用頻度の高い福利厚生になりやすい点も特徴です。ただし、非課税で運用するには条件があります。国税庁は、食事補助を非課税とする要件として、「従業員が食事の価額の半分以上を負担し、かつ企業負担額が1ヶ月あたり7,500円(税抜)以下であること」などを定めています。
そのため、食事補助を導入する際は、従業員負担額と企業負担額を事前に決め、非課税要件を満たす運用になるか確認しましょう。
3. 人間ドックのような法定外健康診断
人間ドックのような法定外健康診断は、従業員の健康管理を手厚く支援できる福利厚生です。企業に実施義務がある定期健康診断とは別に、独自の制度として導入できます。
労働政策研究・研修機構の調査では、従業員が特に必要性が高いと考える制度・施策のうち「人間ドック受診の補助」は21.8%でした。
人間ドックの補助を設けると、定期健康診断だけでは確認しにくい項目を調べる機会を用意できます。ただし、特定の役員や従業員だけを対象にすると、給与課税の問題が生じる場合があるため注意が必要です。
4. 育児・介護休業・病気休暇
育児・介護・病気に関する休暇制度は、従業員が一時的に仕事を離れる必要があるときに、退職以外の選択肢を用意する制度です。育児休業や介護休業は、育児・介護休業法に基づく制度であり、企業は就業規則を整え、対象者・申請方法・取得期間・復職時の対応を明確にしなければなりません。
一方、病気休暇や復職支援は、企業が独自に設ける福利厚生として整理できます。治療や療養後に働き方を調整できるよう、一定期間の休暇、短時間勤務、復職面談などを設ける方法があります。
5. レジャー施設の割引制度
レジャー施設の割引制度は、従業員の余暇にかかる費用を補助する福利厚生です。宿泊施設や映画館、スポーツジム、テーマパークなどの割引を用意すれば、従業員が自分の過ごし方に合わせて利用しやすくなります。
自社で保養所を持つ場合は、施設の維持費や管理業務が発生します。一方、外部の福利厚生サービスや優待制度を使えば、自社で施設を保有せずに割引メニューを用意できるでしょう。
ただし、従業員によって利用したいサービスは異なるため、対象施設や利用条件を確認して設計することが大切です。
従業員満足度を高める福利厚生の4つの選び方
福利厚生は、制度の数だけでなく、従業員が実際に使いやすいかどうかも満足度に関わります。利用条件が複雑だったり、特定の層しか恩恵を受けられなかったりすると、制度があっても不満につながりかねません。
導入後に使われない制度を増やさないためにも、事前に選び方の基準を整理しておきましょう。
1. 従業員の年齢や家族構成に合う制度を選ぶ
従業員満足度を高めるには、年齢や家族構成を参考にしながら、実際のニーズに合う制度を選ぶことが大切です。若手層・子育て中の従業員・介護を担う従業員では、必要とする支援が異なるため、全員が同じ制度を使うとは限りません。
たとえば、キャリア形成を重視する従業員には資格取得支援、育児中の従業員には短時間勤務や育児費用の補助、介護を担う従業員には介護休暇や相談窓口が候補になります。
自社でもアンケートや面談でニーズを確認すれば、利用されにくい制度を増やさず、従業員の状況に合う福利厚生を整えやすくなるでしょう。
2. 誰でも使いやすい制度にする
福利厚生は、対象者や利用条件がわかりやすく、申請しやすい制度にすることが大切です。制度を用意しても、申請手続きが複雑だったり、利用できる従業員が限られていたりすると、利用されにくくなる可能性があります。
たとえば、食事補助や健康診断補助は、多くの従業員が利用場面を想定しやすい制度です。ただし、在宅勤務者や短時間勤務者も使えるか、対象年齢をどう設定するかまで確認する必要があります。
福利厚生を導入する際は、対象者や申請方法、利用条件を明確にしましょう。導入後は、社内ポータルや利用ガイドで周知し、従業員が申請方法を確認できる状態にしておくことが大切です。
3. 生活費の負担を軽くできる制度を取り入れる
生活費に関わる制度は、毎月の支出に直接関係するため、従業員が恩恵を感じやすい傾向があります。住宅手当・家賃補助、食事補助、通勤手当は、家賃や食費、通勤費といった継続的に発生しやすい支出を支援する制度です。
たとえば、家賃や昼食代、通勤費の一部を支援できれば、従業員は金銭面の不安を抑えながら働きやすくなります。ただし、支給方法によって税務上の扱いは異なります。住宅手当を現金で支給する場合は、原則として給与として扱われるのが一般的です。食事補助も、現物支給の要件を満たさない場合は給与課税の対象です。通勤手当は、非課税限度額を超えた部分が課税対象になります。
このように、生活費を支援する制度は支給方法によって課税関係が変わるため、制度ごとの税務上の扱いを確認しておきましょう。
4. 休暇・健康・学びを支援できる制度を整える
休暇・健康・学びを支援できる制度は、休養・健康管理・スキル習得をそれぞれ補う福利厚生です。
また、研修費用や資格取得費用を補助すれば、従業員のスキルアップやキャリア形成も支援しやすくなります。休むための制度と成長するための制度をあわせて整えると、従業員が自分の状況に合う支援を選びやすくなります。
学びの支援では、対象資格や補助上限、受講時間の扱いを決めておきましょう。休暇・健康・学びの制度を組み合わせる場合は、休養を支える制度なのか、健康管理を支える制度なのか、スキル習得を支える制度なのかを分けて設計することが大切です。
福利厚生を導入・見直す際の3つのデメリット・注意点
福利厚生の導入や見直しには、メリットだけでなく注意すべき点もあります。福利厚生を充実させようとするほど、コストや運用の負荷が増えやすく、想定どおりに活用されない可能性もあります。
福利厚生を形だけの制度にしないためにも、導入前に想定されるデメリットや運用上の注意点を確認しておきましょう。
1. 制度を増やすほど費用負担が大きくなる
福利厚生は、制度数や対象者数、補助額、利用頻度によって費用負担が変わります。そのため、制度を増やすほど、企業の支出が大きくなりやすい点に注意が必要です。具体的には、住宅手当や食事補助、人間ドック補助などは、対象者や利用回数が増えるほど支出も増えます。
また、法定外福利費は企業が任意で設ける制度にかかる費用ですが、一度導入すると従業員の期待も生まれるため、短期間で廃止しにくい場合があります。また、福利厚生制度の廃止は原則「不利益変更」に該当するため、従業員との個別同意などの手続きが必要です。
制度を選ぶ際は、初期費用だけでなく、対象者が増えた場合の月額負担まで見込み、継続できる範囲で導入しましょう。
2. 申請・管理・周知に手間がかかる
福利厚生は、制度数や申請回数が増えるほど、申請・管理・周知の手間も増えやすくなります。制度を用意しても、従業員に内容や使い方が伝わっていなければ、利用につながりにくくなります。
新たな福利厚生を導入する際は、申請方法や誰が内容を確認するかをあらかじめ決めておきましょう。あわせて、社内ポータルや説明資料で案内する方法を整えると、担当者への問い合わせや確認作業を減らしやすくなります。
3. 利用できる従業員に偏りが出る場合がある
福利厚生を導入する際は、利用できる従業員に偏りが出ないよう注意が必要です。育児支援や住宅手当、レジャー優待などは、従業員の家族構成や住まい、働き方によって利用しやすさが変わります。
一部の従業員だけが使いやすい制度に偏ると、対象外の従業員に不公平感が生じかねません。また、厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでは、福利厚生についても、正社員と非正規雇用労働者の間で不合理な待遇差を設けてはならないとされています。食堂や休憩室、慶弔休暇などは、同一の利用・付与が必要とされるため、雇用形態による差にも注意が必要です。
従業員アンケートで利用しにくい制度を確認し、対象者が限られる制度と、多くの従業員が使いやすい制度を組み合わせることが大切です。
福利厚生を導入する主な流れ
福利厚生は、目的を整理せずに制度を追加しても定着しにくい場合があります。導入後のトラブルを防ぐためにも、目的の整理からコスト試算、社内周知まで順を追って進めることが大切です。
1. 導入目的を明確にする
福利厚生を導入する際は、最初に何のために制度を設けるのかを整理しましょう。採用力の強化や離職防止を目的にするのか、健康支援や生活費の負担軽減を重視するのかによって、選ぶべき制度は異なります。
目的があいまいなまま導入すると、従業員に利用されにくい制度が増え、費用や管理の負担だけが残る可能性があります。導入前に「採用で訴求するためか」「定着を支えるためか」「生活費を補助するためか」を整理すると、目的に合う制度を選びやすくなるでしょう。
2. 具体的な制度を考える
具体的な制度を考える際は、従業員アンケートやヒアリングでニーズを確認することが大切です。企業側の判断だけで決めると、従業員の生活状況や勤務形態に合わず、利用されにくい制度になる可能性があります。
制度候補を出す際は、生活費を支援する制度、健康管理を支える制度、休暇や働き方を支える制度などに分けて考えると整理しやすくなるでしょう。
3. コストを試算する
コストを試算する際は、導入費や運用費を洗い出し、予算内で続けられるかを確認することが大切です。サービスの導入費や月額利用料、従業員への補助額、設備費、人件費などを分けて整理しましょう。
試算時は、全従業員が利用した場合の上限額と、想定利用率に基づく標準額を出しておくと費用感を把握しやすくなります。はじめから制度を増やしすぎず、優先度の高い制度から段階的に導入しましょう。
4. 就業規則を作成する
福利厚生の内容が決まったら、対象者や利用条件を就業規則や福利厚生規程に明記しましょう。対象者や申請方法、補助金額、利用回数、必要書類を定めると、従業員ごとの対応差や認識違いを防ぎやすくなります。
厚生労働省は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成する必要があるとしています。就業規則を変更した場合も、所轄の労働基準監督署長への届け出が必要です。
また、就業規則や規程に明記するだけでは、申請方法が従業員に伝わらない場合があります。担当者向けの運用マニュアルや従業員向けの利用ガイドも用意しておくと、申請や確認の手順をそろえやすくなるでしょう。
5. 従業員に周知する
福利厚生の導入準備が整ったら、制度の内容や利用方法を従業員に周知しましょう。制度を用意しても、従業員が内容や使い方を知らなければ、利用につながりにくくなります。そのため、福利厚生を導入する際は、社内ポータルや説明資料、メールなどで、福利厚生の詳細を伝えましょう。
福利厚生は、運用コストを抑えながら効果が出る制度を選ぶことが大切です。なかでも住宅関連の福利厚生は、家賃という毎月の固定費を支援できるため、従業員が恩恵を感じやすい制度といえます。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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