- 更新日 : 2026年6月17日
監査法人に家賃補助はある?Big4の事例と採用に勝つ住宅手当の作り方
Big4には毎月の住宅支援が原則なく、事業会社は住宅手当で採用差別化を図れます。
- Big4は基本給を高く設定し給与全体で住宅費を補う
- 準大手・中小法人は対象を絞り住宅手当を支給する
- 月3万円の住宅手当なら年間36万円の固定費を下げる
カフェテリアプランや資格費用補助と組み合わせ、公平性にも配慮しましょう。
大手監査法人(Big4)には、原則として家賃補助や住宅手当を支給する仕組みはありません。
基本給が高く設定されており手当に依存しない給与体系ですが、事業会社が優秀な公認会計士を採用する際、この「大手にはない住宅支援」が採用上の強みとなります。
本記事では、人事担当者や経営者に向けて、監査法人の福利厚生の実態から、採用競合に打ち勝つための代替施策、コストや公平性に配慮した制度設計のポイントまで実務視点で解説します。
目次
大手監査法人(Big4)に家賃補助・住宅手当はない
大手監査法人(Big4)では原則、全職員を対象に毎月支給される家賃補助や住宅手当は確認できません。その代わり、基本給や初任給を高めに設定し、給与全体で補う仕組みです。
たとえ中小企業でも、Big4に少ない住宅支援を整えることで、公認会計士の採用競争で差別化しやすくなります。
大手監査法人は支給対象外が基本
大手監査法人では、家賃補助や住宅手当を毎月継続して支給する制度は、基本的にありません。
たとえば、トーマツやあずさ監査法人などのBig4では、公開されている採用情報上、全職員向けの住宅手当は確認できませんでした。職員は、基本給や残業代、賞与をもとに生活設計を行うよう求められます。
一部では、遠方から入社する人向けに、引越し費用が補助される場合もあります。ただし、これは入社時の一時的な支援であり、毎月の生活費を補う家賃補助とは別物です。
監査法人で家賃補助が少ない理由
監査法人で家賃補助が少ない理由は、以下の3つです。
- 専門職として基本給で処遇する考え方が強い
- 全国転勤を前提とする事業会社より勤務地が固定されやすい
- 全職員が使いやすい福利厚生を重視しやすい
監査法人は、公認会計士や試験合格者などの専門家が集まる組織です。住宅事情に応じて手当を分けるよりも、スキルや職位に応じた給与で報いるほうが、効率的だと考える傾向があります。
また、監査法人は都市部の拠点勤務が中心です。全国的な転勤は少ないため、住宅手当が制度化されにくい面があります。
働き方の多様化に合わせて、全職員が使える制度を選ぶ法人も増えました。カフェテリアプランのような制度のほうが、住宅手当に比べて、不公平感を減らせるケースも珍しくありません。
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家賃補助・住宅手当とは
家賃補助や住宅手当は、従業員の住宅費を軽減するために企業が任意で支給する法定外福利厚生です。法律上の支給義務はなく、対象者や金額、支給条件は企業ごとに決められます。
家賃補助と住宅手当の違い
家賃補助と住宅手当は、目的や対象範囲に違いがあります。
家賃補助は、主として賃貸物件に住む従業員の家賃を、一部補助する制度です。本人名義の賃貸借契約がある人や、会社から一定距離内に住む人を対象にするケースが多くなります。持ち家や実家暮らしは、対象外になりやすい制度です。
一方、住宅手当はより広い意味で使われます。賃貸か持ち家かにかかわらず、世帯主・扶養家族の有無・勤務地からの距離などを基準に支給されます。
なお、上記の区別はあくまで一般的なものであり、企業ごとに名称・内容の定め方はさまざまなため、これらの区別に縛られる必要はありません。
企業が新しく制度を作る際は、目的に合った設計が重要です。たとえば、採用強化が目的なら、若手や遠方からの転職者を対象にした家賃補助が有効でしょう。一方、生活支援を広く打ち出したい場合は、住宅手当として対象を広げる方法もあります。
支給形態と税務上の扱い
現金で支給する家賃補助や住宅手当は、原則、給与所得として扱われます。所得税や住民税の対象になるため、毎月の手当がそのまま手取り額となるわけではありません。
また、手当によって従業員の給与が増えると、会社側の社会保険料負担も増える可能性があります。制度設計では、支給額だけでなく、税金と法定福利費を含めた総コストの確認が欠かせません。
一方、企業が物件を借り上げて従業員に貸す「借り上げ社宅」は、一定の条件を満たせば給与として課税されない場合があります。従業員の手取りを重視するなら、現金支給だけでなく借り上げ社宅も検討すべきでしょう。
【事例】監査法人ごとの住宅支援内容
監査法人のBig4の支援内容は、全職員が利用しやすい福利厚生・資格関連支援が中心です。直接的な住宅手当が少ない分、カフェテリアプラン、資格費用の負担、育児支援、柔軟な働き方などで職員を支えています。
あずさ監査法人
あずさ監査法人では、公開情報上、全職員に一律支給される家賃補助は確認できません。一方で、福利厚生として、カフェテリアプランや住宅提携融資制度などが用意されています。
また、首都圏勤務者向けには、給与に首都圏手当が含まれる採用情報もありました。毎月の家賃補助とは異なるものの、都市部の生活コストを一定程度考慮した給与設計といえます。
さらに、子育て支援やベビーシッター関連補助が充実しているのも特徴です。短期的な住宅費より、長く働ける環境づくりを重視しています。
EY新日本監査法人
EY新日本監査法人でも、毎月固定で支給される家賃補助や住宅手当は、公開採用情報上では前面に出ていません。
代替となる支援として、各種保険、DC制度、ベビーシッター補助、法人契約スポーツクラブ、在宅勤務制度などが確認されています。住宅費を直接下げるより、働き方や生活全体を支える制度が中心です。
また、公認会計士協会への登録費用や会費を法人が負担する制度は、会計士にとって実質的な金銭支援になります。資格維持に必要な費用は継続的に発生するため、可処分所得を守る効果があります。
企業が会計士採用を行う場合は、住宅手当だけでなく、こうした資格関連費用の負担も比較対象になります。
トーマツ・PwC Japan
トーマツやPwC Japanでも、全職員向けの家賃補助や住宅手当は確認できませんでした。
トーマツは、資格取得支援や専門的な研修制度など、スキルアップ投資を重視する傾向があります。現金手当ではなく、専門性を高める支援によって職員へ還元する方針です。
一方、PwC Japanでは、以下のようなウェルビーイングにかかわる制度が確認されています。
- 休暇制度
- 短時間勤務
- 育児や介護に関する支援
家賃を補助するコストが、柔軟に働ける環境づくりへ回されているようです。
事業会社が採用広報で差をつけるなら、Big4の制度を否定する必要はありません。「当社は住宅費も直接支援します」と伝えるほうが、求職者に具体的なメリットが伝わります。
準大手・中小の監査法人なら家賃補助が出る?
一部の準大手・中小監査法人では、採用力を高めるため、住宅手当を支給するケースがあります。Big4と同じ水準の基本給を提示しにくい法人ほど、福利厚生での差別化が必要です。
一部の準大手・中小監査法人では支給されるケースも
準大手・中小監査法人では、独自の家賃補助や住宅手当を導入しているケースもあります。
たとえば、以下のように条件を絞って支給する仕組みが一般的です。
- 若手職員のみ
- 世帯主のみ
- 勤務地から一定距離内に住む人のみ
対象を限定すれば、採用効果を狙いつつ、運用コストも抑えられます。
求職者にとって、住宅手当は毎月の固定費を下げる制度です。たとえば基本給が同じでも、月3万円の住宅手当があれば、年間で36万円の差になります。都市部でひとり暮らしをする若手社員には、大きな金額でしょう。
準大手・中小法人が住宅手当を充実させている背景
準大手・中小法人が住宅手当を充実させる背景には、人材確保の難しさがあります。
優秀な公認会計士や試験合格者は、Big4や大手事業会社へ流れやすい傾向があります。そこで、準大手・中小法人は「基本給+住宅手当」で実質的な手取りを高め、採用競争に対応しています。
また、住宅支援には、早期離職を防ぐ効果も期待できます。とくに若手社員は、家賃や引越し費用の負担が重くなると、生活不安から転職を考えがちです。しかし、毎月の固定費を下げる住宅手当制度があれば、生活基盤が安定しやすくなり、離職リスクを押さえられるでしょう。
企業が監査法人と比較される理由
公認会計士の転職先は、監査法人だけではありません。上場企業やIPO準備企業の経理、財務・内部監査・経営企画も有力な選択肢です。Big4の基本給と比較されることを前提に、住宅支援や資格費用補助などを含めて、総合的な待遇設計を行いましょう。
公認会計士の転職先としての事業会社
公認会計士にとって、事業会社は魅力的な転職先です。監査法人では、多くの会社を外部から見る経験を積めます。一方、事業会社では決算・開示・管理会計・IPO準備・内部統制などにかかわれるため、会計士の経験が活きやすいのが特徴です。
会計士を自社で雇用したい場合は、求職者が「監査法人の給与」と「事業会社の基本給+手当+働き方」を比べていると理解しましょう。基本給だけで劣っていても、住宅手当や借り上げ社宅・資格費用補助・残業時間の少なさを合わせて示せば、魅力を伝えられます。
住宅支援は採用力に影響する
住宅支援は、採用力に直接影響します。とくに都市部で働く若手社員にとって、家賃は毎月の固定費の中でも大きな割合を占めるでしょう。しかし、家賃補助や借り上げ社宅があれば、生活の見通しを立てやすくなります。
大手監査法人では、直接的な家賃補助が少ない傾向があります。そのため、事業会社が住宅支援を提示できれば、内定承諾率を高める材料になります。
ただし、金額だけを強調するのは避けるべきです。「若手が安心して専門性を発揮できる環境を作る」「遠方人材にも公平に機会を提供する」といった背景を示すことで、企業姿勢も伝わります。
家賃補助の代わりになる3つの制度
家賃補助を現金支給する場合、税金や社会保険料の負担が増えやすくなります。代替として、以下のようなプランも検討しましょう。
カフェテリアプラン
カフェテリアプランは、従業員に一定のポイントを付与し、決まった使途から自由に選んで利用できる福利厚生制度です。たとえば、以下のような用途に利用できます。
- 旅行
- 自己啓発
- 健康診断
- 人間ドック
- 育児サポート
カフェテリアプランは、家賃補助のように、賃貸住まいの従業員だけが対象になる制度ではありません。そのため、持ち家や実家暮らしを問わず、従業員間の格差を減らせる点が強みです。あずさ監査法人などの大手でも導入例があり、多様なライフスタイルに対応しやすい制度といえます。
一方で、制度メニューが複雑になると、利用率が下がりがちです。利用しやすいメニューに絞り、定期的に利用状況を確認しましょう。
資格関連費用の負担
公認会計士を採用する企業では、資格関連費用を負担するのも有効です。公認会計士にとって、以下のような費用は、継続的な負担になります。
- 協会の登録費用
- 協会の年会費
- 研修費
- 専門書籍代
- 外部セミナー費用
監査法人では、法人が上記の費用を負担してくれるケースも少なくありません。事業会社でも同様の支援を用意すると、転職時の不安を下げられます。
とくに資格関連支援は、業務との関連性を説明しやすい制度です。従業員の専門性が上がれば、決算品質・内部統制・開示体制の強化にもつながります。
通勤手当・首都圏手当
通勤手当や首都圏手当も、家賃補助の代替制度になります。
通勤手当は、一定額まで非課税で支給できます。月額150,000円までの非課税限度額があるため、家賃補助より税務上の扱いを整理しやすい制度です。
また、東京など家賃や物価が高い地域では、首都圏手当や地域手当として、基本給に上乗せする方法もあります。
通勤手当や地域手当は、住居形態に左右されにくいのが利点です。ただし、支給目的が曖昧だと、不公平感が出かねません。勤務地や居住地、通勤距離などの判断基準を、規程で明確にしましょう。
【採用】制度設計で見るべきポイント
住宅関連の手当を導入する際には、就業規則や税務、社会保険料、社内公平性まで確認する必要があります。制度を作る前に、以下の項目を整理しましょう。
対象者と支給条件
住宅支援は、対象者と支給条件の明確化が重要です。若手支援なのか、遠方人材の採用なのか、通勤疲労の軽減なのかによって、支給条件は変わります。条件の例は、以下のとおりです。
- 会社から半径◯km以内に住む従業員
- 本人名義の賃貸借契約がある従業員
- 世帯主である従業員
- 入社後◯年以内の若手従業員
- 転居を伴って入社した従業員
距離を条件にする場合は、測り方も定義しましょう。たとえば、直線距離なのか、通勤経路の距離なのかを決めておく必要があります。また、提出書類の種類も、具体的に定めましょう。
公平性と運用コスト
住宅手当は、特定の条件を満たす従業員だけが受け取る制度です。そのため、持ち家の従業員や実家暮らしの従業員から、不満が出る可能性があります。
不公平感を抑えるには、住宅手当をカフェテリアプランや資格支援など、全員が使える制度と組み合わせましょう。
運用コストも、見落としてはいけません。たとえば、月3万円を100人に支給すると、年間360万円の人件費が発生します。さらに、現金支給の金額は標準報酬月額に影響するため、会社負担の社会保険料が増えるリスクも否めません。
制度は一度導入すると、簡単には廃止できません。業績が悪化した際に維持できるか、対象人数が増えても運用できるかを事前に試算しましょう。
採用広報での見せ方
住宅支援は、求人票や採用サイトで見せ方を工夫すると効果が高まります。単に「住宅手当あり」と書くだけでは、求職者に具体的な魅力が伝わりません。支給額や対象者、利用者の声を示すことで、働くイメージが明確になります。
たとえば、以下のような見せ方が有効です。
- 遠方からの転職者に月30,000円を支給
- 入社3年目までの若手を住宅面で支援
- 公認会計士の資格維持費も会社が補助
- 住宅支援と在宅勤務を組み合わせて生活を支援
大切なのは、制度の背景を伝えることです。「若手が生活不安なく専門性を磨ける環境を作るため」と説明すれば、企業の姿勢が伝わります。
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